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 …やだっ…来ないで…

 夢ので叫んだ…知らない男の人の手が何本も伸びてきてオレを捕まえようとする…
 何か…言ってる…?なに…?
 聞えない…わからない…でも全員の口が動いてて…何かを言いながらオレに近付いてくる…

 「 やだあああああ……!! 」

 自分の声で目が覚めた…

 「ハァ…ハァ…あ…夢…?」

 心臓がドキドキいってる…またいつもの夢だ…

 どんな夢か覚えてないのに…恐怖だけが残ってる…いつもそうだ…こんなに…怖い…こわいよ…
 じっとしていられなくて起き上がった…涙が止まらない…堪えても次から次に 溢れてくる…こわい…

 ── …… 耀くん …… ── 

 その時…椎凪のオレを呼ぶ声が頭に響た…

 「 !? 」

 いつもの椎凪の声…優しくオレを呼ぶ声…

 ── … 椎凪 …… 椎凪!!…… 椎凪!!! ──

 身体が勝手に動いた…ベッドを飛び降りて椎凪の部屋に走っている自分がいた…


 椎凪の部屋のドアの前…ドアノブに伸ばした手が止まった…急に我に帰る…

 なに?オレ…何をする…つもりなんだろう…部屋に入って…どうするつもり…?
 椎凪に…何を… 求めるつもりなんだ…?いつも…椎凪を拒んでるの…オレなのに…

 ドアの前でしばらく動けなかった…

 でも…こわい…こわい…一人は………こわい…


 ガ チ ャ

 椎凪の部屋のドアをそっと開けた…
 そう…顔…見るだけ…顔だけでも見れば… 大丈夫…

 足音を立てずに歩く…椎凪が寝ているベッドの傍まで来た…
 椎凪は背中をオレの方に向けて眠ってた…静かな部屋の中…
 椎凪の寝息とオレの 心臓の音しか聞こえない…

 ベッドの淵に手を乗せて膝を着いた…

 椎凪の背中…広くて…大きいなぁ…なんかホッとする…
 これで…大丈夫… 怖く…ない…こわく…ない…

 「うっ…」

 また涙が出てその場にうずくまった…

 「耀くん…?」

 椎凪の声がオレの名前を呼んだ…

 「あっ…」

 起こしちゃったんだ…泣いてる所…見られちゃった…
 こんな夜中に勝手に部屋入ったのバレちゃった… 急に恥ずかしくなって顔が赤くなる…

 「どうしたの?何で泣いてるの?」

 寝ぼけた声で椎凪がオレに聞く…勝手に部屋に入ったの…怒ってないの…

 「ああ…!…そっか…怖い夢見たんだ…」

 椎凪はそう言って…ゆっくりと起き上がるとオレの方を向いてベッドの上に座った…

 「おいで…耀くん…オレが 不安なくしてあげるから…」

 「 !? 」

 そう言って椎凪が両手をオレに向かって広げた…優しく…微笑んで…

 「あ…でも…」

 そんな事言っても 椎凪って裸で寝てるから…その…そんな…

 「大丈夫…変な事しないよ。」

 色々考えてモジモジしているとそれを見て察したのか椎凪がクスッと笑う…

 「こっちにおいでよ…耀くん。」

 思いっきり椎凪の胸に飛び込んだ…何も考えてない…ただ…椎凪に抱きしめて欲しかった…

 「うー…こわかったの…椎凪…オレ…こわくて…一人じゃ…こわくて……」

 どうしても涙が止まらない…椎凪に抱きつきながら子供みたいに泣き続けた…

 「だったらすぐオレを起こせば良かったのに…」

 優しくオレの頭を撫でながら椎凪がそう言ってくれた…

 「だって…だって…グズッ」

 そう言いながら耀くんが泣き続ける…
 オレは耀くんが泣き止むまで抱きしめたままじっとしていた…そんな耀くんの耳元にそっと囁く…

 「オレは耀くんの 為だけに存在するんだ…だから気にしないでいいんだよ…
 オレは耀くんの為だけに生まれてきたの…」

 そっと耀くんの顔を持ち上げてオレは顔を近づける…

 「好きだよ…耀く…ん……ん?えっ?」

 今まさにお互いの唇が触れる瞬間…!!耀くんの頭が「ガクッ」と横に反れた。

 「 ええっ!?うそっ!耀くん寝てるしっっ! もしかしてオレの告白聞いてない?ちょっと…」

 一度眠ったら耀くんは絶対って言うほど起きない…


 安心して眠ってしまった可愛い寝顔の耀くんを眺めつつ…
 オレはこのまま襲っていいもんかとマジメに考えていた…