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   * 女嫌いですがBLと言うわけではありません。友達として好き…です。
     デュークに恋人が出来ると言うお話ですから… 時期は耀が女の子に戻った後あたり。*






「ねえ?慎二…僕って変?」

真面目な顔でデュークが僕に聞く。

「え?…そうですねぇ…まあ慣れるまでじゃないですか?僕は平気ですけど?」

「そうだよね…変じゃないよね?僕はさ…女が嫌いで…祐輔が好きなだけだもん。」

「…はは…」

慎二が…ナゼか苦笑いをして僕を見た。


僕はプロのピアニスト…デューク=ローランド
今回日本でのリサイタルがあって以前知り合った慎二の所に居候中。
ホテルはキライ。
つまんないし…面白くない。

でも最近は慎二の所を出て祐輔の所に転がり込もうかと思案中なんだ。

何でかって?
それは僕が祐輔に一目惚れしたからさっ ♪ ♪

男だって構わないんだ……だって僕女嫌いだから。


僕が10歳の時新しい母が来た…
亡くなった母と違って教育熱心だった継母は子供の頃から習っていたピアノに
力を注ぎ込み始めた。
ピアノは好きだったから楽しかったし…継母もどんどん上達する僕を自慢した。
そんなある晩…僕は継母に呼ばれた。
呼ばれた寝室行くと父はいなかった…

『デュークはいい子ね…私の自慢の息子よ』

そう言って僕をベッドに引き寄せた。

何が起きたか分からなかった…服を脱がされて身体中を触られた…
逃げるなんて事も考えられなかった…

それからは父がいない晩は必ず呼ばれた…逆らう事は許されなかった…
それを忘れる様に僕はピアノを弾いた…

その時がただ1つ…何もかも忘れられる時間だったから…

そんな継母も僕が12の時心臓発作でアッサリ亡くなった…


慎二と友達になって慎二の友達を紹介してもらった。
僕は継母のせいで女は大嫌いだから…

でも…『ようくん』と紹介してもらった子は女の子みたいなのに男の子だった…
僕は一目で気に入ったのに椎凪のモノだって教えてもらった…しかも女の子だったなんて…

ガッカリしたけどいいんだ…僕は椎凪も好きだから。
さっぱりしてて話しやすくて…僕と気が合った。
年は僕と同じだって言ってたな…

でも後からやって来た彼に一目惚れ…僕の一番の好きな人 ♪



「 祐輔! 」

僕はいつも祐輔に抱きつく。

「えへへっ! 捕まえた。」

「オレに近よんじゃねーっ!!」

僕と祐輔は一回りくらい身体が違う。(僕ハーフだから大きいの。)
だから抱きかかえちゃうと祐輔の負け!

「んーーーーーっ 」

思いっきり祐輔に頬ずりする!!

「………」

「ぎゅう〜〜〜!!祐輔 ♪ ♪」

「ちょっと…デューク…いい加減にしなよ…」
慎二が呆れた様に声を掛けた。
「やだ……ぎゅう!!」

祐輔は僕が満足するまで…僕の腕の中で大人しくしてる…


「ハア…満足。」

5分位祐輔を抱きしめてホッペをスリスリすると今日1日頑張れるんだ ♪ ♪


「大丈夫?祐輔?」
「大丈夫に見えるのかよっ! 」
「そんな事言うなら力ずくで止めさせればいいのに…
出来るくせにしないんだから…ホント心が広いよね…祐輔は…」
「お前が言うな…元はと言えばお前のせいだろ?」
「え?何の事?僕はただデュークがこっちにいる間面倒見てねって言っただけだろ?」
「お前がデュークに言ったんだろ?オレを抱きしめれば嫌な事忘れられて…癒されるって…」
「えー?そんな事言ったかな?
でもまさかデュークが女嫌いだなんて知らなかったんだよね…はは。」

ウソだけど…最初っから知ってたんだけどさ…
祐輔にはデュークが継母からされてた事を言ってあるんだ…
祐輔の事だからそんな話を聞けばデュークの事を邪険に出来ないのは分かってた。

リサイタルが終わるまでデュークに機嫌損なってもらっちゃ困るんだよね…
だから祐輔には悪いけどデュークの相手してもらわないとね…

祐輔なら気にせず相手出来るもんね…

と言う訳でデュークは今祐輔の所に泊まってる。
和海ちゃんには悪いけどデュークにとってきっと良い結果になると思うんだ…
それに椎凪さんもいる事だし…ふふ…

慎二が悪戯ぽく笑った。



「いいか?ベッドでオレに手ェ出したら殺すからなっ!」

初めての夜…祐輔が寝る前に僕に念を押す。

「うん。ベッド以外ならいいって事でしょ?へへ」

だってそう言う事だもん。

「は−…」

思いっきり諦めの溜息を祐輔がついた。

そんな態度の祐輔だけど…祐輔は優しい…
僕がどんなに迫っても…怒ったりしないんだ…




「えー!!!祐輔の所に預けちゃったの?  」

「祐輔ああ見えて傷ついてる人ほっとけないから…弱いんだよねそう言う人に…」
「だからわざとデュークの過去話したの?」
「どうなるのかなぁって…面白そうだから。」
「慎二君…  」 



「 椎 凪 〜〜〜 ♪ ♪ 」

慎二君の所からの帰り道…デュークがオレに向かって突進して来た。

「 う お っ !!」

 ド  カ  ッ  !!

デュークはオレより少し背が高い…後ろから抱き着かれた。


「今日祐輔いないんだ。椎凪の所に行っていい?」

子供みたいな顔で言うもんだから…

「いいよ。オレの作ったご飯ご馳走してあげるよ。」

「えっ?ホント?嬉しい〜 ♪ ♪」




「 耀君。ただいまぁ ♪ ♪ 」

まるで自分の家に帰って来たみたいなテンションだ。

「え?デューク?」
「デューク!耀くんに抱きついたらダメだからね!」

子供みたいなデュークは誰にでも抱きつく…あ…女性以外。
ただ耀くんは例外らしく最初に言っておかないとすぐ耀くんに抱きつく。

「分かってるよ〜〜 ♪ ♪ 耀くんは椎凪のものなんだもんね!
じゃあ代わりに椎凪に…お邪魔します。だきっ!! 」

「!!」

デューク…すでにさっき外でオレに散々抱きついただろ?



「ご馳走様 ♪ アハっ!美味しかったぁ ♪ ♪」
そう言ってオレにまた抱きついてくる。

「いちいち抱きつかなくていいって…」
「だって嬉しいいんだ…僕。」

そう言ってまた子供みたいに笑う。



「椎凪お酒弱いね……」
呆れた様に言われた…
「仕方ないだろ…苦手なんだから…」

食事も終わって酒盛りとなったわけなんだが…
一番お酒に強い耀くんは普段寝てる時間プラスお酒のせいでもうお寝むだ…
オレの隣でソファに眠って寝息をたててる…

「いいな…椎凪は…耀君がいて…どこで見つけたの?」
「見つけたんじゃ無い!オレ達は巡り会ったの。」
「じゃあ僕は祐輔と巡り会ったんだぁ ♪ ♪」
「祐輔彼女いるだろ…」
まったく…当たり前の様に言うんだよね…

「女なんて最悪!祐輔は渡さないもん!」

「祐輔は彼女の事愛してるから無理だね。」

ハッキリと言ってやった。

「も―何だよ!!椎凪は!自分は耀君がいるからってさっ!」

思いっきり不貞腐れてご機嫌斜めだ…わかりやすい…

「だから他に捜せっての!本当に女に興味ないの?今まで全然?」

「昔…好奇心から女ってどんなのかなぁ…って思ってチャレンジしようとした事はあるよ…」
何だ…あるんじゃん…
「…で?」
「でもさ…いざとなったらどうしても相手に触る事が出来なくて…
しかも自分の身体が女の身体に入るなんて…考えただけでも寒気がして…
結局止めた!!!…まあ止めて正解だったけどさ…」 

本当に嫌だったんだと思えるほどの嫌がり様だ…
自分の身体を自分で抱きしめて青ざめてる…

え?と言う事は…コイツ…女性未経験?確かオレと歳同じじゃなかったか?


「椎凪…僕ね…愛が欲しいんだ…皆の愛が欲しい…」

2人で大分飲んでたら不安そうな顔でオレを見ながらデュークがそんな事をポツリと呟いた…



デューク…君もオレと同じ…誰かを愛したくて…

でも本当は誰かに愛して欲しいんだ…

ただ相手は…継母のせいで男にしか興味がないみたいだけど…

普段デュークは幼くて…いつもニコニコしてるけど…
本当はとっても深く傷ついてる…

誰かに…それを癒して欲しいんだよね……




「みんな来てくれたんだね。ありがとう。」


今日はデュークのリサイタルの日。
オレ達は特別に一番良い席に招待された。
当然の事ながら深田さんは招待されてない…
と言うかデュークと会わせるわけにはいかないから…

『最近祐輔さん変なんですよ…外で会おうって言ったり…
私の部屋に来たがるんですよね…』

深田さんがオレに溢した言葉…
だよな…なんせ祐輔の所にはデュークが居候中だもんな…


「今日はみんなの為に弾くよ。いつもは祐輔の為だけに弾いてるけどさ。」

もの凄いにっこり笑顔で当たり前の様に言ってるけど…
おいおい…会場は確か満席って聞いてるぞ…その人達はいいのか?

「じゃあまた後でね。」
デュークが手を振ってオレ達の傍から離れた。

「大丈夫なの?祐輔…」
デュークの姿が見えなくなると耀くんが心配そうに祐輔に聞いた。
「ん?」
「だって…デューク本気みたいだし…和海さんの事もあるだろ?」
耀くんはずっとその事を気にしてた…

「ああ…!別にデュークの奴は本気じゃねーよ…
オレが怒らないからオレに引っ付いてるだけだ。
デュークも分かってる…オレが相手にしてないってな…」

「え?そうなの?だって…ずっと一緒にいるし…」

「デュークも探してるんだよ…自分のたった一人の相手をな…
だから早く出会えればいいのにな…オレが和海と出会った様に…
耀が椎凪と出会ったみたいにな。
だからオレはそいつが見付かるまでの相手なだけだ…だからオレの事は心配するな。」

「祐輔…」
「ホント祐輔って心が広いよね。」
慎二君がにっこりと笑ってそう言った。

「よく言うぜ…わかっててオレに預けたくせによ…」

「だって他に適任者いなかったんだもん。
祐輔が居てくれて助かったよ。デュークさ本当はあんなに明るくないんだ…
暗いって言った方がいかな…ピアノを弾いてる時が唯一笑ってる時だったかな…
でも祐輔と椎凪さんのお陰で元気になってくれて良かった。ふふ」

そう言ってニッコリと笑った…
慎二君もデュークの事…ずっと気にしてたんだろう…


無事リサイタルの日程をこなし…
デュークはしばらく日本に滞在してアメリカに帰って行った。


『 ぜったい直ぐに帰って来るから! 』
                                         

と言葉を残して…