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「瑠惟さん。お酒弱いんだからもうよしなよ。」

フラフラと歩く瑠惟さんの後を歩きながら声をかけた。
今日は久しぶりに瑠惟さんと飲みに来た…
本当に仕方なく…断るとうるさそうだったから…

「弱くないわよっ!!さぁもう一軒行くわよっ!!」
そう言ってオレの服を掴んで放さない…
「もーオレ帰るよ。オレあんま酒飲めないし…それに耀くん待ってるしさ。」
そう…耀くんが一人で待ってるんだよ…急につき合わされたから夕飯の支度もしてないんだから…
「あんたの事なんか耀君待ってないわよっ!!」
オレを指差して言い切る。
「待ってるよ!瑠惟さんのせいで今日夕飯作ってあげられなかったじゃないかっ!! もー…」
「大体さぁ!あんた見てっとムカつくのよねっ!!あたしの一番キライな男思い出すっ!!」
酔っ払ってイチャもんつけ始めた…もうホント最悪!
「はぁ?だったらオレの事誘わなきゃいいじゃん!」
「耀君の為に決まってるでしょ!!少しでも一緒にいる時間減らさなくちゃねっ!!」
瑠惟さんは耀くんの事が お気に入り。
オレが好きなの知ってて邪魔ばっかする…
「何その理屈!!もー余計なお世話だよっ!!エライ迷惑!!」
ホントにそう思った。
「それより あんたっ!!今日のさぁあの子供がいたなんて情報どこから仕入れてきたの?」
「え?ああ…一番古い友人見つけて…」
「どーせまたあんた得意の口説き文句でも 使ったんでしょ?」
そう言ってオレの胸倉を掴んで自分の方に引き寄せた。
「あんた得意だもんねぇー女たぶらかすの…キスぐらいしてあげたの?んん?」
酔っ払って据わった眼差しで覗き込まれた。
「しないよっ!!昔と違うの!」
「そーゆートコもあの男とソックリ!愛のバーゲンセールかっつーの!誰でもかれでも好き好きってさ!」
「オレ耀くん以外好きなんて 絶対言わない!!」
瑠惟さんの掴んだ腕を引き離しながら言い返した。
「ホント!ムカつく男っ!!」
「  !!  」
そう叫ぶといきなりオレの顔を 掴んでキスしてきた。
「ちょ…」
「ふんっ!!」
思いっきり舌を絡ませてくる…いつもの事だ…もー…
「…ん…」
今度はオレの首に腕を廻して本格的に なった…

まったく…オレは瑠惟さんの…その別れた男じゃないって…

「 んーーーーchu… 」
「もー…特別だよ…瑠惟さん…」
やっと唇を 放した瑠惟さんにそう言った。
毎回言ってるんだけど…聞いちゃいない…
「 んふふ… 」
オレの首に腕を廻したまま機嫌良さそうに笑う。
「キスはあいつ より椎凪の方が上手いんだよねぇー…」
「そりゃどうも!さ!帰ろ。」
オレにキスし続ける瑠惟さんに声をかけた。

「おかえり。椎凪!」
椎凪がやっと 帰って来た。
「ただいま。耀くん。ごめんね。遅くなって…」
玄関で出迎えてくれた耀くんを見てオレはホッとする…
あーやっぱ可愛いよな…癒されるよ… 耀くん
「ごめんね。瑠惟さん連れて来ちゃって…もーベロベロでさ…」
結局あの後自分の家には帰らないってゴネて…
挙句の果てに歩けなくなって… 仕方なく連れて来たってわけ…
「仕方ないよ。大丈夫?うわ…ホントすごい酔ってる…でもどうしようか…ソファじゃね…」
椎凪に抱きかかえられる様にもう 完璧に眠ってる瑠惟さんを見つめて考えた。
「オレのベッドでいいよ。オレ今日ソファで寝る…」
「だっだめっ!!椎凪のベッドはダメっ!!」
「え?」
耀くんが 大きな声で叫んだ。
「あ!オレのベッドでいい…よ…」
「え?でも耀くんどうするの?」
「な…何か考えるから…大丈夫…」
「別にいいよ?オレソファで…」
「ダメッたらダメなのっ!!」
「そ…そう?」

椎凪が不思議そうな顔をしてる…
でも…いくら瑠惟さんでも…ダメなんだ…
椎凪のベッドに…女の人が寝るなんて… 絶対ヤダもん…ヤダ…

瑠惟さんをオレのベッドに寝かせたから…オレはソファで寝る事にした…そしたら椎凪が…
「いっ…いいよ…オレがソファで寝るから…」
「何言ってんの!耀くんにそんな事させられないよ!
瑠惟さん連れて来たのオレなんだし…オレがソファで寝るからさ。
耀くんはオレのベッドで寝なよ。」
「う…ん…」
「おやすみ。」
毛布をかけながら椎凪がニッコリと笑って言った。
「う…ん…おやすみ…」
オレはトロトロと歩き出して…でも…でも…
「……椎…凪」
リビングのドアの手前で声を掛けた。
「ん?」
………すっ…
「え?」
椎凪が驚いた顔をした…オレが黙って椎凪に手を差し出したから…
「い…一緒に…」
「え?」
「一緒に…ベッドで… 寝よう…よ…」
椎凪を真っ直ぐ見れずに…目を反らしてそう言った…
「ええっ!?」
椎凪がもの凄く驚いて…ビックリしてた…

椎凪のベッドの中…
オレと椎凪はお互いきちんと上を向いて横になってる…
緊張してるのが分かって…さっきからずっと黙ってる…

『すっごい…緊張する…』
2人共同じ事を思っていたらしい…心臓の音まで聞えそうだった…
オレは自分から言っといて…今更ながらどうしよう…なんて思ってた…
「耀くん」
「ひゃっ!えっ?なっ…何?」
突然椎凪に声をかけられてもの凄く慌てた。
「夕飯…何食べたの?」
「え?夕飯?あっ…ああ…ご飯残ってたからチャーハン作った…」
「具は?」
「え?具?んーと…卵。」
「卵と?」
「えっ?卵!」
「卵だけ?」
「うん…」
オレは食べる事が大好きだけど…作る事は苦手…壊滅的に 料理オンチ…
数少ないレパートリーはインスタントラーメンとご飯に卵のチャーハン…
そのラーメンさえも時々失敗する…
「ごめんね耀くん!明日は美味し いご飯たくさん作るからね!!」
「椎凪…」
椎凪が起き上がって申し訳無さそうにオレに言う。
「うん。ありがと椎凪。楽しみに待ってる!」
オレは嬉しくて ニッコリと笑って返事をした。
それからしばらく明日のご飯の話しで盛り上がった。
「何が食べたい?耀くん。」
「んーとね…どんぶりモノもいいなー…魚もいいしー… カレーも美味しそう。
でもやっぱり中華も捨てがたいかなぁー…お鍋もいいしー…」
メニューは尽きない…
「じゃあさ少しずつ色々作ろうか。」
「本当? でも大変じゃない?」
「大丈夫。耀くんが喜んでくれるなら全然平気。」
「本当?明日楽しみー」
「一緒に買い物も行こうね。」
「うん。オレ作るの手伝う。」
「うん。一緒に作ろうね。」
それからもしばらくの間オレと椎凪は話し続けてた…やっぱり椎凪がいると…楽しいな…

「 くー… 」
耀くんが話し疲れて ぐっすりと眠ってる…

『ねぇ…椎凪…手…繋いで…寝てもいい?』

可愛く聞くから…思わず抱きしめそうになるのを必死で堪えた。
…可愛いな…耀くん… 嬉しかったよ…
一緒に寝ようって言ってくれて…手まで繋げたし…
オレは耀くんの手を握りしめながら可愛い寝顔をしばらく眺めていた…
「おやすみ…オレの…大事な耀くん。 」
寝てる耀くんの頬に優しくキスをして…

         オレも…心地いい眠りについた…