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頭真っ白で家までの道を急いでる。

「…!!……!!!」
「え?」
「珱尓さん…ちょっと待って…」
「あ!はい…」
「息が…」
「あ…ごめんなさい…」

ずっと小走りで走って来たから…僕も軽く息があがってた。

「ああ…大丈夫ですか?」
「うん…」
「…………」

立ち止まったのはいいけど…何だか落ち着かなくて…
結構大胆な事言った様な気が今頃になって思い起こされる……
この歳になって恥ずかしい気持ちになるなんて…

「あの…」
「は…はい…!?」
何だか焦る。
「さっきの…事なんだけど…」
「は…あ…」

「あれは…その…喜んで…良い事なのよね?」

「………」
「違う…の?」

「何で黙って出て行こうとしたんですか?」
僕は愛理さんの質問に答えずに逆に問い掛けた。

「……それは…」

僕から視線を外して俯いてしまった…

「僕に迷惑と心配かけると思ったからですか?」
「………」
コクンと小さく頷いた。

「そんな頼り甲斐が無くて情けない男だと思われてたんですかね?僕は…」

ちょっとガッカリとした様子でそう言った…もちろん演技だけど…
でも愛理さんには効果があったようだ。

「そ…そんな事思ってない…あたしはただ…本当に珱尓さんに迷惑掛けたくなくて…
って何で知ってるの?どうして?」

「恵実がね…許してあげて下さいね。愛理さんの後をつけたんです…それで…」
「え?」
「気付かなかったんですか?」
「全然…どうして?って…あ…そっか…珱尓さんの事が好きだからだ…」
「恵実は恵実なりに僕の心配をしてくれたみたいで…悪気は無いんです…だから…」
「うん…それは気にしてないから…」
「でもお陰で愛理さんが何で僕の家を出たのかわかったから…」
「みんな…わかってるのね…珱尓さん……」

「多分…後で詳しく伺いますけど…とりあえずは…」

「とりあえずは?……あ!!」

愛理さんを思い切り抱きしめた。

「え…珱尓さん?」
「参った…部屋まで持たないや……」
「え?」

「本当に心配したんですよ…何処を捜していいのかわからなくて…
もう…見つけられないかと思ってました……」
「……良くわかったね…」
「聞いたんです。女友達に…女性で今時の若い子ならどんな所に泊まるかって…
あのお店で3軒目でしたけど…良かった…
あと少しでも時間がズレてたら愛理さんに会えなかった…」

「どうしてそんなに一生懸命捜してくれたの?保護者…だから?」

「…………自分でもそう思ってましたよ…
それに僕なんかよりもっと愛理さんにふさわしい歳相応の若い人が現れるんじゃないかって…」

「珱尓さん!あたしは…!!」

言いかけたあたしの口を珱尓さんの人差し指が塞いだ。

「でも…それは愛理さんが僕の傍にいるって分かってたからなんです…
だから今日愛理さんがいなくなってしまうって思ったら…自分の気持ちがハッキリしました…
その辺は情けない男かもしれませんね…」

「珱尓さん…」

「ずっと一緒にいたいですしずっと僕の傍にいて欲しいですし…他の誰にも渡したく無いです。」

「え……?」
「こんな年上のオジサンでいいんですか?」
「………」
コクリと愛理さんが頷いた。
「口煩いですし心配性ですよ。」
「………」
今度は2度頷いた。
「本当に?」
「………」
またコクリと頷いた。
「後悔しません?」
「うん…あ…はい!」

「結婚前提のお付き合いですよ?」

「!!…はいっっ!喜んでっっ!」

「本当に後悔しませんね?」
「はいっっ!!」
「わかりました。愛理さん…」
「は…はい!」
すごい姿勢が正しい…

「僕と結婚を前提にお付き合いして頂けますか?」

「……!!!」

あっという間に愛理さんの瞳が潤んで涙が零れそうだ…


「……うっ…ひっく…は…はい…よ…喜んで……」

「良かった。」

「…う…ん…うっ…」

「そんなに泣かないで下さい…今までこんな僕の事思っててくれてありがとうございます…
これからも宜しくお願いします。」

そう言って珱尓さんがにっこりと笑うから…あたしは……
涙が…止まらない……

「……うっ……ひっく……う…」

愛理さんはもう言葉にならなくて泣き止むまでしばらく僕の胸に抱きしめる事になった。



「もう大丈夫ですか?」

5分ほどしてやっと落ち着いた愛理さんを覗き込んで話し掛けた。
「…ん…だ…大丈夫…」

ちょっと照れて…赤くなった瞳と鼻の頭が可愛らしかった…

「良かった。じゃあ心置きなく…」
「え?…んっ!」

愛理さんが泣き止むまで待ってそっとキスをした。
ずっとしたかったのを我慢してたんだ…

「…ン………ァ…」

そっと…したつもりだったのに無意識に本格的なキスになってしまったらしい…
愛理さんを抱きしめる腕に力が篭って自分の方に抱き寄せて……
舌を絡ませるキスをずっとしてた……

「……はぁ……」
「…?愛理さん?大丈夫ですか?」

唇を離した後愛理さんがフラついてて支えてあげないと立っられない位だ…
一体どうしたんだろう?

「も…やだ……珱尓さんからキスされると嬉しくて眩暈がしちゃう…」
「本当に大丈夫ですか?顔が真っ赤ですよ。」
支えてた愛理さんの顔を覗き込んだ。
「やだ…そんなに見ないで………」
そう言って自分の頬を両手で押さえて僕から視線を外してしまった…
今まで僕の方がそんな感じで…逆に愛理さんの方が色々僕を驚かす様な事してたのに……
急に照れだしてる??

「変な愛理さんですね…さて…帰りましょう。お腹も空きました。」
「うん…」

僕達はどちらからともなくお互いに手が伸びてしっかり手を繋いで帰った。



家の戻って普段と変わらない夜を過ごしてソファに2人で座る。

「これが連絡先……」
僕は愛理さんからあの男達の連絡先の携帯の番号を受け取った。
「僕が明日話してみますから愛理さんはもう心配しなくていいですよ。」
「話してみるって…まさか…!?」

「借りたのなら返せば済む事です。」

「だ…ダメよ!珱尓さんには関係ないもの!」
「関係無くないですよ…だってこの事が解決しない限り愛理さんはいつまでも
落ち着け無いじゃないですか。それは僕には許せない事だから…」
「でも…」
「大丈夫。ね!」

愛理さんは納得いかない顔…でもそれが一番の解決法だから…


「必ず返すから!!」

ずっとそう言い続ける愛理さんの口をキスで塞いだ。
「!!!」
ものすごい驚いた顔された。

「?どうしたんですか?」
「…ううん…何だか珱尓さんがこんな事する人だったなんて…思わなくて…」
「こ…こんな事する人…?ですか??え?」
「だって…いきなりキスするなんて……思わなかった…」

いつもはあたしからしてて…それだって驚いてたりしてたのに……

「…いや…付き合ったらこう言うものかな…って…思ったんですけど…」
「………珱尓さんも普通の男の人だったんだ…良かった。」
「?僕ってどんな風だと思われてたんでしょう?」

「え?…んと…真面目で…イチャイチャなんてしなくて…
珱尓さんからキスなんてあたしがお願いしないとしてくれなさそう……かな?」

「そうですか…そう言う方がいいのかな?」

「だ…だめ!!いいの!これでいい!!」

珱尓さんがそんな事をボソリと呟くから慌てて否定した!
だって…珱尓さんがキスしてくれるとあたしは身体と頭が痺れて…

…それに…

とっても嬉しくて幸せな気持ちになるから………