02









「へえ…ここが耀くんの住んでる所?」

オレの家から耀くんを送って来た。
本当はそのままオレの所にいて欲しかったけど…そう言うわけにもいかず…
オレだけが渋々と歩いてた。
オレが明日は仕事だからだ…耀くんは日曜で休みだって言うのに…ツイてない…
オレの所から電車で2駅…トータル30分って所か?

「ここの5階…」
そう言われて無言で見上げた…もう…お別れか…なんか寂しい…
耀くんは何気にサッパリしてて…オレとの別れは辛くなさげだ…
まあ…なんせ 強引に抱いた相手だもんな…早々打ち解けてくれる筈ないよな…
何とか怒ってはいなさそうだけど…
しかも帰るギリギリまで耀くんをベッドから出さなかったし…
結構無理させてると思うんだよな…
ずっとオレの相手をしてくれた耀くん…オレの事どう思ってるのか…

暫く部屋を見上げて呆けていたらしい…耀くんが 呼んでるのに気が付かなかった。

「椎凪!」
「え?…ああ…何?」
「どうしたの?大丈夫?」
「…大丈夫だよ…」
本当は大丈夫なんかじゃないんだけどね… それを言うわけにもいかないし…
「あの…さ…コーヒーでも…飲んで行く?急いでなかったらだけど…」
耀くんが照れた顔してオレから視線を外してそう言った。
「ええ?いいの?」
オレは一気に気分上昇!!まさかお部屋訪問が許されようとは…
はっきり言って本当は諦めてたんだよな…
流石に寄ってもいいかなんて 聞けなかったし…
「じゃあオレ何かデザート買ってくるよ。耀くんケーキ好き?」
「うん。」
「先に部屋に行ってて。すぐ戻るから。」
「え?オレも 行くよ…」
「いいよ。耀くん疲れてるだろ?駅前にお店あったし大丈夫だから。」
「じゃあ…503だから…」
「わかった。行ってくるね!待ってて。」
オレは足早に駅に向かって歩き出した。

部屋に戻って早速コーヒーメーカーに豆を入れてスイッチを押した。
後は勝手に機械がやってくれるから…オレはリビング のソファにドサッと座った。
何だか…不思議な感じだった…
いつもの自分の部屋だしいつもと同じ…部屋の中に一人…なのに…何かが違う…
身体がダルイから…? 仄かに身体が火照ってるから?
昨日の朝ここを出る時にはまさかこんな事になるなんて思ってもみなかった…
オレが…男の人と…
「うー……」
恥ずかしさで呻いてしまった…顔もきっと真っ赤だ…心臓もドキドキしてるし…
最初は怖くて痛くて苦しくて…でも…その後は…
椎凪の肌があったかくて気持ち良くて… 何も怖くなかった…
ふと…我に返った…
部屋の中がもの凄く静かで…オレ一人…いつもの様にポツンとソファに座ってる…
一…人…?…オレ…一人…?
急に不安になった…
オレはこのソファで勝手に想像してただけで…本当は椎凪なんていなくて…
また…一人なんじゃないかって…
「あ…」
さっきとは違う 心臓のドキドキが始まった…凄い…心細い…どうしよう…

バ タ ン !

「耀くんただいま!」
「 !! 」
その時椎凪が帰って来た…明るい声が 部屋中に響く。
「椎…凪?」
「丁度中に入る人がいてさ。一緒に入って来た。」
「椎凪…」
「たくさん買ってきたよ。耀くん一杯食べて。」
ニッコリ笑う…その顔が… オレをホッと…安心させてくれた…
「ん?どうしたの?耀くん?」
なんだか不安そうな耀くんの顔…?
「ううん…何でもないよ…コーヒー淹れるね。」
オレは慌ててソファから立ち上がってキッチンに向かった…
やだ…何で涙なんか出るんだろう…そんなにホッとしたの?…変なの…

「こんな広い所に一人で 住んでるの?」
「うん…親は別の場所に住んでる…その方がオレは気が楽だから…」
「ふーん…」

椎凪はオレに色々聞いてこない…
オレに気を使って くれてるんだろうか…?何かオレからも何も言えず…
「今度オレの料理食べさせてあげるね。今日はゆっくり出来なかったし。」
「………」
耀くんが無言で 赤くなった…
そう言えば食事の時間さえも惜しくて…耀くんをずっと攻めてたんだった…はは…
「こっ…このケーキ美味しいよ。椎凪も少し食べる?」
話題を逸らす様に耀くんがオレの目の前に自分の持ってるケーキを出した。
ゴメン…耀くん…またスイッチ入っちゃったみたいだ…
耀くんがいけないんだぞ… そんな照れた顔するから…
「じゃあ少し貰おうかな…」
「あ…」
そう言って椎凪の手がケーキが乗ったお皿を通り越してオレの頬に触れると…
そっとキスをして舌を絡ませた。
「…んっ…んんっ…」
ゆっくりと…椎凪の舌がオレの中で動く…やだ…頭が…ボーっとする…
「ホントだ…美味しかった…」
椎凪がペロッと自分の唇を舐めた。
「………」
オレはまた心臓がドキドキ…
良く持ってたケーキのお皿を落とさなかったと感心してしまった…

「耀くん…」
「な…に…?」
「オレが一緒に…罰をうけてあげる…」
「え?」
「耀くんがその事で辛い時や悲しい時はオレが耀くんを支えてあげる…」
「………!!……」
「オレなら…それが出来るんだ…そうだろ?耀くん…
昨日からその事2人で確かめ合ったもんね…」
「………い…いいよ…椎凪…無理しなくても… オレは大丈夫だから…
それにそんな責任感じなくたっていいんだからさ…オレの事は気にしないでいいから…」
椎凪から目を逸らしてそう言った…
何とか椎凪の 掌から逃げようとしたけど…椎凪は離してくれなかった…
「責任とかじゃない…オレがそうしたいの…いつも耀くんの傍にいて…守ってあげたい…
ううん…違う… そうじゃ無い…オレが耀くんの事必要なんだ…」
「オレが…必要…なの?」
「そう…オレには耀くんが必要なの…いつもオレの傍にいて…オレを癒して欲しいんだ…
今まで誰にも出来なかった…ずっと探してたのに…見付からなくて…
でも…やっと見つけた…」
「それが…オレ…なの?」
「そう…それが耀くん…ちゅっ…」
椎凪が優しくオレにキスをする…
「ダメだよ…だめ…オレきっと椎凪に迷惑かける…だから…すぐオレの事なんか嫌になるよ…」
「そんな事無い…大丈夫だから… オレを信じて…耀くん…オレを…」
「 ん…あ…… 」
さっきよりも深く深く…オレの中に入ってくる…もう昨日から何十回もしてる…キス…
「ベッド…どこ?」
椎凪がオレの耳元で囁いた…

「あっ…あっ…」
オレのベッドが激しく軋む…
オレの事が必要だって椎凪は言った…オレが…必要だって…でも…
「耀くん?」
椎凪がオレを攻めながら戸惑った様な目で見つめてる…
「オレ…の身体が…女だから…オレの事…抱くの?」
ずっと思ってた…なんだろ…涙が出そうだ…
そんなオレを見て椎凪の動きが止まった。
「……そんな事無いよ…本当に男の子だと思ってたんだから…
男でも…抱いてたよ…」
オレのオデコにかかった前髪を 優しく撫でながら微笑むような笑顔で
椎凪が言ってくれた…
「……本当?」
「本当…だったら…男の子抱くみたいに抱いてあげようか?そうすれば納得する?」
「?」
言ってる事が良く分からなかった…
「ひゃっ!!」
ビクンと身体が跳ね起きた…
正確には椎凪がしっかりとオレの上にいたから…跳ね起きたみたいに なったんだけど…
違う場所で何か感じる…もの凄い違和感で…
直ぐにはそれが椎凪の指だって気が付かなかった…
「なっ…何?…何してるの?椎凪…」
声が震える…身体が緊張して椎凪の肩にしがみ付いた。
「あ…やだ…椎…凪…そんなトコ…触らない…で…やん…あっ…」
「どうする?耀くんが望むなら…オレは 構わないよ…」
「…あっ…や…もう…わかった…から…お願いやめ…て…」
息が…途切れる…だって…椎凪が囁きながら…指を動かしたから…
「……可愛いね… 耀くんは。」
オレの目には椎凪が悪戯っ子みたいな目をしてるように見えた…
「椎凪…もしかして…オレの事イジメて…楽しんでる?」
瞳に涙を一杯溜めて 耀くんが疑いの眼差しでオレを見つめた。
お願いだから…そんな顔しないで…
その顔が…その瞳が…オレを誘ってその気にさせるんだから…
「まさか…それは 濡れ衣だよ…耀くんの勘違い。」
なんてそれはウソ…オレの行動一つで耀くんが色々な顔を見せてくれるんだもの…
楽しまない手はないだろ?ねえ…耀くん…

結局夕飯を食べ損ね…日曜日の朝が明けた…
オレは耀くんのベッドで目を覚ました。
スゲー気分がいい…こんな朝初めてだった…


問題は如何にして耀くんに バレずに耀くんの親友と言う『新城』という奴に会うかだ。
こっそりと耀くんの携帯からそいつの携帯番号を調べた。
電話に出たそいつは明らかにオレを疑ってたし 既に好戦的な態度だった。
待ち合わせの場所も公園なんて…
もしかしてヤル気満々なのか?まあ相手になってやってもいいけど…

「お前…何だ? 何で耀に近付いてる?」
「何でって…耀くんの事が好きだから。」
「……寝ぼけてんのか?ああ?」
もの凄い目付きで睨まれた。
「まさか。君に聞きたいんだよね? 耀くんの事…君なら知ってるんだろ?」
「何でテメーにそんな事教えなきゃいけねーんだよ?誰が教えるかっ!!」
「オレ達もう何十回となく愛し合ってんの…だから知りたいんだよ。 耀くんの事全部。」
ビ ッ !!
言った瞬間奴の拳がオレの左頬を掠めた。
その拳を右手で受け止める…
「テメェ…無理矢理抱きやがったな…じゃなきゃ 耀がそんな事するはずねー…」
「最初はね…でも…今は違う…今はお互いの事が好きだからしてる…
ねぇ…いいから教えろよ…オレもいい加減手加減すんの限界なんだよ …なぁ…」
「 ! 」

お互い瞳の中で何かが変わった…しばらく睨み合って…奴が溜息を吐いた…

「耀の事…どうするつもりだ?」
「どうするって… オレは付き合いたいって思ってるよ。
でもまだ耀くんがオレに気を使ってるから…後は耀くん次第かな?…
でももう耀くんを手放すつもりないけどね。 ずっとオレの傍にいてもらう…」
「………」
「だから耀くんの事知りたいんだ…何で女の子なのに男だって言い張るのか…
あれって本心で言ってるだろ? 本当にそう思ってるんだ…罪を犯したからって…
でもそれはウソだ…他に何か理由があるんだろ?
でも耀くんはそれを知らない…だから君に教えに貰いに来た…
オレは耀くんを全ての事から守ってあげたい…オレは絶対それを知らなくちゃいけない…」
オレは真っ直ぐ奴を見つめ続けた。
「…約束しろ…絶対…耀を傷つける事は しねーって…誓え!今…ここで…オレに。
そしたら教えてやる。」
真剣な顔だった…コイツもコイツなりに耀くんを大切にしてるのか?
「…誓うよ…絶対耀くんを 傷つける様な事はしない…オレの命に懸けて誓う!」
オレも真剣に答えた。

奴に全てを聞いた…
耀くんの過去の事…耀くんが父親と愛人の子供だって事…
そのせいで母親が自殺したって事…何で耀くんが自分は男だって信じてる事…
全部…分った…

奴と別れてオレは耀くんの会社に向かってる…
迎えに行くって 約束してるから…
歩きながらやっぱり耀くんにはオレが必要なんだと改めて思った…
オレなら耀くんの事をわかってあげられる…オレなら耀くんの全てを包み込んで あげられる…
オレの直感は正しかった…だからオレ達は出会ったんだ…
そう確信してオレは歩く足の速度を速めた…

「耀くん!」
「椎凪!本当に迎えに 来てくれたの?」
「約束しただろ。」
「だって…仕事平気だったの?事件は?」
「オレってツイてるの。」
「ホントかな?怪しい…」
「本当だよ。 さあ行こっ!!」
「うん。」

本当は凄く嬉しかったんだ…祐輔や慎二さんとは違う…
オレだけの事を思ってくれてるんだって…それをテレもしないで全部 オレにぶつけてくれる…
当然の様にオレの手を繋いで先を歩く椎凪…
最初はあんなに強引で乱暴だったのに…直ぐにオレに優しくしてくれた…
椎凪って不思議…

「ねえ…耀くん…」
オレの方を振り向かずに椎凪が話しかけて来た。
「なに?」
「オレと一緒に暮そう。…これから先ずっと…いつまでも…2人で…さ。」
初めて聞く…椎凪の照れ臭そうな声…
オレは何も考える必要なんてなくて…自然に…本当に…ごく自然に言葉が出た…
「うん…」
椎凪が振り向いてニッコリ 笑ってオレを抱き寄せてくれた…

オレはその腕に抱きしめられながら椎凪の身体にしがみ付いて…
椎凪と同じ位ニッコリと笑った…


耀くんと暮し始めて1週間…オレは毎日充実してて楽しくて嬉しくて…幸せだった。

「椎凪!!」
「おかえり。耀くん」
「おかえりじゃないっ!! やっぱりオレの事騙してたんだっ!!」
「ん?」
耀くんが帰って来るなりそう叫んだ…どうしたんだ?
「祐輔に聞いたよっ!!キスマークで死んじゃうなんて ウソじゃないかっ!!
椎凪のウソつきっ!!」
「あら?」
なんだ…ついにバレたか…まあ大分もった方か…
もうその時のオレの目的は全部達成したから バレてももう
痛くも痒くも無いんだけど…
「祐輔に聞いたんだ?」
どんな顔して聞いたんだか…見てみたかったな…ちょっと興味が湧いた。
「だって… 他に聞く人いないもん…椎凪は死んじゃうって言うし…」
もの凄い照れた顔して…可愛いなぁ…くすっ
「だからもう毎日なんてしないからっ!!
死んじゃうって 言うからオレ毎日椎凪に付けてもらってたんだもん!
もうその必要無いから…だからもう毎日はしないっ!!」
「えー?オレは毎日したい。」
「やだっ!! オレを騙してた罰だもん!暫くしないからっ!!」
しないなんて…大きな声でそんな事を言う耀くんにちょっとそそられた…
「じゃあ今度はオレが死んじゃう。 エネルギー不足で。」
「また嘘つく…」
「嘘じゃないよ。オレの動力源耀くんだもん。
あーオレきっとあっと言う間に力尽きちゃうな…」
もの凄くワザと らしい溜息を思いっきり吐いた。
「と…とにかくそう言う事だからねっ!!」

ふーん…そう…そうですか…

あれから3日オレは耀くんを抱いてない。
はっきり言ってオレにとっては毎日が拷問に近い…
キスする度にそのまま押し倒したくなる衝動を堪えた。
ベッドでもそうだ…オレに抱きついて眠る耀くんを
何度そのまま抱いちゃおうかと思った事か…でも…我慢した…
自分でも拍手を送りたくなるくらいの演技賞もの。
日に日に弱々しくなっていった…溜息もつく。
耀くんが疑いながら『どうしたの?』って聞いてきても
力無く『何でもない…大丈夫…』って答える。
『とりあえずキスしてれば死にはしないと思うから…』
なーんてウソもつく。
『でも…しないからって…死んだりしないって…祐輔言ってたよ…?』
また祐輔に聞いたのか…もー耀くんは…まあいいけど…
『オレは特別なの…オレの耀くんへの『好き』はそんじょそこらの好きじゃないんだから…
他の奴と比べないで…』
ソファにかったるく凭れ掛かりながら遠い目で 訴えた。
『………』
3日じゃ足りないか?まだ耀くんは疑いの眼差しだ…もう一押しか?

1週間目…流石にオレも限界が近い…
そろそろカタをつけなきゃ 本当に身体がもたない…。
2人で休みの日だった…
オレはベッドから出ないでずっと布団に包まって寝たふりをしてた。
「椎凪…大丈夫…?本当に…辛いの?」
「辛いけど…耀くんが嫌じゃ仕方ないよ…オレが…我慢すればいいんだから…
耀くんに無理強い出来ないから…」
白々しいセリフに弱々しい笑顔も付けた。
「……椎凪…」
オレは布団の中でジッと待っていた…もう少しだ。
「…わかったよ…椎凪がそんなに弱っちゃうなんて…オレ知らなくて…」
「……わかったって?」
「…その…毎日は無理かもしれないけど…1日おきとか…たまになら…さ…」
よっしゃっ!
「じゃあ足りなかった時は…毎日してもいい?」
「え?足りない時って…」
「…耀くんがたくさん必要な時…」
「……んー…わかった…そんな時はね…」
「じゃあ今しよっ!!オレもう足りなくて足りなくて死にそうなんだからっ!!」
オレは飛び起きて耀くんの腕を引っ張った。
「えっ?今?ちょっ…んっ…あっ…」
こうなればこっちのもんだ!
耀くんの感じる所を攻めまくって抵抗出来なくするのに 5分と掛からなかった。
もうこれで抱き合うのに文句は言わないだろう…耀くんだって認めてくれたんだから…
「毎日しても…文句無いよね?そうじゃないとオレ 足りないもん…
耀くん足りない時は毎日でもいいって言った…ね?」
耳元で囁いて聞いた…その間も耀くんを攻める事は忘れない。
なんせ1週間ぶりだもん… ホントに死にそうだったんだ…

「椎…凪…ハア…随…分元気だ…ね…んあっ…?」
耀くんがきつく瞼を瞑って仰け反りながら声を絞り出した。
「ホント 凄いよねー。耀くんって即効性抜群なんだもん!」
そんな耀くんをオレの膝に抱き起こして涙で潤んでる瞳を真っ直ぐに見つめて囁いた…
「愛してるよ…耀くん…オレに毎日元気を頂戴ね…約束だよ…」
ニッコリと微笑むと耀くんは眉を寄せながらハメられた事を悟ったみたいだ…
もう遅いけどね。 くすっ…

疑う事を知らなくて…優しい耀くん…でもそこにつけ込ませるのはオレだけだからね…