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 * R15のイラストあり。要注意! *

椎凪 過去編。 05



夜勤明けで一眠りした後無性に料理が作りたくなって…
ハマって…何種類もの料理を作った。
それがあまりにも上出来で自我自賛。
「いやーオレって天才! 料理の神様降りちゃった?」

高校の時にバイト先でちょっとしたモノを作るようになってから興味を
持ち始めて卒業するまでの3年間であらゆるモノが作れる 様になった。
自分に合ってたんだろう…店の料理も任されたし結構評判が良かったりした。
「…ってこんなに作ってどーすんだっつーの…誰が食べるんだよ…」
テーブルの上に何皿も並べられた料理を見て我ながら作り過ぎた事に気が付いた…
オレは自分で作るくせに食べる量はそれ程多くない…
「どーすっかな…」
使ったフライパンを流しに置きながら考えた…

「うわーっ ! おいしそーっ!! 」
「 ! 耀くん!? 」
声に振り向くと耀くんがテーブルの椅子に座ってオレの料理を食べたそうに見つめていた。
「食べていい?椎凪。」
思いっきりの笑顔でオレに聞く。
「え?…うんいいよ。」
「いただきまーす。」
パクリと一口ほお張る。
「おいしーっ!! オレ椎凪の作ってくれる料理ぜーんぶ好きだよ。おいしーんだもん。」
本当に美味しそうに口をモグモグさせてオレの料理を食べる耀くん…
そんな耀くんをオレは 初めて見たんだ…思わず顔がほころぶ…
「たくさん食べてね!耀くん。」
「うん。」
「オレ耀くんの為にもっともっと料理上手くなるよ。」
「うん。オレうれしー!」

こうやって椎凪の料理の腕が上がったのでした。

オレと耀くんはいつもの如くベッドの中。
「もービックリしたよ。 いきなり耀くんいるから…」
耀くんの顔をしっかりオレに向けてキスをした。
「オレも気が付いたらここにいたんだ…ごめんね…突然で…」
「いいんだ… 会えるの嬉しいから。」


こんな突然現れる耀くんだけど…オレは変に思う事は無い…
会えて本当に嬉しいから…毎日一緒にいれたら…
他の子を相手に する事なんてなくなるのに…
オレは耀くんを愛してる…でも…一人になるとその事は忘れてしまうから…他の娘を抱く…
でも…耀くんはその事を責めたりしない…

「椎…凪…椎凪…あ…」

「何?耀くん…」

「愛してるよ…椎凪…
椎凪…は…オレの事…愛してる…?」

「愛してるよ…誰よりも…
耀くんだけを…愛してる…」

「オレ…うれしい…椎凪…んっ…」
オレ達は…お互いのその言葉で…
さらに激しく…愛し合う…

オレと耀くんの会話は不思議だ。
耀くんはどうやらオレ達の先の話をしているみたいなんだけど…それを疑わずに信じているオレ…
本当の事だと思えるのは何でなんだろう… 耀くんの言う事だから信じられるのかな…
ただ憶えていられるのは2人が会っている間だけ…オレ一人だと思い出す事が出来ない…
それも不思議だ…

今…椎凪は24歳… もう少し…あともう少しでオレ達出会えるよ…椎凪…


突然のにわか雨…
大粒の雨が容赦なく降っている…オレは傘も無く…雨宿り出来る場所を探して走った。
何とか建物のちょっとした屋根に入り込んだ。

「ったく…まいったな…ビチョビチョじゃんかよー…くそぉ…」
オレは言っても仕方なかったが言わずにはいられ なかった…
「雨が降るなんて言ってなかった…」
「じゃねーかっ!!」 「じゃない!!」

セリフがかぶった?
「 ! 」「 ! 」
見ると隣にいつの間にかびしょ濡れの女が立ってて…
「くしゅんっ!!」
と…くしゃみをした。


さっきの場所から程近いホテルの浴室…
お互い身体を あっためようと2人でシャワ−を浴びてる…
「んっ…んっ…ん!!ああっ!!…」
シァワーを浴びながらオレ達は絡み合っていた…
だって…その方が早く身体が あったまるから…
オレが彼女の身体を抱き上げて…思いっきり上へ突き上げる…
その度に…オレに回した彼女の腕に力が入って指先がオレの身体に食い込んでる…
そんなに…耐えられないのか?
いつも…どの子でも…そう思う…

オレは女の子を抱いてて自分を見失った事は無い…頭の中が真っ白になって…なんて事も無い…
だからいつもどこか余裕があって…そんな事を思ってしまう…

「あっ…あっ…あっ…んっ…」
「少しはあったまった?」
もう少しと言う所で耳元でそっと 声を掛けた…彼女は身体をビクッとさせた…
「う…ん」
「もっと…あったまる?」

「あっ!あっ!あっ!だっ…だめっっ!!」
彼女がさっきよりも 激しくなった…


 「くっ…うっ…んっ…」
 強引な体勢で彼女の口をオレの口で塞ぐ…
 「んっーー…はぁっ…もっ…もう…だめ…
 お願い…もう…やめっ…」
 「やだな…まだまだこれからだよ…」
 「え…?」
 オレは更に体勢を変えて彼女を 攻めた…
 「…っく…やぁ…あっ…もー…ヒドイ…人…」
 朦朧としながら彼女が呟く…
 「それって…褒め言葉?」



珍しく終わった後 ベッドで横になっていた…
彼女がオレの上で動けなくなって…流石にどかして起き上がるには申し訳ないと思ったから…



「ねぇ…名前教えて…」

オレの首にしっかりと腕を絡ませて
上目遣いで聞いた。

「知る必要ないだろ?」

「何で?」




「君とはこれ一度 きりだから。もう会う事も無いよ。」
オレは彼女を優しくどかしてベッドから降りた。
「だって…あなたの事…気になるんだもの…好きになったのかな?」
「身体の相性がいい子はそう言うね。でもオレはそんな気無いから。」
乾いたシャツに袖を通しながら素っ気なく答える。
「遊んでるんだ?」
「んー…別に したい子としてるだけ。君ともしたかったからしただけ。
それ以上何も求めないし…求められたくも無い。」


オレは着替え終わると同時に部屋を出た…


数日後…
聞き込みの最中…昼まっから大喧嘩してるカップルが一組。
喧嘩というより男が女に因縁を付けてるといった感じ。
気を使って一緒にいた同僚が間に 割って入った。
んなの放っときゃあいいのに…疲れんな…
オレ達が刑事だとわかると男はバツが悪そうにその場からいなくなった。
「大丈夫かい?」
「ええ…」
女の方もオレ達に間に入られて迷惑そうだった…刑事と知ったから余計か?
「なんなら被害届でも出すか?」
えー…何余計な事言ってんだかね… オレは呆れた…
どう見たってこの子は迷惑がってるだろ…?
「大丈夫だから…もう…」
オレを見たその女は…あっ!って顔した…
オレも同じ…あー…でもオレは 「ちっ」…かな?


「刑事ね…椎凪義彦さんか…なんだかねぇ?」
まったくと言う様な顔をしてオレに警察手帳を返した。
「はー最悪…」
本当にそう思った。

「寝た相手に正体バレるなんて…初めてだよ…」
「あなた…本当に上手くやってんのね…」
と呆れてる…

『黙っててあげるからもう一回…相手してよ…』

そう彼女が申し出て…どうやら後腐れ無さそうだったからオレも話しに乗った。


「腐れ縁って…やつかな…別れても…すぐ戻って来て…」
ギシッ…
「その上…すごい…ヤキモチ妬きで…んっ…」
ギシッ…
「今日も…勝手に…勘ぐって…あっ…自分勝手な奴…でさ…」
ギッ
「サッサと別れればいいのに…」
オレは彼女を攻めながら言った…オレからしてみたら信じられないから…
「言ったでしょ…腐れ…縁って…ああっ…」
「じゃあ…オレとこんな事してて…いいの?」
ワザと辛い体勢にずれて攻めた…
「んっ…ああっ!!も…う…ハァ…そうね…いつか…殺されちゃうかもね…ハァ…」

オレに攻められていたからなのか…その時の 彼女のちょっと辛そうに微笑んだ顔が
何とも印象的だった…


それから…間もなくだった…男女の縺れの…殺人事件…
現場に行くと…被害者の顔に見 覚えがあった…
殺した男は返り血を浴びて…放心状態で女の傍に座り込んでいた。
包丁で女を刺したんだ…

正体バレたのも初めてだったけど…寝た相手が 殺されたのも…初めてだな…

だからこんな奴とはさっさと別れちゃえばいいのにさ…
世の中はとことん不公平なんだから…上手くやらないと自分がバカをみる…
世の中って…そう言うもんだよ…

オレはそんな捻くれた事を思いつつ…
もう二度と目を開けることの無い彼女を黙って見つめていた…