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ば ん !

乱暴に玄関のドアを開けた。
口には医者から貰った薬の紙袋をくわえてる。
そしてオレの腕の中には夕べから熱を出してぐったりしてる耀くんが 苦しげに息をしてる…

「ほら耀くん着替えて早く横になって!」
耀くんをベッドに座らせて声を掛けた。
「うん…」
か細い返事が返って来た。
オレは気にしつつも耀くんの部屋を出て薬をリビングのテーブルに放り投げた。
耀くんの部屋に顔を出して
「耀くんオレちょっと買い物してくるけどさ大丈夫…」
って…見ればまだもたもたと洋服のボタンを外してる。
「あ〜もう遅!こんな時にサラシなんか巻いてないの!」
「あ〜…」

耀くんの事なんかお構い無しに サラシを手早く剥ぎ取った。
しっかり耀くんの胸を頭に記憶させる。
耀くんも怒る元気も無いし好都合。

耀くんは時々風邪をひいたわけでもないのに熱を 出す…
それに深く眠る事も…耀くんにも理由は分からないみたいだけど
オレは耀くんの心の負担がピークになると身体が堪えられなくなって…
熱を出したり深く眠ったり するんだと思う…
オレは耀くんが食べれる物を買い出しに出た。

ポケットに耀くんの健康保険証が入ってた…さっき医者で使ってそのままだった…
「性別…女なんだよな…耀くんどう思ってるんだろ…」
きっとまた暗示かけられてるんだろうな…なんとも重い気分になった…

「耀くんただいま。大丈夫? って!わぁ耀くん!!大丈夫!!」
ベッドに寝てる耀くんが茹でダコみたいに真っ赤になってる…
「はぁ…はぁ…」
浅く短い呼吸を繰り返す。
「あちゃー…39.5度…」
オレは体温計を見つめてため息をついた…
「あ…アツイ…」
耀くんがパジャマのボタンを自分で外してはだけたから…肩があらわになって…
「うわっ…凄い汗…汗びっしょりだ…」

これは決して下心からでは無い。
汗をかいてそのままじゃ良くない。まめに着替えないと…
オレは洗面器にお湯を入れてタオルで耀くんの身体を拭いてあげる事にした。
「耀くんほら服脱いで。着替えるから。」
そう声をかけても耀くんは目をつぶったまま…答えない…
耀くんのパジャマを脱がせてた…もちろん下着も。
だから今耀くん は生まれたままの姿。
「んー…」
微かに抵抗された。
「ほら…じっとして…」
そんな抵抗なんか無視して絞ったタオルでまず顔を拭いてあげた。

首…腕…身体全体を拭いて行く…うつ伏せにして今度は背中。
あ…ヤバイ…ちょっと遊び心が…押さえきれず…腰から背中にかけて舌で舐め上げた…
「…あ…ん…」
「しょっぱい」
凄い耀くん感じてるんだ。
オレはしばらく耀くんの背中で遊んだ。

身体を拭いても熱は下がらない…
「はぁ…はぁ…」
荒い息遣いが続く…
「耀くん薬飲める?」
聞いてみたけど…
「って無理だよな…はは…」
耀くんを抱き起こして医者から貰った解熱剤の薬を耀くんの口に入れた。
オレが水を含んで耀くんに 口移しで飲ませた。

「コクン…」

飲んだ気配はしたけど一応確かめた。オレの舌で。
ゆっくりと…優しく…丁寧に…耀くんの口の中に薬が残ってないか…
「ん…んん…」
耀くんがまた力無く抵抗したみたいけど気にしない。
「大丈夫。残ってない。」
念のためにもう一度確かめた。さっきより…時間をかけて…

オレは 時々ズルイ…耀くんが寝てる間に色々な事をしてる…
キスなんて当たり前…流石に抱いたりはしないけど耀くんから見えない所に
キス・マークもつけたりする…
耀くんは一度寝ると 滅多な事じゃ起きない。遅くまで起きてた時とかお酒を飲んだら尚更。
ただでさえ朝が苦手なのに…絶対起きたりしない。

だからオレは耀くんの身体で遊ぶ。


「…ん?」

目が覚めてしばらくボーとなっていた…ここ…椎凪の部屋だ…オレ…
そうだ…熱が…あれ?これ椎凪の服だ…なんで?
ん?なんだ?肌に当たる服の感触がいつもと違う…
オレは不思議に思ってチラリと服の中を覗いた…

「 ! 」

オレはベッドから飛び下りて椎凪の所に急いで駆け寄った。
「椎凪!!」
「耀くん身体 大丈夫なの?」
朝ごはんの支度をしてた椎凪がニッコリと微笑んでオレを見た。
「もーなんでオレハダカなんだよ!それに椎凪の服って?」
慌てふためいて椎凪に 喚きながら訊ねた。
「だって耀くん熱で汗びっしょりでさ。一枚の方が着替え楽なんだもん。」
「楽ってどう言う事…?」
嫌な予感が頭を過ぎる…
「え?三回…? 四回着替えたもん。それにずっと傍にいた方が良いと思って一緒に寝たし。」
満足感一杯な椎凪の笑顔が還って来た。
「 !!…もー椎凪のバカバカ!! 」
耀くんが 顔を真っ赤にしてオレをバシバシ叩いた。
オレはそれを軽く受けながら
「え?何で?仕方無いでしょ?」
「見た…の?」
真っ赤な顔でオレを見上げながら耀くんが 聞いて来た…可愛い…。
「ちょっとだけね。」
ウソだけど。
「変な事…しなかったよね?」
「―――…うん…」
「なに?今の間は!」
あ…しまった…
「え?何も してないよ!」
耀くんが疑いの眼差しをオレに向けている…
「もーオレシャワー浴びて来る!!」
「無理しちゃ駄目だよ…まだ熱あるんだから。お粥作っとくね。」
照れる様に足早にリビングを出て行く耀くんを見送りつつ…ホッと溜息をつく。
ヤバかった…あまりの嬉しさにボロが出る所だった。

シャワーを浴びる耀くんの背中に沢山のキス・マークが付いている事を耀くんは知らない…