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ひょんな事から大学で雑用を手伝う事になったオレ…

何とか片付いてコーヒーを飲んでたらそんなオレの前に
耀くんの事を好きだと言う男が現われた…

オレはそっと  『 オレ 』 を出して様子を窺う事にした。



「そんなに可愛い子なんだ…その子…」

オレはしらばっくれてそんな事を問い掛ける。

「はい。大人しい感じで…今時の子と違ってチャラチャラした感じが無くて…
僕のタイプにピッタリなんですよ〜 ♪ 」

「へえ………でもそんな子なら彼氏いるんじゃない?」
「まあそれが妥当なトコだな…」

滝沢と言う女がオレに頷いた。

「いつも一緒にいる人がいるんですけどどうやら恋人ではなさそうで…男友達みたいで…
その人が彼女に近付く輩は全部廃除してるらしく…
きっと彼も彼女の純心無垢な所に惹かれてるんですよ〜」

「…………」

何だかとんでもなく浸っちゃってるけど…
まあ祐輔の事もハズレてるワケじゃない…でもそんな生易しい気持ちじゃなくて
耀くんに近づく奴には容赦無く鉄拳制裁が待ってる。

人見知りの激しい耀くんにはそれは必要な事でだからオレは
大学では安心して祐輔に任せてる。

「で?君はどうしたいわけ?」

オレは 『 オレ 』 で静かに尋ねる…

「え?」

途端に赤くなる。
ますます堂本君に似てる…ウブを通り越してムカつく…

「え?あ…とにかく1度話せたらって思ってます…それからお近づきになれれば…なんて…」

「ふ〜ん…でもさ本当は出来たら付き合いたいなんて思ってるんだろ?
それから出来ればデートだってしたいし上手くいくならいつかキスだってしたい…
そうなれば男だから彼女と愛し合いたいよな…」

「な…何でそこまで話が飛躍すんですか!そんな…」

「はあ?普通考えるだろう男なら?それとも妄想の中で全部経験済み?」

「え″え″っっ!!!」

「あ!そうなんだ…大人しそうな顔してヤラシイなぁ〜茂手木クン…」


この野郎…殺す!

妄想でも耀くんにそんな事許さない…


「そ…そんな事…考えた事無いですって〜」
「あれ?この前彼女と夢の中で初デートしたって言ってなかったっけか?」
「 ! 」
「わあああ!!滝沢さぁん!!やめて下さいよぉ〜!!」

「でもそれは彼女に彼氏がいない事前提だよな…彼氏がいたらどうすんの?」
「え…あ…それでも……だったら友達でも……構わな……」

バ ン ッ !!

「…わっ!!!」

オレはいきなり立ち上がって彼の顔スレスレの所で後の壁に手を叩きつけた!

「そう言う時は素直に諦めたら?彼氏が超ヤキモチ妬きで嫉妬深かったらどうする?
君ボコボコにやられちゃうかもよ?」

耳元に口を近づけて囁く様に話し掛けた…

「そ…そんな事!あの彼女の彼氏ですよ?
そんなヒドイ事するような人と付き合ってるわけ無いです!」

「…………くすっ……」

「な…何ですか?」

「いや……君っておめでたいなぁ…って思って…クックッ……
それに見かけによらずしつこいんだ…」

1歩後ろに引いてオレは 『 オレ 』 で静かに笑う……

「だって…僕の理想のタイプなんです……ちょっとくらいは頑張りますよ。」

「………そう……」

確かに受け取ったよ…

オレに対する宣戦布告……


それから直ぐに談話室の入り口のドアがノックされた。

「はいどうぞ。」

「失礼します…」

そっとドアが開いて…ちょっとだけ開いたドアの隙間から誰かが顔を覗かせた。

「……え……?」

「あの…ここに…」

「あ…あ…あ…あなた……」

僕は一気に心臓がバクバク言い出した!
何で?何であの子がここに???

「何?茂手木君どうした?」

「た…滝沢さん!!か…か…彼女です!!」

「え?」


覗き込んでた彼女が僕の声に気付いて僕の方を見てくれた!!


こ…これはチャンス??チャンスなのかっっ!!!


「あ!あ…あ…あのっっ…!!」

「 !! 」

スゴイビックリした顔された!

「あ!」

「へ?」

そんな彼女が自分の意思ではなく何かに引っ張られる様に
入り口のドアから僕の反対側に引っ張られた!?

「…ちょっ…椎凪?」
「待ってたよ…耀くん ♪ 」

「な……???」

「や…ちょっと椎凪…?」

結構な身長差の彼が後ろからギュッと彼女を抱きしめる…
彼女は困った顔をしてたけどそれを振り払うわけでもなく…
抱きしめたれたまま彼を見上げてた…

「え?何??これって…一体どう言う…?」

僕は訳がわからなくて…

「初めまして茂手木クン…オレが彼女の超ヤキモチ妬きで嫉妬深い彼氏です ♪ 」

そう言ってさっきまで僕と話してた彼がニヤリと笑った…

「………はあ???え?…ええっっ!?」

「オレに対する宣戦布告確かに受け取った。
今日今ここで耀くんの事を諦めなければ容赦ないオレの制裁が君を待ってる。」

「え?」

せ…制裁って言った?この人…

「今ここでちゃんとオレに宣言してもらう。2度と耀くんに近付くな。
金輪際耀くんへの気持ちも綺麗サッパリ諦めろ…じゃなきゃ容赦しない……わかった?」

「……そ…そんな…」

「返事!!!それ以外喋るなっ!!」

「 !!! 」  ビ ク ン !!!

オレが 『 オレ 』 で殺気丸出しで怒鳴ったから彼がビクリとなった。

「し…椎凪?何?どう言う事?」
「耀くんには関係ない…これはオレと彼の問題…」
「え?」

心配そうな顔で彼女が彼と僕を見た…ああ…やっぱり優しい人なんだよな…

「そんな目でオレの耀くんを見んなっ!耀くんはオレのモノだ…
他の誰にも渡したりなんかしない…だから諦めろ。オレと耀くんの間に存在する不安要素は
何であろうとオレが全て排除する!耀くんに男の友達なんて要らない!」

「え?椎凪?何のこ……んっ!!」

喋ってる途中で椎凪が強引にオレの口を塞いだ!もちろん自分の唇で!!
だからオレと椎凪は初対面のこの部屋にいる2人の目の前で
延々とキスをしてるって事だ!!

しかも舌を思い切り絡ませて来る…ディープキスっ!!

「…………」

2人の視線だけは感じる…

「うぅ…ン…んん〜〜〜!!」

普段オレは椎凪のキスを拒んだりしない…
でも流石にこれは恥ずかしいし場所が場所だけに…

「ぷはぁ!!」

やっと椎凪から離れた。

「椎凪!!!もういきなり何する……って…わあ!!」

有無も言わさず椎凪がオレの身体をクルリと反転させると彼の正面に向かされて
オレの洋服の襟元をグイッと引っ張って広げる。

ちょっ…今日は……

「で…これがオレと耀くんが愛し合ってるって印…そしてオレのモノだって印でもある…」

「うっ!」

広げられた彼女の首筋と鎖骨のちょっと上にハッキリとわかるほどの…

「キス…マーク……」

バッチリと2つ見えた…

「本当は身体中に付いてるけどお前なんかに見せてやらない!」

「なっ!!」

思わず想像して頭が爆発した!!

「も…椎凪!!さっきから何言って…」
「耀くんは黙ってて言っただろ?これはオレと彼の問題なんだよ…わかった?耀くん…」
「椎凪……」

椎凪ってば…何で?なんで  『 あっちの椎凪 』 になってるの?
何か怒らせる様な事…あったの?

オレは急に不安になる…
このままじゃもしかして本当に椎凪が彼に手を出すんじゃないかって…

彼…一体何をしたんだろう?

「返事…まだ聞いてないんだけど?早く言えよ……」

「…………」

「早く……言わないなら言える様にしてやろうか?」

「し…椎凪…待って……やめて…」

椎凪がオレを離して歩き出そうとするから…オレも彼もビクッとなった。

「………あ…」

に…逃げなきゃ…絶対逃げた方が良いよな……
でも…足がすくんで…動けない……このままじゃ僕殴られる???

だってまさかこの人が彼氏なんて思わないじゃないか!!
この人だって一緒になって話してたし……

「椎凪!!やめ…」

そう叫んだ時入り口のドアが開いた。

「ん?」

「…………」

「祐輔!!!」


オレは一瞬でホッとした…だから祐輔に叫んでた。


「祐輔椎凪止めて!!」