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 「ん…あっ…」
 オレが動く度に耀くんから声が漏れる…
 「椎…凪…ベッド…行こうよ…んっ…」
 「なんで?」
 何でか分かってるのに聞き返す…
 「だって…立って…すると…すごく…感じる…」
 最後の方は照れて恥ずかしそうに呟く…
 「じゃあ余計止められないなぁ…」
 更に耀くんを攻め始めた…

 シャワーを浴びて浴室を出るとちょうど耀くんが寝室に向かう所だった。
 だからそのまま耀くんを掴まえて廊下の壁に追い詰めてその場で愛し合ってる…

 「…ああっ!…ちょ…椎…」
 オレを掴んでいる耀くんの手に力が入る…
 弾んでる息もどんどん早くなる…
 「耀くん…オレ…耀くんの事が好きで好きで たまらないんだ…でもね…」
 耀くんの頬を撫でながら話し続ける…
 「耀くんをメチャクチャに壊したくなる…何でなんだろう…こんなに…好きなのに…」
  耀くんを抱いても抱いても…掴むことが出来ない…だから…
 耀くんを離す事が出来なくて…ずっと…抱いていたい…
 耀くんがオレの前からいなくなってしまう… そんな恐怖がいつもある…
 だから…いつも抱いて…キスして…離さない…
 離せない…離したくない…

 疲れきった耀くんをベッドに運んでキスをした…
 「ん……ごめん…椎凪…オレ…動けない…」
 荒い息のまま耀くんが呟く…
 「いいんだ…耀くん…オレが勝手に耀くんの事抱くから…」

 耀くん…好きだよ… 愛してる…
 耀くんが動けないの分かってても…抱くなんて…オレ…ひどいよね…
 でも…オレ…不安で不安でたまらないんだ…本当にオレの事好きでいてくれる?…
  いつか…このオレの好きって言う気持ちが…耀くんを苦しめるのかな…重荷になるのかな…
 オレは相手を求めすぎるから…倫子さんには拒絶された…耀くんに拒絶されたらオレ …どうしよう…
 どうしよう……耀くん…!!
 思わず力一杯耀くんを抱きしめた…
 「椎凪…?」
 「オレの事…抱きしめて…お願い…耀くん…」
  怖くて…不安で…そう言ってた…
 「椎凪…」
 耀くんがギュっとオレを抱きしめてくれる…
 椎凪…オレを求めすぎて不安になっちゃったの?
 「好きだよ…椎凪…大好き…大丈夫…椎凪の気持ち全部オレが受け止めてあげるから…
 椎凪は何も心配しなくていいんだよ…」
 「耀くん…」
 椎凪…泣きそうになってる…そんなに不安になっちゃったの?
 「椎凪言ってくれたろ?オレは椎凪の為に生まれて来たって…
 だからオレは椎凪の為に 生きていく…だから椎凪の思いもする事も
 全部受け止めるから…大丈夫だから…」
 椎凪の唇にそっと指で触れる…
 「もっとオレを愛して…もっとオレを 抱いて…椎凪が満足するまでオレは平気だよ…
 壊れたりしないし椎凪の気持ちが重荷になる事もないから…
 好きって…愛してるって言ってくれないとオレ不安になるから…
 抱いてくれないと嫌われたのかと思うから…
 椎凪だけなんだよ…オレの事好きって…愛してるって言ってくれるの…」
 指先で椎凪の頬を撫でる…
 「だから…ずっと オレの傍にいて…絶対オレの傍から離れないでね…
 椎凪が居るべき場所はオレの傍だから…どこにも行っちゃだめだよ…」
 「うん…行かない…どこにも行かない… いつも耀くんの傍にいるっ…」
 オレの手をギュッと握りしめてくれる…
 「うん…約束ね。椎凪…」
 「約束…するよ…耀くん…」

 そう言ってオレにキスを してくれた…

 椎凪と付き合うって決めた時…自分で決めたんだ…
 オレが椎凪の事…全部受け止めてあげる…不安を取り除いてあげる…
 オレにしか出来ない事… オレの存在する理由…オレの生まれて来た理由…オレが生きている理由…

 耀くんをしっかりと抱きしめる…
 耀くんはオレをわかってくれる…今も不安になったオレを 安心させてくれた…
 こんな小さい身体なのに…心は広くて…深い…
 オレを受け止めて…理解してくれる…
 胸の穴が…塞がる…耀くんで満たされてく…
 耀くんがオレを…愛してくれる…

 そんな事があった翌日。
 オレは最高に気分が良くてウキウキしていた。
 耀くんに愛されてるって実感出来てるから 何も不安じゃなかった。
 街の遊歩道で人とぶつかった。
 普段滅多に人にぶつかる事はないのに相手がオレが避けた方に向かって来て
 オレに気付いて無かった からだ。
 「痛ってーなっ!」
 「よそ見してたのそっちだろ?一唏。」
 「げっ!!お前…」
 「お前じゃない。椎凪!」
 くそっ…やな奴に会った… 
 「………」
 「彼女にでも振られたの?」
 「…!っ うっ…うるせーなっっ!!」
 「当たり?ははっ分かりやすっ!」

 俺はこいつが気に入らない。
  なぜか判らないがこいつを見てると俺がバカにされてる様に感じるからだ…
 こいつと恋人のイチャイチャぶりをこの前見せ付けられたせいもある。
 俺にも恋人は いる。
 幼馴染みで今居候してる家の娘だ。
 俺のお袋は親父と離婚して他に男をつくった。
 そして俺が邪魔になったらしい…俺を置いてどこかに出て行った。
 まあ毎日俺がいなければって殴られるよかマシだったから俺は気にしてないけど…
 親戚も引き取ってくれなかったから施設行きかと思ったけど
 なんの気紛れか 隣に住んでた央のおふくろさんが俺を引き取ってくれた。
 央の所も母親しかいなかったけど医者だから金はある。
 俺一人くらい面倒見てやるって言ってくれた。 小3の時だ。央は小5。
 元々俺は央が好きだったから同じ屋根の下に住めて嬉しかったし
 男の影がちらつけばすぐ分かる。
 央が高校に入学する時俺のものに しときたかったから無理矢理俺のものにした。
 それから央は俺のもんだ。…と思ってた。
 でも最近俺が抱いても反応がイマイチと言うか…拒否はされない… でも…何かおかしい…
 央に気持ちを聞いた事は無い。そんな事必要ないからだ…
 きっと俺達はお互い好きなはずだから…
 じゃなきゃ黙って俺に抱かれてる 筈が無い…

 「君の事だから強引に迫って嫌がられた?」
 「うるせーよっ!」
 なんでわかんだよっ!ムカつく…
 「ま!オレには関係ないから。じゃあね。」
 「お前ら…男同士で上手くいってんのかよっ!」
 思わず口走った。そんな事聞いても仕方ないのに…
 「うまくいってるよ。
 君みたいに相手が何考えてるか分からない なんて事無いからね。オレ達は。」
 うっすらと笑って返事をするアイツ…

 オレを見下したようにかえって来た返事に思わずキレてしまった…