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* 草g 右京 : 草g家55代当主。ずっと古い昔から続く旧家で政財界でも影響力のある一族。
想像出来ないくらいの富と権力を持っているらしい。
草gの一族は昔から不思議な能力を持っていて
邪眼と呼ばれる特殊な瞳で念を込めて相手を見つめると相手の意思を思うがままに操れる。
右京はその力が異常に強く相手の記憶までも操れる…そして…命を奪うことも可能らしい。
慎二の昔からの知り合いで慎二には無条件でどんなお願いも聞く右京…世間知らずな所が玉にきず!  *




 もうそろそろ6時半を回ろうと言う時刻。
 オレはなぜか堂本君と2人一緒に走ってる…

 「もー堂本君のドジッ!!何であそこで逃がすかなぁ…」
 「す…すみません…」
 「ビビッて無いであそこは蹴りでも入れれば良かったのに…」
 「すみません…… 」
 「もーこれじゃ帰るの遅くなるじゃん!」
 「すみません…ご飯の支度…」
 「本当だよ!もー」

 堂本君が何度も何度もオレに謝り続ける…
 窃盗犯の主犯格の男を追い詰めてまさか逃げられるとは 思いもしなかった。
 いつもの如く堂本君がドジッたせいだ。

 「堂本君…後でお仕置き決定ね!」
 走りながら素っ気なく言った。
 「ええーっ!?またですか?」
 『また』と言う所が今まで何度お仕置きされたか雄弁に物語ってる。
 「当然でしょ?これで人質なんか取られて みなよ。もっと遅くなるじゃん。
ほらっ!早く走って!オレより若いだろっ!!」
 「はっ…はいっ」

 本当はもっと早く走れるけど堂本君にはちゃんと 責任とってもらわないとね。
 運のいい事にこの辺りは人影がない。街の中心部から少し離れてるからだ。
 この分ならもうすぐ犯人も捕まるはず… 堂本君がドジさえ踏まなければ…ね…

 いくつかの角を曲がるとどこかの大きなコンサートホールの正面に出た。
 この辺りでは一番大きなホールで最近出来た ばかりのはず…
 確か有名なピアニストがコンサートをするって…慎二君がこの前言ってた様な…
 あれ?今日だっけ?ヤバイよ…人質とられるんじゃない? はー気分が重くなる…

 転げる様に犯人が入り口に滑り込む。
 警備員も捕まえ損なった。
 頼むよー…どいつもこいつも…どんだけオレの邪魔すれば 気が済むんだよー…
元は堂本君だけどさぁ…

 一気にロビーに走りこんだ…でもロビーに人はいなかった。
 もうコンサートが始まりみんな会場へ入って しまっていたらしい…良かった…これで早く帰れる…

 オレっていつもこんな風に考えてる…刑事の仕事好きだけど耀くんの事が第一なんだ。

 オレ達の視線の先に人影が目に入った。
 何て間の悪い奴がいやがった…犯人が手を伸ばしその男(男だったんだ)を掴もうとした瞬間…

 「 気安く僕に触れるな!! 」

 「 !! 」

 たったその一言に犯人は手を伸ばしたまま動けなくなっていた…
 オレ達もその場で動きが止まる…

 「僕に触れていいのは亡き父と母…雪乃…」

  ? なんだ?そいつの瞳が段々と力を帯びてくる…

  「そして…慎二君だけだっ!!」

 そう叫ぶと同時にそいつの瞳から発せられた異常な力がロビー全体を覆いつくす…

 オレ達は離れていてなおかつそいつの視線は自分の目の前にいる犯人に 向けられていたから
 オレ達にはそれほど影響はなかったけど…
 でも…目の前で今のを喰らった犯人は…大きく目を見開きその場に崩れ落ちた。
 しかも痙攣してる…駆けつけた堂本君が声を掛ける。

 「お…おい…保田?どーした?おいっ!!」
 反応が無い…
 「堂本君…救急車 呼んだほうがいいよ…」
 「えっ?あっ…はい…」
 慌てて携帯で連絡を取る…
 その間オレは異様な瞳の力を持つこの男にずっと睨まれていた…

 こいつ…なに?目の力が異常だよ…
 仕方なくオレは『オレ』を出してそいつと睨み合っていた…

 「右京さんっ!!」

 「 !? 」

 「慎二君?」 「慎二君!」
  !? …声がかぶった。


 コンサートホールの前にパトカーのサイレンが鳴り響く。

 「まったくもー!一度犯人取り逃がしてこんな事になったんですって?あんな奴に!」
 ルイさんが機嫌悪そうに言う。
 「彼がね。」 
 堂本君を指差してオレが言った。
 「 …!! 」
 堂本君の顔が一瞬にして青ざめた。
 「 堂本ぉ…お前はぁ…いつもいつも何してんのよーっっ!!」
 ルイさんの雷が落ちる。当然だ。
 「すっ…すいませーーんっっ!!!」 
 オレはその場を離れ慎二君の所に移動した。
 「慎二君…」 
 何となく警戒してる自分がいた…
 「椎凪さん。」
 「ごめんね。もう少しで帰れると思うんだ…」
 「いえ。大丈夫ですよ。右京さんこう言うの楽しんじゃうんで…」
 そう話す慎二君の後ろにはさっきと同じ様に ソファに座る男が一人…

 彼の名前は草g右京…慎二君の知り合いで今日は2人でコンサートを聴きに来たそうだ。
 ただコンサートよりも久しぶりの再会に 話が弾み
 コンサートが始まっても2人で話している時に今回の事件に遭遇した訳だ。
 慎二君が飲み物を買いに行っている間に…

 この男…さっきみたいな目の力は感じない…自分でコントロール出来るんだろう…
 でも…座ってるだけなのに伝わってくる威圧感は半端じゃない…
 そいつがオレの方を向いた…

 「さっきの…良く立ってられたね…力を抑えてたとは言え普通無理だよ。
 凄いね…ちょっと気分悪いな…新城君以来だもの…」

 まただ…また…来る…

 「今の君なら簡単に潰せるね…ふふ…」

 どんどんアイツの瞳に力が集まる感覚…

 「やってみていいかい? 僕の気持ちが収まらないんだよ…このままではね。」

 どうやら本気でやるつもりらしい…
 チッ!めんどくせーなっ…仕方なく『オレ』になる…
 そして身体を強張らせた…

 「本当だね。変わった。」

 そいつがコロッと態度を変えて慎二君に向かって話しかけた。
 「ね。そうやればもう一回見れるって言ったでしょ?」

 「 えっ!? 」

 ワケがわからない。
 「あっ!すみません。椎凪さん。右京さんがどうしてももう一回あの椎凪さん見たいって言うもんで…」
 「はぁ? ちょっと…慎二君?」
 「本当にごめんなさい。あはっ!」
 「あはっ…じゃ無くて… 」
 「何だい?心が狭いな君は。」
 「あ…あのね…」

 まったく…人の事何だと思ってるんだよ…


 「あの…椎凪さん…」
 堂本君が不安そうにオレを呼ぶ。
 「あーー?なに?」
 超不機嫌なオレ。
 「これがお仕置きですか?…」

 とあるスーパーの買い物カートを押しながら堂本君がボヤく。
 「そーだよっ!全部払ってね。あとデザートねっ!」
 「えーーーっっ…」
 すごい不満そう。
 「君のせいで更に気分悪くなる事あったんだから当然だよ。」

 あの後草gと言う男に散々ナゼ『オレ』を隠すのか追求され
 結局謝りもせず最後まで超デカイ態度で帰って行った…
 全く何様だっつーの!!

 「何ですか?それ?」
 「君は知らなくていいのっ!!」
 「えーっ!?俺が知らなくていい事まで俺のせいなんですか?…」
 「あっ! 口ごたえしたっ!! これも追加ねっ!!」
 ドッサリその辺にある物を適当にカートに放り込んでやった。
 「 ああ〜〜っ!!本当にソレ今必要なんですかぁ?」

泣きが入る堂本君の事なんかあっさり無視してオレは耀くんに会えるまで
 ずっと機嫌が直る事はなかった。

 「え?右京さん?んー何度か会った事あるよ。 皆で食事する位だけど…」
 「いつもあんなに態度デカイの?」
 「え?ああ…古くから続く旧家の当主なんだって…屋敷も大きくてさ…
 今まではほとんど外の事に 興味無かったらしいんだけど
 オレ達と知り合ってからは色んな事に興味持ち始めたらしいよ。
 あの人ああ見えても椎凪より年上だよ。」
 「ええっ?そうなの?慎二君と同じ位かと思ってた…」
 オレより年上?…

 次の日…草g右京の身元の確認でとんでもない奴だと知る事になった。
 …この男がオレと耀くんに深く関わってくるなんてその時は思いもしなかったし…

まだずっと先の事だけどね…