06






「……ん…」

頭が…ボーっとする…私…どうしたんだっけ…

「 !! 」

そうだ…あの男の人に呼び止められて…浜田教授が呼んでるって……でも…

「あ…ちょっと…何これ?」

ジャラ…っと音がして両腕が…横になってるベッドの頭の上の柵になってる部分に
万歳状態で手錠で繋がれてる……しかもこんな所にベッドって…ここ何?
見回すと小さな部屋で…埃臭くて物置みたい…


「目が覚めた?」

「 !! 」

さっきの男の人がベッドの横に立って 私を見下ろしてる。

「あなた…一体…私をどうする気ですか?」
「大きな声出しても無駄だよ。ここは大学の中でも奥まった所で誰も来やしない…
倉庫みたいな もんだから…」
「あなた…誰?」

「僕?……知らないか…そうか…そうだよね…知るはずも無いか……ふふ…
でもね僕は君の事は良く知ってるよ。いつも見守ってたんだから…」

見守ってた?…いつも?

「君は綺麗で… 頭も良くて………何より清らかだった。」

「…………」

何よ?清らかだったって?過去形??
でも…どうしよう…どうしたら…助けを呼ばないと…誰か…

「なのに…昨夜は何だよっっ!」

「きゃっ!」

男がいきなり私の腕を乱暴に掴んだ。

「知り合ったばっかりの男と……あんな事………
くっ…君は他の女と違うと思ってたのにっっ!!」

昨夜?何この人…昨夜も私の事…つけてたの?

「君も僕の気持ちを裏切るんだね…君は僕のものなのにっっ!!!」

「…あ…いや…」

男の顔が近づいて来る…目付きが普通じゃ無いし…呼吸も荒い……

「だから全部…僕のものにしてあげる…あんな男より僕の方が君の事思ってる…
あんな男より僕の方が良いに決まってるのにっっ!!!!」

「 それは違うな。 」

「 !!! 」

突然足元の方から声がした…?

「あなた…」

「オレの方が お前より何億倍もいい男だ。思い上がんのもいい加減にしろよ…テメェ…」

どうやって入って来たのか…彼がいた!!
そう言う彼の手には… 拳銃が握られていて…男の頭につけられていた…

「頭に穴…開けて欲しいか?ん?」

言いながら男の頭にゴリゴリと銃口を押し付ける。
そう言ってる彼の瞳も普通じゃ無い…ちょっと…大丈夫??

「…な…」

銃を突きつけられた男が青ざめて震えだした…

「ちゃんと鍵くらい掛けとくもんだ…誰も来ないと思ってたんだろ?馬鹿な奴…くすっ
怪しいと思ってたんだよな…先に捕まった奴だけじゃ つじつまが合わない事もあったし…
だからもう一人いるんじゃねーかと思ってたんだ…昨夜もオレ達の事つけてただろ?
甘いんだよなぁオレをつけるなんてさ。 でも…いいもん見れただろ?
最後は2人だけの秘密だからテメェなんかには見せないけどな。
それに耀はもうオレの女だからお前になんて手を出させない。」

そう言ってニッコリと笑った。

ちょっと…今ドサクサに紛れて何か変な事口走ってなかった?この人?



先に捕まった人は…ただ私の事をつけていただけだった…
今日捕まった人は…私が携帯を買ったお店でバイトをしてた人だった…
私の書類を見て…住所と携帯の番号 を調べたらしい。
まさか…同じ大学の人だったなんて…全然気が付かなかった…



「流石オレが惚れた女だね。同時に2人にストーカーされてたなんてさ。」

変な所で感心するんじゃない!

「流石じゃない!!…あなた何?一体何なの?何で拳銃なんか持ってるの?」

彼はニッコリ笑うだけ…

「ちょっと…」

「先輩!大丈夫ですか?」

追求しようと思ったら遠くの方から誰か…男の人が2人駆けてくる…

「ああ!やっと来たか…ちゃんとサイレン鳴らさないで来たな。」
「当たり前っすよ…先輩の命令ですから…」
「え?先…輩?」
「あ!どうも。災難でしたね。僕達…汪華西署の者です。先輩犯人は?」
「ああ…あっちの奥の 倉庫にいる。ほい鍵。」
「はい。」

彼から鍵を受け取ると彼等はさっきの倉庫に走って行った。

「あ…あなた…刑事だったの!?」
「はは…バレちゃった?」

ポリポリと頭を掻きながら笑って誤魔化された。

「バレちゃったじゃないっっ!!」




「ねえ…もう機嫌直してよ…」

スタスタ足早に歩く私の後で彼が情けない声を出してついて来る。

「信じらんない!ストーカー捕まえたお礼なんかする必要無いじゃない!
刑事だったら当たり前でしょ?この大嘘つき!!」
「ウソなんかついてないじゃん! オレ一度も自分の職業君に言った事無いよ!だろ?」
「そうだけど…黙ってるなんて卑怯じゃない!」
「だってオレあの日は非番だったし…
休みの日に仕事する なんてオレにしてはすっごく珍しいんだから…」
「何得意がってるのよっ!この悪徳警官!税金ドロボー!!!」

いくら文句を言っても収まらない!

「ねえ…ホントオレと付き 合ってよ…」
「いや!私男の人嫌いだから!」
「何で?」
「あのストーカーがいい例でしょ?気持ち悪いし何考えてるか分からないし大キライ!!」

「オレも気持ち悪かった?」

「………そ…それは…あなたには…助けてもらったり…したし…」

今までの行動から完全否定するのは難しかった…

「そう!何度も助けてあげたし。何より君の初めての相手だもんねー ♪ 」

そう言って追いついて私の隣に並ぶ。

「う…うるさいっ!!そうだ…あの人が昨夜つけてたの知ってたんだよね?
それでワザと私からキスさせたの?」
「え?ああ…つけられてんの知ってたのは本当!一応刑事だからね。
オレ達のアツアツぶり見せれば動くと思ったんだけど…
まさか次の日の真昼間に君の事拉致る なんてさ…ちょっとビックリ。後つけてて正解 ♪ 」
「後つけてたって…ホント…あなたって人は…」

呆れて…でも全然わかんなかった…いつからいたんだろう…?

「耀の事はオレが守るから。だからオレ達付き合うの。ね!」
「ぜーーったい!イヤッ!!!!馴れ馴れしく耀なんて呼ばないで!」
「オレは椎凪でいいよ。」
「人の話聞いてるの?…んっ!!」

ガッシリと抱きしめられて…いきなりキスされた…!!こんな所で!!

「ちょ…」

慌てて顔を反らしたけど…身体は彼がしっかり抱きかかえて たからあんまり意味が無い…

「でも…さっきのは惜しかったな…」
「は?」
「あんな場面じゃなかったらあのままあそこで愛し合っても良かったのにな……ね!」

彼が満面の笑みで同意を求める様に私に聞く。

「はあ?何言って…」
「オレに助けられた君が感激してその場で愛し合うなんて最高だよね ♪ 
犯人に見せつけられるしさ!」

もーっっ!!この男はっ!!
…本当に刑事なの?そう言えば本物かどうか確かめてなかった!

「今度手錠で繋がせて ♪ 」

言葉とは裏腹な爽やかな笑顔向けられた。

「誰がするかっ!!やっぱりあんたなんか大キライ!!」

暴れてやっと彼から逃げ出した。

「絶対燃えるって。 ね?」
「ね…じゃないっ!!ね!じゃっ!!」

懲りずに同意を求めてくる…しつこい…
あんたの頭の中はどうなってるのよ!?

1度に色んな事があり過ぎて…私はもう倒れそうだった…
立ってるだけでもフラつく…


「オレの腕の中でぐっすり眠れば元気出るよ。」

彼が懲りずにそんな事をとびきりの笑顔で言って来た!

「うるさいっ!!」


私はそう言い放って更に歩く速度を速めて歩き出した。