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「耀く〜んおはよう。今日は出掛けるからもう起きて。」

椎凪が寝てるオレに覆い被さって首筋に顔をうずめながら耳元に囁いてオレを起こした。
「ーーー…え?」
オレは寝ぼけてる…
いつもの事だけど夕べ勘弁してって言うくらい椎凪がオレを離してくれなかったから…
チョットまだ眠かった。
なかなか目を明けないオレの顔を 両手で挟むと『 ちゅっ!ちゅっ!』と軽いキスの雨が降る。
「椎凪休みなの?」
ベッドにうつ伏せのまま身体を起こして眠い目を擦りながら聞いた。
椎凪は もう起き上がっててベッドの端に座ってた。
「だって今日耀くん誕生日でしょ?」
椎凪がオレに向かってニッコリと笑ってそう言った。
「……あ…!」
「だから出掛けるの。その代わり明日の夜はいないからさ…ゴメンネ。」

……オレの誕生日…そんなの気にした事なかった…

オレの誕生日って言うより母さんの 命日だと思ってるから……

椎凪に促されてやって来た所…此処は…母さんのお墓がある墓地だ…
一人じゃ怖くて来る事が出来なくて…父親も滅多に此処に来る 事は無い…
椎凪はスタスタと歩いて行く…まるで何度も此処に来た事がある様に…
そして迷う事無く母さんのお墓の前で止まった。

「椎凪…どうして?」
「オレ刑事だよ。調べるの得意なんだから…」
微かに香る花の匂いと白い煙を上げながらお線香の匂いが辺りに漂う…

「耀くんのお母さん。オレ耀くんの事一生 大切にしますから。
絶対耀くんの傍離れないしずっと耀くんの事愛し続けますから…安心して下さいね。」
真面目な顔でお墓に向かって話しかけてる…椎凪……
オレは胸が一杯になった…初めて怖いとか辛いとか思う事無く母さんのお墓に
向かい合うことが出来た…

「さ!耀くん!オレの事もお母さんに知ってもらったしお墓参り もチャンと済んだから
今度は耀くんの誕生日だよ。」
「え?」
椎凪がオレの方を振り向いてとびっきりの笑顔でそう言った。


キラキラと世界が煌めいてる…
生まれて初めてテーマパークと言う物にやって来た。
しかもクリスマスバージョンでいつもより装飾が豪華なんだそうだ。
何処か外国を思わせる街並みの作りに正面から 入ると目の前に見上げるほどの
クリスマスツリーが飾ってあった。
何もかも初めてで…ワクワクのドキドキのクラクラだ…
目移りしちゃって周りをキョロキョロ… 好奇心は尽きない。
お昼過ぎから遊び回ってあっという間に夜が来た…
人が沢山いたけどオレは椎凪とずっと手を繋いでたから全然辛くなかった。
椎凪はずっと オレの事ニッコリ笑って見ててくれる…
アトラクションで暗かったりすると隙をついてキスまでしてくる。
周りの人に見られて無いかってちょっと焦ってしまった… でも椎凪はそんな事お構い無しだ。
そう…いつもの事なんだ…
いよいよ最後の出し物のパレードが始まった。
電飾がキラキラ輝いて楽しげな音楽も始まった。
此処に来た殆んどの人がそれに魅入ってるんだろうな…
オレと椎凪は少し離れた場所からそれを眺めてた。
もう興奮しすぎて変な疲れがオレの身体を占め始めてる… 疲れてるけど辛くは無い。
心地良い疲れ…目までトロンとなった。
「オレさ…」
「ん?」
造られた橋の手摺りに凭れ掛かって話し出す…
椎凪は直ぐ横で オレを覗き込んだ。
「小・中って学校行ってないし…高校もギリギリしか授業出てないしさ…
友達も祐輔と慎二さんだけだし…でもオレ人と接するの苦手だから それでも構わなかったけどさ…」
身体を起こして椎凪の方を向いた。
「椎凪と知り合って色々な所に連れて行ってもらったり色々な事したりして
すっごく感謝してるんだ… 今日だって自分の誕生日なんて祝ってもらうの初めてだったし…
今までは母さんの命日だって思ってたから…祐輔も慎二さんもオレが辛い思いするからって
あえてその 事には触れなかったんだと思うんだ…
だからオレ今すっごく嬉しい。でもそれは椎凪と一緒だからそう思えるんだ…
椎凪がいてくれるから楽しいんだよね… ありがとう。椎凪!」
「オレ…耀くんのためなら何でもする…
オレは耀くんが生まれて来てくれた事に感謝してる…オレの為だけに生まれて来てくれたから…
だからお祝いしたいんだ。来年もまた一緒に誕生日お祝いしようね。」
椎凪が優しく微笑んでオレを見る…

「その次の年もまた次の年も…ずっと一緒に お祝いしよう。」
そう言ってオレの肩に腕を廻して自分の方に引き寄せてくれた。
「うん…」
嬉しくて…涙が出そうだった…
椎凪があったかくて オレもギュッとしがみ付いた。

…本当…ありがとう椎凪…こんなオレの事好きになってくれて…
…オレも椎凪のためならどんな事だってするよ…

「椎凪…」
「ん?」
「オレの事…ずっと好きでいてくれる?」
「うん。」
「オレの傍から離れない?」
「うん。」
「オレの事愛してる?」
「愛してるよ。耀くん…」

椎凪はオレを抱きしめてくれた…
オレは椎凪の胸に頭をうずめて椎凪の温もりを確かめる…
大きくて広くてあったかくて… いつもと同じ…安心をオレにくれる…

オレはそんな椎凪の頬に…そっとキスをして…2人でニッコリと笑った…