07






「綺麗だったね。花火…」
「耀の浴衣姿も綺麗。」
「……どうも。」

そう言って彼を見上げると…浴衣を着こなして…思わず見とれた…

彼は何気にカッコいい…と思う…調子に乗るから彼には言わないけど…
確か身長は182cmあるって言ってたっけ…
ちょっと小麦色の肌で…身体も引き締まってて……

大人の…男の人なんだよね……

「ん?」

そんな事を考えて彼を見つめてたら気付かれた。

「ううん…」

慌てて目を反らす…

「さて!少し露店見て行こうか。オレこう言うの久しぶり ♪ 」


地元の夏祭り…
花火も上がって露店も沢山 出てて…浴衣まで着て2人で出掛けた…
これって思いっきりデートなんだよね…きっと…

ストーカー事件以来いつの間にか当然の様にこんな日常を彼と過ごしてる…

私がどんなに邪険にしてもメゲない彼…
いつの間にか距離を縮められて…すっかり私の中に入り込まれた……

今日は2人共… 久しぶりの縁日で子供みたいにはしゃいだ…



「はぁ…楽しかった…あっ…」

彼の部屋に着いて玄関に入った途端…彼に抱きしめられた…

「ちょ…ん……」

乱暴に彼がキスをする…

「ずっと…我慢してたんだ…」
「あ…やっ…」

浴衣の…前が…肌蹴ていく…
下着だけの胸が簡単に露わにされる…

「んっ…あ…うっ…」
「立ったままって言うのも…いいでしょ?」

耳元で囁いた…
耀が…ちょっとだけ眉をひそめる…
オレに攻められてるのを…耐えているからか…それとも…怒ってるからか…

でも…

「そんな顔…しないでよ…余計…その気になる…」

そう言って耀の唇を乱暴に奪う…そのまま舌を絡めて耀をその気にさせる…

「ん……んん……」

キスをしながら耀の胸を下から掬い上げる様に揉み続ける…

この行為を素直に受け入れてくれない耀はすぐにオレに文句を言うから…
口と舌と指で攻めて感じさせて…文句を言えないようにしてから口を離す…

感じ易い耀はあっという間に息も絶え絶えになってクテンとなるから……可愛い ♪ 

力の抜けた耀を支えながらちょっと乱暴に押し上げた…

「…んっ!…ばっ…か…あっ…あっ…」

しっかりとオレの指で解された耀の身体はちゃんとオレを受け入れてくれて…
玄関先でしばらく立ったまま耀を攻めた…

オレのすぐ目の前でぎゅっと目を瞑った耀がオレが押し上げる度に
眉をさらにきつく寄せて耐える…

そんな顔が堪らなくてそのまま床に押し倒した…

「あっ…あっ…もう…やだ……」

イヤだと言いながら感じてる…そんな恥らった顔がまた堪らない……

「最高だよ…耀…慣れてないなんて思えない…
こんなにオレに合ってる…オレだけの女だよ…
もっと…乱れて…耀…もっと感じて…オレに聞かせて…耀の声を…」

私の唇を…指で優しく…なぞりながら彼がそっと優しく私の耳元にそんな言葉を囁く…

彼と知り合って一ヶ月…
どうやって見つけるのか私が何処にいても突然私の前に現れる…刑事だから?

気持ちでは…まだ彼の事認めてないのに…
耳元で甘い言葉を囁かれて…優しくキスされると…彼を受け入れちゃう私って…

自分がこんなに軽い奴とは思わなかった… あんなに男の人がイヤだったのに…



抱かれて…感じて……自己嫌悪…





「どうしたの?まだ足りない?心配しなくて も寝る前にもう一度…」

そんな落ち込んでる私に彼が声を掛ける。

「しませんからっ!それに私泊まりませからっ!!」

そんなやり取りをたった今抱き合ったばっかりのベッドの上でしてる…
だから説得力も何もありゃしない…

「えー…泊まってよ…」
「いやっ!」

彼が…私に近づいて…ワザと唇が耳に 触れるように囁く…

「オレ…一人で寝るの淋しいな…耀がいてくれたらオレすごく嬉しい…ちゅっ !」

耳にキスされた…一瞬で身体中が痺れた……


結局…私は彼の言う事を聞いてしまう…
だって…どうしてだか…抵抗できないんだもん…何でなんだろう……?
認めたくなんか…ないのに…

彼は…いつも私の傍にいる………



それからしばらくは何事も無く過ぎた……

今日私は眞子に頼まれてバイト…
眞子の身内が経営する喫茶店のウエイトレス。
眞子はバイトの掛け持ちをしてるから時々手伝わされる…
彼には…内緒。

だって…きっとあれこれうるさいから…
それに…何で彼にそんな事まで報告しなくちゃいけないのか…
なんてちょっと反抗してみたい気持ちもあった…
だから彼の仕事が終わったら彼の部屋でのデートのお誘いを一方的に断った。
彼は納得してなかったみたいだけど私にだって都合って言うものがあるんだから。



「いらっしゃいま…」

店のドアが開いて お客さんが入って来た。

「 ! 」
「 せ……え?」

えーっっ!!??…なんで?!…お互い一目で相手が分かった。
目の錯覚でもない…どう見ても彼だっ!!
ちょっと驚いた顔で私を見てる。

「へー…オレのデート断ってこんな事してたんだ。しかもこんなミニスカートで?
オレには見せた事無いよねぇ?」

制服姿の私を見てわざとらしくニッコリ笑って そう言った…

「ひっ…人違いです!だっ…誰かと見間違えてません?」

私はメニューで顔を隠しながら必死に逃げた。
もう今更だけど…身体が勝手に……

「いやぁ…この身体のラインなんか絶対 オレの彼女だと思うんだけど?」

そう言って私の身体を腰からお尻にかけて触られた…

「かっ…彼女? そんな人いましたっけ…」

もしかして私の事…かしら?

「へー…そう…じゃあオレの勘違いかな…」
「 ……… 」

明らかに彼の顔が引き攣ってる…何だろ…怒った…?




その日の夜… バイトの帰り道…彼がもの凄い怒った顔で…私を睨んでる…

「…………」

私は何だかバツが悪くて彼を見ないでソッポを向いてる。

「何なの今日は?オレに内緒で何してんの?」
「べ…別にバイト……眞子に… 頼まれたから…手伝っただけだもん…」
「ふーん…」

何だかとっても嫌な感じの『ふーん』だった…

「今日は…どうして…あそこに?」

そう!私はそっちのその事の方が聞きたいわよ!!

「前眞子ちゃんに聞いた事あったから…何となくね…」

相変わらず 勘が鋭い…それに流石刑事かしら…いつの間にそんな情報を…

「あなたに言ったら心配するから…現に…してたし…」

「…どーせオレはバカみたいに心配するもんな。
独占欲強いしオレの彼女って思われるのイヤなんだ。」

「それは…」

「オレが耀の事好きって知ってて…何回も愛し合ってるのに耀はオレの彼女じゃないんだ?」

だんだん…彼の声が…冷たくなる…

「だって…初めは酔った勢いで…しただけだし…後はあなたが…強引に…」

彼の顔が見れない…
本当はこんな事言うつもり無いのに…何でだろう…勝手に言葉が出てくる……
確かにそう思ってたのは事実だけど…
だからってそれを気にしてたかどうかは自分でも疑問だ…

「へー…そう…そう思ってたんだ…」

そう言うと…彼は下を向いた…

「くっくっ…そっか…オレ…バカみたいだったな…」

そう言って上げた彼の顔は…いつもの彼じゃ無かった…
冷たい瞳で…私をジッと 見つめてる…こんな彼初めて…そんなに怒ってるの…?

「悪かったなしつこくして。まぁお互い良い思いした事もあったんだしいいよな?
オレ行くから… もう彼女と思われる事も無いから安心しろよ。じゃあな。」



そう言い捨てて…オレは振り向きもせず…その場から…耀の傍から離れた…

歩く足が…早くなる…頭の中が… ぐるぐる回る…

久しぶりに学生の頃の気分が蘇って来た…胸の中が重くて…暗くて…
自分ではどうしようも無いくらいイライラしてくる……あの感覚…

くそっ…本当はあんな事…言うつもり無かったのに……
胸の苦しさを抑え切れなかった……

オレから別れ切り出してどうすんだよっ!!

でも…オレは彼女だと思ってたんだよ…初めてキスした 時から…彼女だと思ってた…
くそっ…そんなにイヤだったのかよ…オレと付き合うのが…

あーでも…オレ女と付き合うのって初めてだった……

あ…そうか… もともと…付き合ってなかったんだっけ…オレだけが勝手にそう思ってただけか…

別に今まで特定の彼女なんて必要なかったから…
はーその辺慣れてなかったからダメなのか? ………これから…どうする?

オレ…生きていけんのかな…一生で一度の恋だと思ってたのに…

これが…最初で最後の恋だと思ってたのに……


目の前が…真っ暗だった…落ち込んで…



ぎゅっ!!!

「  !!!  」

突然後ろから抱きつかれた…オレの身体に細い腕が廻される……

「 ごめんなさい! 」

「………」

え?何?何だよ……予想外の展開で…動けない…声も出ない…
心臓も…ドキンドキン…いきなり早く動き出す…

今までこんな早く動いた事なんて無い位に…

「私…男の人と付き合う なんて初めてで…だから何か恥ずかしくって…
どうしていいか…わかんなくて…だから…あなたを傷つける事言って…ごめんなさい…」

彼を引き止めたくって… 後ろから抱きついた。
彼が私の前からいなくなった後…ジッとしてられなくて…後を追い駆けた。

彼に別れの言葉を言われて…自分の気持ちに気が付いた…

「イヤじゃなかったから…あなたと… するの…
でも…私の事…すごくオープンに好きって言ってくれるから…
何か…どうしていいかわかんなくって…だから…あなたの事は…好きだから…
そりゃ…まだ…分からない事いっぱいあるから…これからだと思うけど…
でも…だから…行かないでっ!!」

何をどう言えば彼に伝わるのか分からなくて…とにかく… 思ってる事を叫んだ。
男の人にこんな事言うのは初めてだったし…だからこれでいいのかな?わかんない…


振り向いて…彼女に手を伸ばした…
怖くて… 怯えながら…拒絶されたらと思うと…

「オレの事…好きって事?オレの彼女って…思ってもいいの?」

伸ばした手で…彼女の頬に触れる…

「うん…でも…まだあなたの…椎凪の事良く知らないから…これから…あ…」

椎凪が…そっと…触れるだけのキスをする…

「みんな…見てる…」

「見てるね…」

そう言いながらも…私にキスをする事を止めない…
夜と言ってもお店が並ぶ道のど真ん中でキスなんかしたら…いやでも人目を惹いてる…

「だから…これは恥ずか しいから…」
「くすっ…ごめんね…でもオレしたい時にする。それがオレなの…今に慣れるよ。」

私を抱きしめながら椎凪が優しく囁く様に言う…

「ウソだ… 慣れないよ…」

椎凪の胸に…顔をうずめながら呟いた…




「……はぁ…あっ…んっ…」

椎凪の部屋のベッド…椎凪が…優しく…私を抱いてくれる…

今までいつも自己嫌悪みたいな気持ちがあったけど…
今は素直に椎凪に身体を預ける事が出来る…

「耀は…オレのものだよ…誰にも渡さない…オレ…耀がいなくなったら…生きていけない…」

椎凪が子供みたいに呟く…私に甘える様に擦り寄りながら…

「大…袈裟…」
「大袈裟じゃない…本当…信じてよ…」

そう言ってギュって抱きしめられた…


その夜…長い長い時間2人の時間をベッドで過ごした…

私は初めて椎凪の全てを受け入れて………

椎凪と愛し合った気がした……