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「邪魔をするなら公務執行妨害で逮捕しますよ。」
「 ああ? 」

何でこんな事になってるのか…
『TAKERU』のビルを所属してるモデルの女の子と 一緒に
祐輔と僕と3人で出て来た所に
和海ちゃんが内藤さんとやって来て…
一緒にいたモデルの『寺本優』をとある殺人事件の参考人として
警察署に連行すると 言う事で来たらしいんだけど…
その子が祐輔に抱きつきながら怯えるもんだから…
祐輔が見かねて間違いじゃないのかって…言っただけなのに…

祐輔も和海ちゃんも睨み合ったままだ…
もう僕の事も…内藤さんの事も…
ましてやモデルの寺本優の事なんて…2人共眼中に無い…

「オレとやるってのか?」
「仕事ですから…」

更に2人はヒートアップする気配…

「どうしちゃったんですか?和海ちゃん…」
「さあ…?」
内藤さんもお手上げ状態。
「止めなよ2人共…和海ちゃんどうしたの?祐輔も…」
「慎二は黙ってろ…」
「でも…」

「いいぜ…相手になってやるよ…」

あー…もういい加減に… なんて思ってると2人共構え出した…
もう…止められない…か…
仕方なく2人から少し離れた…
2人はやる気満々だ…ホント…和海ちゃん…どうしたんだろう…


本当は…こんな事…するつもりなんて…無かった…
でも…勝手に…言葉が止まらなくなって…祐輔さんを怒らせた…
祐輔さんは…何とも思ってないかもしれないけど…
付き合い始めたか頃から…そうだった…昨日だって…だから…

「はあああっ!!」

和海ちゃんから仕掛けた…祐輔は軽く和海ちゃんの突きをかわす…
気が付くと周りには人が集まり始めて…遠巻きに2人のバトルを眺めてる…

「ちゃんと手加減してるみたいだね…新城君。」
内藤さんが感心した様に呟く…
「はぁ…」
そうじゃなくて…

どんどん激しくなっていく2人…遂に祐輔の蹴りが和海ちゃんの右腕に決まった…
「…っつ…」
よろけながら…でもまだ やる気満々みたい…

「もー祐輔いい加減にしなよっ!!
女の子に蹴り入れるなんて…和海ちゃんも止めなよっ!!」
「聞いちゃいないみたいだね…」
「もー内籐さん…そんな落ち着いてないで…」
「だって…どうせ止めないでしょ?あの2人…深田も結構頑固だから…」
「…そうですけど…」
その時道路の 段差で足が止まった祐輔に和海ちゃんの蹴りが決まった。
祐輔は腕を使って止めたけど…
「あ…入ったね…」
内藤さんが暢気に解説した…祐輔の瞳が変わって…
殺気のオーラまで出始める…
「あっ…祐輔のスイッチも入っちゃったみたい…」

それから勝負はあっと言う間に着いた…
祐輔の素早い蹴りの連続に和海 ちゃんが追い詰められて…
背負い投げで道路に叩きつけられた!

「 ……ぐっ… 」

「あー…やちゃったよ…もう…女の子投げ飛ばすなんて…しかも… アスファルトに…」
僕も内藤さんも黙って成り行きを見守っていた…
今出て行ったら祐輔に殴られそうだったし…

和海ちゃんは起き上がったけど…
そのまま 道路にペッたりと座ったままで…手を着いて俯いていた…
祐輔が近寄って…和海ちゃんの前に屈んだ…

「まだやんのか?」

その声は…優しかった…
「……ゆ…」
「…ん?」

「 祐 輔 さ ん の バ カ ァ ッ!!!」

「 !? 」

… バ ッ シ ーーーー ン !!!

思いっきり祐輔の頬に和海ちゃんの平手打ちが入った!

「……!!」
僕は言葉を失った…
「もろ…入ったね…」
内藤さんが感心した様に言う…
殴られた祐輔は殴られたままの姿勢で固まってる…
和海ちゃんはまた下に俯いて祐輔の事は見ていない…

「…ってーなっ!!」
祐輔が和海ちゃんを睨んだ。

「うっ…ひっく…」
和海ちゃんが泣いてる…?

「ゆ…祐輔さんなんか…私の気持ち…わからない…クセに…ひっく…」
涙がポロポロ零れてる…
「?」
「祐輔さんの周りって…いつも綺麗な人がいて…
私が付き合ってるってわかると皆祐輔さんには似合わないって…
祐輔さんには…もっと…他の人が…いるのにって… いつも…言われるの…
初めて会うモデルの人とか…綺麗な…女の人に…いつも言われる…
私は…仕事だったから…祐輔さんに会えなくても…仕方ないって思う時…
たくさんあるけど昨日だって…祐輔さん…綺麗な女の人と…歩いてた…」

昨日…?ああ…祐輔のファンだって子の相手させたんだよな…
常連のお客さんだから 邪険にするなって言ってあったから…それ…見ちゃったのか…
あの子…祐輔がお気に入りだからなぁ…

「祐輔さん…その人に何されても…全然…平気で…
いつも…もっと綺麗な人…相手してて…私なんか…祐輔さんに…ふさわしくなくて…
他に…もっと…祐輔さんに…ふさわしい人いるんじゃないかって…だから…私…うっ…」

やだっ…私…何言ってるんだろ…もう訳わかんない…ぐずっ…
でも…本当の事だから…私なんかより…もっと…

「和海ちゃん…彼女達にヤキモチ… 焼いちゃったんだね…」
僕の一言に和海ちゃんの身体がピクッと動いた…

「……ったく…余計な心配しなくていいんだよ…」
祐輔がそう言って和海ちゃんの 頭を撫でて立たせた。
「いつも言ってんだろ?オレが惚れてんのは和海だけだ…
オレにとって女は和海だけなんだよ…他の奴はオレには関係ねー…
だから… 何も心配するな…」
「私の事…怒ってないんですか?」
和海ちゃんが驚いた顔で祐輔を見上げてた。
「…? ああ…」
祐輔は不思議そうな顔をしてそう返事をした。

「へぇ…怒ってないんだ…僕だったら殴り返されてるよね…きっと」
祐輔そう言う所容赦無いから…
「随分丸くなったね…」
祐輔の事を中学の時から知ってる 内藤さんが感心して言った…


「スミマセンでした…慎二さん…内藤さん…」
「いえいえ…気にしないで…
ただあんまりにも過激なケンカなんでもう しない方がいいかもね…」
僕は苦笑い…
ホント野次馬は増えるし…あれ以上続いたら警察ものだよ…
「あ…すみません…本当にごめんなさい…」
ひたすら頭を下げる和海ちゃん…しかも顔真っ赤っか…
「あ…でも彼女は本当に署まで来てもらいます…」
「あ…はいはい…」
僕が返事をして彼女に目で合図した。
彼女も2人のバトルを見て気が抜けたのか素直に従った…
「和海ちゃん…言い訳するわけじゃないんだけどさ…
女の人相手にするの…祐輔にとって仕事なんだ…
だから…ゴメンネ…嫌な思いさせて…
でもね…祐輔って自分が興味持った事以外本当に無関心だからさ…
何て言ったらいいのかな…彼女達に何されても…
祐輔にとっては何もされてないのと同じ事なんだよ…ホント無関心なんだよね…
だからそんな祐輔が和海ちゃんと付き合ってるって事は
和海ちゃんは特別って事だから…もっと自信 持って。」
和海ちゃんに笑いかけながらそう言った…
それは本当の事で祐輔は彼女達の色々なアプローチには無関心だ…
だから裕輔に相手をさせてる…いちいちそんなのに
なびく様なら僕がそんな事させないし僕が祐輔を気に入るわけが無い…
だから祐輔は僕のお気に入りなんだから…

「はい…ありがとうございます…」

本当…特別なんだよね…君は…
祐輔にとって…特別な女の子なんて…出来て欲しくなかったよ…
僕は誰にもわからない様に…溜息を一つついた…

「お互い今日は見たくないもん…見ちゃったかね…」
内藤さんが小さな声で何か呟いた…
「え?」
「いや…別に。」
笑って誤魔化した…?
「深田…行くぞ。」
「あ…!はい。それじゃあ…祐輔さん… また…」
2人が寺本優を連れて車に戻る。
「祐輔…僕達も行こう。」
言いながら祐輔を見ると祐輔はいつの間にか和海ちゃんの傍にいた…

祐輔さんに腕を掴まれて引き止められた…
そして…私の耳元で…囁く…
「…………」
一瞬…言ってる事がわからなかった…
だからしばらく考えてしまった…
「え?」
聞き返した時はもう祐輔さん は慎二さんと歩き始めてた…

祐輔さん…今…
『 結婚するか 』って…言った…?


「なあ?」
「ん?」
「ジィさんとこって指輪作ってたっけか?」
祐輔が突然言い出した…
「指輪?あるけど…なに?和海ちゃんにプレゼント?」
祐輔がそんな事を言うなんて珍しいと思った。
でもさっきの騒ぎの事で和海ちゃんに プレゼントしよう
なんて思ったのかと思ったから…

『TAKERU』の店に戻って指輪を探す…
「そーだね…コレなんかどう?和海ちゃんのイメージに合うと 思うけど?」
僕はショーケースから指輪を一つ取って祐輔に見せた。
「それって結婚指輪にもなるのか?」
「え?」
今…なんて?
「だから結婚指輪だよ。」

「だからじゃなくってっ!!!結婚ってどう言う事っっ!!! 」

僕は祐輔の肩を鷲掴みにして詰め寄ったっ!!
僕の突然の行動に祐輔がビックリしてる…

「しようと思ってるんだけど?何だよ?」
「なっ…もー一体いつからそんな事になってんの?しかもサラッと言っちゃって!!
どーゆー事?ちゃんと説明して! ま…まさか!?赤ちゃん出来ちゃったとか? 」
僕は慌てまくっていた…
「んなわけねーだろ…多分。」
「もー多分って何?じゃあ何で急に?何かあったの?」
「別に?ただ和海と結婚したいだけ。」
「………!!!」

もー本当にサラリと言ったなぁ…!!
しかも照れずに言ってる所が余計腹立つ!本気だな…

「ダメだよ!早すぎるだろ?祐輔幾つだと思ってるの?
それに祐輔まだ学生だろ?大学の後は院に行く約束だろ?」
「別に結婚してたって行けるだろ?何か問題あるのか?」
不思議そうに祐輔が僕に聞く…

「 あるよっ!!とにかくあるのっ!! 」

僕にあるんだよっ!!……もー…なんて事…!!
「慎二…」
超不機嫌な僕に祐輔が声を掛ける。
「なに?」
思いっきり不機嫌な返事をした。

「オレが和海に惚れたんだからな…わかってるよな…?」

「…!!……」
ジッと祐輔に見つめられた…
また…そんな瞳で僕を見る…もー…ズルイんだよな…祐輔は…


結局…僕が間に入って和海ちゃんの家族と…社長を会わせる事になった…
それからの話の進みは早かった…
なんせ新城たけるの孫と自分の娘だものね…断る理由 なんて無い…
しかも社長は大喜び…元々和海ちゃんの事気に入ってたし…
取り合えず大学を卒業するまでは結婚はしないって事に落ち着いた。
だから婚約して… 何年か先に結婚って事になるだろう…


そう…でも…祐輔は『 結婚したい 』って言ったんだ…

安心した僕が甘かった…