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 * R15のイラストあり。要注意! *

椎凪 過去編。 08



「大丈夫なの…?」
「ええ…ハァ…ハァ…まだ休み時間だから…」
「そ?」

そう言ってオレの下で必死に声が出るのを堪えてる白衣の天使…
「白衣の天使と昼間からこんな事出来るなんて…オレ幸せものだね。」
オレは彼女の胸に顔をうずめながら舌で遊んだ…
「あっ…この個室…高すぎて…誰も… 入らないの…あなたも…大丈夫なの…?」
「オレ?オレは平気。やる事やってるから。」
「仕事なに?…本当に…保険の…調査員…なの?」
「本当だよ… 調べんの得意。」
彼女にキスをしながら嘘をつく…
「君の情報も大いに役立つよ。ありがとう。だからお礼したいんだ。」
ギシッ!
病室のベッドが 大きく軋んだ。
「んっ…あっ…!!!」
「だめだよ。そんな大きな声出したら…見付かるよ…くすっ」
「だって…こん…な…激し…ああっ…!」

オレはしばらくの間白衣の天使の身体と初めての病院のベッドの感覚を楽しんでいた。



署に戻って報告した。
「愛人の住んでる所わかったよ。」
とある殺人事件の容疑者がかくまわれてると思われる愛人の家…
上手く付き合ってたらしくて誰も知らなかった。
唯一知ってるとおぼしき元彼女を探してナゼか そいつに義理立てして
何も話してくれないもんだから違う方向から攻めてみた。
バレたら懲戒免職ものかな?
だからコレはオレと彼女だけの秘密。
まぁもう その娘とは会う事無いと思うけど…

「何?」
「本当か!!」
オレの話を聞いてバタバタと他の刑事達が走って行った。
後は君達にお任せ。


マンションに戻ると部屋の鍵を無造作にほうり投げる。

…重い気分でシャワ−を浴びて…カーテンを開けて窓の外を見た…

…また…夜が来た…
…オレは夜が嫌いだ…


仕方なく…簡単な夕飯を作る。
もうそろそろ出来上がるって頃…見計らった様にあいつが来る…

ピンポーン! ピンポーン!


「おっす!ご飯食べに来てやったぞ。」
ドアを開けると隣の部屋の『都筑ひな子』が箸と茶碗を持って立っていた。
確か高校2年だとか言ってたよな…
「別に呼んでないけど?」
オレは半ば諦めながらそんな事を言ってみた。

「ったく…自分で作って食べろよ。」
こいつの母親は昼夜働いてんだよな… 母一人子一人ってやつ…
「だってヨッシーの方が上手だし美味しいんだもん。
うちのお母さんよりヨッシーの方が料理上手だよ。」
山盛りのご飯を頬張りながら言う。
「そのヨッシーってやめろ。」
そんな呼び方されたの初めてだ。
「だって慶彦でしょ?慶彦だからヨッシー」
「………」
どうやら直す気は無いらしい… オレは呆れて言葉も無い…
「一人で食べるより二人の方が美味しいよ。
ヨッシー彼女いないんだから私が相手してあげてんじゃん。」
もっともらしく言い張る。
「オレガキに興味ない。それにいないんじゃなくて作らないの!」
「ヨッシー遊び人だもんねぇ…本当…仕事何してんの?」
「だから保険の調査員だって。」
「怪しいんだよね…」
目を細めてオレを見る。
「別に信じなくてもいいけどね…」
本当は嘘だから…
「食ったら帰れよ。年頃の女の子が夜遅く男の部屋に居るもんじゃないからな。」
「やっぱり私の事襲うつもりなんだっ!!ヨッシーっ!!」
冗談だとは分かっていたがその驚き方にムカついた。
「 誰が襲うかっ!!ドアホっ!!!早く飯食って 帰れ!! 」
「 やだーっっ!!食後のコーヒー淹れてよぉ…ヨッシーっ!! 」
「 ヨッシーって言うな!金取るぞっ!!ひな子っ!! 」


ヨッシーが家にいる時の行動パターンは分かってる。
この時間に外出するのは買い物だもん。
だから私は一緒にくっ付いて行く。
邪魔だと言われるけど結局 連れて行ってくれる…
しかも私の好みのおかずの材料を買ってくれる…何だかんだ言ってもヨッシーは優しい。

スーパーからの帰り道…私は楽しかったのに… それを中断する人が現れた…

「南田さん…」
「あら…今日は…椎凪さん。」
何度か見かけた事のある人…近所に住んでて…絶対ヨッシーに好意を抱いてる…
と…私は思ってる。
「お久しぶり…どうですか?少し寄って行きません?コーヒーご馳走しますよ。」
そう言ってヨッシーの腕に自分の腕を絡ませてる…
しかも上目遣いにヨッシーを見上げて…
ヨッシーはと言うと無言で南田さんの目を見つめ返してる…暗黙の了解…?

「ひな子先帰ってて。」
「えーっ…」
「ひな子!」
「もー……」

ヨッシーの…スケベ…



南田さんの部屋…確かにコーヒーを淹れてくれたけど…
2人分淹れる前にベッドに押し倒して抱き合った…


同じ子と…何度もなんてオレにしては珍しいけど…
家が近かったのが後からわかった…
まぁ…お互い…
と言うか彼女から誘われれば相手をする…
一人にのめり込まないのを彼女は分かってて…
必要以上にオレを求めたりしないから…
お互い…暇つぶしの相手って トコかな?





ひな子はそんな大人の事情は分からないらしく
オレと彼女が怪しい関係に発展しないか心配してくれてるらしいけどね…

彼女が…オレの上で 乱れる…
オレは反対に彼女を組み伏せて…彼女の弱い角度で攻める…
案の定…それから程なくして…彼女はオレの下で果てて…しばらく…動かなかった…

オレはそんな彼女をお構い無しに服を着た。
「ごめん…ね…誘っといて…先にバテちゃった…」
髪をかき上げながら恥ずかしそうにオレに言う。
「別に気にして ないよ。じゃあね。」

結局オレはコーヒーを飲まずに彼女の部屋を出た。


あれから2時間…ヨッシーは帰って来ない…
そりゃあヨッシーは大人の 男だし私は彼女でも何でもないから…
口出しするのも変だけどさ…
あー…なんか…辛いなぁ…浮気されたみたい…
そんな事を思っているとヨッシーの玄関でカギを 開ける音がした。
慌てて自分のうちの玄関を開けるとヨッシーと目が合った。

「ヨッシーのスケベ!!不潔だよっ!!」
「うるせーよ。ガキは黙れ。」
そう言ってさっさと自分の部屋に入っていった。


数日後…私はヨッシーに頼んで一緒にコンビニに買い物に行った。
「何でオレがお前の買い物に付き合わなきゃいけないんだよ…」
ヨッシーがブツブツと文句を言う。
「こんな時間に女の子一人コンビニに買い物に行かせるつもり? 襲われたらどうすんだよっ!!」
今は夜の10時を少し回ってる…でもどうしても甘いものが食べたくて誘惑に負けた。
「お前の買い物だろ?オレには関係ない じゃん…」
更にブツブツとウルサイ。
「もー…素直に一緒に行ってやるって…言えないのかよっ!!」
「だから…来てやってんじゃん…」
そんな事を言いながらコンビニで買い物をして…家に帰ろうとした…その時…
道の先で…何だろう…喧嘩?

「きゃっ!!」

女の人が一人勢い良く道路に 転がった。
「ちょっと!何するのよっ!!」
その一人を助ける様にもう一人…駆け寄ってきた。
「え?南田さん??」
道路に倒れこんでる人をかばう様に 南田さんが身体でかばう。
「ふざけんじゃねーぞ!良美!」
暗がりから男が一人…
「テメェ誰に文句言ってんだよっ!
テメェなんかなオレが拾ってやんなきゃ 誰も相手にしねーんだよっ!
親に捨てられたお前をオレが付き合ってやってんだろ?ありがたく思えよっ!!
浮気ぐれーでガタガタ言ってんじゃねーよ!」
「だからってこんなに殴る事ないでしょ!!」
南田さんが反論する。
「うるせぇ!!ほらっ!立てよっ!!オラッ!!」
「やめて…」

ド シ ャ ッ!!

その瞬間…男の人の身体が飛んで…ちょっと離れた道路の上に落ちた…
「ヨッシー???」
「椎凪さん!?」
どうやらヨッシーが男の人に蹴りを入れたらしい…



「すげームカつく…
そーゆーセリフ吐く奴は
親がいたって事だよな…」


ヨッシーが…静かに 言った…


「ねえ…南田さん…
 あいつ…殺していい?」


「ヨッシー…」



その後は良く憶えていない…
ずっと殴り続ける ヨッシーを何とか私と南田さんで止めた…
こんなヨッシー見た事が無い…でも…私が一番忘れられないのは…


その場から立ち去る時の…静かに微笑んだ ヨッシーの笑顔…

ゾッとするほど…異常な笑顔だった…


ヨッシーが玄関の鍵を掛ける…それを私はジッと見ていた…
「今度はどこ?」
「 東京。」
仕事で転勤になったんだって…仕方ないけど…さ…
「ちぇ…もうヨッシーの料理食べれないのか…」
「少しは作れる様になれよ。」
「……ヨッシー…ぐずっ…」
私は悲しくて…半べそ…
「ったく…泣くなよ。元気でな。」
「うん…」
「じゃあな。ひな子。」
「う…ん…」

そう言ってヨッシーはバイバイって手を振って階段を下りて行った…


新しい街…ここに来て…半年過ぎた頃…
仕事が終わって部屋に帰ると 玄関の前で耀くんが立っていた…

「 耀くん!? 」
「椎凪…」
椎凪が慌ててオレを部屋に入れてくれた…

椎凪が…オレと知り合った頃の 椎凪になった…

「どうしたの?初めてじゃない?オレの事待っててくれるなんて…はい。コーヒー。」
いつもはオレの前に突然に現れるのに…
「椎凪…良く聞いてね…」
オレはコーヒーを受け取りながら椎凪に優しく言った…

「オレ…もう…椎凪に会いに来れない…」

「 ……えっ!?…なっ…なんでっ? 」
やっぱり…椎凪は動揺してる…

「オレの事嫌いになっちゃったの?」
「ちがうよ…」
「じゃあ他に好きな人出来たの?」
「ちがうよ…」
オレは動揺する椎凪の顔をそっと両手で支えてオレの正面に向かせた…



「もうすぐ…オレと椎凪が出会うから…」

「 え? 」

「椎凪…オレは初めて椎凪に会うんだ…

だから初めは大変かもしれないけど…

本当は椎凪の事好きだから…」

言ってるオレが…涙が零れてくる…





「絶対…オレを見つけて…会いに来てね…
そしてオレを好きになって… オレを…愛して…」

椎凪が黙ってオレの顔を真っ直ぐ見てる…オレの腕を…掴んで…

「オレは…椎凪がいないと…愛してくれないと…生きていけないから…
オレは誰のものでもない…椎凪のものだから…」

椎凪の瞳からも…涙が零れる…




 「約束だよ…椎凪…オレを見つけて…」

 「わかったよ…耀くん…約束する…

 絶対耀くんを探し出すよ…そして必ず好きって言う…

 そして愛してあげるから…待ってて…」

 オレ達は…お互いを信じて…深い深いキスをした…

 きっと…もう一度…出会える事を信じて…





「……ん…」

椎凪に起こされて…目が覚める…
椎凪がカーテンを開けて…朝日が眩しい…
「どうしたの?」
「んー…うん…なんか…椎凪が 夢に出て来たみたいなんだけど…忘れちゃった…あふ…」
「オレが?どんな夢だったのかな?」
「んー…分かんないけど…なんか嬉しい夢だったみたい…」
「そっか…それなら良かった。」
オレはベッドに乗り出しておはようのキスを耀くんにした。
リビングに向かう耀くんの後姿を眺めながら…オレは思い出していた…
あれは耀くんが右京君の所から戻って来た後だ…
オレは夢を見た…
ずっと…耀くんがオレに会いに来てくれてたんだ…なぜかその記憶はずっと忘れてた…
高校の時も…刑事になった時も…ずっとオレに会いに来てくれてた…
夢の中の出来事かも知れないけど…全部思い出した…


夜中に…夢を見て目が覚めた…
なんだ?今の…?耀くんが…いた…え?…どっちが夢…?こっちは?え?え?
オレはどっちが夢でどっちが現実か分からなくなって…少しパニックになった…
横を見ると耀くんがオレの腕枕でスヤスヤ眠ってた…
それを見て…こっちが現実なんだと理解した…

耀くん…ああ…オレ…ちゃんと耀くんの事…捜し当てたんだ…
約束通り…好きになって…愛し合ってる…耀くん…だから耀くんなんだ…
だから耀くんしか見えなかったんだ…
オレ…すごく嬉しい…嬉しいよ…耀くん…
ありがとう…耀くん…オレに会いに来てくれて…

オレは寝てる耀くんを抱きしめて…何回もキスをした…何回も…何回も…

「…ん…?どうしたの?椎凪…?」
耀くんが目を覚ました…当たり前だけど…
「すごく嬉しい夢を見たんだ…」
「夢?」
その間もオレはずっと耀くんにキスをし続けた…
「だから耀くん…愛してるよ…」
「なにそれ?…まあいいや…」
そう言ってオレに腕を回してくれた。
「オレも愛してるよ。椎凪」
「うん…」


「本当に憶えてないの?」
朝ご飯を 頬張る耀くんにもう一度聞いた。
「うん…多分椎凪の夢なんだよね…」
不思議そうな顔の耀くんを見つめながらオレは思わず微笑む。


きっと…夢で…オレに会いに行ってくれてたんだよね…耀くん