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僕の名前は椎凪 葵…8歳小学3年生。
お父さんとお母さんと3人家族。

「 おはよう。葵くん何食べる? 」

お父さん。椎凪慶彦 37歳刑事だ。
いつもニコニコしてていつも裸でウロウロしてて
男なのに料理が得意でいつもお父さんが作ってくれる。

「パンがいい。」
「じゃあお父さん特製サンド イッチ作ってあげる。」
「うん。」

「おはよう…椎凪…葵…早いね2人共…」
お母さんが起きて来た…
お母さんは朝が苦手で寝起きは殆んど 寝ぼけてる。
僕のお母さん…椎凪 耀31歳。
パソコンが得意でそっちの関係の仕事をしる。
ナゼか自分の事を 『オレ』 って言う…女なのに…
お父さんも お母さんの事『耀くん』って呼ぶし…わけ分かんない…
お母さんに聞いても昔から 『オレ』 って言ってるからもう直せないんだって。
「椎凪…オレもコーヒー飲む…」
ダイニングテーブルに座りながらお父さんに言う。
「僕はココアだよ…」


 「おはよう。耀くん ♪♪

 今日も綺麗だね。愛してるよ。」

 「おはよう椎凪。オレも愛してるよ。」

 そう言って僕の目の前でキスをする。

 もういつも の事で気にもならないけど…




2人は仲がいい…
子供の僕が見てもウザイほど…仲がいい。
って言うかお父さんがお母さんにベタベタしてるって感じ…
お父さんはお母さんの事が大好きでお母さんがいないと生きていけないんだって…
僕もいなくなったら生きていけないって言ってた…半べそで…
お父さんは お母さんと僕に怒られたり嫌われたりする事にとっても敏感。
ちょっと変なお父さんだけど…僕この前見ちゃったんだ…下校の時に友達と…
お父さんが犯人を 捕まえる所…逃げる犯人に一撃入れて…

『 オレから逃げれると思ったの?甘いなぁ…くすっ 』

すごく…カッコ良かった…友達も
「すげーな。 葵のお父さんカッコいい。」
って言ってた。

お父さん本当は男らしくってとっても強いんだ…

「あ!今日ね水希君達と映画見に行く。」
「え?そうなの?じゃあ…気をつけてね…心配だけど…」
お父さんは本当に心配性だ…


ピンポーン ♪ ♪ 

「 葵 早いな。」
玄関が開いて中から水希君達のお父さん…祐輔さんが迎えてくれた。
お母さんの高校時代からの友達…

「おはようございます。」
「入って待ってろ。」
「はい。」

僕のうちのお向かいさん。
もう一つの僕の家みたいなんだ。

「おはよう祐輔!オレも入っていい?」
「 !! 」
僕の後ろから お父さんが顔を出した。

「 テメェは入って来んなっ!!親バカがうつる!! 」

「えーなんで?祐輔だって親バカだろ?同じじゃん。」
「同じじゃねーーっっ!!いいから入ってくんじゃねーよっ!!」
「ちょっと…祐輔ヒドイッ!!」
玄関で2人がもめてる…と、言うかふざけてるのかな?
祐輔さんは昔うちのお父さんに散々迷惑をかけられたらしく…良くケンカ(?)をする。
僕には仲が良く見えるけど…祐輔さんはそう言うと「ふざけんな!」って言う…


「ごめんね。葵君ちょっと待っててね…水帆がまだ支度できてなくてさ…」
「なによっ!!女の子は支度に時間かかるの当たり前でしょ?」
「かかりすぎだよ…」
新城水希君…10歳。小学4年生。
お兄さんみたいで優しいんだ。
「ねぇお父さん。私変じゃない?」
新城水帆ちゃん…10歳。小学4年生。
双子だから 当たり前なんだけど…僕はちょっと怖い…すぐ怒るんだ…
「ああ…大丈夫。」
「良かった!」
祐輔さんに頭を撫でてもらって水帆ちゃんは上機嫌。
水帆ちゃんはお父さんの祐輔さんの事が大好きなんだって。

『 ファザコンって言うんだよ。 』
って水希君が言ってた…

2人のお父さんに見送られて 僕達は電車に乗って映画館に出かけた。

テレビでやってるアニメの映画版。
小学生の間では結構人気で親子連れも沢山来てた。

「まあまあだったわね…」
水帆ちゃんが大人ぶって言う。
「そう?結構面白かったけど…ね?葵君。」
「うん。来て良かった。」
「まったく…男って単純なんだから…」
「……」
水希君と僕は見詰め合って苦笑い…
「じゃあ行こう。慎二君が待ってるから。」
この後慎二さんの所に行ってみんなで食事する事になってるんだ。
水希くんは 慎二さんの事が大好きだからとっても嬉しそう。

そんな僕達の前に…人影が…いつの間にか囲まれてた…

「僕達…ちょっといい?」
相手は…中学生か… 高校生か…5・6人はいる…
人気の無いビルの裏側に連れて行かれて…詰め寄られた…

「映画見に来るくらいだから金?持ってんだろ?出せよ。」
「素直に出さねーと親にも殴られた事ないのにオレ達に殴られちゃうよ。」
「きゃははっ!可哀想ー。ビビッてるよ。」
「ほら。早く出せって。」

水帆ちゃんは水希君の背中にギュッと掴まって目を閉じたまま震えてる。
僕は水希君が自分の後ろにかばってくれてて…
水希くんはジッと相手を見つめてた。

「お金は渡しません!これって悪い事でしょ?
人のお金脅し取るなんて…お母さんが言ってた。」
「はぁ?何コイツ?俺等に説教?」
「マジうぜえんだよ。 殴られてーのか?早く金出せよ!」
そう言って水希君の洋服を鷲掴みにして引き上げた。
「水希君…」
僕はどうしていいか分からなくって…
「水希…いいから…お金…渡して…!!」
水帆ちゃんが泣きながら叫んだ。
「そう。いい子だからさっさと出しな!痛い目見ずにす…」

ど か っ !!

その時周りで見ていた仲間の一人が僕達の方に飛んで来た。

「 お前ら…オレの子供に何やってんだ? 」

「お父さん!!」
祐輔さんだ…
「いてててて…」
他の一人も叫び出した。

「もーダメだよ祐輔いきなり蹴り入れるなんてさ。
この子達だって話せば分かってくれるって。」

そう言って 男の人の掴んだ腕を後ろにねじ上げながら…お父さんがいた。
「先手必勝!そんな事言ってると反撃くらうぞ。椎凪。」
そう言ってやる気満々の祐輔さん…
「だって中学生もいるみたいだよ?大人気ないな…」
「そんなの覚悟の上だよな?お前ら。」
そう言いながらどんどん間を詰めるお父さん達…
急に現れた お父さん達に僕達を脅してた人達が焦り出した…

「 ふざけんなっ!!粋がってんじゃねーぞっ!!オヤジっ!! 」

それを合図みたいに一斉に お父さん達に殴りかかった。
「お父さん…!!」

「おい椎凪!オヤジだってよ。お前だろ?行け。」

「ええ!!オレ?」

お父さんは不服そう。
「オレより老けてんだろ?40目の前だし。」
「……もー…やだな…年の事は言わないでよ…ったく…」

そう言って渋々動いたお父さんだったけど…
一斉に飛び掛った相手なんか全然平気であっという間に全員やっつけちゃった…

「このまま大人しく帰れば警察には連れて行かないで勘弁してあげるけど?」
そう言ってお父さんが警察手帳を見せた。


「ね!見に来て正解だっただろ?」
みんなで慎二さんの所に歩きながら話してる。
「そーだな。 お前の親バカもたまには役に立つんだな。一生に一度だろうけどな。」
祐輔さんの腕には怖くて歩けないって言った水帆ちゃんがしっかり抱っこされていた。
祐輔さんの首にギュっと掴まって…まだ泣いてるのかな?

「もー水帆は歩けるくせに…」

水希君がそう言って呆れてる…


『TAKERU』 のビルの慎二さんの部屋。

「待ってたよ。みんな…あれ?水帆どうしたの?」

祐輔さんにしがみついてる水帆ちゃんを見て慎二さんが聞いてきた。
映画を見た後の事を一通り話すと…

「そうか…僕が迎えに行けば良かったね…
そんな遠く無いから大丈夫だと思ったんだけど…
でも水希は流石に男の子だね。 年上だし…ちゃんと2人の事守ったんだ。」

水希君の頭を撫でながら慎二さんがニッコリと笑う。
「 へへ… 」
水希君は顔を真っ赤にして慎二さんに 抱きついた。
更に頭を撫でてもらってる…水希君…嬉しそう…

「あ!右京さんも来るって。葵君に会えるの楽しみにしてるみたいだよ。
琴乃ちゃんも 来るってさ。」


それからしばらくして琴乃ちゃん達がやって来た。
「久しぶりだね葵…少し背が伸びたかい?」
「はい…少し。」
「そう。また 『耀に』 似てきたね。良い事だよ。」
お父さんがピクッっとなった。

僕のお祖父様…草g右京さん…39歳。
お母さんのお父さんなんだ けど血の繋がりは無いんだって…
いつも若くて…今だって20代の人みたいだ…
だからお祖父様の娘の琴乃ちゃんは僕にとって叔母さんになるわけで…

「ごきげんよう葵。元気だった?」
「うん…」

琴乃ちゃんは10歳には見えないくらい綺麗で…目が怖い…
身体の中まで覗かれてるみたい…
それに小さい頃は…

『 葵のせいで私はこの歳でオバさんなのよっ!! 』

って…良くいじめられた…


「お父さん…」
「何?葵くん。」

お父さんと2人お母さんの会社に向かって歩いてる。
お祖父様と琴乃ちゃんは帰ったし祐輔さん達はあのまま慎二さんの所に
いるって残ったし僕はお父さんと お母さんを迎えに歩いてるんだけど…

「あ…あのさ…別に手…繋がなくても良いんじゃない?」
「え?何で?」
お父さんがスッゴクうれしそうに笑うから…
「ううん…別にいい…」

だって男で…この歳で…お父さんと手繋いで歩いてる子なんているのかな?
そんな事を考えながら歩いてた。

「他所は他所! これがオレだから ♪♪ 愛してんの!葵くんのこと!」
お父さんがまた嬉しそうに笑って僕を見る。
「うん…」
僕はそんなお父さんを見るとナゼか納得しちゃう んだ…
「葵くんもオレの事愛してる?」
さっきと同じ顔で僕に聞く。
「うん!」
さすがに『愛してる』は恥ずかしいから言わないけど
僕はなんの迷いも 無く返事をする。

「やっぱり〜♪♪オレ嬉しい ♪♪ 」
「うれしい?」
「うん!オレ幸せだよ ♪ 葵くん ♪♪ 」
さっきよりもうれしそうな顔で 笑う。
僕もそんなお父さんを見てうれしくなる。

「早く行こう。お母さん待ってるよ。」



きっとお母さんに会ったらお父さんはもっと うれしくて幸せな顔になるんだ。

だから僕はちょっとでも早くお父さんをお母さんに会わせてあげたくて…

お父さんと繋いでた手を引っ張って早足で歩き出した。