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       * 時期は耀が女の子に戻った後あたり。

     右京 : 草g家55代当主。代々不思議な能力『邪眼』を持つ一族で右京は特にその力が強く
         耀のトラウマを治療した。その後耀を養女として迎える。
         耀を溺愛!なので椎凪の事は認めたくない… 本編 78話から治療のお話あります。*






「あふ………」
「あ…耀くん起きた?」

「………?だれ?」

「………」

目を擦りながら耀くんが普通に聞く…
オレは物凄いショックだったけど原因は自分だから……

「し…いなだよ……」
「しいな?……右京さまは?」
「……もう少しで会えるよ…」
「ほんと?」
「本当だよ。」

どうやらなかなか右京君に会えないから耀くんは疑い始めたらしい…
昨夜何気に思ったんだよな…6歳の耀くんにオレ会えたんだって。

前右京君の所に耀くんが行ってた時は今の耀くんには会えなかったから…
だから会ってた右京君や祐輔や慎二君が羨ましかった。

「ねえ耀くん。」
「ん?」
「美味し〜い朝ごはん作ったから一緒に食べよう。」
「え…ほんとにおいしいの?」
「美味しいよ。」

どんな耀くんだって基本は変わらないはずだから。

「おいし〜い ♪ 」
「でしょ!」

予想は的中!流石に食べるのはちょっとゆっくりだし量も少ない…けど…

「……モグモグ…ん…モグモグ…」
「…………」

食べてる耀くんが…これまた何ともカワイイ〜 ♪ ♪ ♪
あの口のモグモグの動きがまたらなくカワイイ!!

「後で外に出掛けようか?」
「え?」
「ね!」
「でも…右京さまがまだ耀は外に出ちゃダメだって…」
「大丈夫!オレが一緒だから。」

この耀くんと一緒に出掛けてみたかったから。

「…………」
物凄い警戒の眼差しを向けられた。
でも…頑張れオレ!!!


「ふわぁ……」
まるで初めて街の中を見てる様な耀くんの驚き振りだった…
いつも一緒に歩いてる街なのに……

「あれは?アレ!!」

見る物見る物興味を示してオレに聞いてくる。

「それは…」
だからオレは全部答えてあげる。

2人でたくさん歩いてる食べて買って……見た目はいつもと変わらない耀くん…
でも…オレの事を知らない耀くん………

それでも…オレはこの2人だけの時間が愉しかった……



『やあ…慎二君どうしたんだい?』

「右京さん…すいません…旅先にまでお電話しちゃって…」

草g家の馴染みの執事の人に右京さんの連絡先を教えてもらって
やっと話していると言うわけ…

『一体どうしたんだい?君がこんな事までするなんて何かあったのかい?』
「手短にお話しますけど…あの…」
『ん?』
「耀君が…」
『耀が?』
「記憶が無くなって…6歳の耀君になってるんです…あの…僕たちの事を知らない耀君に…」
『…………ほう…』
「!?…右京さん?」
僕はもっと右京さんが驚くかと思ってたのに…何故かそんな反応で少し驚いた。
「驚かないんですか?」
『どうしてそんな事になったのかな?』
「それが……その…ちょっと言いにくいんですけど……」
まさか椎凪さんが耀君を感じさせ過ぎて失神させたからなんて…ちょっと言いにくい…
もう…椎凪さんってば……
『彼が…椎凪君が原因かい?』
「え?…あ…はい…」
『やはりね…』
「!?…右京さん分かってたんですか?」
『ああ…いつそうなるかはわからなかったけれどね…そう…』
「あの…一体どう言う事なんですか?耀君は大丈夫なんですか?」
『ああ…いつ耀は子供に戻ったんだい?』
「昨夜です…」
『なら大丈夫…明日の朝には元に戻るよ。』
「明日の朝ですか?え?一体どうして??」
『僕がそう暗示を掛けたからさ…耀にね。』
「右京さんが?」
『椎凪君には少しお灸を据え様と思ってね…ついにその時が来たんだね。』
「……あの…」
『以前耀と2人で北海道に旅行に行った事があっただろ?』
「はい…」
確か耀君が女の子に戻ってしばらくしてからの事だったと思うけど…
『その時にね…多分椎凪君の事だから1週間耀に会えないからと
旅行に行く直前まで耀に無理をさせてたらしいんだ…
飛行機の中で耀はぐったりして…とても疲れていた…
相当椎凪君に無理をさせられたんだと思う…身体にも情痕が沢山付いていたし…』
「…………」
右京さん…耀君の身体…調べたのかな?なんて想像してしまった。
『男女の仲の事だからあまり口出しする事では無いとは思うのだけれど…
流石に僕も我慢なら無くてね……僕の大事な娘に……』
「……………」
最後の方は本当に椎凪さんの事が憎らしいと言う様な言い方だった…椎凪さん……
『だから耀がどうしても堪えられなくなった時僕の所に来た時に戻る様に
暗示を掛けておいたんだよ。椎凪君の事を忘れる様にね!』
「え?」
『それが1番彼にとって辛い事だからね。
僕の事しか知らない耀に会う事がどれだけ彼にショックを与えるか……』
「う…右京さん?」

『思い知ればいい…少しは反省するだろう。』

「…相当落ち込んでますよ…反省もしてるみたいですし…」
『そうかい?ならいいのだけれどね…』
「でも耀君は大丈夫なんですか?記憶を何度も弄って…」
『僕は耀の記憶は1度も弄っていないよ。』
「え?」

『僕のした事は子供の頃からもう一度同じ体験を耀に思い出させただけだ…女の子としてね。
だから消した記憶も忘れさせた記憶も無いよ。』

「そうなんですか…知らなかった…」

やっぱり右京さんってすごいと思った…流石だな…思わず改めて尊敬します!

『椎凪君には僕とは連絡が取れ無い事にしておきたまえ…その方が更に彼を追い詰められる。』

「え?…あ…はい…」

『可哀想に…きっとまた耀は辛い目に遭ったんだろう……』



ああ…右京さんは本当に耀君の事が大事で……
椎凪さんの事が……憎らしいんだろうな……

ちょっとだけ…椎凪さんに同情……かな…本当は同情の余地無しなんだけどね……





「もうかえる!!耀右京さまのところにかえるの!!」

「耀くん!ちょっと落ち着いて!」

外出から戻って夕飯やお風呂も済ませた後眠くなった耀くんがぐずって泣き出した。

「うそつき!右京さまこないしあわせてくれない!!」
「…………」

昼間慎二君から連絡があって右京君とは連絡が取れないって言ってた。
でもオレにはそれはどうでもいい事だ……

「耀くん……」
「うっ…ひっく…うー…」
「………泣かないで……」
「!!」

そっと手を伸ばして耀くんの頬に流れてる涙を拭いてあげた。

「…んん…」
「ごめんね…右京君に会わせてあげられなくて…
右京君ね…ちょっと遠くに出掛けててまだ戻って来れないんだって……」
「ええ………耀のことおいて?うー……」

「……オレがいるよ…耀くんの傍にはいつもオレがいてあげる…
だから…泣く事なんてないんだよ……ちゅっ……」

優しく耀くんの頬にキスをした…

「……!!!!」
耀くんがびっくりした顔でオレを見てる。
「好きだよ…耀くん…愛してる。」
「あい…してる????」
とっても不思議顔…そっか…まだ『愛してる』って言葉知らないんだ…

「愛してるは好きがたくさん集まったみたいかな…耀くんの事がたくさんたくさん好き。」

「耀のことが?なんで?」
「耀くんはオレのたった1人の女の子だから。ちゅっ…」
また頬にキスをした。

「………右京さまとおなじだ……耀こわくない…なんで?」

「それは…」

ずっとベッドの上で向かい合って座ってた耀くんを抱きしめた。
耀くんは大人しくオレの肩に顎を乗せて腕の中に収まってる。

「右京君以上に耀くんのこと大事に思ってるからだよ……
右京君より前から耀くんの事好きで…愛してたんだ…」

そう囁いて耀くんの頭に頬をスリスリした…
そしたらそのままカクリと耀くんの頭がオレとは反対に傾いた!?

「……ん?耀くん?……って!ウソっ!!寝てるし!!!!」

カックリとそのままオレの腕に滑り落ちて…可愛い寝顔で眠ってる…
そう言えば前も愛の告白したのに眠ってたって事あったな……クスッ…

「相変わらずだね…耀くん…オレを焦らすの上手なんだから……」

オレはそう呟くとちょっと長めのキスをして…耀くんを抱きしめながら眠った…
子供の耀くんにもオレの事覚えてもらえたかな……



        覚えてて……欲しいなぁ……





「ん〜〜〜あふっ…」

「あ!耀くん起きたの?」

覗いた寝室でちょうどベッドで起きあがった耀くんに声を掛けた。

「あ…おはよう椎凪。」

「え?」

「ん?どうしたの?」
「オレの事……わかるの?」
「?わかるよ…どうしたの?」
「じゃ…じゃあオレの名前呼んでみて!」
「え?椎凪だろ?変な椎凪…!!!」

「……耀くん…」

椎凪がオレを力一杯抱きしめた。
「どうしたの?椎凪…何かあったの?」
「ううん…なにも無いよ…何にも………耀くん…」
「ん?」

「オレの事好き?愛してる?」

「………好きだよ…愛してるよ…椎凪…」

「…………」
いつもの…優しい耀くんの声……

「……ごめん…ごめんね耀くん…」

「椎凪……?」

何だか良くわからなかったけどオレの事をぎゅっと抱きしめる椎凪をオレも抱きしめ返した。

「あ……」
椎凪がそのままオレをベッドに押し倒す…
「椎凪……」
本当は何かあったのかな……

「愛してるよ…耀くん……」

仰向けのオレの胸に顔をうずめながら呟く様に言う……
「うん…」
「抱いて…いい?」
「!?」
椎凪が珍しくオレにそんな事を聞く。

「いいよ……」
「うん……ありがとう…」
「本当どうしたの?」
「ううん…何でもないよ……」

オレの胸に顔をうずめたまま…
やっぱり…ちょっと変な椎凪……



「……ン……ぁ…」
椎凪がオレにキスをしながら優しく身体を撫でる…
それはとっても優しくてオレを大事に思ってくれてる掌だ…

「………ンア…や…椎凪…そこダメ……ン……」

椎凪の唇がオレの敏感な所に優しく触れるから……
そういえば確か椎凪に抱かれてた記憶があるんだけど……
ゆうべの事じゃ無い様な……どうだっけ?良くわからない……

まあいいか…だってオレ……今…椎凪に抱かれてるんだもん…


……何度抱かれても……椎凪ならオレは幸せだから……




結局耀くんは子供に戻った時の事を覚えて無かった……
あんなに子供の耀くんと思い出作ったのにぃ〜〜〜〜なんでだぁ!!??