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椎凪がオレの身体を見て…驚いてる…
そう…今の椎凪には…ずっと隠してたから…驚くの…当たり前なんだ…

「どうして?」
「おどろいた?」
オレは椎凪に 手を伸ばしてそっと顔に触れた…
「これは…オレが受けなきゃいけない罰なんだ…だから男なのに身体は女なの…」
「罰?」
椎凪の眉がピクリとなった。
「オレは…母さんを死に追いやったの…オレは生まれてきちゃいけなかったんだ…
でも…生まれて来ちゃった…だから…オレは罰を受ける…」
「耀君…」
「でもね…椎凪はそんなオレの事好きって…愛してるって言ってくれた…
椎凪を愛する為だけに生まれて来てくれたって…言ってくれた…
だからオレは椎凪の為だけに 生きるって決めたんだ…」
椎凪の唇を手でなぞる…柔らかくって…あったかい…
「オレの全ては椎凪のもの…そして椎凪の全てはオレのもの…それが2人の約束…
オレ達はもう…1人じゃ生きていけないんだよ…
…オレを…抱いて椎凪…愛してるよ…」

いつもと違う椎凪…
オレの事を覚えていない椎凪に抱かれる のって…ちょっと不思議な気分だった…
お互いの舌を絡ませるキスも…唇に触れるだけの軽いキスもいつもと同じ…
……!!

「あっ!!ちょ…と…椎凪…」
「ん?」
思わず椎凪の手を掴んでしまった…
「な…何もそんなところ触んなくても…」
オレは椎凪の動こうとする手を必死で押さえていた…
いつもの椎凪も そうするけど…今の椎凪はいつもより指の動きが激しいから
それだけでオレはどうにかなろそうだ…やだ…
「なんで?オレはしなかった?」
悪戯っ子の様な顔で オレを覗き込む。
「そんな事…ないけど…」
オレは照れちゃって顔が真っ赤だ…きっと…
「じゃあ手離して耀君。」
「…でも…」 
渋っているオレの 耳元に椎凪が囁く…

「邪魔すると縛るよ。」

「え…?」
いつもの椎凪と…同じ事を言った…油断して押さえてた手の力が緩んだ…
「あっ!!」
今まで感じた事のない感触がオレの中にある…
「やっ…!!…アンッ…」
足を閉じようにも椎凪の身体が邪魔して無理だった…
「あっ…あっ…やめ… て椎凪…そんなに動かさないでっ!!やっ…ああっっ…」

散々指で遊ばれた後椎凪が両手でオレの足を押し広げる…
いつもはもっと…時間をかけてからなのに…
「あっ!!うっ……ん…!!」

逃げられないように椎凪がオレを押さえつけたまま押し上げた…
「…んっ…ああっっ!!」
そのまま押し上げられそうな オレの身体は椎凪がしっかりと押さえてたから
オレの身体の一番奥で椎凪を感じて…いつも以上にあっという間に頭の中が真っ白になった…
オレは椎凪のされるが まま…
動けないのに…椎凪はずっとオレを押さえ付けていた…

椎凪がオレの身体で遊ぶ…
いつもはオレに気を使って胸はあんまり触らないのに… 今の椎凪はお構い無しだ…
「ああっ…」
椎凪の舌がオレの胸の上を這い回る…乱暴に揉まれて…それがすごく感じる…
「あっ…やっ…んっ…ハァ…ハァ…」
胸って…こんなに…感じるんだ…オレ知らなかった…

椎凪…いつもオレの事気を使って抱いててくれたんだ…今初めてわかった…

椎凪はオレを休ませてくれない…
抱き起こされて倒れそうになるオレを無理矢理抱きかかえて攻め続ける…
身体中に椎凪の舌と…手が絡みついて…椎凪の舌が… 今日はすごく熱く感じる…
いつもと違う椎凪…いつもはしない事ばっかりする…いつもより激しいし…すごく強引で乱暴…
オレはだんだん何も考えられなくなって… 頭の中がまた真っ白になる…

でも…椎凪…これでオレの事…思い出してくれるかな…早く…オレの事思い出して…
思い出すまで…オレを抱いてていいから…

…ねえ…椎凪…


記憶の無いオレにとって耀君を抱くのは初めてと同じ…
当たり前だけど耀君…オレに慣れてる…すっごく慣れてる…
いつもオレってどんな 風に耀君の事抱いてたんだろう…
まぁいいか…今はオレのものだ… 耀君はオレのもの…
いつまで一緒にいれるんだろう…
オレの記憶が戻ったら…お別れだね…耀君…
だから…オレを忘れない様に…ずっと…オレを憶えていて くれる様に…

耀君の身体に…オレを刻み込むから…オレを…忘れないで…耀君…

オレはずっと耀君を放せなかった…
長い時間愛し合って…その後も 耀君を抱きしめて眠った…
唇が…腕が…身体が耀君の事を覚えてる…

なのに何で耀君の事は思い出せないんだ…


朝目が覚めると椎凪はもういなかった…でも キッチンの方から美味しいニオイが漂ってくる…
夕べは最後は記憶が無い…それに何も身に着けていない…裸のまま寝ちゃったんだ…
身体の至る所にキスマークが付いてる…
椎凪に裸…見られちゃった…恥ずかしい…

オレは変わってて…あんなに椎凪と愛し合うのに
普段裸を見られるのは恥ずかしくって仕方が無い…
男なのに… 女の身体だから…椎凪に明るい所で見られたくないんだ…
だからいつも必ずパジャマは着て寝る様にしてる…

パジャマを着ようとした所で椎凪がオレを起こしに 来た。
オレは慌てて布団で身体を隠す。
「 ?…どうした? 」
椎凪が慌ててる オレを見て不思議そうに聞いてきた。
「なっ…何でもないよっ…」
夕べの事を思い出して余計恥ずかしくなる…
今の椎凪とオレ夕べ…変に…思われなかったかな… ちゃんと出来てたかな…
うわぁ…何?なんでそんな事気にしてんの?オレってば…
やっぱり変だよ…椎凪の事まともに…見れない…
「そ?おはよう耀君。 メシ出来たぞ。」
そう言ってベッドに乗ってオレにキスしてくれた。
「お…おはよう…椎凪…」
オレはずっと心臓がドキドキしっぱなしだった…

「耀君?何かあったの?」
慎二さんの所に遊びに来て突然言われた。
「 えっ?! 」
「朝からそんなん…」
「そうなんですか?」
慎二さんとも すっかり慣れたみたい…良かった。
「だから…なんでも無いってば…」
「そうかな?何か変…」
もー2人共鋭いんだから…言えないよ…椎凪の事意識しちゃってる なんて…
オレだって何でだかわからないんだもん…
「椎凪さんも大分落ち着いてますね…」
静かにタバコを吸っている椎凪を見て慎二さんが言った。

「惚れ直しちゃったんじゃない?耀君。」
「 ブ ッ !! 」

飲んでたジュースを思いっきり噴き出した。
「 げほっ…!ごほっ!…… 」
「耀君?」
2人が不思議そうに咽かえってるオレを見てる…ちょっと…やだ…恥ずかしい…
「やだなぁ…図星なの?」
慎二さんがニッコリと笑ってオレを覗き込む。

へぇ…何だ耀君…今の椎凪さんに恋しちゃってるんだ…
本当に惚れ直しちゃてるんだね…可愛いなぁ…耀君ってば…ふふ。

「ごほっ…えっ?いや…そんな…ごほっ…」
「まぁ確かに 以前の椎凪さんとは正反対だもんね。クスッ」
「………」
もういい訳も通用しないみたいだから諦めて 俯いた。
「でもね耀君…彼も椎凪さんですよ。元々持ってたもの…今まで隠してたんですよ…椎凪さん。」
「え?隠してた?どういう事?」
「明るい椎凪さんも 本人だけどこの落ち着いた椎凪さんも本人って事。」
「え?」
オレは言われてる事が分からなくって…椎凪を見ても椎凪も人事の様な顔してる…
「どう言う訳か 記憶喪失のせいで明るい椎凪さんだけ忘れちゃってるみたいですけどね…」
まったく…って言う感じで慎二さんが椎凪を見つめた。

この椎凪も本当の椎凪? 記憶喪失のせいじゃない…?
不思議そうに椎凪を見てるオレをこれまた不思議そうに椎凪が見ていた。