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「 『TAKERU』のカウントダウンパーティー盛り上がってるかな…」

オレは椎凪に寄り掛かりながらそんな事を問い掛ける。
「去年あんなに盛り上がったんだから今年も同じじゃない?
祐輔が女の子達に揉みくちゃにされてるのも笑えたけどね…今年もかな?」
「毎年そうだよ…慎二さん命令だし『TAKERU』の仕事だから…
慎二さん仕事となると容赦無いから…」
「そっか…」

ここは右京さんと慎二さんにオレの誕生日プレゼントでもらった宿泊券のホテル。
年末年始なんて絶対取れないと思ってたのに予約する時右京さんと慎二さんの
名前言ってみてって言われて…試しに言ってみたらまるでオレ達が泊まる事が
わかってたかの様に最上階の部屋が取れた。
眺めも良くて…オレと椎凪は2人で裸のまま窓から夜の景色を眺めてる…

椎凪が後ろからシーツで包んでくれて2人で包まりながらぼんやりとしてる…
後数分で今年が終わる…

オレと椎凪はさっきまでキングサイズの大きなベッドでたくさん愛し合った…

ホテルでもカウントダウンのパーティーが行われてるけど
オレ達は2人っきりで過ごしたくて…


「椎凪…」
「ん?」
「今年はホントに色々あったね…」
「そうだね…」
「だってオレが女の子として生活してるんだよ…ウソみたいだ…」
「ウソじゃないよ…現実でこうやってオレの腕の中にいる…」
「うん…椎凪の腕の中だ…オレ嬉しい…愛してるよ…椎凪…」
「オレも愛してるよ…耀くん…」
「ン…」

オレが椎凪の方に振り向いて背伸びしてオレから椎凪にキスをした。

「…ンッ!!」

いつもの如く椎凪がびっくりした。
その瞬間窓ガラスいっぱいに花火が見えた。
ホテルが打ち上げた花火だ。

「HAPPY NEW YEAR! 耀くん。」
椎凪がニッコリとオレに笑う。
「HAPPY NEW YEAR! 椎凪。」
「よしっ!!新年の『初H』だっ!!」
「わっ!!ちょっと…椎凪!!!」

椎凪がオレを抱き上げてベッドにダイブした!!
思いっきり2人で弾んで笑い合う。

「ハハ!覚悟してね耀くん。朝までだよ!」
「え〜ダメだよ…初詣に行くんだもん…」
「そうだった!じゃあそれなりで!」
「あ…なんかその言い方もヤだな…」
「文句言わないっ!!もう…」
「あ…ンア…椎凪…待っ…」

オレの声はもう椎凪に届かない…
それに…もう…オレが出す声は…言葉にならないから…



「わぁ…スゴイ人…」

ホテルからちょっと歩いた場所の古くからある有名なお寺…
初詣に来てる人の多い事…

「いい?耀くん!オレから離れたらダメだよ!!」
オレは小さな子供に言うように耀くんに念を押す。
「わかってるよ!椎凪は心配性だな…
だからこうやってちゃんと椎凪と手を繋いでるじゃん!!」
繋いでる手を上げて椎凪に見せた。
「耀くんすぐに迷子になるんだからさ!」
「そんな事無いっ!!」

耀くんが納得いかないって顔と声で文句を言った。



「………まったく…やっぱりはぐれた…」

オレはすれ違う人の波に視線を向ける。
あれだけ念を押したのに…耀くんってば……
オレは深いため息を吐いた。


ほんの10分ほどまえ…

カ シ ャ ☆

「あ!いきなり撮らないでよ!!」
「今年初の耀くんゲット!!ホントはベッドでの耀くん撮りたかったけど
するのに夢中で撮るのすっかり忘れてたんだよねぇ〜〜 ♪ 」
「するのとか言わないでよ!そんなの撮らなくていいから!!ちょっと携帯貸して!!」
そう言ってオレから携帯を取り上げた。

必然的に繋いでた手が離れた。

「ちょっと何?この写真の量は!!!いつの間にこんなに撮ってるの?」
「暇さえあれば…かな?」
ありゃ…ヤバイかな?
「あ〜〜コレなんてもう少しでハダカの胸見えちゃうじゃん!!
あ!キスしてる写真…いつの間に……オレに記憶無いって事はオレが
寝てる間にキスして写真撮ったんだ!あ!!これなんかセミヌードじゃん!!
ヤダ!!ヒドイ椎凪っっ!!」
「セミヌードって言ったって背中からでしょ?オレにしかコレが耀くんだなんて
わかんないよ。って言うか誰にも見せないし。」
「ホントに〜〜?」
「当たり前!!オレだけの耀くんだもん ♪♪ 」
「………もう…」

そう呟きながらまだ写真をチェックしてる…
確かに膨大な量なんだよな…ヤバイのは無いと思うけど…
ただオレには普通でも耀くんにはNGの場合もある…
まさか勝手に消さないよな……?有り得る!!!それは困る!

「…耀くん!!勝手に消……!?あれ?耀くん?」

振り向いたら耀くんがいなかった………


「わぁぁぁ〜〜!!何だよこの写真……」

記憶にある写真は問題無い…けど記憶に無いのが問題だよぉ!!!
モノによっては顔から火が出そうなショットが多い。
オレは膨大な量の写真を今自分がどこにいて何してるかなんて
頭から消えてる状態でずっと見てた…

「わっ!ちょっと椎凪!!コレなんて恥ずかし……!?あれ?椎凪?」

顔を上げたら…椎凪がいなかった……



「まいったな…」
オレは人の波を少し離れた所から眺めてる。
今までの経験ではぐれた耀くんを見つけるのは結構困難だ…
なぜかと言うと耀くんはオレを探してチョロチョロと動き回るから。
しかもオレがいる場所とは反対方向に……
頼みの綱の携帯は耀くんがオレの携帯も持ったままだし……

「とりあえず公衆電話か?って今時…って言うかこんな場所にあんのか?」

オレはちょっとだけ気分が重くなる…それに迷子よりももっと気掛かりな事が…
かなりの確率で絶対ナンパされる……若い連中も結構いるし…
まったく…だから手を繋いでたのに……

「ホテルに帰ったらお仕置き決定だな。」

そう呟いて心配な反面…帰ってからのお仕置きを想像してニヤける自分がいた。


「はぁぁぁ……どうしよう…」

オレは2つの携帯を握りしめながら人の波から離れた場所に立っていた。
椎凪とはぐれてしばらく辺りを探したけど椎凪はいなかった…
自分では小さな範囲を探し回ってるつもりなんだけど実際は結構な距離を
動き回ってるらしい…いつもそう椎凪に言われて怒られる…

「また椎凪に怒られちゃうかなぁ…」

怒られると言うよりも『ベッドで攻められる』って言った方が正しい…
そうなるとオレに釈明の余地は無い…問答無用で思いきり抱かれちゃうんだ…
っていつもと同じ?ううん…意地悪さが増すんだよな…

「ああ……ホントどうしよう…電話…掛かって来ないかな…」

オレは2つの携帯を穴が開くほど見つめてた。


「…やっぱ公衆電話なんて見あたんねー!!」
オレは段々イライラ…こうしてる間にも耀くんがどんどんオレから離れてく気がする…
「こうなったら…仕方ねー…」
オレは辺りを見回して適当な相手を見つける。

「悪いけど携帯貸してもらえる?連れとはぐれちゃって…携帯も無くて困ってるんだ。」

思いっきり満面のつくり笑いの笑顔でお願いした!!
相手はノリの良さそうな女子高生。普段なら絶対声なんか掛けないが
この際そんな事は言ってられない。
オレを警戒せず簡単に携帯を貸してもらえるにはもって来いの相手だからだ。
ただ1人じゃないのが問題なんだけど…

「えーそうなの?いいよ!使っちゃって。」
「何?何?どしたの?」
「はぐれたんだってさぁ。」
キャイキャイとうるさい…
「何?何?彼女とはぐれちゃったの?お兄さん?」
「まあね…」
オレは半分彼女達の事は上の空で呼び出し音に集中する…
出てよ…耀くん…!!出た!!

「 耀くん!今どこ? 」

「 「 「 ようくん? 」 」 」

一斉に疑問符だ。

『え?今?えっと………わかんない!!』
「はぁ?わかんないって何?なんか目印無いの?周り良く見て!」
『え〜〜…んと…変な動物の石の置物がある。』
「石の動物?キツネ?」
『違う…みたい…もっとかわいい感じ…』
「可愛い?」
「あー!あそこじゃん!」
「え?」
横で女子高生が会話に割り込んだ。
「ユルキャラの石の置物が今年から置いてあんの!」
「ユルキャラ?」
なんじゃそりゃ?
「うちらわかるから連れてってあげるよ。ね?」
「そうそう連れてったげるぅ ♪♪ 」
「いや…場所教えてくれればいいから…」
一緒は勘弁してくれ…
「あ〜〜ナニィ?人の親切素直にうけなよ〜お兄さん!
お礼は一緒に写真撮ってくれればいいからぁ ♪♪ 」
「そうそうお兄さん結構イケてるしぃ ♪♪ 」

「…………」
この際そのくらいの事には目をつぶるしかないか…



「耀くん!!」
「椎凪!!」

彼女達が教えてくれた通りの場所に耀くんが立ってた。
オレはギュッと耀くんを抱きしめる。
「大丈夫だった?変な奴来なかった?変な事されなかった?」
「うん…大丈夫だよ…椎凪…」
「よかった…心配したよ…もう…」
「ごめんね…」

「イヤーお兄さん達ラブラブじゃん!」
「え?」
耀くんがオレの身体から顔だけ覗かして声のする方を見た。
あ…忘れてた…
「ここまで連れて来てくれたんだ。携帯も貸してくれてさ。」
「そうなんだ…ありがとう。」
「なんだ女の子じゃん。」
「 『ようくん』 なんて言うからてっきり男かと思っちゃったよん ♪♪ 」
「もしかして実は男とか?」
「正真正銘の女の子だよ!君達どうもありがと。助かったよ。」
一応笑顔でお礼を言った。
「どーいたしまして。」
「新年早々善い事しちゃったじゃん!うちら ♪♪ 」
「あ!お兄さん約束ね!ちゃんと守ってよ。」
「……ああ…」
そうだった……
「彼女も一緒に撮ろうよ。記念にさ!」
「え?あ…うん…」
何だか訳がわかんなかったけど…誘われるままに一緒に写った。

「じゃあ後はお兄さんね!」
「え?オレ1人?」
「そっ!ほら笑って笑って!!」
「笑えるかっ!!」

しばらくそんなやり取りをして彼女達と別れた。
今日は携帯に振り回された…
元はと言えば椎凪がオレの事無断で色々撮ったのが原因なのに
凝りもせず椎凪は携帯のカメラをオレに向ける。

「もう反省してないなっ!!椎凪は!!」
「だってたくさん記念に残したいんだもん ♪♪ 」
「今度際どいの見付けたら即削除だからね!!」
「ほ〜〜〜い ♪♪ 」
「……もう…」
「その前に…」
「え?」
「ホテル帰ったらお仕置きね!あれだけ迷子にならないでって約束したのにさ。」
「……うっ!!そ…それは…」
「耀くん絶対迷子にならないってオレに宣言してたよねぇ?」


椎凪がニッコリと…意味ありげな顔で笑う…

その笑顔こそ記念に撮っておけばいいのに……なんて思ってる自分がいて…

今度はオレが椎凪の色んな顔を記念に撮ろうと自分の携帯を椎凪に向けた……