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「慎二君いる?」

『TAKERU』のお店に入るなり慎二君を探した。
「はい…?椎凪さんどうしたんです?」
「あ!冴子さんいる?」
慎二君を見るなりそう言った。

冴子さんは『TAKERU』のスタッフの一人でバリバリのキャリアウーマン。
慎二君にも一目置かれててあの祐輔が苦手な相手。
社長にも気に入られてるらしい。

「いますけど…どうしたんですか?」
「ちょっといいかな?」
「はい…ちょっと待ってて下さい。」
そう言ってから少しして彼女を連れて慎二君が戻って来た。

「はい?何か?」
「実は冴子さんに頼みたい事があるんだけど。」
「はい…」

ゴニョゴニョ…

「えーーっっ!!そんな事…大丈夫なんですか?」
慎二君が思いの外驚いてる。
「うん。ちゃんと約束してくれた。」
オレはニッコリ笑って答えた。
「私は別に構いませんけど…」
「ホントに!よかった。じゃあお願いします。」
オレは感謝の気持ちを込めてさっきよりニッコリと笑った。


「……た…確かにサービスするとは言ったけどさ…何で?こんな…」
耀くんが不服そうに文句を言う。
「約束したでしょ?卒論終わったらオレの相手いっぱいしてくれるって。
いっぱいサービスしてくれるって!」
「言ったけどさぁ…」

って言うか言わされたに近いけど…
いつもの如く椎凪がイジケてオレが折れたんだ…今更ながら後で後悔…

「だからはい!これに着替えて来てね!
今夜はいっぱいチャレンジしてもらうんだから!あはっ!!」

やっと卒業論文から解放されて落ち着いたのに…
まさかこんな事になるなんて…
椎凪のこの嬉しそうな顔から察するに今夜は相当な覚悟が必要だと悟った。


「うー…これで…いいの?」
モジモジとしながら寝室に入った。
「わあお!!」
椎凪の顔が一瞬で煌めく!
「どれどれ…」
椎凪がジリジリとオレに近付いてくる。
「もういいだろ?恥ずかしい…」
オレはキャミソールにスカートでスカートなんかちょっとでも
屈めば下着が見えちゃうんじゃないかと思える程短い丈…
思わずずっと裾を引っ張ってる…
「何言ってんの!」
「あ!」
椎凪がオレの両手を掴んで壁に押し付けた。
「じっくり見せてよ…」
「やだ…ン…」
椎凪が優しくキスをする。
そのまま首筋に唇が触れてオレは背筋がゾクリとなった…
「…あ…」
椎凪がオレの両手を押さえたままキャミソールの肩紐を口で噛んでスルリと落とした。
ぎりぎり胸の上で止まる…反対も同じ様にされてかろうじて胸の上で止まった…
「ちゃんと下着も着けてくれた?」
椎凪がオレを覗き込んでじっと見つめる。
「うん…椎凪が選んだの?」
有り得そうで思わず聞いた。
「冴子さんに選んでもらった。」
「冴子さんに?」
「流石に下着は買えないからさ。」
「もう…そこまでしなくたっていいのに…」
「やるからには…ね…フフ…」

下着姿でベッドの上に寝かされた…
「ホント…恥ずかしい…椎凪…」
オレは普段こう言う下着は着けてない…
レースの模様がたくさん付いてて色は上下とも白…
椎凪が愉しそうにオレの下着を脱がしていく…
「何でオレにこう言う下着着けさせたの?」
「脱がす為!」
キッパリ言い切ってる…
「もう絶対こう言うの着けない…」
「なんで?」
「苦しいもん…」
「はは…」
「椎凪…」
「ん?」
「オレにああ言う服…着て欲しいの?」
「まさか…此処でだけ…ね…オレの前でだけ…」
椎凪がニッコリと笑った。
「…ン…」

椎凪がゆっくりオレに入ってきて…珍しく優しくオレを押し上げる…

「あ…あ…や…ダメ…」
オレは自分で言うのも何だけど…感じやすくて優しく抱かれても
あっという間に身体中が敏感に反応しちゃう…
それに椎凪にはオレの身体の何処が一番感じるか分かってるから
やめてってお願いしてもそこを椎凪の手と舌でずっと攻められる…
何度か頭が真っ白になってベッドの上で喘いでると
椎凪がそっと近付いて耳元で囁く。

「次に着替えて…耀くん…」

オレはボーっとする頭で聞いてた。
「え…?着替える…?」
オレは火照った身体を何とかベッドから起こした。


「………」
オレは言葉も出ない…
椎凪が用意した次の服はどう見ても普通の服じゃない…
いわゆるナースの制服…頭に付けるのまである…
「何で?」
もうオレは訳がわかんない…
「えー定番でしょ?」
何の定番?
「あ!」
クルリと後ろに向かされて椎凪がすぐ後ろに立った。
「最高!」
「え?…!!ひゃっ!!」
スルリと椎凪の手がスカートの裾からオレの腿の内側に滑り込む。
「うあっ…!あっ!あっ!…」
椎凪の指が当然の様にオレの中に入って動く。
オレはもう触られるだけでも耐えられないのに…そんな…やだ…椎凪…
「そそるなぁ…」
椎凪がオレを抱え込んで動けない様にしながら更に激しく指を動かすから…
「やっ…」
ダメだ…立ってらんない…
後ろ向きのまま椎凪の首に腕を廻してしがみ付いた…


「耀くん…」
ベッドの傍で膝を着いて上半身だけベッドの上に投げ出してる…
両手はさっきからシーツをぎゅうっと握り締めてる…
ナースの制服はほとんどはだけて…でも脱がされてはいない…

「裸にナースの制服なんてヤラシすぎ…耀くん…」
背中の上で椎凪がオレを押し上げ続けてる。
裸って…椎凪が自分で何も着けないでそのまま着てって言ったんじゃないか…
「…ン…椎…凪…こう言う趣味あったの…アッ…」
「無いよ。でも耀くんにはやって欲しかったから。」
それを『趣味』って言うんじゃないのかな?なんて考えちゃた。
「随分余裕だね…耀くん。」
「え?」
「最後まで持たせようと思って加減してたけど必要無かったかな?」
「え?…あ…そんな事…うそ…椎凪?」
脇の下から腕を差し込まれて無理矢理身体を起こされた。
「…っつ…あっ!!」
胸元はボタンが外されてて胸が思いっきり見えてる…やだ…恥ずかしいって…
「や…椎凪…」
「やだやだばっか言わない…もっと他に言う事あるでしょ?
あ…言う事じゃないか?」
言いながら椎凪が動いた。
「…やん…」
身体の奥がドクンってなって思わず声が漏れる…
「まだまだこれからだよ…耀くん…」

そんな椎凪の囁く声がオレの耳元で響いてた…


「……ホントに…どっから持って来たの?」
オレはもう諦め半分の呆れ半分。
「前約束したでしょ?今度は猫だって。」
「そんな約束してないよ…椎凪の思い込みだもん…」

前にウサギの格好で抱かれた時椎凪がそんな事言ってたけど
もう諦めてたのかと思ってたのに…
オレは頭には猫耳のカチューシャ…両手には猫の手の手袋…
フカフカの猫柄模様の布でビキニタイプの服を着て…
シッポまで付けて椎凪の前に立ってる…

「ねぇ 『にゃあ』 って言ってみて?ね?」
もう椎凪がワクワクしてるのがわかる…
だって瞳が全然違うもん…キラキラと輝いてる。
「えーー…」
オレは不貞腐れて不満の声を出した。
ただでさえもう何時間も椎凪の相手して色んな格好させられて…
攻められまくって…オレはもうヘトヘトのヘロヘロなのに…
椎凪は時間が経つごとに元気になってるみたいだ…

「…に…にゃあ…?」

「!!!…耀く〜〜〜〜〜〜んっ!!」
「うわっ!!」
ガバッと抱きつかれた。
「いやあぁぁぁ今までの中で一番イイっ!!ウサギさんも可愛かったけど
猫もなかなか…そそるっ!!」
「って…椎凪何してんの??あーーー携帯!!いつの間に!!」
見るといつの間にか椎凪の手に携帯が握られてた。
「まさか…今までの全部撮ってた…とか?」
「当然でしょ?流石にはだけてるのは撮ってないけど記念だもん。
どうぜ耀くん2度とこんな格好してくれないでしょ?」
「当たり前だろっ!!誰がこんな恥ずかしい格好…」
「だから!バレたからにはポーズとってもらおっ!!はい!むこう向いて顔だけこっち向いて!」
「しないよっ!!椎凪のばかっ!!」
「約束!」
「こんな約束してないっ!!……!!」
椎凪が携帯をベッドの上にポンと投げてオレに近づいて来た…
瞳が…いつもと違う…や…『あっちの椎凪』だ…
オレは何となく後ろに逃げた…ヤな予感が…背中を走る…

「 オレのお願い…聞いてくれないの?耀くん… 」

ぎゅっと抱きしめられて耳元に甘く囁かれた…
微かに触れるくらいにオレの頬に椎凪の唇が触れる…
「…あ…やん…」
「オレに虐められたくないでしょ?それともそう言うのがお望みならオレは構わないけど?」
更に甘く囁く…
もの凄く近い位置で椎凪と目が合った。
瞳がいつもと違くて…深い深い…暗い瞳…でもそんな瞳もオレは好きで…
「じゃあ…優しく…してくれるの?」
上目遣いで椎凪を見上げた。
「耀くんがそう望むなら…」
椎凪が薄く微笑む…
「なら…いいよ…」

オレは完璧に降伏した…
こっちの椎凪に勝てるはずが無いから…しかもこんなに甘く囁かれたら
オレはきっとどんな要求も簡単に頷いちゃう…

優しくしてって言ったのに思いっきり押し上げられる…
猫の手で掴めないのに必死に椎凪にしがみついた…
約束だからって後ろからも散々攻められたし…

「猫ならそんな声出さないよ…『にゃあ』でしょ?」

そんな事を囁かれ…
もうわけがわかんなかったけど全部 『にゃあ』 って叫んでた…


一体何時間椎凪に抱かれてたんだろう…

確かに自分の事で手一杯で椎凪の相手をしてあげれなかったのは事実だけど…
その何十倍も濃さを増したお返しをこんなに要求されるなんて…

もうそんな事は無いだろうとは思うけど
もしも今度またそんな椎凪の相手を出来ないほどの事があっても
絶対椎凪を放っておくのはやめようと心に決めた。

↑ すっごく恥ずかしくてたまらないらしいです。