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* 時期は耀が女の子に戻った後あたり。*
「はい。未理ちゃんもどうぞ。」
そう言って椎凪さんが私の横にコーヒーを置いて行った。
「あ…ありがとう…」
「クスッ」
見上げた椎凪さんの顔が何となく意味ありげに微笑んだ様に見えたのは気のせい?
そう思った瞬間…椎凪さんが耀君の方に向きを変えて…
「耀く〜ん ♪ はいコーヒー ♪ 」
ってまたさっきと同じ態度と口調で耀君の所に駆け戻った。
もうそれからは今までの繰り返し…ううん…それ以上かも…
耀君の膝の上にまた寝転んで耀君に抱き着いて顔を耀君の身体に擦り寄せてるし…
起き上がったかと思うと耀君の頬にチュッチュッと軽いキスを繰り返して
今度は頬をペロペロと舐め始めた。
「くすぐったいよ椎凪。」
耀君はずっと本を読んでいてされるがままだった…
それも驚きだったけどあそこまで椎凪さんの纏わり付きを全く怒りもせず
文句も言わない事にびっくりした。
耀君って…どうなってるの……
「よし!読み終わった。」
耀君がそう言って本をパタンと閉めた。
「本当?」
椎凪さんが耀君の膝の上で俯せから起き上がって喜んでる。
「ごめんね椎凪。」
耀君が椎凪さんに向かって謝ってる!?なんで?
「ねぇ耀君…」
我慢出来ずに思わず声を掛けた。
「ん?」
「何で椎凪さんに謝るの?」
「え?」
「だってどう見ても邪魔してたのは椎凪さんでしょ?どうして?」
「え?あ…だって椎凪の相手しないで本読んでたから……」
椎凪さんを膝の上に乗せて頭を撫でながら申し訳無さそうな声で返事をした。
「でも…それって自分の自由な時間でしょ?それまで椎凪さんの為に?」
何も私が文句言う筋合いじゃないんだけど…何だか納得できなくて…
責める様な口調で聞いてた。
「んーー…上手く言えないけど…椎凪につまらない時間過ごさせちゃったから…かな?」
「オレは全然平気だよ。耀くんと一緒にいれればオレは幸せ ♪ ♪ 」
「……………」
そりゃあなたは自分の好き勝手やってるんだから幸せでしょうがっ!!
「少し…椎凪さん中心に考え過ぎてない?」
「え?そうかな?……そうなの?オレはただ椎凪がオレを必要としてくれるから…
それに応えたいだけ…傍にいて欲しいなら傍にいるし…キスして欲しいならキスするし…
オレに出来る事は全部してあげたいんだ……」
俯いてテレながら…でもちゃんと答えてくれた。
「それって疲れない?……鬱陶しいなぁ……って思う事無いの?」
「え?なんで?」
「え…!?」
思い切り真面目な顔で見つめられてそう聞かれてしまった…何でって……
私は言葉に詰まる……
「耀くんはね未理ちゃんとは違うんだよん ♪ ♪」
「椎凪……」
今までオレの膝でゴロゴロとしてた椎凪が起き上がって未理さんの方を向いた。
「耀くんは心が広くて深いんだ…
オレの全てを支えてくれるしオレがして欲しい事をわかってくれる…
だからオレの相手をして疲れるなんて事は無いんだ…
今まで沢山の女の子と出会ったけどオレを支えて愛する事が出来たのは耀くんだけだった…
耀くんはオレにとって特別なんだ…特別な心の持ち主……」
「…………」
私は何も言えなくて…黙って椎凪さんの話を聞いてる…
「デュークも同じだよ…未理ちゃん…」
「 !! 」
デュークの名前を聞いて…身体がピクリとなった…
「君に…支えて欲しいんだ…自分の全てを……ただそれだけだよ…」
「…………」
「だからデュークから逃げないで…支えてあげて…大変なことじゃないよ…
いつもデュークの事が好きって…思ってればいいんだ…
それをいつもデューク言ってあげればいいんだよ…たったそれだけだよ…
それだけでデュークは安心するんだ…」
何故か涙が込み上げてきて……堪え切れずに頬を伝って落ちた…
だって椎凪さんが私が不安に思っていた事の答えを…
いとも簡単に答えてくれたから……
「何も心配することも…不安に思うことも無いんだよ…
デュークが好きなのは未理ちゃんだけで…
デュークは未理ちゃんの事だけしか見てないんだから……」