125





「彼女さ〜〜〜〜ん!!」

大きな声で呼ばれて振り向いた。
オレの事かは分からなかったけど大きな声で叫ぶもんだから
オレの周りにいた人はみんなその声の方を振り向いた。
見れば制服姿の女子高生が手を振って走って来る…あれは…

「じゃなくて…耀さ〜〜〜〜〜んっっ!!!」

ええっっ!!やっぱりオレ?オレの事??
もう周りの視線がオレに集まる…恥ずかしい…
だから寄り道をしようと喫茶店に誘われても断る事が出来ずに
彼女の言われるがままお店に入って向かい合って座る事になった。

「こんな所で耀さんに会えるなんて嬉しいなぁっっ!!」
ニコニコ顔の彼女…確か…彩夏ちゃん…
「あれから耀さんに会わせてって椎凪に頼んでも減っちゃうからダメって
会わせてくれないいだよ!椎凪って時々ケチなんだよね。減るわけ無いのにさっ!」
「…はは…」
もう笑うしかない…確かオレを会わせたくない時の決まり文句だった様な…
「あの…耀さんに聞きたいんだけどぉ…」
「はい?」

最初に会った時も思ったけどこの子って凄い積極的…
と言うか人見知りしないんだ…ちょっと羨ましいかったりする…

「椎凪と付き合ったキッカケって一体何だったの?」
「…!!…ええ??」
いきなり…その質問??
「椎凪に聞いても教えてくれないし…でもあたし2人が理想なの。」
「え?」
「椎凪みたいな相手絶対見つけるんだ。だから2人の事色々知りたいなぁって…
だって2人ってすっごく仲良いしラブラブだし…お互いの事大事にしてるでしょ?」
「………」
彩夏ちゃんがとっても嬉しそうにそう言ってくれた。
「だから教えてっっ!!お願いしますっ!!椎凪には黙ってるから!ね?」
「…は…はぁ…」
ガシッと手を握られた!
「でも…普通だよ…きっと…」
「それでも良いからっ!!お願いっ!!」
「…えっ…とぉ…」


「えーっ!!じゃあ会った次の日には一緒に暮らしてたの?」
「椎凪が言うにはその前に1度オレに会ってるって言うんだけど…
オレは知らないんだよね…」
「へー…」
「オレその時1人暮らしだったし…椎凪が一緒に暮らしたら毎日美味しい
料理作ってくれるって言うから…思わず…」
「へー椎凪って料理上手なんだ。」
「うん!椎凪料理作るの上手だし椎凪の作ってくれた料理って美味しいんだよ!…ハッ!!」
しまった…つい…
椎凪の料理の事となると思わず張り切って話しちゃう…恥ずかしい…
オレは顔が真っ赤!!
「可愛い〜〜〜耀さん。顔真っ赤!!そんなに椎凪の料理好きなんだ。
いいなぁ…1度でいいから食べてみたいなぁ…」
「じゃあ今度食べにくれば?椎凪に話しとくよ。」
「え?ホントに?やったぁ!!耀さんから言ってくれれば椎凪もうんって言うよね。」
「多分大丈夫だと思うけど。」
「ふふ…楽しみぃ…」
「………」
「あ…誤解しないでね…あたし椎凪の事は好きだけど恋愛の好きとかじゃないから。
憧れって言うか…兄貴って言うか…
上手くいえないけどホント心配するような事じゃないからっ!!」
「…うん…」
何だか一生懸命言うもんだから思わず可笑しくなちゃった…
椎凪って年下に好かれるもんな…
「で?それから?」
「え?」
「椎凪どんなアプローチしてきたの?だってその時は付き合ってなかったんでしょ?」
「…え?どんな??」




「 ♪ ♪ ♪ 」

大学からの帰り道…鞄の中の携帯が鳴った。
オレの携帯が鳴るなんて珍しい…オレには携帯に掛けて来る人なんて
数える程しかいないから…でも…最近はずっと…殆んど1人だけだ…
そんな事を思いながら携帯を出すと…

「やっぱり椎凪だ…」

椎凪がオレの所に下宿し始めて早1週間…
なのにもうオレ達はずっと昔から一緒に暮らしてるみたいに慣れてた…
きっと椎凪のオレに対する接し方に寄るものだとは思うけど…

人一倍人見知りの激しいオレなのに椎凪にはナゼか
平気で文句を言ったり…怒ってみたり…
祐輔や慎二さんとも違う…素直なオレを見せる事が出来るんだよな…
すっごく不思議でたまらない…

送られて来たメールを開く…
「…は?」
写し出された文字を見て思わず疑問符が出た。

『 耀くん!デートしよう! 』

毎日の様に送られて来る同じ文章…
多い時には1日に何度もこんな感じのメールが来る。
「もー何言ってんだか…『 しないよ! 』 っと…」
オレはいつもと同じ様に返事のメールを返す。
いつもそんな事の繰り返し。

「 ♪ ♪ ♪ 」

「うわっ!!ビックリしたっ!!」
返信を送った傍から携帯がまた鳴った。

『 迎えに行くね。 』
 
「はぁ?人の返信見てないの???」
そんな事を思った瞬間…目の前が暗くなった。

「耀くん!迎えに来たよ!!」

「 !!!! 」

ヒョッコリと椎凪がオレの目の前に現れた!
「 うわっ!!!ビックリしたっっ!!! 」
オレは思いっきり後ろに仰け反った。
「へへ…」
椎凪は悪戯が成功した様な顔で笑ってる。
「そ…そこにいたの?」
じゃなきゃこんなタイミングで出て来れる訳無い!!
「うん。」
素直に頷いてる…あのねぇ…
「メール寄こした意味ないじゃん!!」
オレは焦りながら椎凪に文句を言った。
「さ!行くよ。耀くん!!」
そう言ってオレの肩に腕を廻してグイグイと自分の方に引き寄せながら歩き出す…
人の事なんてお構い無しだ…いっつもそうだ…

「もう…ちょっと…椎凪!オレ行くなんて言ってないじゃんっ!!」

いつも自分の思い通りにいくと思ったら大間違いだ。
反抗してやるっ!!

「 行こう…耀くん。 」

優しい眼差しで椎凪が微笑んで言う…
オレはそんな椎凪に逆らえない…ホント不思議でしょうがない…
なんで椎凪だとこんなに平気に傍にいられるんだろう…
そんな事を思いながら2人でいつもの様に歩き出した…


「ひゃぁあああ椎凪ってばカッコイイっっ!!」
「え?…そう?」
「だっていっつも耀さんの傍にいるって事でしょ?
毎日ラブコールで…いいなぁぁぁぁ…」
「…そうかな?」

もう彩夏ちゃんは自分の世界に入っちゃってるみたいだ…
両手を自分の顔の横で握り締めて…何処か遠くを見つめてる…

そう言えばいつ頃かな…椎凪が待っててくれるのが当たり前になって…
オレも椎凪が迎えに来てくれるのが当たり前になってて…
2人で帰りながら夕飯のおつかいしたり…お店に寄ったり…外食したり…
休みの日なんか良く2人で出掛けたなぁ…
オレはそれを 『デート』 とは認めてなかったけど…
どう考えても…それって立派なデートだったよな……うん…



オレはその頃の事を思い出す…
何だか胸の中がホワンとなる気がした…