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* 『本編 100話』あたりのお話です。ちょっとファンタジー要素ありでしょうか…
椎凪と耀は夢の中で会っているので2人共面識ありです。
ただ夢の中でしかお互い憶えてないという…
ショートですのでお気軽な気持ちでお読み下さい。 高校生椎凪です。*
日曜日のバイトの日。
何とも中途半端な時間に出て来ちゃったもんだ…
女の子を誘うには時間が無くて、バイトに行くには時間が早い…
まあ…バイトに行っても
いいんだけど…折角の日曜日…その辺ブラブラしてみっか…
久々にウインドウ・ショッピングとやらをしてみようかと思い立った。
色んな店が集中している通りに
向かおうと信号待ちをしていた。
そんなオレの足元に気配が一つ。
しかもオレのズボンを何気に掴まれてる感覚…?
「…おい…おい…」
見下ろせばガキンチョが一人…オレをジッと見上げてる。
「なんだ?お前。」
年は…やっと歩いてる様な2歳…いや…1歳半くらいか…?
服装からいって男の
赤ん坊だ。
「あ?何だよ?オレはお前の親じゃねーぞ。」
「あー…」
オレの問いかけに一声答えた。
「ったく!親何処だよ。こいつの親!」
オレは
信号待ちの連中を見渡したがそれらしい大人はいない…
そうこうしていると信号が青に変わって待ってた連中が歩き出した。
オレはちび助を大人の足から守る為に
抱き上げて辺りを見回す。
…ん?あれ?何だ?全員渡ったじゃねーかよ?親…あの中にいなかったのか?
「えー…もしかして…お前…迷子?」
オレは抱きかかえてるちび助の顔を眺めながらそう言った。
「んー参ったね…交番なんてこの辺無いし…
あんまり歩き回っても親がこの辺探してると
思うから動かない方が良いだろうしな…」
オレはちび助を見つけた交差点の
近くでカードレールに
腰掛けて考えていた。
「まぁ別に子供キライじゃ無いからいいけどさー…」
そう言いながらオレの服にしがみ付いている
ちび助の小さな手に
人差し指でそっと触れた。
ちび助が不思議そうにオレを見つめる…
「ちっちゃい手だな…お前なんて名前?…って言える訳ねーよな…はは…」
「とう?」
「 ! 」
ちび助がオレを見つめてそう言った。
「ちがう!オレはお前のオヤジじゃねーよ!失礼な…」
ちゃんと上手くやってるから…多分…
ね…
「とう!」
またオレに向かってそう呼びかける。
「だから違うって!若いオヤジに憧れるのは判るがオレじゃないから!
…ってこんな子供に言って
どーすんだっつーの…」
子供相手に力説した自分がバカみたいで自分で自分を突っ込んだ…
「ヘェ…お前もクセっ毛なんだ…オレも
だけど…?
何か…良く見ると…オレに似てたりする?何となく…」
今…気が付いた…お互いジッと見詰め合う。
「なーんてね!バカバカしい…」
言って自分で呆れた。
やだやだ…何だかおかしな感じで変な事バッカ考える。
「しかし…親来ねーな…何してんだよ…」
オレはいつまで経っても現れないこいつの親の事が気になりだした…
こんな子供がいなくなればすぐ気が付くよな…
そしたら心配で捜し回んだろ?
この子供の足じゃそー遠くねー所からオレの所まで来たはずなのに…
何でこんなに待って親が来ないんだ?
オレは嫌な予感が…
胸の中を占め始めた…
…え?…ま…さか…こいつ…捨てられた?
オレにしては珍しく心臓がドキドキと言い出した。
「 葵! 」
誰かが…オレの方に向かって名前を呼んだ…
「 !? 」
「かぁ」
ちび助が声の方に身体を伸ばした。
「もーだめだろ?一人で先に行ったら…」
なんだ…違ったか…良かった…親が来てホッとした…
「君が母親?」
「うん…」
「ちゃんと見てないと危ないよ。事故にでも遭ったらどーすんの?」
「ごめん…いつもはこんな事しないんだけど…一人で歩き回るなんてさ…
やっぱり判るんだな…くすくす…」
「!!…笑い事じゃ無いだろう?すぐに捜しに来ないし…
何やってんだよ。」
なんかちょっとムッと来て…口調がきつくなった。
「だってさ…父親の所に行ったのに心配する必要ないだろ?」
「 え? 」
ちび助の母親が…オレにニッコリと笑いかけながらそう言った。
「え?父親?オレが?そんな…はず…」
「そう。椎凪がお父さん。で…オレがお母さん。」
「え?」
そう言われて…母親の顔をマジマジ見ると…
「 耀くんっ?! 」
髪が長くなってて…それをポニーテールにしてて…気が付かなかった。
「え?じゃ…この…子…」
オレは恐る恐るちび助の頬を触った…
「そう。椎凪とオレの子供…葵だよ。」
「ええっ!!オレの子供っ!!」
オレはビックリして叫んだ…うそ…出来ちゃってた…の?
「今すぐじゃ無いよ。今から10年かかるんだ…くすっ…」
「10年?」
「 オレ達…待ってるから… 」
「 え? 」
…椎凪を…待ってるから…
ファァーーーン
車のクラクションが鳴り響いた…
「 はっ!! 」
我に返って…辺りを見回した…何だ?…オレ…信号待ち…してたんだよな…
でも…言いようの無い感覚がオレを包んでて…変な感じだ…
…なんだろう?
足元が気になって…
オレはしばらくの間…じっと自分の足元を見つめていた…
『 オレ達…椎凪を待ってるから… 』