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「何でついてくんの?」
「確かめるんだよ!お前が言った通りかなっ!!」
「えーっ!!ウザイっ…」

偶然街で再会して会った途端文句を言っていた。
こいつが自分の幸せぶりを自慢げに俺に話すから…頭にきて言い返してやった。

「俺が望めばいつだってやらしてくれんだよっ!!
央ともずっと前から一緒に 住んでる!お前と同じだろーがっ!!」
「じゃあなんでそんなにカリカリしてんの?
ホントは強引に…相手の気持ちお構い無しにしてるからじゃないの?」
分かった様な顔をして俺に問いかける…
「オレは耀くんを愛してる…耀くんもオレを愛してくれてる…
いつも傍にいていつも気持ち確かめ合って…毎日2人の時間 深めていくんだ…
オレ達はお互いがいなかったら生きていけないから…」
俺は言い返す事も出来ず黙って聞いていた。
「オレは耀くんを裏切らない… 耀くんも同じ…
オレ高校の時から耀くんに出会うまで数え切れない程の女の子相手にしてきた…
一回限りの相手…女の子抱いてる時がオレがそこに生きてるって 証だったから…
でも耀くんと知り合ってから他の子相手にしてない。する気にならなかったから…
愛が無くても相手の事好きじゃなくても抱き合える…相手に 何も求めないから…
オレは耀くんに愛を求める。ちゃんと答えてくれるの知ってるから…何も心配じゃない…
だからいつも言葉にして問いかけるんだ…必ず答えて くれるから…オレが欲しい答えを…
でも君は彼女に聞けない。怖くて聞けないんだ…好きじゃないって言われるのが怖いから…
君は思い込もうとしてる。彼女が 抱かれるのを拒まないから自分の事を好きだろうってね…
でも抱かれてるからって好きとは限らない…不安だから強引に彼女を抱くんだ…
自分のものにしたいから… 本当は分かってるんだ。自分のものじゃないのに抱いてるって…
そうだろ?一唏?」
「!!…ふざけんなっ!なめた口利いてんじゃねーぞっ!ジジイっ!」
「あれ?図星で怒った?」
ワザとらしく肩をつぼめた。
有無も言わさずぶん殴ってやろうと手を出したのに片手で簡単に受けられた。
「だからテメェは ガキだっつーんだよ。一唏。」
今までと違う瞳でニヤリと笑う…
「お前…」
「女の子イカせられるからって勘違いしてんじゃねーぞ。
悔しかったら抱かれながら 彼女にお前の事『愛してる』って言わせてみせろ。
まぁ無理だろうけどなっ。ちなみにオレは耀くんにいーつも言ってもらってるからね。
じゃあ頑張れ!クスクス」
そう言って笑いながら歩き出した。

くそっ…あのヤロー…バカにしやがって…
悔しくて…あいつの言ってる事が本当なのか確かめずにはいられなかった…

アイツのマンションに着く。
「ホントに来るの?」と散々言われたがなぜか俺の事を追い返したりしなかった。
玄関に入るとあの女みたいな恋人が出迎えた。

「ただいま耀くん。愛してるよ。」
「おかえり椎凪オレも愛してるよ。」
さっそくキスしてやがる…俺の事なんかお構いなしかよっ…
「あっ!何?人がいたの?」
今頃気が付いたのか…
「そーなんだよ…ストーカー…」
呆れ顔の溜息まで吐かれた!!
「だっ…誰がストーカーだよっ!!」
「じゃあ何?オレに惚れた?」
「 ばっ!アホかっ!! 」
悪態をつきつつも…俺も央とあんな風に自然とキス出来たら…幸せなんだろうか…
なんてふとそんな事を思ってしまった…

寝室の ベッドの中。
耀くんにキスをしながらパジャマのボタンを外してる最中だ。
「珍しいね…椎凪が人を連れてくるなんてさ…しかも…泊めてあげるなんて…」
「ゴメンネ…耀くん…本当はそんな事するつもり無かったんだけどさ…」
パジャマの上着を脱がして今はズボンに手をかけてる…
「なんかね…ほっとけなくてさ…彼も… 一唏も彼女に愛して欲しいんだ…
でも不器用で幼くて…上手く自分を出せなくて…辛いんだ…だから…」
耀くんの首筋にキスをした…
「…あっ……ん…いい…よ… 椎凪の…思うように…して…
オレも出来る事があったら…協力する…から…あ…」
「ありがとう…耀くん…でも無理しないで…ホントに悪いと思ってるよ…」
お腹から胸にかけて舌を這わせた…
「…んあっ…あ…」

耀くんがオレに手を絡ませてのけ反る…お互い握り締め合って離さない…
そのまま…2人だけの世界に入っていく…長くて…深い…2人だけの時間に…

『……ん?耀くん何で声出すの我慢してるの?』
『だって…一唏君に…聞かれたら…恥ずかしい…』
『……へー…余裕なんだね…耀くん。
じゃあ今までやった 事の無い体勢でやってみようかな…ねぇ…耀くん…』
『え?…椎…凪…?ちょ…』
耀くんの身体をオレの方に強引に引き寄せなぜか顔には意地悪そうな
笑顔が浮かぶ…
『あっ…あっ…あっ…ああっ…あーっちょっと…椎凪…やめっ…やだ…ああっ…』

次の日の朝…
リビングの入り口であいつらの話し声が聞えて思わず入れなく なった。
「あっ…ダメダよ…椎凪…一唏君が起きてくるよ…」
「大丈夫。まだ起きて来ないよ。」
そう言われると入れねぇ…
「それに見られてもいいもん。」
「オレは嫌だよっ!!いいの?椎凪は!オレの裸見られても…」
「あ!それはマズイ…じゃあ彼が起きて来ないうちにさっさと済ませちゃおう。」
「な…何がさっさと だよ!だったら部屋に行こうよ!」
「やだっ!ここでしたい。スリルがあって燃えるもん。」
「やだよーっ!!もー椎凪いい加減に…」
「じゃあ耀くんが一回イッ たら終わりにする!ね!それなら早いよ。」
「バッカ!!…ん…あっ!…やっ…もー…椎凪…ん…」
ソファの軋む音と荒い息遣いが始まった…
あいつらソファで してんのかよ…
「耀くんオレの事愛してるなら頑張ってね。」
「あ…だって…すぐ終わらせるって…あ…椎凪の…嘘つき…」

俺は部屋に戻る事も出来ず廊下で 立ち続けていた…

「耀くん…オレの事好き…?」
「好きだよ…愛してるよ…誰よりも…椎凪を…愛してる…」
「オレも愛してるよ…耀くん…耀くんだけを 愛してる…」
「!!」

『オレは耀くんにいーつも言ってもらってるからね!』

何で…そんな簡単に…言ってもらえるんだよ……くそっ…
俺はリビングに続く廊下を背に…うずくまる様にしゃがみ込んだ…

どの位時間が経っただろう…俺はずっと廊下で膝を抱えてしゃがみ込んでいた…
「どうしたの?なにしてんの?」(見てたの知ってたけどね…)
そう言ってアイツが俺の頭をくしゃっと撫でた。
「何でも…ねーよ…」
顔が見れねー…俺もウブなガキじゃなからそんな気にする事も無い筈なのに…
こいつら…と言うかこの男…男の俺から見てもエロすぎだろ… 相手が気の毒なくらいだぜ…
「そ?コーヒー飲む?」
「なあ…なんで俺の事…泊めたりしたんだよ…」
昨日からずっと気になっていた。ホント何でなんだ?
「一唏は何でオレにくっついて来たの?オレの事気に入らなかったんだろ?」
「わかんねーよっ…気に入らなかったから…だろ…きっと…」
自分でも訳の分からない 返事をした…気になる存在だったのは確かだったから…
「そっか。」
何でそれで納得してんの?この男…
ダイニングテーブルに座るとソファが目に入る。
しかもそこにはこいつの恋人が気持ち良さそうに眠ってた…

「あふっ…」
「あ!起きたの耀くん。」
「んー…」
「いっ!!」
「ん…?」
寝ぼけながら身体を起こした恋人はパジャマの上着だけを肩から羽織って後は裸だった。
ボタンを閉めていないからモロ裸の身体が見える。
「 わあああああああっっ!!!一唏見ちゃダメっ!! 」
ば し っ !!
思いっきり手の平で目隠しをされた。
「いってぇーーっっ!!」
「 うわあああああああっ!!!椎凪のバカっ!! 」
パジャマの前を押さえて慌ててリビングから飛び出していく。
「ええっ?!オレっ?え?ちょっと耀くんっ!! オレのせいっ?!」
あいつがその後を追いかけて行った。

2人の声が聞える…
「椎凪があんな所でするからだよっっ!!」
「大丈夫だってっ!!見られてないってっ!! オレすぐ目隠ししたし…」
「もー椎凪とは絶対しないからっ!!」
「えーーっ!!何でそーな…」
「椎凪のばかっ!!」
「ド コ ッ!! 」
「がはっ!!」
ドテッ!! ゴンッ!! 
「 痛っ!! 」
なんか…凄い事になってんのか?大丈夫かよ??

……あれから少し遅い朝食を3人でとってる。
この男が作ったなんてビックリしたけど…さっきから信じられない光景が…
コイツ…マジで半べそかいて泣いてやがる…嘘だろー…
「ごめんね…耀くん…許してよーっ…グズグズ…」
「知らないっ!!」
きっと俺が見て無いって言っても…今更状況変わんないんだろうなぁ…
ま!いいか…見てんの面白いし…このまま喧嘩して終わんのかな?

結局しばらくの間あいつとしないって事でやっと許してもらったらしい…
許してもらった途端のあいつの変わりようと言ったら…おもしれー。


何だか余計この2人の事が気になる一唏でありました。