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「喧嘩でもしたんですか?」

堂本君が気を使いながらオレに聞いた。
ここは堂本君の部屋…取り合えず数日の事になるだろうと予測して勝手にお邪魔する事に した。
今回は祐輔の所も慎二君の所にも行く訳にはいかなかったからだ。
「まさか。」
「じゃあ…倦怠期とか?」
上目遣いに恐る恐るオレに聞いてくる。
「オレ達に倦怠期なんてないの!」
あってたまるかっつーの!黙れ!クソガキっ!!
「じゃ何で急に俺の所泊まるなんて…」
「いいじゃん!その間食事の支度してやってん だから!」
「そりゃ…まあ美味しいし…」
そう言いながらモグモグと口を動かす。

美味しくて当然だろっ!本来ならオレの手作り料理は耀くんの為だけにあるのに
こんな事じゃなきゃお前なんかに食べさせるかっつーの!何か不服でもあんのかよっ!
などどオレが思ってるとはこれっぽちも思っていないであろう顔で堂本君は美味 しそうに
オレの料理を頬張っている。

「耀くんはね…今最終試験受けてんの。」
「最終試験?大学でですか?」
「ちがう!でも自分で考えて答え出すんだよ…」
「はぁ…?」
君に判らないのは仕方ないよ…そう…でももう答えは決まってる。
そう答えが出る様に今までやって来たんだから…
ちょっと 強引だったかもしれないけどこの位やらないと耀くんは決断しない…
もう…半年待ったよ…耀くん…だから…もう待たない…
オレがいない生活が出来ないようにずっと やってきた…だから後は待つだけ…

耀くん…早くオレに会いに来て…その時はもう…オレ我慢しないから…

耀くんの所を出て3日目。
超低いテンションで 夕飯の支度をしているオレ…
そろそろ堂本君も帰って来るだろう…何であんなお子ちゃまと顔突き合せなきゃいけないんだ…
などと深い溜息をつく。
「ピンポーン ピンポーン」
玄関のチャイムが鳴った…でも入ってくる気配が無い。
なにぃ!?…カチンと怒りが込み上げる。
「何?出迎えろって?態度デカ いんじゃないのっ?堂本君っ!!」
乱暴に玄関のドアを開けた…でも…そこにいたのは…
「 耀くん!?」
ビックリした…まさか耀くんが立ってるとは思わな かった…

触れたら…倒れてしまいそうなほど緊張してる耀くんがそこにいた…

耀くんを部屋に通してコーヒーを出した。何だかお客様みたいで変な感じ だった…
「良く…分かったね。」
「祐輔に…教えてもらった…」
思ってたよりも早く耀くんが来てくれたから…ちょっとビックリだった…
もっと時間掛かる かと思ってたのに…心の準備が…それにしても…3日ぶりの耀くん…
会いたかった…耀くん…つらそう…目も真っ赤だし…ずっと泣いてたのかな…
あー抱きしめて あげたい…キスして…慰めてあげたい…

「今日はどうしたの?」
出来る限り素っ気なく言った。胸が張り裂けそうだ…
「何か荷物残ってた?なら別に捨てて…」
「ちが…う」
とても小さな声だ…
「ん?なに?」
「オレ…臆病だし…身体…こんなだしきっといつか…椎凪に迷惑かける…」
ゆっくりと耀くんが話し 出した。
「だから…いつか…椎凪に嫌われる…だったら…友達のままで…いいって…
今のままでいいって…ずっと思ってた…」
「耀くん…」

あ… すっごいドキドキしてきた…やっと聞ける…半年間の間…ずっと言って欲しかった言葉…
この言葉を聞くために…こんなに耀くんを辛い目にあわせた…
でも…やっと言ってもらえる…言って…耀くん…
オレを救ってくれる言葉…それを聞いたらオレ… きっと生まれて来た意味がある…
親にも…誰にも必要とされなかったオレが生まれてきた理由…
そのためだけに…生まれて来たと思えるから…

「オレ…ずっと椎凪に甘えてたんだよね…椎凪がオレの傍からいなくなって…初めて分かった…
椎凪が傍にいてくれないと…オレ…ダメなんだ…本当はずっと前から 分かってたのに…だから…オレ…」

早く…早く言って…耀くん…早く聞きたい…

「オレこれからもずっと椎凪と一緒にいたい!オレの傍にいて椎凪!オレ 椎凪の事が好きだ!」

「…!!」
気が付くと椎凪の胸が目の前にあった…椎凪がオレを力いっぱい抱きしめていたから…
「椎…凪…くるしっ…」
椎凪にはそんなオレの言葉は聞こえていないみたいだった…
いつまでもいつまでもオレを抱き続ける…

「やっと…言ってくれた…ずっと…聞きたかった…」
椎凪が搾り出す様につぶやく…
「友達としてじゃないよね…」
不安そうにオレに尋ねる…
「うん…違うよ椎凪…オレずっと前から好きだったよ…ゴメンネ… やっと言えた…」
椎凪の胸に顔をうずめながらそう言った。
「いいんだ…耀くんオレずっと分かってたから…」
嬉しそうに椎凪が答える…

「好きだよ… 耀くん…愛してる…」
「オレも好きだよ…椎凪…」

それからオレ達は長い長いキスをした…いつもと同じなのにいつもと違うキス。

「ねぇ…耀くん…」
「ん?」
「オレ…親に愛されなかったぶん…耀くんのこと愛したい…
だから…オレの愛を全部耀くんにあげる…
耀くんが要らないって言っても…オレ耀くんを 愛すること…やめないから…」

椎凪が更に腕に力を込めてオレを抱きしめた。
「うん…?んん…?ちょ…と…椎凪?え?」
椎凪がそう言いながらオレの方に 重心を掛けて倒れ込んで来た。
オレじゃ椎凪を支えられずそのままベッドに2人で倒れ込んだ。
「ちょっと椎凪!オレ…まだそんなっ!!」
ちょっとストップ! 冗談だろ?まだ気持ちの整理もついてないのに…
「こーゆー事は勢いだよ!耀くん。」
ニコニコした顔でオレに迫ってくる。
「ええっ!!ちょっと…本当まだっ…ダメっ!!」
「オレに任せて。たっぷり愛してあげるからさ!」
「うわっ!!やっ… やだっ!!やめっ…」
必死に抵抗したけどその気になってる椎凪にオレが勝てるはずも無い…ちょっと…ん?
「あ!あ!あ!し…椎凪っ!あれっあれっ!!」
耀くんがバシバシとオレの背中を叩く。
「…ん?……」
見ると部屋の入り口にアホ面下げて硬直した堂本君がオレ達をジッと見ていた。
「あ!」
「何…やってんですか?人んちで…しかも人のベッドで…」
「なんだよ…すげータイミング悪っ!何でよりにもよって今!帰ってくんの?堂本君?」
オレは心底呆れた声で言った。
ほら…耀くんがいかにも助かったと言わんばかりにホッとした顔してオレから逃げた。
「ここ俺んちですよっ!帰ってくん の当たり前じゃないですかっ!勝手にいるの椎凪さんの方っ!!」
「もーそんなんだから彼女出来ないんだよっ!」
「かっ…関係ないでしょっ!そんな事っ!!」
図星を指されてムキになるなっての。
「まっいいや。オレもう帰るから。夕飯作っといたから食べて。んじゃね!」
「へ…?は?」
オレは自分の荷持つを 持つとサッサと耀くんを促して玄関へ向かった。
堂本君は訳がわからん…と言う顔でオレと耀くんを見送っていた。

オレは今まで味わった事の無いほどの幸福感を味わいながら耀くんをギュっと抱き寄せて歩いてる。
「続きは家でね!」
そう言ってニッコリと満面の笑顔で耀くんを見つめる。
もうオレはこれからの事を想像するだけでワクワクのニコニコのルンルンだ!!顔が勝手に緩む。
「だからしないって…」

何度そう言っても椎凪はまったく聞いてない… もう…困ったな…
チョット早まったかな?…なんて思いながら…でもいつまでもニッコリと笑ってる椎凪に
しっかりと寄り添って…オレは歩いた。