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「へぇ…こんな所にこんなのがあったんだ…」

隣の駅の駅前からちょっと外れたビルの裏に街が管理してる建物があって
その最上階にプラネタリウムが入ってる。
「この前仕事で動いてた時見付けたんだ。」
平日は二回。土日は四回上映されてる。値段も子供も対象らしく大人料金でもすごく安い。
今日は平日の最後の上映で 人もまばら…オレ達はこの後外で食事して帰ろうって事になってて…
椎凪はデートだって言い張るけどオレは無視!
そしたら『キスしたからもうオレ達恋人でしょ』って 突っ込まれた…
確かしたけどあれは椎凪の病気のお見舞いって言うか…乗せられたって言うか…

「い…今はキスくらいしたからって恋人なんかじゃないの!」

って知らんぷりした。もー椎凪のバカ…


「うわ…リクライニングだ。フカフカ…気持ち良い。」
生まれて初めてプラネタリウムに来た。
「椎凪は来た事あるの?」
すぐに横で同じ形のイスにもたれ掛かってる椎凪に聞いた。
「子供の頃施設の遠足で来た事あるよ。だから大分前だけどね。」
「本当に子供の頃なの?つい最近 だったりして…女の人とのデートで。」
横目で疑いの眼差しを送った。さっきのお返し。
「えー?もしかしてヤキモキ?彼氏の過去が気になる?」
「誰が彼氏 なんだよ!!椎凪は彼氏なんかじゃないもん!ただの友達だからね。」
椎凪の方が一枚上手だった…余計な事言うんじゃ無かった。

『わぁ…真っ暗…』
上映が始まって辺りは真っ暗…目が慣れても周りが良く見えないなんてすごく暗いんだ。
ナレーションと一緒に人工に映し出された沢山の星が見えた。
『ワァ…綺麗…』
本当の星空じゃ絶対こんな風には見えない。
機械で映し出されたとしても感動した。

「耀くん…」

耳元で椎凪の声がした。
でも暗くて 顔はわからない…感で椎凪の方を向いた。
「!!」
唇に何かが触れた…
「綺麗だね。」
椎凪は何事も無かった様に話す。
え?今椎凪が何かしたんじゃ…? でも確信がなかった…
「ね!」
「う…うん…」

何だったんだ?今の…不思議に思いつつイスに座り直して星空を見た。
見え易い様に少し仰向けだ…上を向いて 星を見てもなんだか上の空になった…
でもそんなのもったいないと思い直して星空に集中する事にしたけどまたすぐに椎凪に呼ばれた。

「耀くん。」
「な…なに…」
思わず警戒してしまう。
「どうしたの?」
「べ…別に…」
声で椎凪が気がついたらしい…
「部屋からこんな星空が見えたら最高なのにね。」
また耳元で椎凪の声がした。
「そうだね…」
なるべく普通に話した…つもり…
「耀くんどうしたの?何か焦ってる?」
「!あ…焦ってなんかないよ!ほら! 椎凪も星空に集中しなよ!終わっちゃうよ。」
「そうだね。」
「うん…ん?」

目の前の星が消えた…何で?

「!?」

今度は錯覚なんかじない…
オレの唇に温かくて柔らかい感触が触れた…ううん…押し付けられた。

「…んっ…!」
「しっ!」
しって…
「……う…」
簡単に口を押し開けられて 椎凪の舌が入って来る!
「…!!…」
声が出せなくてギュッと目をつぶって耐えた。

椎凪に…好き勝手に自分の舌が遊ばれてる…全然離してくれない…

     頭の中が真っ白だ…



「…くん…耀くん!」

「はっ!」

椎凪に呼ばれて目が覚めた。
「上映終わったよ。」
「え?え?終わった?」
イスの上で 跳び起きた!
「気持ち良かったもんね。暗くてイスもフカフカで。」
ニッコリと椎凪が笑いながらオレを見下ろしてる。
「うそ!オレ最後まで見てないのにぃ!」
「また来よう。」
椎凪がずっと笑ってる。
「椎凪のせいだっ!」
見上げて叫んだ。
「え?オレ?オレ何かしたっけ?」
「何かしたっけって…」
そこで言葉に詰まった。
「…見てる時…オレに…その…しただろ…」
「何を?」
「何をって…」
「何かしたかなぁ〜オレ?」
わざとらしく惚けちゃって…
「した!オレに…キスした!」
「嫌がらなかった。」
やっぱりしたんだっ!!
「突然で…暗くて何が何だか分かんなかったんだもん!」
「でも気持ち良くて 眠っちゃったんだ。可愛いね。耀くんってば。」
「気持ち良かったんじゃ無い!頭の中が真っ白になっちゃったの!」
「感じちゃったんだ。ますます可愛いね。 耀くんってば。」
「違う!もー椎凪!」
オレは真っ赤になりながら椎凪を睨んだ。
迫力なんて皆無だけど…その証拠にそれ以上怒れなくて…怒る気にもなれなくて…
「さ!ご飯食べに行こう。」
「…うん…」
って返事しちゃってるし…

「今日も中華?」
下に降りるエレベーターで椎凪が聞いた。
「今日は違うのに する。」
「そう?じゃあ歩きながら新しいお店発掘しよっか?」
「うん。いいね楽しそう。良いお店あるかな〜ふふ…」
想像しながらワクワクして椎凪を見上げた。

「好きだよ。耀くん。」
「…ん…」

堂々と…椎凪がオレにキスをした。今度は軽いキスだ。
「オレしていいなんて言って無いよ…」
顔が赤くなってくるのが わかる…
「するなとも言ってないよね。」
「何で急に…こんなに堂々とするの?」
「耀くんが怒らないって分かったから。」
満面の笑みだ…一体オレのどこで そんな判断したんだ…椎凪は…
「じゃあ怒っ…」
チュツ!
「!!」
「ね!怒らない。」
ニッコリ!
「もー椎凪ってば何回するんだよっ!!」
「ほら回数で怒った。」
「………」

「さあ行こう。」

椎凪が当然の様にオレの手を繋ぐ。
オレはもう言い返す気力もなくて連れていかれるまま歩いてる。
歩きながらふと思った…どうしていつも…何でも…椎凪には何をされても平気なんだろう…
キスだって嫌じゃない…怒るのは照れ臭くて恥ずかしいからだ…

でも今日はもう考えるのは止めよう…

        椎凪に沢山キスしてもらって…オレはとってもあったかい気持ちだったから……