betubanasi part 5

 * 今回のお話は椎凪達が高校生のお話。
 椎凪と耀を一緒に通わせてあげたかったのと全員を一緒にいさせたかったので…
 このお話基本は本編のままですが多少 違いますのでご説明を…
 椎凪 : 高校三年生。(キツイか?)性格・過去設定は本編通り。本編程過去は引きずっていません。
 耀 : 高校一年生。トラウマ有り ですが既に右京によって治療済み。そのせいもあり本編より幼い性格設定になってます。
 今回は始めの方から耀は椎凪LOVEです。 祐輔 : 高校三年生。耀との関係は 本編通り。耀とはとても仲が良い。
 慎二 : 23歳。本編のままです。本編では椎凪より年下なので『さん』呼びなのですが今回は慎二の方が年上…
 でも違和感ありまくりなので本編通り『椎凪さん』と呼ばせてます。
 右京 : 28歳。本編のままです。既に耀の親代わり。なので耀の事は溺愛。
  本編とは違った椎凪と耀の恋愛話。どんな感じでしょうか?本編と被る所も多々ありますが…
 結構続きますので気長にお付き合い下さいませ。 別話編なのでイラスト付き(あえて大人キャラ)
 どんな事があっても2人は付き合う!これ基本です!! *
    


05


住み込み初日の朝が空けた。
朝食はサンドイッチ。これなら新城君も食べれるだろ。オレって親切。
「朝ごはんの準備OK!耀くん起こそ〜♪」
今日から学校かぁ 途中まで一緒に行ける。本当オレって幸せ。
「耀くんオハヨー♪」
耀くんだけ起こす。
他の奴らは知らん!テメェ等で起きて来い!
「耀くん !!」
寝室まで起こしに行った。
「あれ?何でいないの?」
ベッドはもぬけの殻だった…
「あふっ…」
「あ!新城君耀くんが部屋にいないんだけど?」
耀くんの部屋の前で起きて来た新城君に声をかけた。
「耀?耀ならオレの部屋にいるぞ。」
寝起きの顔でそう返事が返って来た。
「え?そーなんだ…」
行方不明じゃなくて安心…
「って!!ええっっ!!なっなっなっ何で!?何で君の所に?」
「何で?」
慌てまくるオレを横目に新城君が余裕の微笑みで答える。
「愛し合ってるからに決まってんだろ?夕べも愛し合ったんだよ。」
フフッっと笑う。
「うっうっうそだっ!!」
信じないって…絶対そんな事…半信半疑で 彼の部屋を覗いてみると…

ほっ…本当にいたぁ…彼のベッドに気持ち良さそうに眠る耀くん…

なっ何で?オレの事…遊び?
オレはショックで眩暈が してヨロめく…生まれて初めての体験…
でも…寝顔が何とも可愛い…オレ遊びでもいいや…
思わずホウけてそんな事を思ってしまった。

って!違ーーうっっ!!
オレは頭をブルブル振って雑念を追い払った。


「耀くん!どう言う事?」
オレは納得行かなくて起きて来た耀くんに訳を聞いた。

「何だよ。男のヤキモチかよ。みっともねーな!」
「心の狭い男は嫌われますよ。」
「耀に捨てられやしないかと心配なんだろう。」

「………」
うるせー外野!黙ってろ!
「そこ!うるさいから!!」

「オレ…さ…時々怖い夢見るんだ…」
耀くんが話し始めた。
「それで目が覚めると怖くて一人 じゃいられなくて…
みんなの所に行って一緒に寝てもらうの…
半分寝ぼけてるから誰の所に行くか分からないんだけど…」
何だ…そう言う事か…納得!
「だからもし次に椎凪の所に行ったらごめんね。ビックリしないでね…」
耀くんが困っ様に笑う。
「耀くん…」
そんな事…
「大丈夫!!毎晩一緒に寝たって 構わな…」

言いながら耀くんを抱きしめ様とした時両手首をがっちり掴まれ
思いっきり逆方向の背中に持って行かれた!
「ゴキッ!ボキッ!」
オレの肩から異様な音が響いた。

「いでででででででで!!」

「いいから早くコーヒー淹れろよ!待ってんだよ!さっきからっ!」
新城君がギリギリと オレの腕を捩上げながら文句を言ってる。
「コーヒー?」
やっと開放された肩を摩りながら聞き返す。
「言っとくけどなオレがOK出したからお前右京達に 会えたんだからな!一生感謝しろよ!」
睨みながら言われた。
「あ…!」
バイト先でのあの場面が思い出された…彼がコーヒー飲んで耀くんが感想聞いてた…
あれってそう言う事だったのか…今頃納得!

「おいしいー!」
サンドイッチを頬張って満面の笑みで耀くんが言う。
「たくさん食べてね。」

「やっぱ食いもんに釣られたとしか思えねーな。」
「餌付けですね。」
言いたい放題だ。

「耀。そろそろ着替えないと遅れるよ。」
右京君が耀くんに 声をかけた。
「やだな…学校…行きたくないな…」
耀くんがシュンとなって俯きながら呟く様に言う。
「何言ってるんだい耀。まずは週三日は行く 約束だったろう?ちゃんと守りなさい。」
右京君が少しきつい口調で耀くんに話す。
「うん…でも…さ制服もイヤだし…知らない人もいっぱいだし…
前みたいに ここで勉強しちゃダメなの?」
「駄目だよ。耀のためにならない。」
きっぱり言われた…
「うー…」
「教室までオレがついてってやるから。」
拗ねてる耀くんの頭を新城君が撫でる。
「クラスに美里さんって友達も出来たんでしょ?待ってるよ。美里さん。」
「うん…」
今度は慎二君が慰める。 何だコレ?耀くんどうかしたのか?
「はー…」
耀くんが諦めて重い足どりで階段を上がって行く。
そんな後ろ姿を見つめながら不思議で慎二君に聞いてみた。
「慎二君耀くんどうしたの?」
「え?ああ…さっきのですか?」
朝食の後片付けをしながら苦笑いの慎二君。
「耀君極度の人見知りなんで学校行くの嫌が るんです。」
「え?人見知り?耀くんが?」
ウソだろ?
「全然感じなかったけど?オレとは初めっから普通だったよ?」
「そうなんですよねー…なぜか 椎凪さんは平気だったらしいんですよ。不思議な事に…」
食器を洗いながら話し続ける。
「どんなオーラ出してたんですか?耀君の警戒心解いちゃうほど…」
「いや…そー言われても…」
オレはいくら思い出しても思い当たる節が無くて…返事に困った。


 「椎凪も途中まで一緒に行けるの?」

 耀くんの声がして階段を下りてくる音がした。

 「え?ああ…うん。行け…」

 下りてくる耀くんと目が 合って…

 「る…よ…え…?」

 何だ?ウソだろ?見間違いだよな…?

 「 え え っ !!」



階段から下りて来た耀くん…でも…でも… その耀くんが…耀くんが…









「スカート履いてるーーーっっ!!」









ウソ…オレは訳が分からない…
「ハッ!まさか…」
オレは急いで階段を駆け上がると
耀くんの制服のブレザーの前を思いっきり左右に引っ張って確かめた。

ビ ッ !
「え?」
余りにも素早い行動で耀くんは動けずオレにされるがまま…

「む…胸があるっ!!え?何で?」

しかも結構大きい…
「耀に何してやがる!!このエロ椎凪!!」
ゴ ッ ! 
オレの顔面に新城君の拳が叩き込まれた!
「 ブッ!! 」
オレはその衝撃で階段を下まで転げ 落ちた。
「…っで…!!」
「女だからに決まってんだろ!」
新城君が拳を握りながら叫ぶ。

「女?女の子?え?え?」

オレは階段の下で ヘタリ込みながら殴られた顔を押さえて
未だに理解出来ない状況に慌てるばかり…
「あれ?椎凪さん言ってませんでしたっけ?」
また慎二君が惚けて言う。
右京君は顔に怒りマークが浮き上がっている…でもオレはそれ所じゃないって…

「聞いてませんけどっ?!」

本当だ!
「耀君女の子なんですよ。」
はぁ?…何軽く言ってやがる…
「何で 『耀くん』 ? 『くん』 なの?」
「やだな。ニックネームじゃないですか。耀君自分の事『オレ』って言うから。」
「だって…今までムネ…無かった…」
「ああ…普段はサラシ巻いてるんですよ。男の子だと思われた方が変なの寄って来ないでしょ?
まぁ椎凪さんみたいなの 初めてでしたけどね…男と分かっても迫る人。そっち系ですか?」
真顔でオレに聞く。

「違いますっ!!オレはノーマル!!相手が耀くんだったからっ!!」

そう…相手が耀くんだったから男だろうが気にしなかったんだ…
「まぁ詳しい話しは今日の夜にでも…遅刻しますよ。三人共。」


オレの前を歩く耀くんを オレはジッと目で追ってる…女の子…ウソだろ…女の子?
確かに男の子にしては可愛いなぁとは思ってたけどさ…なんか…複雑…

「おい!」
「え?」
呼ばれてるのに気が付かなかった。


 「お前そっちだろ?オレらこっちだから。」
 「ああ…」
 そっか…そうだった…
 「帰りはオレが一緒だから迎えに
 来なくていいからな。じゃあな。」
 「じゃあね。
 椎凪…学校終わったらね。」

 「あ…」

 オレは一人ポツーンと曲がり角で
 立ったまま二人の後ろ姿を見送ってた…

 なんかスゲー淋しい…
 オレが彼氏なのに…(多分…)

意味も無く手を握り絞めた…やっぱ学校が違うっつーのも痛いよな…


「うー緊張する…」

階段で祐輔と別れて教室に向かう…どうか誰もオレに話しかけ て来ないで…
「あ!おはよう。もっちー」
「おはよ…美里さん…」
教室に入って直ぐ美里さんに話しかけられた。
もっちーって止めて欲しいけど… 言えない…
「英語の宿題分かった?」
「うん…」
「うわーすごい!教えて教えて!」
「う…ん」

オレは仕方なく諦める…
あーこれから長い長い 一日が始まるんだ…オレは気分が重くなって深いため息が出た…


学校からの帰り道。
夕飯のオカズを何にしようかなんて事を一人淋しく考えながら
歩いてるとタイミング良く耀くんと門の前で会えた。

「あ!」
「お!」
「椎凪!!」

耀くんがオレに気付いてオレに飛び付いて抱き着いた。

「耀くん…」
「おかえりーとただいま。」
オレに抱き着いたままオレを見上げてニッコリ笑う。
「やっと会えたー♪」

耀くん…やっぱり癒されるなぁ…

「ただいま。とおかえり。」
そう言うとオレは耀くんの顎を優しく持ち上げてそっとキスをした。
ただいまとお帰りのキスだ。
「あ…」
耀くんが見る見る真っ赤に なっていく。
「オ…オレ先に行ってる…」
耀くんが慌てて走って行く。
クスッ…可愛いねぇ…

「……おい!」

「ん?」
あ…新城君がいたん だった。
「あの時のお前になれ。」
いきなり言われた。
「あの時?」
「オレ達に啖呵切った時だよ。」
「ああ…何で?」
「もう一度見たいからだよ。」
「困ったな…君みたいに上手く出せないんだよね…
見せるだけでいい?その時オレにチョッカイ出さないでよ。」
「いいから早く見せろよ!」
「もー我が儘だな…」
言われるままに従ってるオレ…まぁ一度見せちゃてたから隠す事も無いし…
仕方無く静かに目を閉じてゆっくりと目を開けた。
「これでいいの?」
『オレ』で 新城君を見つめた。
言い終わら無いうちに彼の左腕がオレの顔を掠めた。
紙一重で避けてその拳を掴む。
一瞬二人共停止した…次の瞬間オレは彼の頭の真上から 顔面目掛けて殴った。
オレに片腕を掴まれてた新城君は避け切れず地面に片手と片膝を着いた。

「チョッカイ出すなって言っただろーがっ!」

「……」
片腕と片脚を軸に下から廻し蹴りが繰り出された。
不意をつかれ避け切れず顎を掠めた。

 「………」

 お互い黙って睨み合う。

 「テメェ…ふざけんな…殺すぞ…」
 「だったら今殺してみろよ…椎凪…」

 オレを見つめる瞳はいつもと違って
  ギラギラと凄みがあって
 殺気を含んでる。

 オレと新城君はお互いに睨み合う…



「もー何やってるの?二人共…」
オレのケガの手当を しながら耀くんが呆れて言う。
「イテッ…いやぁ…軽い手合わせのつもりがついマジになっちゃて…」
「祐輔も椎凪殴ったらダメだよ!」
「ヘイヘイ…」
先に手当を終えた祐輔が痛そうにコーヒーを飲みながら返事をする。
「新城君強いんだね。オレと互角なんてビックリ…」
「祐輔…」
「え?」
「祐輔でいい…オレだってビックリだ…オレと互角なんて…」
納得いかないって顔で呟く。


「ごちそうさま。」

その日の夕食の後オレはある決意を して右京君に声をかけた。
「右京君…」
「なんだい?」
「話しがあるんだけど…ちょっといい?」
「?」

あの応接間に移動した。
「なんだい?話しって。」
「君なら出来ると思うんだ。オレを…耀くんと同じ学校に編入させて欲しい…」
「耀と同じ?」
「ああ…」
「何故そこまで耀に こだわるんだい?そこまでする事無いと思うけどね。」
右京君がジッとオレを見つめながら静かに言った。

「……オレには耀くんしかいないから…ずっと一緒に いたい…ただそれだけ。」

「耀だって心がわりするかもしれない。
君だって分からないじゃないか…これから先…」
「それは無いよ…きっと…うん…」
オレは目を伏せながら話す…

「オレこうみえても一途なんだ…もう耀くん以外好きにならない…
分かるんだ…オレのここにすっぽりおさまってる…」

オレは自分の胸の真ん中を押さえてそう言った。

「今までのオレからじゃ信じられないけど…オレも自分で不思議…
こんなに好きになるなんて…まいった…」

照れ臭そうに話すオレを見つめたまま右京君は溜息交じりで…
オレから視線を外して口を開いた。
「……学校の事は僕より慎二君に相談したまえ。」

「編入?そりゃ右京さんなら簡単だろうけど…一応試験受けると思いますよ。」
「分かってる…」
「問題は学力ですね。今椎凪さんが通ってる所に比べるとランクが かなり上になりますから。
どうですかその辺?」
「今の高校は成績は関係無かったから…
中学の奴らが誰も通わない高校選んだから。じゃあ学力が大丈夫ならOK?」
「はい…後は右京さんですけど…」
慎二君がチラリと右京君を見る。
「いいよ。口添えしてあげるよ…ちゃんと合格したらね。ふふ…」

そう言った右京君は オレの事を見下した様な顔で見てる…
『 無理! 』の二文字が右京君の顔に浮かんでる。
慎二君も何気に薄笑い…どうやら右京君と同じ考えみたいだ…

…なっ…何だよ…ふざけんなっ!馬鹿にすんなっ!
オレはやる時はやるんだよ!見てやがれっ!

「分かった。」
オレは何とか自分を抑えて文句も言わず ソファから立ち上がった。
「あ…椎凪さん…あと耀君の事ですけど…」
歩き出したオレを慎二君が呼び止める。
「ああ…いいよ…もう。朝は驚いたけどさ。 女の子だったって事ならもう分かった。」
「椎凪さん…じゃ一つだけ…」
「ん?」
「耀君は精神的な事で長い間苦しんできました…まだ今もそれと戦っています…
幼い所もそのせいです。だから…耀君を…」
深刻な顔でオレを見上げて言う。

「…耀君を傷付けないで下さい。」

「分かってる…オレは耀くんを絶対 傷付けたりしない。
オレ耀くんに嫌われたら生きていけないから…」


「え?これから?」
次の日の夕飯の時これから毎晩勉強する為に出掛けるって
耀くんに話した。
「どうして?勉強ならみんなに…」

「嫌だね!」 「ヤダね!」 「嫌です!」

三人同時に言いやがった!
もちろんオレだって 「やだ!」当たり前だ。
誰がコイツらに…邪魔されんのがオチだ。
「だからしばらく夜いないけど…ごめんね耀くん。夕飯の支度はしていくからさ。」
「……うるっ…」
うっ…!!耀くんが半ベソでオレを見つめる。
「つまんないよー椎凪いないとー…」
「ごめん耀くん…ごめんね…好きだよ。耀くん!」
オレは立ち上がって耀くんの傍に駆け寄って抱きしめてあげた…
って…あれ?耀くんが腕の中にいない…

「騙されんな耀。
本当は女の所に行くんだ。
だからこんな奴別れちゃえ!」

いつの間にか耀くんは
祐輔の腕の中にいた!
「本当?」
祐輔を見つめながら聞き返す…
しかも耀くんは祐輔の言う事を
信じてる気配…

「祐輔!ウソ言わないっっ!!」
まったく…



駅前の中学生対象の進学塾…オレはビルを見上げてため息を吐く…


「ここには…来たく無かったんだよな… 」