05





次の日早速彼から電話があった。
仕事も忙しく無いし予定も無かったからOKした…わかり易く昨日の居酒屋。

「今日は合コンには呼ばれなかったの?」
「昨日はホントにたまたまで…大体はオレじゃ戦力にならないっていつもは呼ばれないんだけど…」
「フーン…あたしと話してる分にはそんな風に思わないけど?」
「だって深雪さんは違うからさ。」
「何よ?美人でも無いから緊張しないとでも言うの?」

「まさか!いや…その…深雪さんとは記憶が無いとは言え…あんな事になったし…
それに…最後に素面のオレとキスしてくれただろ?だから…オレ……」

「…………」

そう言えばそんな事したっけ…
酔ってなかったのに結構刺激的なキスだったな……

「それで深雪さんに惚れちゃいました!」
「は?」
「順序がちょっと違うかもしれないけど……」
「………」
素で…照れてる……

「あんたって素朴過ぎるくらい素朴ね。世間知らずのお坊ちゃまみたい。」
「…!!こ…子供っぽいって事??」
「まあ実際あたしよりは年下だしね…」
「頼りない?」
「……別にそんな事は思わないけど…」
「けど?」
「……ううん…またこの前の話に戻っちゃうから…何はともあれいつまで持つかわからないけど
付き合う事になったんだからいいじゃない。はい!乾杯しよう。お酒飲むでしょ?」
「……何だか最初から続けるつもり無さそうな言い方だな…」
「そんな事無いわよ。でもこればっかりは…ね…もしかしたら何年も続くかもしれないじゃない。」

そうよ…あたしがいくら続けたいと思っても……ダメな時だってある……

「そっか…そうだよな…じゃあ乾杯しよう。えっと…オレビールで!」
「OK!あ…でも飲み過ぎないでよ?」
「大丈夫。もうあんな風にはならないから。」
「じゃああたしもビールにしよっと。」

それから2人でお酒を飲みながら色んな事を話した…

「就職するならその髪どうにかした方がいいんじゃないの?やっぱ第一印象は大事よ!」

伸びた髪を後ろで1つに束ねてる彼を見てそう指摘した。
これでも事務で面接に来る人を何人か見てる…お茶お出す時なんかちょっと観察したりもするし…
だからやっぱり第一印象は大切だと思ってる。

「あ…そうなんだけど…ちょっと願掛けてて…」
「髪の毛に?」
「うん…そのくらいしか思いつかなくて…流石にヒゲは似合わないし…」
「確かに…あなた童顔だものね…一番似合わないと思うわ……」
ヒゲの生えた彼を想像したけど……やっぱり変。

「どんな願掛け?」
「オレ姉貴がいるんだけど…1年前に結婚してもうすぐ子供が生まれるんだ…
オレ姉貴の事…子供の頃から好きで……って変な意味じゃないから!!
普通に身内としてだからさ。」
「はいはい…」
シスコンか?
「だから…子供が無事に生まれるまで髪切るの止めようと思って…だからあと少しで切るつもり…」
「もうすぐなんだ?」
「うん…確か来月だったと思う…」
「そんなにお姉さんの事好きなんだ……」
「ちょっと身体も弱い所あるからね……」
「優しいんだね…君って…」
「あのさ…」
「ん?」
「オレ 『 洸 』 って名前があるんですけど?恋人なんだし…名前で呼んで欲しいな…
そりゃ年下だけどさ……」

「………ああ…ごめん…じゃあ洸クン。」

「 にこっ! 」


っと笑って返事をされた…その笑顔の爽やかな事……眩しいわ…





「今度はちゃんとしたデートしたいな。」
「構わないけど…バイトだってあるんでしょ?無理しなくていいからね。」
「……わかってます。もうホント子ども扱いだな…言っとくけど4つしか違わないんだからな!
社会人なんだからそんな年なんて関係ないから!」
「でも洸クンが中学1年の時あたしは高校2年よ?年の差かんじるでしょ?」
「……ぐっ!!…その比較の仕方が悪い!!偏見!!」
「はいはい…じゃ都合のいい日また連絡して。あたしは土日祝日基本休みだから。」
「うん…わかった……」
「?……じゃあお休み。」
「……あの…!!」
「ん?」
行こうとするあたしを彼が引きとめた。
「……あの……」
「?…なに?」
「あ…あの……その……」
「だから何?」
「……キ…キスしてもいい?」
「 !!!!…はあ?」
「キス……したい……」
「!!!」
もの凄い顔真っ赤っか!!
「変なの…」
「は?」
「もう身体の関係まであるのになんでそんなに緊張してんの?」
「そ…そりゃそう言う関係にはなってるけど…オレ記憶ないし…
だからそこまで行ってないのと同じで…やっぱり最初はキスでしょ?」
「…………ホントに初心なんだね…洸クン…」
あの晩の出来事がウソのようだわ……
「いいよ…」
「ホント?」
「ただし…次からはもうちょっと考えてさり気なく気を使ってね。」
「!!!…わかった…頑張る。」
頑張るんだ……大丈夫かな??
「 !! 」

両肩をぎゅっと掴まれた。
まるで昔の少女マンガみたいなキスのシチュエーション…
ゆっくりと彼が近付いてくる…そして触れるだけのキスをした…

「…………」
「うわ…心臓がドキドキしてる……ん?どうしたの?深雪さん??」
「……物足りない!」
「は?」
「この前はこんなキスじゃなかったじゃない!!ああ言うキスがいい!!」
「えっ!?」
「何よ?10代のお子ちゃまじゃあるまいしこんなキスキスなんて認めないから!」
「……で…でも…」
「それに洸クンちゃんとしたキス出来るじゃない!この前したみたいなキスして!!」
「…………」
「嫌なの?」
「いや…嫌じゃなくて…」
「なくて?」
「出来るかな…って…あの時は酔ってたし…」
「でも次の日の朝ちゃんと出来てたじゃない。大丈夫よ。」
「………わかった…じゃあ…」



シチュエーションはさっきと同じだったけど…キスは違う…

あの日と同じ…とっても情熱的なキス…

「……ン…ンァ…ン…」

お互い思いっきり舌を絡めあって…そんな声が洩れちゃう…
あたしは自然に洸クンの腕を掴んだ…洸クンも掴んでたあたしの肩から背中…
腰に手が移動してあたしを持ち上げる様に抱きしめてくれる……

そうよ…やれば出来るじゃない……


「…ちゅっ……」

ずっと舌の絡み合う音がしてる…息もちょっと浅く…粗くなってきた…
どのくらいそんなキスをしてたんだろう…

唇が離れた時…あたしはきっとトロンとした瞳で彼を見つめてたに違いない…

「……これでいい?」
「合格…」
「じゃあ送って行く…考えてみたら夜道危ないし…」
「……ありがと…」

内心は…今のキスで彼もその気になったんだと思った…
だからさっきは送るなんて言ってなかったのに急に送るなんて言い出したのかと思ったから…

きっとそのままあたしの部屋に泊まるつもりなんだろうな…なんて思ってた…

そ ・ れ ・ が !!


あたしの部屋の前まで来ると本当にそれだけで帰って行った!!
上って行くかと聞いたらにっこりとあの爽やかな笑顔でキッパリと断られた。

帰って行く彼の後ろ姿を見送りながら…
これはちょっと教育が必要なんじゃないかと…改めて思った。