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   * 女嫌いですがBLと言うわけではありません。友達として好き…です。
     デュークに恋人が出来ると言うお話ですから… 時期は耀が女の子に戻った後あたり。*






「祐輔ぇ〜〜お帰りぃ〜〜〜ぎゅうーーーー!!!!」

デュークが玄関に入った途端待ち構えてたかの様にオレを力一杯抱きしめる。

『 ぜったい直ぐに帰って来るから! 』

と宣言した通りに1ヶ月もしないうちに早々と向こうでの仕事をこなし
こっちに帰って来やがった。
当然の様にオレのマンションに転がり込んで来た。
何でオレはこう言う奴の面倒を見る羽目になるんだ…

オレにとって『26の男』は鬼門だな……


「?あれ?祐輔なんで髪の毛濡れてるの?雨なんか降ってなかっただろ?」
オレの髪に触れたデュークが不思議そうな顔で聞く。
「シャワー浴びたからな。」
オレは平然と答えてやった。

「え?何で??」

何で…だと??

「和海と会ってたからだよ。」

お前が此処にいるせいでオレが和海の所に行くしかないんでね!
と心の中で文句を言った…声に出して言うと色々煩くて面倒くさいからだ。

「……え??」

「 ? 」
ヨロめいて…何でそんなにショック受けてる?

「  祐 輔 の 浮 気 者 ーーーーーー っっ !!!  」

 ド ン ッ !!!!

そう叫んだかと思うと思いっきり突き飛ばされた!!

「 ゴ ン ッ !!!  いでっ!!!」

玄関のドアに思い切り後頭部がぶつかった。



「ひどいよね……聞いてる?慎二?」

「はいはい…聞いてますけど…それは仕方の無い事じゃないかなぁ…って…」
「慎二までヒドイ…」

ここは『TAKERU』のビルのオフィスの一角。
ちょっとした休憩場所になっていて何個かのテーブルとイスのセットがあり
パノラマ状の景色を見渡しながらお茶が飲める。


「今回は仕事じゃないの?」
「うん。今回は個人的にね!その為に頑張って向こうでの仕事こなして来たんだもん。
『ロングバケーション』ってやつだね!」
デュークがニッコリと嬉しそうにそう言った。

「?…なに?耀君?」
「ううん…デュークって背が高いなぁって…椎凪よりも高い?」
「僕ハーフだからね。椎凪よりはちょっとだけ高いよ。185!耀君はちっちゃいね ♪ ♪」
「うわっ!!」
そう言いながらオレの事を抱きしめる。
「可愛いなぁ…♪ ♪」
「だ…大丈夫なの?デューク?オレ女だよ?」
デュークは確か筋金入りの女嫌いのはずじゃ…

「うん。耀君は平気!椎凪が好きなのは僕も好き ♪ ♪ 本当はね耀君が欲しかったんだよ。
でも椎凪のモノだから…椎凪のモノには絶対手を出さないよ。」

そう言ってオレの顔を覗き込む…
わぁ…綺麗な金髪に…真っ青な瞳…本当に外国の人なんだな…
なんて当たり前の事に感心してしまった。
アメリカ人のお父さんと日本人のお母さんのデュークは日本に興味があって
日本語もとっても上手。

「でもこの位ならいいよね ♪ ♪」

「 !!! 」

優しく…包み込む様にまた抱きしめられた!

「ちょっとデュークっ!!!何してんだよ!!」

グッドタイミングで椎凪が現れた。
「椎凪!!」
オレよりも先にデュークが椎凪を呼ぶ…

「今度は椎凪に抱きつこ〜〜〜〜っと ♪ ♪」

「!?…え?…うがぁ!!ちょっと…やめろって!!苦しいっ!!デューク!!」

「椎凪っ!!大好きだよっ ♪ ♪」

今度は椎凪に思いっきり抱き付いてる……
椎凪とデュークはとっても気が合う…
どっちかって言うと椎凪の方がしっかりしててお兄さんって感じ。
デュークは椎凪とは違う幼さがあって…純粋な所がある…
だからあんなにピアノが上手なのかな?とっても綺麗で優しい音を出すんだ。


「祐輔まだかなぁ〜」

さっきからそのセリフばっかりのデューク…
「もう少しで終わると思うんですけど…」
「次の撮影の衣装合わせだっけ?」
「はい。でももうそろそろだと思うんですけど…」
「デュークは今度はいつまで日本にいるの?」
「んー…2週間くらいかな…でもね今度日本で部屋借りてこっちに永住しようかなって♪ ♪」
「ええ??マジ??」
「だってこっちなら皆いるし…祐輔だって居るもんっ ♪ ♪ 
祐輔電話もメールもしないから僕…淋しくてさぁ…ふう…」

デュークってばホントに祐輔にぞっこんなんだなぁ……
絶対結ばれないのに…メゲないんだよな…
オレは変な事で感心してた。

「橘さん!」

「あ!未理ちゃん。終わった?」
「はい。もうバッチリですよ!流石『新城たける』です。祐輔さんにピッタリの衣裳でした。」
「ふふ…社長祐輔の事可愛くて仕方ないからね…」

「恐ろしい事言うんじゃねーよ!慎二っ!!」

「もう祐輔さんってばさっきからソレばっかりなんですよ。」
「いつもの事だからね…あ!彼女うちのスタッフの『鈴城 未理』(suzuki mikoto)ちゃん。
今回の祐輔の仕事のお手伝いしてもらってるんだ。」
「珍しいね?他の人入れるなんて。」
オレと祐輔の仕事の時はあまり関係ない人物は入れない事にしてるのに…

「僕がちょっと手が離せない仕事が入ってて…それに彼女頼りになるから。」
「頼り?」
「はいっ!祐輔さんの事は絶対外部にバレない様に私が頑張りますので!!」
うわ…すごいやる気…
「彼女祐輔のファンなんだ…」
「へぇ…」

「祐輔ぇ〜〜〜!!会いたかったよぉ〜〜〜 ♪ ♪」

「 !!! 」

デュークが待ってましたとばかりに祐輔に突進して行く。

「ちょっとあなたっ!!一体何なんですか?」
「ん?」

そう叫ぶと祐輔の目の前に両手を広げてデュークを遮った…
へぇ…何だか面白い事になりそうな気配だ。

「何?このチビ?」
「なっ!!チビとは何ですかっ!失礼なっ!!
自分が背が高いからって威張らないで下さい!!」
「威張ってなんかいないだろ…ほら!退いてよ!邪魔なんだよ!!祐輔ぇ ♪ ♪」

「近寄るなっ!この変態っ!!」

「うわっ!!」

デュークが思いっきり突き飛ばされた…すごい怪力?
デュークはオレより背が高いから…185はある…
あの子は…耀くんよりもちょっと背が低いから…157・8?

なのに…デュークが阻まれた?スゴイとしかいい様が無いんだけど……


「何すんだよっ!僕がどれだけ祐輔が来るの待ってたと思うんだよっ!!」
「そっちこそ祐輔さんに何しようとしてるんですか!」
「祐輔の事抱きしめるに決まってるだろっ!」
「はぁ?男同士でしょ?祐輔さんに変な事しないで!!!」
「うるさいなぁ!!!いつもの事で僕はそうしないと元気が出ないのっ!!
もう朝から今まで1回も祐輔の事抱きしめてないから倒れそうなんだよっ!!」
「何わけの分からない事いってるんですか!!」

もの凄い2人の言い合いの最中…祐輔が呆れた顔で歩き出した。

「祐輔?」
「オレは帰るぞ…付き合ってらんねぇ…疲れたし…
和海の所に寄ってくからな。勝手に帰ってろ…デューク。」

そう言ってサッサと歩いてエレベーターに乗ってっちゃった…
流石祐輔…我が道を行くですか??


「 ああ〜〜〜〜〜〜っっ!!祐輔が行っちゃったっ!!!」

デュークがこの世の終わりかと言う様な声を出した。

「どうしてくれるんだよっ!!祐輔があの子の所に行っちゃったじゃないかっ!!
それに帰って来るまで僕もたないよっ!!!このおチビっ!!!」

「はぁ?人のせいにしないで下さいよっ!!じゃあ私が祐輔さんの代わりに抱きしめてあげます!」

「 「 「  !?  」 」 」

オレ達はちょっと気になった。
デュークって女の子に抱きつかれるとどうなるんだろう?
話すくらいは平気らしいけど…触られたりするとどうなるんだ?
まさか失神したりしないよな?

「慎二君デュークが女の子に触られるどうなるか知ってる?」
「はぁ…話だけ聞いた事ありますけど…実際に見た事は…
だから半信半疑なんですけど…見てみたい気もします。」
「へぇ…で?どうなるの?」

「吐くらしいです。」

「 「  え!? 」 」

オレと耀くんが疑問符をハモった瞬間…

「  ぎゅっ! 」

っと彼女がデュークの事を本当に抱きしめた。

「これで祐輔さんに変な事しないで下さいよ!!」

「 ………………… 」

デュークは硬直したままだ…やっぱあの話は大袈裟に…って

「 ……うっ!!」

「 「 「 「 !!!  」 」 」 」

デュークが両手で口を押さえて駆け出して…廊下の端のトイレに駆け込んだ!

「……マジ?」


しばらくしてデュークが真っ青な顔で戻って来た。
肩で呼吸して…さっきとはまるで別人の様にやつれてる…

「大丈夫ですか?デューク?」
「はぁ…はぁ…最悪…女に抱きつかれるなんて…うえっ…」
そう言ってまだ具合が悪そうだ…
「まさか本当にこんなになるなんて知らなくて…知ってたら止めたんですけど…」

「でも…いくらなんでも大袈裟じゃないですか?私だってちょっと傷つきます!」

「うるさいっ!君に何がわかるっ!女に抱き付かれるなんて吐くほどイヤなんだよっ!!」

「デュークは昔ちょっとあって女性嫌いなんだ…」

「だから男性がいいって事なんですか?」
「だからかどうかはわからないけど祐輔の事は好きらしいね…」

「女なんか大っ嫌い!!!べーーーー!!!ふんっ!チビ!」

「!!!カチンっ!!!なっ…何ですってぇーーー!!」

「もう…2人共止めなさいってば…ね?デューク…未理ちゃん…」

「私がいる限り祐輔さんには絶対手を出させないわよ!」
「はぁ?何言ってるのかなぁ?僕は祐輔の所に泊まってるんだよ?そんな事無理だもんね!」
「じゃあ私も祐輔さんの所に泊まり込みます!」

「 「 「 ええーーっっ!? 」 」 」

オレ達3人はもうビックリで…いや…それって無理じゃないかな?
祐輔がそんな事許す筈も無いし…ってそれなのに祐輔ってば…

「別にかまわねーけど…」

なんてあっさりと承諾しちゃったし…
一体何考えてるんだろう?祐輔ってば!?


仕方なくオレと耀くんと慎二君は成り行きを見守るしかなく…

未理ちゃんは大はしゃぎで…デュークは納得出来ないとずっと文句を言い続けてた…