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「…あっ…はっ…んあっ…あ…」

リビングのソファでオレは椎凪とソファの背もたれに挟まれてる…
椎凪が動く度に…オレはソファの背と椎凪の身体に押さえつけられる…
両足は…椎凪の両腕で… オレの胸の辺りまで持ち上げられて…
椎凪がオレを攻める度に自分の意思とは関係なく…揺れる…
椎凪の事を…いつもよりオレの身体のすごく奥で 感じて…おかしくなりそうだ…
椎凪の腕はオレの脚を持ち上げながらしっかりとソファの背もたれを掴んでて…
オレを逃がさない…

「はぁ…はぁ…あ…椎…凪…もう…やめて…もう…無理…んっ…」

オレが頼んでも…椎凪は止めてくれない…
椎凪は知ってるんだ…オレが止めてって言う時は…
辛いからじゃない…感じすぎて…おかしくなりそうだって事…
だからオレがもっと乱れる様に…さらに激しくする…でも…今夜は…

「はぁ…あっ…椎凪…」
「………」
ダメだ…椎凪は聞く耳を持たない…さっきと変わらずにオレを激しく押し上げ続けてる…
でも…今夜は本当に…

「 椎凪!!お願いっ!!もう…やめてっ!!  」

「…?耀…くん?」
オレが強く叫んで椎凪を押し戻したから…椎凪が驚いて動きを止める…
「ゴメン…椎凪…今日はもう…やめて…お願い…」
「耀くん?」

オレは椎凪からゆっくり離れて…脱いだパジャマを抱えて…寝室に歩いていった…


パジャマを着て…ベッドに入る…
椎凪…きっと…変に思ったろうな… でも…オレ…不安だったから…

「がちゃ」
寝室のドアが開いて椎凪が入って来たけど…オレは寝たふりをした…
椎凪は静かにベッドに入るとオレの身体に腕を 廻して…後ろからオレを抱きしめる…



 「耀くん…どうしたの?具合…悪いの?」

 椎凪がオレの 頭に自分の顔をうずめて…

 オレにすがる様な言い方をする…

 「違うよ…椎凪…でも…ごめんね…ごめん…」

 「耀くん…」



オレは…耀くんの言葉を聞いても…不安は消えなかった…
本当…どうしちゃったんだろう…?こんな事初めてだ…途中で止めるなんて…
オレの事…嫌になっちゃった の?まさか…結婚が…負担になったとか?

嘘だろ…


本当にごめんね…椎凪…でも…まだ椎凪には言えないんだ…
だって…違ってたら…ガッカリさせちゃう から…
…ごめんね…椎凪…でも…
……もしかして…赤ちゃん…いるかもしれないのに…
あんなに激しくして…大丈夫なのかなって思ったら…急に怖くなった ……

…変だなと思い始めたのはほんの3日くらい前…
いつも胃の辺りがもやっとしてて…
お腹が空いてるせいなのかと思ってご飯を食べたけど治らなかった…
歯磨きをすると「おえっ」ってなるし…
もしかしてって思い始めたけど…医者に行く勇気も無くて…
椎凪に抱かれてる時に不安になるなんて…思わなかった…



「お待たせしました。」
「ごめんね…忙しいのに…」
「大丈夫ですよ。じゃあ行きましょうか。」
「うん…」
「大丈夫ですよ。私も見て頂いた先生ですし 優しくて…
女医さんですから安心して下さい。」

結局オレは一人では怖くて和海さんに付き合ってもらった…
和海さんが水希と水帆を産んだ病院…


「おめでとうございます。2ヶ月目に入ってますよ。予定日は来年の1月15日ね。」

先生が…ニッコリ笑ってオレにそう言った…

「え…?」

オレは聞き間違いじゃないかと思ってもう一度確かめた。
「本当…ですか?」
「はい。本当ですよ。」
またニッコリ笑ってオレに言う…

子供…? 本当に…出来たの?…オレと椎凪の子供…
オレは心臓がドキドキしだした…

「そろそろつわりも始まってる頃だから…あんまり無理しないで食べれる物食べてね。」
オレはずっと心配してる事を聞いてみることにした。
「あっ…あのっ…!!!あ…その…えっと…」
切り出したのはいいんだけど…なかなか言い出せなくて…
先生が「ん?」って顔してオレを見てる…

「あっ…あの…うちの… ダンナさん…その…
アレが…その…激しいんですけど…だ…大丈夫ですか?」

オレは顔から火が出る位恥ずかしかった。
先生が女の人で良かった…男の人じゃ 絶対聞けない…

「 え? 」
先生は一瞬ビックリした顔をしたけど答えてくれた。
「まぁ…しちゃいけないとは言わないけど激しいのはお勧めしないわね。
特に今まだ安定期にも入ってないし…ちょっとダンナ様にセーブしてもらってね。くすっくすっ」
「あ…は…い…」
笑われちゃった…は…恥ずかしい!!!


「どうでした?」
待合室でずっと待っていてくれた和海さんが心配そうにオレに声を掛けてくれた。
「2ヶ月目だって…」
「えっ!!おめでとうございます! 椎凪さんきっと喜びますよ。良かった!
それで予定日はいつなんですか?」
「うん…ありがと。来年の1月だって…」

……椎凪…どんな顔するかな… でも…オレ…ちゃんと話せるかな…

結局話すタイミングが掴めないまま…夕飯になちゃった……
その日の夕食…オレが夕べ途中で止めたから椎凪はすごい落ち 込んでる…

「耀くんあんまり食べてないね…」
自分だってそんなに食べてないのにオレに聞く。
「あ…ゴメン…食欲が無くて…」
「耀くんがっ!? 食欲無いの!!」
「 !! 」

椎凪がもの凄い勢いでイスから立ち上がってオレの方に移動して来た。

「ちょっとこっちに来て!」
オレの腕を掴んで立たせるとソファに座らせた。
「昨日からどうしたの?どこか具合が悪いの?」
椎凪がオレの目の前に膝を付いて座って… 心配そうにオレに聞く…
「別に…悪くないよ…」
「本当?」
「うん…」
「じゃあ何?何かあったの?悩み事?」
「ううん…」
「オレ何かした?」
「ううん」
「じゃあ何?絶対おかしいよ…」
「…………」

なんか…どんどん言いづらくなる…

「本当に何なの?オレ心配だよ…」
椎凪が不安そうな顔をしてオレを見上げてる…
今にも泣きそうだ…言わなきゃ… 今…言わなきゃ…

「あのね…椎凪…」
オレは意を決して切り出した。
「何?」
椎凪はとっても弱々しい声だ。

「これから…しばらくの間…その… オレの事…激しく…抱かないで…」

「え…??なに??ええっっっ!!!!それがイヤだったのっ?」

オレはとんでもなく驚いた…だって…なんかオレを 否定された気がするっ!!
何だか…眩暈がする…うそ…もうオレ…しばらく立ち直れない…かも…

「あ…イヤとかじゃなくて…」
椎凪が一瞬でもの凄く落ち込んだからオレは慌てて 付け足した。
「じゃあ…何?」
オレはショックで後ろによろけながら聞いた…もう涙目だよ…クスン…

「あ…あの…その…あ…赤ちゃんがいるから…その…
しばらく激しい のは…止めなさいって…産婦人科の先生が…」

耀くんがオレから目を逸らして…顔を真っ赤にしながら言った。

「 え? 赤ちゃん…?え? 」

耀くんが黙って頷く…
オレは耀くんの言ってる事が良く判らなくて…もう一度聞いた。
「え?赤ちゃんって…耀くんのお腹に?」
「うん…」
「え?って言う事は…オレと…耀くんの赤ちゃん?」
後から思うとオレはホントに気が動転してたんだと思う…
当たり前の事を真面目に耀くんに 聞いてた。
「うん…」
耀くんが更に真っ赤になって俯いちゃった…

「 え え っ !!!!」

オレは自分でも驚くくらいに大きな声で叫んでた!!!
「本当?本当に?本当に赤ちゃん出来たのっ?」
耀くんの両肩を掴んで俯いてる顔を覗き込んだ。
「うん…来年の1月15日が予定日だって…」
うそ… ホントなんだ…本当なんだっっ!!!

「 やったーーっっ!!すごいよっ耀くん!!オレ嬉しい。すっごく嬉しいよ ♪♪ 」

オレは耀くんに抱きついてキスをした…何度も何度も…

「愛してるよ…耀くん!!素敵なプレゼントだよ!!」
「オレも愛してるよ…椎凪…ごめんね… 心配させて…」
「ううん…」


オレと耀くんは今夜も愛し合う…
オレは耀くんを優しく攻めた…キスをしながら…

「なんか…優しく抱かれるの 久しぶりだ…」
「だって赤ちゃんビックリしちゃうでしょ?」
ベッドが…小さく…軋む…
それでも感じやすい耀くんは優しく抱いても感じまくっていた…
そんな姿も可愛くて…

「ここに…いるんだね…」
椎凪がオレのお腹を見てそう言った…
まるで…お腹の中の赤ちゃんが見えるみたいに…
「どっちかな? 男の子かな?女の子かな?」
「椎凪はどっちがいいの?」
「オレ?オレはどっちでもいいや…無事に生まれてくれれば。」
「そうだね…」

オレは思い出 してた…椎凪が…あの時言ってた言葉を…

「そう言えばさ…椎凪の言った通りだったね…」
「ん?」
「新婚旅行の時…オレに言ってくれたじゃないか…
もしかして子供出来ないかもって言ったオレに…」
「ああ…」
「椎凪とオレの子供は優しい子だから結婚する前に産まれちゃうと
椎凪が怒られるから… 結婚するまで待っててくれてるんだって…
あれ…本当だったね…なんかね…あの時に出来たみたいなんだよね…」
先生が言うにはどうやら…そうらしいんだ…
「ね!オレの言った通りだったでしょ?この子は優しい子なんだよ。」
椎凪がニコッリと笑った…


オレと椎凪はとっても幸せな気分で目を合わせて…
2人でオデコをくっ付けながら…お互いに微笑んでいた…

でも…まさか…次の日に椎凪があんな行動に出るなんて…
椎凪の性格から言って…予想出来ない 事じゃなかったのに…油断した…