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「…はぁ…はぁ…」

もう…何時間こうしてるんだろう…
今日…耀くんがやっとオレの事『好き』って言ってくれた…
そう言って欲しくて…ワザと一緒に いれないって…部屋を出たオレを迎えに来てくれた…
告白の場所が堂本君の部屋って言うのが納得できなくて…だからそれ以上の記念にって…
初めて愛し合った 記念日にしようって…
驚いて…嫌がる耀くんを強引にベッドに連れて行って抱いた…
別に告白の場所なんて気にしてなかった…耀くんを抱く口実が欲しかっただけ…
初めての耀くんは触れなくても分るほど緊張して…震えて…恥ずかしがって…すっごく可愛かった。
オレは半年振りって言うのもあるけど…やっと耀くんを抱けるのが 嬉しくて…耀くんを離せなかった…
耀くん…初めてなのに…きっと無理させてる…
オレに触れる手に…力が篭ってない…わかってる…わかってるけど…止める事が 出来ない…
自分でもわからない…いくら耀くんを抱いても…満足出来なくて…もっと…もっと…こうしていたい…

「椎…凪…」

耀くんがオレの名前を 力なく呼んだ。
「ん?」
「…少し…寝てもいい?このままじゃ講義中に眠っちゃうよ…」
大分慣れた耀くんがオレに攻められながらも話しかけてきた。
「あー…明るくなって来たね…」
言われて気が付いた…もう夜が明けかかってる…と言う事は…一晩中耀くんの事抱いてたのか?
今もオレは耀くんを攻める事を 忘れてない…オレに押し上げられてオレが動く度に耀くんも動いてる…
同じ回数だけベッドも軋んでる。
「うん…」
軽く目を瞑って…今にも寝ちゃいそうな耀くん… オレとの刺激で辛うじて起きてるって感じだ。
そんな事させるもんか…ちょっと悪戯心が働いた。
「じゃあ…あと1回耀くんがイったら終わりにする。ふふ」
ニッコリと悪戯っぽい笑顔で笑った…耀くんは薄っすらと目を開けてだけでそんなオレに気が付かない。
痛さが無くなった頃耀くんの身体に『イク』事を憶えさせた…
オレはイク耀くんを見る度に背筋に電気が走ったみたいになって鳥肌がたった。
今まで他の娘を抱いてもそんな感覚は無かったのに耀くんは違う…なんでだろ?
でもそんなゾクゾクとする感覚が何とも言えず気持ち良くて何度も何度も味わってる…
だから余計止める事が出来ないのか…?
そんな事を思いつつオレは体勢を変えて 耀くんの両方の腿を抱え上げた。
「…ん…絶対…だよ…そう言って…全然止めて…くれないんだもん…んあっ!!」
そうだったけ?記憶に無い。
「多分大丈夫… 仕方ないから諦める。」
さっきよりも激しく攻めながら心にも無いことを呟いた。
「なにそれ…?本当は…止める気…無いんだろ…?あっ…」
鋭い。耀くん! 正解だから1回を3回に増やしてあげる事にした。


「……ん…」

ボンヤリと目を開けた…辺りが薄暗い…
「…あふ…」
部屋の景色が違う… オレの部屋じゃない…
って…あ…此処…椎凪の部屋だ…良く見ると椎凪のシャツ着てる…何で?
ベッドから出ようとしたけど身体が思う様に動かなくて危うくベッドから 転げ落ちそうになる…
ホント…なんで?記憶が…夕べから無い…んー……???
「…あっ!!!」
一発で目が覚めた!オレ…夕べ…椎凪と…椎凪と…椎…凪 …と……
「わあああああ…恥ずかしいっっ!!」
床にベッタリと座ってベッドに思いっきり顔を押し付けた。
それにオレ…椎凪に…『好き』って言っ ちゃったんだ…だから…夕べ…椎凪とあんな事…
オレは顔でお湯が沸かせるほど真っ赤になった。

恐る恐るキッチンに向かった…もう椎凪はベッドに居なかった…
椎凪の部屋の時計は6時ちょっと前だったから…朝ご飯の支度でもしてるのかな…でも…
どんな顔して椎凪に会えばいいんだ…恥ずかしくて恥ずかしくて…オレ… 倒れちゃうかも…
意を決してリビングに入ったのに…椎凪はいない…リビングからキッチンが見えるから…直ぐに分る。
「…あれ?シャワーでも浴びてるのかな?」
冷蔵庫を開けて飲み物を飲んだ。
妙に喉が渇いてたから…何気にリビングの時計に目が行った…
椎凪の部屋の時計と違ってリビングのはデジタル……ん?…うそ…
「え?17時…47分!?って…え?夕方の5時?えっ?えっ?もう夕方?うそ…大学は?え?え?」
信じられなかったけど…オレはどうやら1日中眠ってたらしい… 薄暗くててっきり朝の5時だと思ってた…
うそ…凄いショック…二重にショックなんですけど…

「耀くん!ただいまっ!!」

ビ ク ン ッ !!
突然リビングの扉が開いて椎凪が帰って来た。
「え?椎凪…?」
心臓が飛び出るかと思うくらいビックリした。
「もー会いたかったよ。耀くんっ!!夕飯の前に軽く1回しようっ 」
「へ?軽く?…?… 何するの?」
訳が分からず首を傾げるオレに満面の笑みを椎凪が向けた。
「何って決まってるじゃん 」
「え?え?…ええーーっっ!!ちょっと…待って…椎凪…」
そのままリビングのソファに引っ張られた…あっという間にシャツのボタンが全部外された。
ちょっと…オレ…下着付けてないって…これって…まさか…
「ちょっ…」
両腕を一緒くたに掴まれて頭の上で押し付けられた…
「椎凪…オレ…今…起きたばっかりで…」
片手で閉じてた脚を強引に広げられて椎凪が滑り込んでくる…
「…ちょ…しい…やだっ…あっあっ…んっ!!…くっ…ああっ!!」
何の躊躇いも無く…思いっきり…椎凪がオレを押し上げた…
「やっ…椎…凪…んっ…んっ…」
オレの言葉なんか耳に入ってない…オレの事なんてお構い無しに椎凪がオレの上で動き続けてる…
オレも一緒に動き続ける…
もー…椎凪の…ばか…オレは諦めて 目を瞑った…

ぐったりとソファで横になって起きれないオレの視界にハイテンションの椎凪が夕飯の支度をしてる…
何が軽くだよ…思いっきりしたくせに…
ブツブツと頭の中で文句を言った…それにしても椎凪ってば仕事も行ってオレとあんなにして…
シャワーも浴びて夕飯の支度もして…寝てないはずなのに…何であんなに 元気なんだ?
オレは自分と比べてその椎凪の元気さ加減が不思議で不思議で仕方なかった…
やっと動けるようになってシャワーを浴びた…もう時間の感覚が無くなってて… 変な感じだ…
それもこれも全部椎凪のせいだ…
そんな事を思いつつふと自分の身体に目がいった…ん?何だこれ?

「椎凪っ!!椎凪っ!!」
オレは浴室 から飛び出すと慌てて椎凪の所に駆け寄った。
「ん?」
椎凪がお皿を片手に振り向いた。
「うおっ!!」
耀くんがオレを呼んでる…振り向くとバスタオルを 巻いた耀くんがオレ目掛けて走って来た。
うそっ!なんて可愛くて色っぽいっ!!

「何か身体に変なアザがいっぱいあるっ!!何これっ!?何で?オレ何か病気?」
心配そうな顔で真面目にオレに聞いてくる…もしかして…それって…
「ほらっ!!胸とかお腹とか…腿とか赤いアザがいっぱいあるの…」
なんの躊躇も無くピラリと バスタオルの前を左右に広げて身体をオレに見せてくれた。
うわぉっっ!!いいのか?丸見えなんだけど…そんな…やっぱ愛し合うとこうも違うのか?
オレはそんな 事を思いながらニヤニヤとニヤけた顔で耀くんのハダカの身体を眺めてしまった…
そんなオレを見て耀くんがハッと我に返る。
「あっ!!うわっ!!」
慌ててバスタオルを巻いた。ちぇっ…失敗した…そ知らぬ顔で見てれば良かった。
「はは…それねぇ…キス・マーク…知らなかった?」
「キス・マーク?」
「そ!オレが付けたの。」
「椎凪が?」
「後で教えてあげる。さ!ご飯食べよ。」


 ギシッ… ギシッ…

椎凪の部屋…何だか夕べからずっと此処に いるみたいな錯覚に襲われる…
相変わらすベッドがずっと軋む音を出して…オレは椎凪に抱かれてた…
もう夕べからハダカでいるみたい…
時間の感覚も無くなって きてるし…身体も…ダルくて動かないのに…
椎凪の舌や手に敏感に反応して勝手に身体が跳ね上がる…
今まで出した事の無い声がさっきから部屋中に響いてる…恥ずかし くて…黙っていたいのに…
どうしても止める事が出来ない…
椎凪がオレをうつ伏せにしてオレの背中にまわった…お腹の下に椎凪の腕が廻されて…
軽くオレの身体を持ち 上げた…
「…はぁ…はぁ…な…に…?」
首だけ持ち上げて椎凪に聞いた…
「色々とね…ふふ…」
椎凪がクスって笑う…訳がわかんない…何する…
「…んあっ!!…やあっ…!!」
いきなり後ろから思いっきり攻められた!
…今までと全然違う衝撃がオレの身体を走る…ちょ…こんなの…だめ…耐えられないって…
「あっ!あっ!あっ!あっ!椎…凪…だめっ… やめ…て…ああっっ!!」
また…椎凪はオレの言葉なんか聞こえて無いみたいにオレをずっと攻め続ける…
オレは身体が変になって…このままどうにかなっちゃうん じゃないかと不安になるけど…
椎凪が耳元で『大丈夫だから…感じる事を怖がらないで…受け入れて…』って優しく囁いてくれた…
オレは椎凪にオレの全部 あずける事にした…だって椎凪にならなら何も不安なんて無いから…

だから…オレは椎凪の全部をオレが受け止めてあげる…
椎凪がオレを求めるなら好きなだけオレを あげる…そう決めた…

大好きな椎凪…こんなオレの事好きって…愛してるって言ってくれる椎凪…
オレも好きだよ…愛してるよ…椎凪…


椎凪と愛し合うようになった…

椎凪は毎晩の様にオレを求めてくる…オレは椎凪の事全部受け止めるって決めたから
拒んだりはしないけど…椎凪がこんなに 『H』が好きだったなんて思わなかった…
ちょっと前まではキスしか知らなかったのに…訪れた夜の数の何倍も椎凪と愛し合ってる…
最近は朝オレの事起こすのに 抱く寸前までされてるし…下手すると抱かれちゃうんだ…
ホント椎凪って朝から元気…

そんなに…するものなのかな?
オレは椎凪しか知らないから…分んない けど…みんなもこんなにしてるのかな?
オレは良く分からないから椎凪にまかせちゃうけど…少しは断った方がいいのかな?
本当に素朴な疑問で毎晩オレは『これで いいのかな?』って思ってた…
こんなに毎晩求められるものなのかなって…

「ねぇ…あーゆー事って必ず毎晩何回もするものなの?」
至って真面目に聞いた。
「 ぶはっ!!げほっ!!ごほっ!!」
なのに祐輔が思いっきり吸ってたタバコに咽た。
「なっ…いきなり何だよ…」
「だって…聞ける人祐輔しかいないんだもん… オレ分んないから…でも毎晩疑問でさ…
あーゆー事って付き合ったら毎晩しなくちゃいけないの?」
何気に頬を赤らめて…言ってる事は他人に聞く事じゃないんだが…
耀は至って真面目らしい…不思議に思ったのか?まぁ…耀らしいって言えばらしいんだけどな…
「嫌なのか?」
「別に…嫌ってわけじゃ無いんだけど…あんなにする ものなのかなぁ…って…
他の人ってどうなのかな…って…」
そんな疑問に思うほどやってんのか?まぁ相手がアイツじゃ頷けなくも無いが…なんか…ムカつく。
「だったら断れ。」
「え?…断ってもいいの?椎凪ガッカリしないかな?イジケない?」
「……はっきり言ってやんねーとあのエロ椎凪にはわかんねーぞ!」
「やっぱり…毎晩は…シナイ…の?」
「オレは和海と一緒に暮してるわけじゃねーからな…でも…一緒に暮してても毎晩はしないかもな…」
何でこんな事力説して んのか…
オレも椎凪の事とやかく言えねーかもしれねーが…今はそんな事知ったこちゃない。
しないって言った方が耀にとって良い事には変わりない。
「そっか… 毎晩する事じゃ無いのか…」

それは2人の問題でそう言う事が好きなら別に1日中してようが構わねー事なんだが…
相手が耀となればオレとしては話は別だ。
いつか2人は付き合ってこんな関係になる事は百も承知だった事だが…
実際そうなってみると不安がよぎる…
耀はきっと椎凪を拒む事はしない…気を使ってとかじゃない… 耀自身それが普通の事だからだ…
だから知らないうちに無理をする…
他の事なら椎凪に任せておいて問題は無いと思うが…この事に関しては椎凪は信用できねー…
あの欲望の塊みたいな男だ…きっともう耀に無理させてるに決まってる…
耀がオレにこんな質問する事自体どんだけ耀の事抱き捲くってるか分る…あのヤロー…
だからたまには断るように耀に言い聞かせた。
どこまでオレの言う事を聞くかは疑問だが…今日ぐらいは言う事聞くだろう…
あんまりにも目に余るようなら…オレは 黙っちゃいねーぞ…椎凪!

オレは祐輔がそんな決意をしてたなんて全然知らなくて…
でも確かにちょっと身体がキツかったのは確かで…
祐輔にも昔からウソが つけない…オレの事なんでも分っちゃうんだもん…

その日の夜…
先にベッドに入ってたオレは椎凪がニコニコしながらいつもの様にオレの上に覆いかぶさった時…
意を決して言ってみる事にした…
「あ…あのさ…椎凪…」
「ん?なに?耀くん?」
そう言いながらオレに掛かった布団を捲り始める…そんな掛け布団の端を ギュッと掴んだ。
「た…たまには…しないで…眠りたいな…」
ドキドキしながらそう言った…椎凪…なんて言う…
「………!!!!……」
椎凪が今まで見た事が無いくらいの驚いた顔をした!!
「……椎…凪?」
恐る恐る椎凪に声を掛けた…
「な…なんで?どうして?耀くん…?」
「え?」
見る見る椎凪の瞳が潤んでいく…え?なんで?
「オレの事…嫌いに…なちゃったの?」
震える声で椎凪がオレに確かめ始めた…
「違うよ…」
「じゃあ…他に… 好きな人…出来た…の?」
「ち…違うよ…」
「じゃあ何で?なんで急にそんな事言うの?オレに抱かれるの…イヤ?」
「…そうじゃなくて…たまには椎凪と 話しながら眠りたいなぁって思っただけだよ…
前は良く話しながら眠っただろ?オレあー言うのも楽しくて好きだから…
最近して無いなぁ…って思ってさ。」
「本当?」
椎凪がオレの顔を覗き込んで聞いてくる…今にも涙が零れそうだ…
「本当だよ。」
「本当にオレの事嫌いじゃない?」
「嫌いじゃないよ。 大好きだよ…椎凪…」
触れるだけの優しいキスをした…椎凪は安心したのかニッコリと笑ってくれた。

「…でね…あのデパートに新しいパフェの専門店が出来た んだって。だから…」
耀くんが楽しそうに色々な事を話してくれる…
そう言えば最近耀くんとゆっくりと話した事無かったなぁ…って反省した。
毎日でも…1日中 でも…オレは耀くんを抱いていたい…
離したくなくて…ずっと傍にいて愛し合いたいと思ってる…それは今も変わらない…
でもそんな事しなくても…耀くんはオレに 愛をくれる…優しくて…言葉でオレに安心をくれる…
最初言われた時はビックリしたけど…たまにはこんな風に眠るのも悪くない…

オレはそんな風に思える自分に ちょっとビックリして…
耀くんの話をニッコリと微笑みながらいつまでも聞いていた…