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「何か椎凪が車の運転って意外。」

初めて車を運転する椎凪を見てそう言った。
普段は歩きか電車だからホントに意外だったんだ。

「仕事じゃ良く 運転してるんだよ。耀くん免許は?」
「持ってないよっ!!」
思いの他強く否定された…なんで?そんなに怒る事か?
「だって…こんな狭い所に全然知らない 男の教官と2人っきりなんて絶対無理だモン!!
オレきっと行き詰まって死んじゃうっ!!」
どんな想像したんだか…ホントに焦った顔して…でも確かに そうだろう…納得した。
「確かに…」
言葉にもして同意してあげた。
「だから運転代わってあげられなくてゴメンね…」
わお…急にしおらしくなっちゃって… 可愛い…
「いいよ別に…エネルギー補充してくれれば。」
「エネルギー?」
耀くんが不思議そうに首を傾げた。
「こうやって。」
オレは横を向いて耀くん に補充の仕方を教えてあげた。
「 ちゅっ! 」
「………」
耀くんが目を真ん丸くして…あ…顔まで真っ赤になってる。
キスなんて最近じゃしょっちゅう してるのに…相変わらず慣れないね。
「もー椎凪のバカっ!!何でキスするんだよっ!!」
そう叫びながら耀くんがオレをバシバシと叩く。
「いたいっ!! 耀くんっっ あぶないって!ちょっと…」
「 次やったら許さないよっ!! 」
耀くんが不貞腐れた顔で…未だに赤い顔で叫んだ。
「じゃあ運転出来ないけど いい?」
すっ呆けてそんな事をオレは言う。
「椎凪っ!!」
耀くんが余計怒った。



「 は ? 」

ホテルのロビーで耀くんが呆けた声を出した。
「ひ…一部屋で…ダブルベッド…ですか?」
「はい。その様に承っておりますが?」
「 やった! 」
オレは喜びの声を上げた。
「は…嵌められた…」
「慎二君ナイス!」

今回の旅行は温泉に行く事に決定した。
耀くんと初めての2人っきりの旅行…そんな話を祐輔と慎二君にしたら慎二君が知り合いの所に
頼んで くれる事になってお任せしたんだけど…こんなサプライズが待っていようとは…
何だかんだと言ってあの2人はオレと耀くんがくっ付く事を許してくれてる。
まぁ…そう積極的と言うわけでは無いが…耀くんとキスしてるって分ってからあんまり口出し
しなくなった様な気もするけどね…耀くんは半ば諦めたみたいだ…今更だと 観念したか…
チョット項垂れて俯き加減で歩いてる。
まったく…家じゃ時々一緒に寝てるのに…何でこんな時まで嫌がるのかわかんねー…
ま…それが耀くんらしいって 言えばらしいんだけどね…

「わぁ…」
部屋に入ると耀くんが感動した様に声を出した。
「へぇ…」
オレも思わず声が出る…確かに高級そうなホテルだとは 思ってたけど…これ程とは…
部屋は和室2部屋の奥に別に寝室があった…目の前は渓流が見渡せて2人で入っても
余裕が在りそうな露天風呂が付いていた。
しかも 置かれてる家具も部屋の内装も何から何まで上品だ…
『初旅行に僕からのプレゼントです。』
なんて言ってくれた…すっげー高いんだろうな…なんて思ったけど慎二君 にしてみりゃこんなの
微々たるモノできっと知り合いのコネで安くしてもらってるとは思うけどね…
もしかしたらタダって言う事も在り得る…そう言う男だ。

「さぁ耀くん!」
「 え? 」
荷持つも置ききらないうちに耀くんを後ろから抱きしめた。
「オレと一緒に露天風呂入ろう!! 」
「なっ…いきなり何言って んの?椎凪!!入るわけないだろっ!!
家でも一緒になんて入った事無いのにっ…あっ…!!」
「何言ってんの!耀くん!!もーダメだなぁ…此処は旅先の宿だよ。もっと 開放的にならなくちゃ。
はい!脱いで 脱いで 」
そう言いながら耀くんの服を脱がせるのを止めなかった。
「ばっ…やめっ…椎凪…」
耀くんは必死に抵抗してる… 無駄な抵抗なのに…
オレが本気出せば耀くんの服脱がせるのなんてワケ無い…って…
「 !? 」
「 し い な ぁ …… 」
耀くんがもの凄い怒った顔をした… 次の瞬間…!

「いい加減にしてっ!!椎凪のバカっ!!!!」

ド  コ  ッ !!

「 ぐ え っ …!! 」
思いっきり耀くんの蹴りが オレの鳩尾にヒットした。



「ごめんなさい…反省してます…お願い耀くん許して…ここ開けて…耀くーん…」

オレは部屋の扉に向かってずっと謝っていた…あの後… 咽てるオレを耀くんは部屋から叩き出した…
もうかれこれ30分は経ってる…マジやばい…そんなに怒ったのか?
「耀くん…」
半ば諦めかけた時部屋のドアが開いた。
「もう二度としないでよ。 」
「 あっ!! 」
扉を開けてくれた耀くんが…浴衣姿になってる!!しかも髪が濡れて…露天風呂入ってたんだぁ!!!
「耀くんズルイ!! オレに隠れて一人で露天風呂先に入った!!」
「あーもー煩いなぁ…」
「もー露天風呂入ってる耀くん見たかったのにぃ…」
「見せるわけないだろっ!!」
オレはもう殆んど半べそ状態!ホントにガックリのがっかりの散々だ…



オレはユッタリと露天風呂でまどろんでた…お湯が丁度いい暖かさで気持ちがいい…
「はぁー気持ちいい!! 」
開放的で思わず立ち上がって伸びまでした。
「眺めも最高!ね!耀くん 」
「こっち向かないでっ!!」
「 ? 」

まったく… ホント椎凪って露出狂…裸のまま振り向かないでよ…焦るじゃないか…

「よーしっ!!次は絶対耀くんと入るぞ!!おおーーー!!」

恐ろしい決意が聞えて来た!!
「入らないからっ!!」
何一人で盛り上がってるんだか…って 
「 イ ッ !!! 」
「  ?  」
オレは思わず視線を反らした。
「いいお湯だった。」
いつの間にか椎凪が湯船から上がって来てた。
「ちょっと…椎凪!少しは気を使ってよ!!」

もーーーっ!!椎凪ってば…まったく身体隠さずに堂々と歩いて来るの やめてよね…
絶対ワザとだぁ……


「はー気持ち良かった。耀くんに見られながら入るなんて最高っ!!幸せっ!!」
「み…見て無いからっ!!ってもー椎凪ハダカやめて…」
目のやり場に困る…
「だってオレ平気だもん!」
「オレは平気じゃないのっ!!もーいい加減に…」
「何で?!オレの裸見たくないの?」
「 !! 」
耀くんが赤くなってオレから視線を逸らした…?
「どうしたの?ハダカじゃないのに何で逸らすの?」
ちゃんとオレ浴衣に着替えたのに?
「いや…別に…」

ビックリしちゃった…浴衣姿が似合うなんて言ったらまたウルサイしな…黙っとこ…
でも…ホント似合うな…椎凪ってば…

「こっからこっちに来たらダメだからねっ!!」
ベッドの真ん中ら辺を指差して椎凪に念を押した。
別に布団用意しても良かったんだけどきっと同じ事だと思うから諦めた。
「はいはい。わかったって!」
椎凪が 軽く返事をした…しかも何の文句も言わず…
「怪しいなー…」
オレは全く信用して無かった…
どーせ耀くん寝たら起きないんだからそんなの意味無いのにさー… だから一応ハイって言っとこ。
「そんな事より飲んで飲んで 折角の旅行だよ。」
オレは耀くんにお酒を勧めた。
計画を実行する為に。(良い子は真似しちゃいけない! お酒はハタチになってからだよん )
「やっぱり家で飲むのとは雰囲気が違うねー」
「うん…景色も綺麗でさ。気分いいね。」
耀くんが機嫌よく言った。
オレは 窓に近付いて外の景色を眺めた…渓流の音と夜の景色と…
家じゃないって言う新鮮なシチュエーションで気分は最高だった。
「ここの部屋ねこのホテルで一番いい場所なんだって。 仲居さんが言ってたよ。」
「本当?じゃあ慎二さんに無理させちゃったかな?」
「大丈夫じゃない?慎二君の事だから色んなコネ使ってタダかもよ。」
「あ…ありえそうで 怖いね…はは…」
いつの間にか耀くんも窓の方に歩いて来てオレの隣に立った。
「この辺観光名所一杯あるから明日色々回ろうね!」
「うん。楽しみだな 」
嬉しそうに笑ってる。
「オレさ…旅行なんて初めてなんだ…『TAKERU』の方で別荘とかには泊まった事あるけど…
こう言うの初めて…本当に嬉しい…」
「…………」
そう言って窓の外を眺める耀くんの横顔をジッと眺めてた…

「じゃあこれからは季節毎に旅行しよっか?春・夏・秋・冬って…今秋だから今度は冬にさ…」

「 え? 」

「こうやって…オレと2人で…」
言いながら耀くんの顔にそっとオレの顔を近付ける…耀くんは逃げない…
「椎…凪と…2人で…?」
「そう…オレと耀くん…2人で…」
「…んあ…」
オレの唇で耀くんの口を塞ぐ…耀くんはしっかりと目を瞑ってる。
「好きだよ…耀くん…」
「…んっ………あん……」

もう堂々と耀くんにキス 出来る様になってから…どの位経っただろう…
オレと耀くんは恋人同士みたいにキスをする…舌を思いっきり絡ませても耀くんは怒らなくなった。
一緒に暮して…時々だけど一緒に 眠って…2人で旅行にも来て…同じ部屋で一つのベッドに寝て…
こんなにキスして…こんなに耀くんの事が好きで好きで堪らないのに…
こんなに耀くんの事愛してるのに…こんなに 耀くんの事求めてるのに…
オレ達はまだ恋人同士じゃない…
耀くんは絶対認めない…ホント耀くんって筋金入りの意地っ張りだ…
なのに何でオレを拒まないの?って聞いてみたいけど… オレにはもうわかってる事だから気にしない…
そんな事聞いて全てを拒否されたらオレは立ち直れない…耀くんは絶対そう言うから…
やっとここまで来たオレの地道な努力を自分で 無駄になんか絶対しない!

「や…ヤダな…」
耀くんが息を弾ませながら囁いた。
「何が?」
オレは唇を離さずに聞き返した。
「この場所と…お酒の せいで…変な…気分になる…ハァ…」
「 !?  」
耀くんが両手でオレの身体を突っぱねる…
「もうやめっ!!」
「耀くん?」
「もーこれ以上オレに キスしたら別に部屋とってもらうからね!あぶない…あぶない…」
耀くんがフラフラしながら和室に戻って行った。
「えー?耀くんのケチーーっ!!」
オレは ブウたれた…もう…耀くんってば!素直じゃない!!いつもの事だけど…
「ケチじゃない!さー食事!食事!!」



「 くぅーーー……」
耀くんがベットの 真ん中で仰向けに眠ってる…両手は身体の横で赤ちゃんみたいだ…可愛い。
自分で境界線決めたのにもう意味が無い…だから無駄な事なのに…

「いやぁー… あぶないあぶない…オレの方が先に潰れる所だった…耀くんお酒強いから…」
オレと同じ量じゃケロッとしてる…だから何とか飲んだフリして耀くんを酔い潰した。
「  ギ シ ッ … 」
オレはベッドに片手を付いて耀くんの上に覆いかぶさる…耀くんは全然起きる気配は無い。
「好きだよ…耀くん…耀くんもオレの事好きだって わかってるから…早く自分の気持ちに正直になって。」
眠ってる耀くんの手をギュッと握ぎる…
「愛してるよ…」
そっとキスもした…そのまま首筋に舌を滑らせて行く… これもいつもの事…
オレは起きない耀くんの身体で遊ぶ。浴衣を肩からずらして胸元まで広げた…
綺麗な肌がオレの目の前に現れる…腿の内側にも手を滑らせる…
お酒で火照ってるのかいつもより身体が熱い…
「 …ん…あ… 」
寝ながら耀くんが甘い声を洩らした…もっと聞きたくて身体の隅々まで舌を這わせた。
「…あ…あ…んあっ!!…」
「  !!  」
ビックリした!!感じすぎた耀くんが無意識にオレの頭を思いっきり抱きしめたから!!
耀くんの胸の谷間にオレの 顔が押し付けられる!!
ちょっと…まっ…目の前に耀くんの膨らんだ胸がっ!!


「ハァ…ハァ…」
オレは何とか耀くんの腕と胸の間から逃げ出した…
とんでもなく 後ろ髪惹かれ捲くりのもの凄い精神力を必要とした。
「ヤバイ…ヤバイ…本当に抱きそうになちゃったよ…流石にそれはマズイから…」
オレはベッドのすぐ隣の床に 四つん這いになって喘いでいた…
「クソォ……抱きてーー…!!」
オレはそんな事を呟きながら抱きたい衝動を必死に堪えていた。



「起きないよね…」
目が覚めて…横を見ると椎凪がぐっすりと眠ってる…椎凪ってお酒弱いからな…
夕べは何事も無く2人共眠ったらしい…良かった。
オレは椎凪が起きて来ないと確信して こっそり露天風呂に入った。
「気持ちいいーー。」
寝起きのせいかのほほーんと湯船に浸かってたらなんだかウトウトしてきちゃった…

「耀くん…耀くん…」
「 !? 」
ゆっくり目を開けた…ああ…オレ…寝むっちゃったんだ…
「し…椎凪っ!!いつの間に!?」
目を開けると椎凪がしっかりと湯船に浸かっててオレの 真正面にいる!!
「あのさ…」
椎凪はオレの質問に答えない。
「お湯のなかだったらスムーズに入るかな?」
「は?何が?」
「オレ!」
「オレ?え? なに?何それ??」
言ってる事が分らない??何の事?
「オレだってば!」
そう言いながらスルリとオレの脚の間に入って来た!
「 あっ!!何する…の!! ちょっと止めて椎凪!フザケないでよ!!やだっ!! 」
「今更だよ…耀くん。夕べから覚悟してたんでしょ?」
バシャバシャとお湯が跳ねた…どんなに抵抗しても 椎凪はオレの目の前から退こうとはしなかった…
「 ああっ!!やっ……!! 」
椎凪がオレの方に近付いて…オレは椎凪の胸とお風呂の板に挟まれた…
思いっきり 仰け反って…椎凪の背中に爪を立てた…!!


「 はっ!! 」

気が付くと湯船にはオレ一人…何?夢…心臓がドキドキバクバク…
熱いからじゃない汗が… 流れてる…やだ…なんて夢見てんだろ…はずかしー…
はーでも…夢で良かっ…た…

「げっ!!」

何気に横を向くと直ぐ横に椎凪がいたっ!!お風呂の淵に両手を乗せて ニッコリとオレを見てる!!
「し…し…し…椎凪!!何やってんの?そんな所でっ!!?」
焦って…慌てて椎凪の傍から離れた。
「えーー?耀くんの入浴シーン 目に焼き付けてんの!なかなかセクシー!」
なっ…ハダカ…見られた?
「オレも一緒に入るーーーーー」
そう宣言するといきなり浴衣の帯を解き始めた!!

「ぎやあああああああーーーーー!!椎凪のバカッ!!スケベっ!!変態っ!!」

ばっちーーーーーん!!

手加減無しで椎凪の顔面に思いっきり平手打ちを 叩き込んでしまった!!タイミング悪すぎっ!椎凪!
ドタンッ!!ガタッ!!ドシャッ!!
「 いってぇーーーーーー!!!!」

       思いの外見事としか言い様の無いすっ飛び方で椎凪が和室に転げて行った…