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─── やっぱり…誰かに…後をつけられてる気がする……



もうすぐ夜になろうと言う家までの帰り道…
いつもと同じ道なのに…今日は違ってた…

オレの横を…一人の女の子がすれ違う…
その瞬間…何かがオレの身体の中を突き抜けたんだっ!!

一瞬の事だったのに髪も…胸も…お尻も…脚も…頭の先からつま先まで…もろオレ好み!!
あ!…顔…顔は…
気が焦って…思わずその子の腕を掴んで引き寄せてしまった…

「 !! 」

振り向いたその子は…何?うそ…スゲー…可愛い…
いつも女の子をそんな風に感じた事無かったのに…何でだ?

その子は目を丸くしてオレを見てる…
だよな…いきなり腕掴まれたんだから…

「あ…ごめ…あの…」

何だ?なんでオレこんなに舞い上がってる??何でこんなに心臓がドキドキしてる??

「き…」
「き?」

なに?

「 きゃああああああああっ!!チカ───ンっっ!!!! 」

思いっきり叫ばれた!!!

「 ええっ!!ちがっ…オレは…」
「離して!!」
「あっ…ああ…ごめ…あっ!ちょっと…」

オレとした事が焦って手を離した瞬間…その子はもの凄い勢いで走り去って行った!!

「え?ウソ…マジかよ…」

声を掛けようにも…参ったな…彼女は遙か先を走ってる…
こんな事初めてだ…今まで女の子に声掛けて 逃げられたなんて…


オレは高校の時から街で女の子に声を掛けて一晩限りの相手をずっと繰り返してた…
それは今も変わってなくて…『そんなに女が好きなのか?』ってよく言われたけど…
それは違う…

オレは『女』が好きなんじゃ無い…『女を抱く』のが好きなんだ。

なんでそんな事を繰り返すかと言うと…
それが…女を抱いてる時が…オレが生きてるって言う証だから…

赤ん坊の時捨てられたオレは見付かった親にも引き取ってもらえなくて施設で育った…
そのせいで小中とずっと虐められた…人間扱いなんてしてもらえなかった…

お陰で随分ヒネた性格にはなったかもしれない。

グレたりはしなかったけどただそんな奴等とツルんで無かっただけで
高校時代は売られた喧嘩は全部買った。
だからいつの間にか誰にも負ける事がなくなってた。


オレは生まれて来た意味が無い…誰にも必要とされていない…
ずっとそう思って生きてきた…

そんな自分の存在を確かめられるのは女を抱いてる時だけ…

だからって女なら誰でも良いって訳じゃ無い。
もう一度…なんて思った事無いし彼女も欲しいと思った事無い…
だから後腐れない相手を選ぶ…しつこい女は嫌い…聞き分けの無い女も…

オレは相手に何も求めたり期待したりしない…
だからオレにも何も求めても欲しくないし期待して欲しく無い…

オレの事は放っておいて欲しいんだ……


そんなヒネた生活を送ってたオレが一発で目を惹いた女の子……

一瞬で身体の奥に何かを感じた…こんな事初めてだ……

ドキドキするのに何か熱いモノがあって…ジッとしてっれない様な……



「あのー…」

「へ?」

後ろから声を掛けられた…
振り向くとショートヘアーの活発そうな女の子が疑いの眼差しでオレを見てた。

「あなた…誰?」
「あ…もしかして君…今の子の知り合い?」
「はぁ…まあ…」

一人取り残された彼女の知り合いと言う女の子…

「あ…あのさ…彼女の事…教えてくれない?
オレ怪しい者じゃないから…彼女に一目惚れしちゃって…」

怪しい者じゃ無いなんて言ったって…
いきなり一目惚れした なんて言ったら…かなり怪しいよな…

「止めといた方がいいよ…あの子男嫌いだから。」
「男嫌い?なんで?」
「散々男で痛い目見て来たから じゃない?残念ね。」
「でも…それでも彼女にもう一度会いたいんだ…助けると思って教えてよ。ね?」

「……タダで?」

チロリと見られた。

「OK! それ相応のお礼はするよ。」
「乗った!」
「商談成立。」

彼女の友達と言う 『 高嶺 眞子 』 をオレは味方に付けた。




「なん…で?」
「どうも! さっきは失礼。」

あれから一時間後彼女を呼び出してもらった。

「ちょっと…眞子…」

眞子が会いたいって言うから来てみれば……
さっきのチカンが目の前に笑って立ってる!!どうして??

「ごめんね。『TAKERU』のバック買ってくれるって言うからさ。」

眞子がペロッと舌を出した…そんなんじゃ納得しないんだから…!!

「…最低…友達買収して…人を呼び出すなんて…帰る!」

こんなのに付き合ってらんないっ!!

「おっと…これで帰られる訳にはいかないんだよね…」

彼女が怒って帰ろうとする…
まあ予想はしてたけど…だからって帰す訳無いじゃん ♪

「あっ…」

彼に腕を掴まれた!!

「ありがとね。眞子ちゃん。」
「こちらこそ。毎度。」

何2人で笑い合ってんのよぉ…

「眞子ぉ…あんたって人はぁ!!」

そう叫びながら私はグイグイとこの男に引っ張られて…その場から駆け出していた…



「ちょっと…いい加減にして下さい!離してっ!!」

思いっきり捕まえられてる腕を振りほどいた。

「ストーカー…捕まえてあげよっか?」
「は?」

いきなりそんな事言われた…どんな話の流れなのよっ!!
思わず彼の顔を見つめてしまった…

「困ってるんでしょ?オレそう言うの解決すんの得意なの。」
「何なんですか…あなた…」

彼女がもの凄い警戒の眼差しをオレに向ける。

「眞子ちゃんから聞いたよ。誰かにつけ回されてるんだって?」
「…まだ…ハッキリと そうと決まったわけじゃ無いから…」

何でこんな初対面の人にこんな話してんだか…

「君になら…ストーカーいてもおかしくないと思うけど?」

そう言って彼が 首を傾げた…その仕草がチョット目を惹いた。

「…本当…何なんですか?あなた…」
「オレ?オレ椎凪…椎凪慶彦26歳独身水瓶座のA型。」
「は?」

いきなり自己紹介し始めた…

「本日君に一目惚れしました!!ヨロシクね。望月 耀ちゃん。20歳。
汪華大3年生。いて座のAB型。身長は…」

「わーーーっ!!ちょっと…それ以上は言わなくていいからっ!!」

まったく冗談じゃないっ!!いきなり人のプロフィール道端で暴露しないでよっ!!

「そう?じゃあオレの身長・体重聞いとく?」

惚けた顔で覗き込まれた。

「結構ですっ!!」
「え?そう?」
「とにかく…もう私に構わないで下さい!!それじゃあサヨナラ!!」
「じゃあ送ってく。 夜道の一人歩きは危ないよ。」
「あなたが一緒の方がもっと危ないんで結構です。」
「面白いね。君ってば。」
そう言って一歩彼女に近づく。

「ストーカー に襲われたら大変だよ。オレを信じてよ…今日は送り狼にはならないから。ね?」

「 ………… 」

「 ね? 」


結局…勢いとこの人の人懐っこい笑顔に負けて…送ってもらう事になっちゃった…