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珍しく祐輔からのメールが来た。
「耀が倒れた。慎二の所に来い。」

オレは速攻慎二君の所に向かった。
朝は何とも無かったのに…どうしたんだろう… 心配で…不安で…怖かった…

慎二君の部屋の前。
チャイムを鳴らすと祐輔が出迎えた…
「耀くんは…」
聞くと同時に祐輔のパンチがオレの右頬に飛んだ。
「 このっエロ椎凪っ!! 」
「 !! 」
「いって……」
何が何だか分からない…?
「テメェ…」
祐輔は怒りまくってる…?
「耀は寝不足が 一番堪えるんだよっ!!お前だって分かってんだろーがっ!!
何だ?今の耀の状態はっ!!テメェのせいだろっ!!」
「 …?? 」
全く意味が分からなかった…

朝祐輔が大学に行く途中で耀くんに会ったらしい。
声を掛けると振り向きながら耀くんがその場で倒れてしまったそうだ。
そのまま一番近かった慎二君の部屋に運んで 医者に診てもらった所診断結果は「過労」…
で…よくよく聞くとここ一週間ろくに寝ていない事が判明。
その原因はオレだった…

……一週間前
時計は もうとっくに日付を変えて大分経ってる…
確かベッドに入った時は今日だったのがいつの間にか明日になっていた…
ベッドのきしむ音に合わせて耀くんの声と弾んだ 息遣いが聞こえる…もう何時間こうしてるんだろう…

「やぁ…椎…凪…やめて…もう…イヤだ…あっ…」 
耀くんがオレの肩を両手で押し戻しながらやっと の思いで声に出した…
そんな耀くんをオレはお構い無しに押し戻した両手を耀くんの頭の上に引き上げる…
「何がイヤ?何がイヤなの耀くん?」
オレは動きを 止めずに耀くんに尋ねた…
「もう…オレ…だ…め…無…理…あっ…」
目には涙を浮かべてる…

オレは少しおかしい…
前はこんな事なかった…こんなに ずっと激しく抱き続けるなんて…でも耀くんだとダメだ…
オレに攻められて乱れて…感じてる耀くんを見ると背筋がゾクゾクする…
声も同じ…だからもっと見たくて… 聞きたくて…止める事が出来ない…
体勢を変えてさらに攻めると耀くんはオレの背中に爪を立てた…
その後一緒にシャワーを浴びてそのまま浴室でも耀くんを抱いた…
次の日はダイニングテーブルに耀くんを押し倒して時間を忘れる位愛し合った…
また次の日…耀くんがオレの邪魔をしないように両手を後ろに縛って抱いた…
自分ではどうしよもないほど感じすぎて…
オレに『もう…許して…』と懇願する耀くんを朝まで抱き続けた…

耀くんに負担をかけてるのは判っていた…
でもオレのものだと実感したくて…絶対オレの傍からいなくなったりしないって…
オレはいつも耀くんを感じていないと不安だったから…
耀くんは絶対オレを 拒んだりしない…いつでもどんな時でも…オレに全てを任せてくれる…
そんな生活が一週間位続いていたのだった…

祐輔に殴られそんな事を思い起こしながら オレは言った。
「だって…」
「?」
「オレ達相性バッチリなんだよっ!!こんなに相性いいの初めてっ!!
もーさあ耀くんがオレに攻められて感じて乱れて んの見るとさぁ
もっともっと攻めたくなっちゃうんだよーっ!
オレ“S”だしさぁどんなに抱いても疲れないし逆に嬉しくて燃えちゃうんだよ!
だからいつも耀くん の事抱いてたいんだよっ!わかる?ねぇ止められないんだっ!」
一気にまくし立てるように祐輔に語った。
「 ……!!…… 」
見る見るうちに祐輔の顔に 怒りマークが浮き出てくるのが分かった。

「 オレに向かってその話二度とすんじゃねーーーーっっ!!! 」

同時に祐輔の廻し蹴りが飛んできたっ!!
「わぁっ!!ちょっと…」
寸での所で防いだ。
「今日からしばらく耀はオレの所に連れてくからなっ!!
テメェと一緒にいたら耀の身体がもたねーっ! わかったなっ!!」
「えーーーっ!!なんでっ?
祐輔にそんな権利ないだろっ!やだよっ!オレ耀くんと離れるのっ!」
冗談じゃないっ!オレはムキになって反抗した。
「やかましいっ!!だまれっ!エロ椎凪!」
「黙るかっ!!絶対ヤダっ!!」
「お前の所にいたら耀が死ぬっ!!」
「そんな事ないっ!!」
負けるもんかっ!! お互い相手の服を掴んでもみ合う。
「ちょっと…2人共何してんの?いい大人が…」
いつの間にか慎二君が入って来ていた…
「だってっ祐輔が…」
オレは 何とか自分の主張を話そうとした。…んだけど…
「ゆっくり休ませてあげましょうよ…ね?椎凪さん」
「でもっ…」
「 はぁ?口ごたえですか?僕怒りますよ?
まったくあなたって人は…いつもいつも人を心配させて…
入院した方がいいって言われたのに耀君…あなたが心配するからって断ったんですよ…
祐輔の所に少し預けま しょうよ…ねぇ?椎凪さん?」
物凄い冷ややかな目つきで淡々と話す慎二君…

「無理やり入院させてもいいんですよ…そしたら面会謝絶にしますからねっ!!」

「 ………… 」
何も反論する事は許されない慎二君の威圧的な視線にオレは何も言えなくなった…


「なんか久しぶり…祐輔の所に泊まるなんてさ…」
耀くんが困った顔で話す…オレがゴネているからだ…
「テメー帰れよっ!泊めねーかんなっ!!」
祐輔の鋭い一言がオレに突き刺さる。
みんなオレに冷たい… まあ…確かに耀くんに無理させてたのオレだし…仕方ないのかもしれないけど…
オレは必死に耀くんにしがみついてこれから先の数日間の一人の生活を想像しイジケにイジケていた。
ずっと一緒だったのに…夜寝る時も…朝起きた時も…ご飯食べる時もずっと一人なんて耐えられない…
大袈裟でもなんでもないっ!本当に涙が出てきた…一人はイヤだっっ!!
「耀くん…オレを1人にしないで…1人はイヤだよ……グズッ…」
みんなオレがどれだけ耀くんが必要かわかってないんだ…
そんなオレの事をわかってくれるのは耀くんだけだ…
「祐輔…椎凪も一緒じゃダメ?」
優しい耀くんが進言してくれた…
「ダメに決まってんだろっ!それじゃ意味がねーだろっ!」
ヒドイ…祐輔…
「だってオレ…椎凪一人にしたら心配で…寝れない…こんなに泣いてるし…」
オレを抱きしめながら言ってくれた…
しばらく考え込んでいた祐輔だけどオレを追い出す事できっと耀くんは心配して
本当に休めない事が分かってるんだ。
だから渋々オレも泊まる事をOKしてくれた。
「オレの目盗んで耀にチョッカイ出したら即殺すっ!!
何の為にオレんとこ来たのかよーく考えろっ!!椎凪っ!!」
そう言って頬っぺたを思いっきり抓る。
「うん。わかった。」

どんなに頬を抓られても耀くんと一緒に居れるならそんなの痛くもなかった。