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     * 時期は耀が女の子に戻った後あたり。*





デュークが帰国して1ヶ月が過ぎた…毎日が何か物足りない感じで…変な感じ。

「未理ちゃん!」
「あ…橘さん…」
「どうしたの?元気ないね?」
「いえ…何だか気が抜けちゃって…」
「え?だってあれから1ヶ月経ってるよ?もういい加減デュークのいない生活にも慣れたでしょ?」
「良くわからないんですよね…ああ言うタイプ今まで会った事無かったから…
いなくなった途端ホント気が抜けちゃって…」
「連絡取り合ってるの?」
「時々…メールくらいですかね…
デュークも向こうでコンサートやらリサイタルやらで忙しいみたいですし…」

「…未理ちゃんに仕事頼みたいんだけど…いいかな?」

「はい?」
「終わったらそのまま直帰でいいから。」
「え?直帰ですか?珍しいですね…」
「そうだね。でも今回は特別かな?空港にお客様を迎えに行って欲しいんだ。」
「お客様ですか?海外の方?」
「うん。」
「あ…でも私英語得意じゃないから大丈夫でしょうか?」
「大丈夫!彼日本語ぺらぺらだから。」
「彼?男の人なんですか?」
「そう。行けばわかるから。」
「………行けばわかるって……」



とにかくそれ以上何も話してくれなくて仕方なく空港のロビーの言われた場所で待っていた。

「………どの人なのかしら…」
未だにそれらしき人物は現れない……

「未理ぉ〜〜〜 ♪ ♪ ♪ 」

ガバッといきなり後ろから抱きしめられた!!!
「きゃっ!!ってデ…デューク!?」
「会いたかったよぉ〜〜♪未理!!」
「ちょっ…ンっ…デューク…」

1ヶ月ぶりのデュークのキス攻めにあった。


「どうして?来るなんて言ってなかったじゃない?」
「驚かそうと思ってさぁ ♪ 他にもちょっとこっちで用事があったから…
また2週間くらい滞在するから!しばらく一緒にいられるね ♪ 未理っ!!」
「……2週間…?」
「うん。嬉しい?未理?」
「……うん…嬉しいよ…デューク…」

確かに嬉しかった…またしばらく一緒にいられる…でも…
また2週間経ったら…デュークは帰っちゃうって事だものね…


「え?祐輔さんの所にお世話になるんじゃないの?」

タクシーで着いた先は『TAKERU』のビルからも近い都内のホテル。

「今回はちょっと事情があってさ。」
「事情?」
「うん。こっちにいる2週間の間このホテルで未理と一緒に暮らす事にしたんだ。」
「へぇー……ん!?…今私とって言った??」

「うん。言ったよ。だから今から2週間ずっと一緒だね!未理っ ♪ ♪」

「…………」

デュークが…とっても嬉しそうな笑顔でそう言った。

「ちょっ…ちょっと待って…デューク…何でそうなるの?」
「何で?……説明してもいいけど…ここじゃあゆっくり話できないから
ちゃんとチェックインして部屋で話そう。ね?未理…」
「うん……」

急なデュークの申し出に唯々驚くばかりで…
確かに祐輔さんの所にいた時と変わりないけど…今回は2人っきりでしょ?
一体…何で???訳がわからない……


「どうしてかと言うと…」
「うん…」

チェックインを済ませて早々に部屋に落ち着いた私とデューク…
部屋に入って驚いた。
100畳近くあるんじゃないだろうかと思える様なワンフロアの部屋に
グランドピアノまで置いてある…
何もかも高級で…一体1日いくらするんだろう?なんて心配してしまうほど…

「こ…こんな高級な部屋2週間も平気なの?デューク…」
「え?ああ…大丈夫。慎二が話を付けてくれて此処にいる間
何度かピアノ演奏すれば半額にしてくれるって言うし…」

……慎二さんってば…どんだけ顔が広いんだか…
でもビジネス的に此処で演奏って平気なのかしら??
なんてそんな心配をしてるうちにデュークがいきなり話し出した。

「どうしてかと言うと…」
「うん…」
「僕が未理を好きかどうか確かめるため。」
「……!?…はぁ?何よそれ!」
「本当はこの前帰る時…未理に一緒に来て欲しかったんだ…」
「え?」
そんな話…初耳なんですけど……
「でもね…僕自分の気持ちに自信が無くて…
慎二にそれじゃ未理を連れて行っちゃダメって言われちゃったから…」
「え?」
そんな話がされてたの??私全く知らないんですけど…?

「でもね…向こうに帰って…1人になったら…未理の事ばっかり思い出すんだ…
それに…すごく未理に会いたかった…」

「デューク……」

「だから僕はきっと…未理の事が好きなんだ…
だから今回はそれを確かめる為に未理と2人で生活してみようと思って…」
「………してみようって…」
「イヤ?」
「……イヤって……だって…急にそんな事言われても…その…」
心の準備が出来てないよ……

「イヤじゃないんだね?良かった!僕嬉しいよ ♪ ♪」

「え!?…いや…そんな…その…」
迷ってるのをそう解釈された??
「わぁ〜い!今日から未理と2人っきりだぁ !!」
「……………」

拒否出来ない…しない…私がいた……
私って…もしかして……もしかしてなの??


「え?デュークが未理ちゃんと?」
「はい。」
「それはまた…大胆な行動に……」

今日デュークが来る事は未理ちゃん意外は皆知ってた。
だからてっきり慎二君の所に来てるのかと思ったのに…

まさか2人でホテルに直行とは…しかも2週間のアバンチュールですか?

「2人っきりって言っても未理ちゃんは昼間仕事ですしね。
実情夜くらいしか一緒にはいられないんですけどね。」
「それでも今度は祐輔抜きでしょ?大した進歩じゃん。そっかぁ…
上手く行けばいいけどなぁ…デュークがなぁ……
女の子の扱い慣れて無さそうだし……前来た時に教えておけば良かったかな?」
「テメェに教えてもらったら超エロイ事になんだろうがっ!バカ椎凪!」
「そんな事無いって!
初めての相手にはこう迫るとか…ガードの固い子にはこう迫るとか…って!はっ!!」

呆れ半分失望半分の耀くんの視線と目が合ったっ!!!やばいっ!!

「……椎凪…そうやって…他の子のこと……」

「わぁーーーち…違うって耀くん!あくまでも一般論で誰もオレの実体験なんて…やだなぁ…はは…」

「苦しいいい訳だな…」
「墓穴掘りましたね…椎凪さん。」

「……………」
2人共…少しはフォローしてくれたって……いいだろうが…まったく…



そんな椎凪が墓穴を掘って皆に責められていた頃……

「未理ってお酒結構飲めるんだね。」
「え?うん…まあお付き合い程度に……」

2人でホテルのレストランで夕食を取って…帰りのエレベーターの中での事…
だって…何だか飲まずにはいられなかったんだもの……


「ふう…」

熱いシャワーウを浴びながら…思わず溜息…
私…何やってるんだろう…私は何を望んでるの?デュークの事……

「わかんない……くぅ……」

ちょっと飲み過ぎて…ポワンってなってる……

「未理!一緒に入ろうっ ♪ ♪」

「……!!!!!!」

勢い良く浴室のドアが開いて既に裸のデュークが何の躊躇も無く入って来た!
しかも裸の身体を隠そうともしないで………

「……いっ…やああああああーーーーー!!!!」

両腕で胸を隠してデュークに背中を向けてその場にしゃがみ込んだ。
「どうしたの?未理?」
「……いやっ!!出てって!!デュークのバカッ!!あなたさっき先に入ったでしょ?」
「なんで?一緒に入ろうよ?その為に一緒にいるんでしょ?」
「べ…別にその為にいるわけじゃ……って…わっ!わっ!!やめっ…」
そんな事言ってる間にデュークがしゃがんで背中から私の顔を覗く。

「僕未理の身体見たい。」
「なっ…何言ってんのよ!私はそんなつもり…」

「僕は未理の全部を知りたい…その為に日本に来たんだもの…」

「…………デューク……」


いつになく…真面目な顔のデュークに真っ直ぐ見つめられた…

あの…澄んだ青い瞳で見つめられて……

私は…その瞳を見つめたまま…動くことが出来なかった……