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慎二君に頼まれたモデルの仕事。
ちゃんと上手くやれたんだ…「良かったですよ。」って慎二君も言ってくれた…

「へー……」
張り出された『TAKERU』 のポスター…
デカデカとショッピング街のビルの壁に張り出してあるポスターを見て
耀くんが発した第一声…
「 ……!!!!…… 」
なんで?なんでこれが 使われてんの…?

大きく張り出されたそのポスターはオレと相手の女性モデルが
お互い微笑み合ってキスをしているものだった…

「どうしてアレ使うのっ?慎二君っっ!!アレは使わないでって言ったじゃないかっ!!」
ポスターを見たその足で慎二君を訪ねて『TAKERU』のビルに押し掛けた。
「えーだってアレが一番良かったんですもん。」
「良くないよっ!!耀くんに何て説明すればいいのっ?」
もう後の祭りだけど…今オレは非常にマズイ立場にいるっ!!
「大丈夫ですって。耀くんだって分かってくれてますって。」
爽やかな笑顔で話す慎二君…
「 多分。 」
取って付けた様に言うなっ!!
「多分じゃだめなのっっ!!」
あーもー最悪だ…何でこんな事に…
確かに撮影の時はその場の勢いや撮影の雰囲気もあって…流れ的にそーゆー事になっただけで…
決して耀くんを裏切るような気持ちでしたわけじゃ ナイっ!!
当の耀くんはと言うと…さっきから他の現像された写真を一枚ずつ見てる…
確かキスしてるのはあの写真だけのはず…
「あー耀くん…あのね…あれは… その…」
もーしどろもどろだ…言い訳のしようがないっ!!…どーしよう…
「耀君。今回のポスターって恋人同士のイメージで撮ってるから気にしないでね。
僕のイメージにピッタリだったんだ。綺麗に撮れてるし評判良いんだよ。」
慎二君の説明に何も言葉を発する事無くニコリと微笑んだだけの耀くんだった…

何とも気まずいムードで家に帰った…
夕飯の支度をしてる間も耀くんはソファに座りクッションを抱えて何か思い詰めている…
耀くん怒ってるよ…どーしよう… もうオレは夕飯の支度所じゃない…
心臓はずっとバクバク言ってるし怖くて声も掛けられない…どーしたらいいんだろう…
「 椎凪! 」
突然耀くんに呼ばれた。 しかも物凄い命令口調…
「なっ…なにっ?」
心臓がドキドキ…
「こっち来てっ!!ここに座って!!」
そう言ってソファに座っている耀くんの目の前の床を 指差している…
言われた通りオレは耀くんの目の前にキチンと正座して座った。
何?何なんだろう…とっとにかく謝ろう…
「よっ…耀くん…ご…ごめんね…許して…」
言ってる途中で耀くんがソファを降りてオレに近づいた…
「え?なに?」
「ガブッ!!!」
「 !?…いっ……!!!!」
耀くんがオレの胸元にいきなり 噛み付いた…!
そしてギリギリと噛み締めていく!!
「……たぁーーっ!!ーーいたいっ!!耀くん!!なっなにっ?」
そう言ってる間に今度は背中に廻る…
「えっ? なっ…」
「ガブッ!!!」
また思いっ切り噛み付かれたっ!!
「…!!!…いたいっ!いたいっ!耀くん 痛いっっ!!」

胸元と背中を思いっきり噛んだ 耀くんはまたソファに戻ってクッションを抱えて
うつ伏せに寝てしまった…もー本当にどうしたらいいんだ…
胸元と背中の痛みとどうしたら耀くんが許してくれるのか解らなくて 涙が出てきた…
「耀くん…本当にゴメンネ…許してよ…グズッ」
泣きが入ったのが判ったのか耀くんが喋ってくれた。
「キスの事なんか何とも思ってないよっ!!」
オレの方を見向きもせずクッションに顔をうずめながら答える…
オレは我慢できなくて耀くんの腕を掴んで上を向かせた。
そのまま両腕を掴んでソファに押さえつける。
「じゃあ何で怒ってるの?」
オレも必死だ。
何とか耀くんに許してもらわなきゃっ!!
「キスの事は…本当に怒ってない…
慎二さんが決めたことだからきっと… それがいいんだ…」
オレの顔を見ずに話し続ける…
「胸元と背中を噛んだのは……印…だもん…」
「え?印?なにそれ…?」
言ってる事が分からなかった…
「オレは耀くんのものだよ?」
「……でも…椎凪の胸元と…背中は…オレのお気に入りの場所なんだ…特別な場所なんだよ…」
耀くんがゆっくり と言葉をかみ締めてオレに話す…
「オレだけの場所だったのに…あの人…触ってた…キスも…してた…」
耀くんがすごく悲しそうに話す…どうやら慎二君の所で残りの 写真を見て見付けたらしい…
そう言えばそんな事もあったような…あんまり記憶に無いけど…
でも知らなかった…耀くんがそんな風に思っててくれたなんて… 初めて知った…
「そうだったんだ…ごめんね…耀くん…気が付かなくて…」
本当にごめん…
「でも…もう誰にも触らせないよ…約束する…本当にごめんね…」
そう言って優しく耀くんにキスをした…
「………」
耀くんは黙ってオレのキスを受け入れてくれてる…
「ごめんね…」
もう一度謝った…
でも…いくら謝っても 謝りきれない…知らなかったとは言え耀くんを傷付けた…
「うん…」
耀くんが涙を浮かべながらやっと返事をしてくれた…
「許してくれる…?」
「うん…」
「オレの事キライじゃない?」
「うん……好きだよ…椎凪…」
ずっとお互い唇を離さずに言葉を交わし続けた…
「ポスター…良かったよ…」
何故か耀くんが 照れながら言う。
「ありがとう。 耀くん。」

オレって耀くんにホント愛されてるんだと感じられた瞬間だった…
嬉しくて嬉しくてそのまま耀くんにジャレつくオレ。
耀くんもそんなオレを 拒んだりしない…

そしてオレ達はそのままソファで愛し合った…