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ピンポ〜ン ♪
朝っぱらからチャイムが鳴った…一体誰だ?こんな朝から…

「久しぶりだね。」
玄関のドアを開けると右京君がドアの外に立っていた。

「えっ?う…右京君?どうしたの?」
オレは自分の目を疑った…右京君がここに来るなんて初めてだ…
いつも耀くんが右京君の所に出かけるのに…
「どうしたって 耀に会いに来たんだよ。君がなかなか耀を僕の所に寄こさないから。
これ耀が僕の所で良く食べてたお菓子。」
紙袋をオレに渡しながら玄関に入って来る…
相変わらず会っていきなりイヤミかいっ!!
「べ…別にそんなつもりは…」
「耀は?」
オレの話なんか聞いちゃいない…
「まだ寝てるけど…」
「じゃあ僕が起こしてくる。」
オレをジロリと見るとキツイ口調で言った。

「それからシャツ位着たまえ。まったく君はそんな格好で…目障りだね!」

上半身裸のオレに向かってのセリフだ…
!!…くーっさっそく婿イビリかよ…うっ…頑張れ…オレ…
オレは自分で自分にエールを送った…


寝室のドアが開いて中に光が差し込む…
薄暗い部屋の中でベッドに気持ち良さそうに眠る耀がいた…
「耀…」
自然と顔が微笑む…
ぎしっ!
右京がベッド に手を着いて寝ている耀に近づいた…
そっと耀の顔に手を触れる…
「耀…おはよう…起きなさい。」
「…ん…?あ…右京…さん?え?なんで?」
寝起きの 悪い耀が不思議に思っている…
「おはよう。」
「おはようございます…」
「耀がなかなか僕に会いに来てくれないから僕が会いに来たんだよ。」
そう言って 耀の頬にキスをする…
「本当?耀…うれしい…」
右京の首に腕を廻して引き寄せて耀も右京の頬にキスをした…そして起きようとすると…
「もう少しこうして いよう…久しぶりに耀に会えたし…」
「はい…」

2人はそのままベッドに横になって目を閉じた…

オレは仕方なくシャツを着て右京君の為に 紅茶を淹れようとカップを出していた…
(右京君はコーヒーより紅茶が好きなんだ)
ピンポーン ♪
チャイムが…また鳴った…今度は誰…?

「どーも。祐輔の所に来たので寄っちゃいました。」

…え?慎二君…?

「え?右京さんが?」
「うん…さっきね…」

…何だ?今日は厄日か?

「へー偶然だねぇ…知らなかったなぁ…ふふ。」
慎二君が爽やかにニッコリと笑う。

…うそだっ!お前ら初めっから2人で来るつもりだったんだろ?時間差で 来やがって…

「で?右京さんは?」
「ああ…耀くん起こしに行くって…そういや随分遅いな…」
「右京さん?耀君?」
2人で寝室に見に行くと…

「 んなっ!! 」
「 あら… 」
右京君が耀くんをしっかり抱きしめて…ベッドで寝てるぅ…!!!!
「右京さん耀君の事が可愛くって仕方ないんだね。 まぁ父親だから仕方ないよね。椎凪さん!」
慎二君がポンとオレの肩を叩く…しかも笑顔付きで…
「そ…そうかな…」

くそぉ…父親って言われると… 何も言えん…


やっと耀くんが起きて来て…みんなリビングに集まった…
そこで右京君がまたオレに無理難題を吹っかける…

「え?耀くんと旅行? 一週間も?」
冗談じゃない…そんなの許すもんか…
「たった一週間だよ!」
しっかり耀くんを自分の隣に座らせて右京君がいつもの様に強気で言う。
「逆を考えてみたまえ。一ヶ月会えなくて一週間だよ?短いと 思うだろう?」
「そうだけど…」

くそっ…負けるもんか…

ピンポーン ♪
またチャイムが鳴った。
…!?…一体…誰だよ…こんな時に…タイミング 悪りぃな…
オレは少しイライラしながら玄関のドアを開けた。

「やあ慶彦。近くまで来たから遊びに来たよ。」

「 !!…なっ…と…亨…?」

…き…今日は一体どんな日だ…オレ…何か悪い事した…?それとも何かの罰ゲーム…?

オレは目の前が真っ暗になって…立ってられなくなって…
その場で床に 手を付いて崩れ落ちた…その横を亨が平然と横切って行く…
…誰か…嘘だと言ってくれ…悪い夢だって…ううっ…
オレにしてみれば苦手な奴らが3人勢ぞろいだよ… 何で…?

右京・慎二・亨…この三人は椎凪苦手3人衆…
別名…椎凪イビリ隊!!


「へー旅行ですか?どちらに?」
亨が右京君に聞いてる…

お前ら一回しか会った事無いのに…意気投合しすぎだろっ!!

オレはソファには座らずにダイニングテーブルの椅子に座っていた…
「北海道に行ってみようかと 思ってるんだよ。」
「今の季節いいですね…」
「耀君はどうなの?」
慎二君が聞いた。
「オレは…椎凪がいいって言え ば…」
耀くんがオレを見て答えた…
「じゃあ大丈夫ですよね。何も問題無いですもんね?」
慎二君がオレの顔を見て話を進める。
「いや…でも…」
ここは何とか反対して断固阻止しなければ…
言いかけて…3人が一斉にオレの方を向いて同時に口を開いた!

「 何か問題… 『あるの?』 『あるのかい?』  『あるんですか?』 」

有無を言わさない物凄い視線で3人がオレを睨む…
「 ど ひ っ !! 」
オレは何も言い返せないまま…どうやら旅行は 決定してしまったらしい…
チクショーーーッ!! 負けたぁ… 


ついに出発前日の夜…オレはもう諦めるしかなくて…
「耀くん…オレの事… 忘れないでね…絶対浮気しないでよっ!耀くん!!聞いてるの?」
「……うー……」
すでに何時間も抵抗出来ない様に縛られて…攻められ続けて…ぐったりの耀で ありました…
「耀くん…もー心配だよぉ…ぐずっ…やだよぉ…」

そう言って耀くんをオレの方に引き寄せて…抱きかかえて…
オレを忘れない様に…たっぷり 時間をかけて…攻め続けた…


移動中の飛行機の中では右京が疲れ きった耀を見つめてそっと囁く…

「可哀想に…一週間会えないからって彼に無理をさせられたんだろう…
少しお休み…大丈夫…椎凪君には僕が倍以上に返し てあげるから…」
「…は…い…」
既に目を瞑って右京の肩に凭れ掛かって眠っている耀が小さな声で返事をした。
「フフ…」
右京の瞳が妖しく光る…

頑張れ…椎凪!