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 * R15のイラストあり。要注意! *

椎凪 過去編。 02



オレは時々夢を見る…目が覚めると忘れてしまうけど…夢を見始めると思い出す…
そう…知り合う前の椎凪と…会う夢…



オレは学校帰り…声を掛けた 女の子と歩いていた…大学生で…良く話す女…ちょっと疲れる…
そんな事を思いながらぼんやりとその子の話を聞いていた…
その時…視界に…誰かが…横切った…
ニッコリ笑って…静かにオレを見てる…でも人混みに紛れて…分からなくなった…

「 !! 」
「?…どうしたの?」
オレが急に動き出したから彼女が 不思議がる…
あの子だ…そう…顔も名前も知らないけど…オレはあの子を知ってる…
そしてオレはあの子に会いたかったんだ…

「悪い…また今度ね…」
オレは声を掛けた女の子を見もせずさっさとその場から走って行った。
「えっ?ちょっと…」
何か言ってたけど知るもんか…

やっと…見つけた!
身体が…感じる…そんな感覚…そう…こっちだ…こっちにいる…この先に…
オレは曲がり角を曲がると人通りの少ない道に出た…そこにあの子が立っていた…
そう…この子だ…名前は…耀…思い出した…

「椎凪!」
彼女もオレに気が付いて…ニッコリと微笑んだ。
「………ハァ…ハァ…」
こんなに走ったの… 久しぶりだ…
オレは弾む息を整えながら手を伸ばして…彼女を抱きしめた…
「やっと…会えた…ハァ…」
「うん…」
彼女も抱きしめてくれた…


「ギシッ」
ベッドが激しく軋む…オレ達は速攻ホテルに入った…


 変なんだよな…

何が?…

 こうやって会ってる時は顔も名前も覚えてるのに…
 あんたがいなくなると…どうしても思い出せない…

オレもそうだよ…ねぇ…
 ん?





 オレの事…『耀くん』って呼んで…

  耀くん?

 うん…
 いつも椎凪はそう呼んでくれる…

  オレが…?
  なんか良くわかんないけど…
  わかった…



オレと耀くんはギュッと手を握り締めあって…ずっと抱き合っていた…


「刑事になるの?」
「ああ…」
耀くんがオレの腕枕で話しかける。
「椎凪に合ってるよ。絶対刑事になってね!」
「うん…頑張るよ。」
そんな話をしながら軽いキスを 交わした…こんな事…初めてだ…
抱き合った相手とこんな風に終わってからも一緒にいるなんて…
しかも自分の事話すなんて…

「……!…何で…耀くんと… した後はこんなに眠く…なるんだ…」

どうしても逆らえない睡魔がオレを襲う…
オレは耀くんを強く抱きしめて…オレの方に引き寄せた…

「目が覚めたら…きっと……耀くん……いない…んだ…」

いつもそうだ…眠りたくなんかないのに…
オレはまた一人…深い眠りに落ちていった…


耀くんはいつも突然オレの所に来てくれる…
どう言う訳かオレが見つけるまで絶対傍に来ない…
オレは耀くんが傍にいるとすぐわかる。感じるんだ…
でも…気付かない振りをしてるといつまでもオレの後をつけて来る…
それがバレバレで…なんとも可笑しくて…
「オレが気が付いてるの分かってるんでしょ? くすっ…」
流石に限界が来て耀くんに声を掛けた。
「あ!」
それでも何で分かったのかと不満そうにオレに抗議する耀くん。
「どうしていつもすぐ分かっちゃうの?もー…」
「だって分かっちゃうんだ… ごめんね…」

…自分がこんな人間だったなんて知らなかった…
その辺にいるカップルみたいにベタベタイチャイチャなんて出来ないと思っていた…
でも… 耀くんとは違う…いつも抱いて…傍にいて…いつもキスしてたい…

耀くんはオレの事を分かってくれてる…初めて会った時にそれはわかっていた…
でも… それだけじゃない…あれは何度目だっただろう…
いつもの様に会って…すぐホテルに入った…

「ねえ…椎凪…」
「何?」
耀くんにキスをしながら聞き 返す…

「もう一人の椎凪…オレに見せて…」

耀くんが…信じられない事を言った…オレは耀くんから離れて後ずさる…
「な…何で?…知って…る?」
驚いてるオレの事を気にせず耀くんが続ける…
「言っただろ?オレは椎凪の全部を知ってるって…」
真っ直ぐ…強い瞳でオレを見つめる…

「あ…ダメだ…あのオレ見たら…オレの事…嫌いになる…」

オレは子供みたいに首を何度も横に振って…
耀くんから目を反らした…

「椎凪!大丈夫だから… オレを信じて…もう一人の椎凪で…オレを抱いて…」

…耀くんは嘘をつかない…きっと…本当に大丈夫なんだと思う…でも…
オレはしばらく考えて…『オレ』を 出した…くそっ…耀くんには…勝てない…
耀くんが…じっと『オレ』を見つめる…
「あっ!」
いきなり耀くんをベッドに押し倒した…
「耀くんが… 望んだんだぞ…」
「うん…」



『オレ』で女の子を抱くのは…
きっとこれが初めてだ…

だから… 何も考えられなくて…思いっきり…
しかも乱暴に耀くんを抱いた…

…しばらく…オレも…耀くんも…
息が乱れて…動けなかった…




そんな耀くんを見て… オレは我に返る…

「…あ…ごめ…ん…ごめんね…耀くん…オレ…」
耀くんを優しく抱きしめた…
ヒドイ抱き方したんだと…思い返して…怖くなった… 耀くんに…嫌われた…?
「オレの事…嫌いに…なった?」
「椎…凪」
耀くんがオレの顔を両手で挟んでお互いの目を合わせる…
「大丈夫だって…言っただろ? 嫌いになんかならないよ…」
耀くんがニッコリと笑ってくれた…
「オレね…もう一人の椎凪も好き…オレ…もう一人の椎凪にも好きって…
愛してるって言って もらったんだ…嬉しかった…
でも…今の椎凪…それで辛いんでしょ?」
耀くんが優しくオレを見つめながら話す…
「だから会いに来たんだ…椎凪は言って くれた…
生まれて来なければ良かったっていつも思ってたオレに…
椎凪を愛する為に生まれて来てくれたって…
椎凪にめぐり会う為に生まれて来てくれたって…オレが いないと椎凪生きて行けないんだ…」
耀くんの手が…オレの頬をそっと触れる…
「ごめんね…まだ…椎凪にめぐり会えない…だからこうやって会いに来たんだ…
時々しか…来てあげられないけど…」

耀くんがオレに近づいて…優しくキスをしながら言ってくれた…

 「好きだよ…椎凪…愛してる…」

 …生まれて…初めて…口にした…
 輪子さんにも一度も言わな
 かった…それは…耀くんの為に
 とっておいた言葉だから …

 「オレも…愛してるよ…耀くん…」
 きっと一人になると…
 忘れてしまうけど…
 オレの命に刻むよ…
 絶対…忘れないから…



時々オレは未来のオレに嫉妬する…

「えっ?毎晩?」
「うん…あーでも…最後までしない時もあるよ…あと夜勤の日とかは…いないから…」

オレが やってるんだろうけど…くそっ!なんかムカつく!!
ジュースを飲みながら耀くんがオレに聞いた。
「そう言えばさ…高校生の椎凪ってさ…」
「ん?」
「あの時オレの事縛らないね。どーして?」

「 ぶ っ !! 」

思いっきり飲み物を吹き出した!
「がはっ!げほっ!…ぐっ!…ごほっ…!!!!」
「だ…大丈夫…?あれ?オレ何か変な事聞いた?」
「な…何…オレ…そんな事してんの?」
「うん…時々ね…オレが邪魔するからなんだって…
でも本当は無抵抗の オレ抱くのが好きなんだって…
攻められてる時の顔とか…感じてる時の声がたまらないって言ってたな…」

…確かに…魅力的な抱き方だ…一度やってみたい…



高校生の…17歳の椎凪…
やっぱり今オレと暮してる椎凪とはチョット違う…
子供っぽくて…ちょっと荒っぽい感じ…
きっとオレと出会う8年間の間に 色々な事があったんだろうな…
高校生の椎凪を眺めながらオレはそんな事を考える…

耀くんを抱くと終わった後すぐ眠くなる…
だからと言って抱かなければ いつまでも一緒にいれるかと言えばそんな事は無い…

「あ!もう行かなきゃ…椎凪が呼んでる…」
「え?オレが?」
「うん…また来るから…」
「うん…」

…本当は…帰したくない…
いつまでもオレの傍にいて欲しい…いつもそう思う…
でもそれは耀くんを困らせるだけ…

「じゃあね。椎凪愛してるよ。」
「オレも愛してるよ…」
そう言ってオレ達はサヨナラのキスをした…
「ばいばい…」
「うん…」
耀くんが…人混みの中に…消えていく…
オレはずっと その姿を見送って…

「 …………!! あれ?オレ何やってんだ?こんなトコで?ん?」

オレは何とも変な気分で辺りを見回した…店の時計が目に入る…
「げっ!!やべっ!!バイト遅れる…急がねーと…
だけど…何でこんな所にいたんだ?わかんねー…? 」

オレは不思議に思いながらもその場から走り出して いた…


「耀くん。」
椎凪がオレを起こしに来てくれた。
「んー…おはよ。椎凪…」
オレは目を明けずに返事をする。
「おはよ。耀くんご飯出来たよ。」
いつもの椎凪の優しい声。
「うん…」

オレはいつもの様に椎凪とおはようのキスをした…
オレは起きた時からとっても 気分がいい。

だっていっつも椎凪が傍にいてくれるから…