betubanasi part 5

 * 今回のお話は椎凪達が高校生のお話。
 椎凪と耀を一緒に通わせてあげたかったのと全員を一緒にいさせたかったので…
 このお話基本は本編のままですが多少 違いますのでご説明を…
 椎凪 : 高校三年生。(キツイか?)性格・過去設定は本編通り。本編程過去は引きずっていません。
 耀 : 高校一年生。トラウマ有り ですが既に右京によって治療済み。そのせいもあり本編より幼い性格設定になってます。
 今回は始めの方から耀は椎凪LOVEです。 祐輔 : 高校三年生。耀との関係は 本編通り。耀とはとても仲が良い。
 慎二 : 23歳。本編のままです。本編では椎凪より年下なので『さん』呼びなのですが今回は慎二の方が年上…
 でも違和感ありまくりなので本編通り『椎凪さん』と呼ばせてます。
 右京 : 28歳。本編のままです。既に耀の親代わり。なので耀の事は溺愛。
  本編とは違った椎凪と耀の恋愛話。どんな感じでしょうか?本編と被る所も多々ありますが…
 結構続きますので気長にお付き合い下さいませ。 別話編なのでイラスト付き(あえて大人キャラ)
 どんな事があっても2人は付き合う!これ基本です!! *
    


07


「 ふふん♪♪ 」

制服のブレザーの袖を通して思わず鼻で笑ってしまった。
今日はなんて気分がいいんだろう…鏡を見ながらそう思った…
耀くんと同じ デザインの制服…なかなか似合ってるじゃん!
編入試験見事合格!
ざまあみろ!オレはやる時はやるんだよ!
慎二君と祐輔の驚いた顔…
右京君のあの納得の いかない顔ったら…くーっっ気分良いーーっっ!!
それに…耀くんのあの喜んだ顔…2人で思いっきり抱き合ってしまった。

─── 愛の力は偉大だっ!!── ─

「あ!椎凪。」
階段を下りて行くと耀くんが待っていてくれた。
「似合うよーーー!!」
「ありがとー。耀くん」
階段を下りたと同時に耀くんが オレに抱きついて来た。
オレはしっかり受け止めてあげる。

 「おめでとう御座います。
 頑張りましたね。」

 慎二君が本心からなのか
 分からないが
 お祝いの言葉を掛けてくれた。

 その爽やかな笑顔が曲者だ。

 「もー脳みそ溶けて
 耳から出そうだったよ…」



溜息交じりで本心からの感想を述べた。
勉強以外でもあの変態と約一ヶ月付き合ったもんだから精神的にも結構キツかった。

「……に!しても…」
「え?」
「良くそこまで着くづして着てますね…」
制服姿のオレを見るなり慎二君が呆れた顔で言う。
オレはノーネクタイにワイシャツは第三ボタンまであけてズボンには
仕舞わずに外に出してる…
前の高校でもそうやって着てたし…何か問題でもあんのか?
「今までの所と同じだと思わないで下さい!ネクタイ!ありますよね?」
言いながらオレの前に手を出した。
「……オレネクタイ無理!苦しくてさ…嫌いなんだよね…」
一応ポケットに入れていたネクタイを慎二君に放り投げた。
「何言ってるんですかっ!」
「!」
器用にネクタイをオレの首に回して…テキパキと締めていく。
「初日ぐらいチャンとしてって下さい…ねっ!!」
ギュッっと絞められて一気に首の周りが苦しくなる…
「………」
速攻指を入れて慎二君の手前少しだけ緩めた…ぐえっ…やっぱダメだ…
「右京さんが係わってる 事…忘れないで下さいね!」
慎二君が真剣な眼差しをオレに向ける。
「右京さんに迷惑が掛かる様な事したら…僕…許しませんから…」
静かな口調だけど… 冷たくて…暗い瞳でオレを睨む…
「………」
やっぱりあの爽やかな笑顔は信じちゃいけない。
耀くんはそんな2人の会話も気にないでオレに纏わり付いてオレの 温もりを堪能してる。
自分も一緒にオレのブレザーの中に入ったまま
前をしめて「あったかーい」なんて喜んでるし…
「じゃ…いってらしゃい。」
一瞬で そんな瞳を隠すとまた爽やかな笑顔をオレ達に向けてそう言ってくれた。


「椎凪慶彦です。よろしく!」
オレはいつもの猫っ被りの人懐っこい笑顔を
新しい クラスメイトに振り撒いてニッコリ笑った。
オレの笑顔にも騙されちゃいけない。

「………」
歓迎ムードとは言えない…
なんかオレを見る目が変わったモノ を見る目つき?
まあ見渡せばみんなお坊ちゃまお嬢ちゃま…
制服もキッチリ着てるし…みんな育ちがいいんだね…
季節外れのその上どう見ても校風には合わない 雰囲気の転校生…
一体何でお前みたいな奴がこの学校に来たんだよ?って眼差しか?
慎二君が言ってた事が分かったよ。
確かに前の高校とは違う。

「じゃあ席あそこね。」
「はーい♪」
担任に言われて窓際から2列目の一番後ろに座る。
「…………」
隣の席では無言でオレを眺めて…しかもナゼか呆れた 顔が一つ…
「よろしくね。祐輔 」
ニッコリ笑って挨拶をした。
「誰かの…陰謀を感じる…なんで同じクラスの…しかも隣の席なんだよ…くそっ…」
「そう?オレはうれしーよ。」

もの凄く嫌な顔をしてる祐輔とは反対にオレはずっとニコニコ微笑んでいた。


昼休み…中庭でお弁当を広げて待っていた。
「椎凪ーー!!」
「耀くん!」
耀くんがオレを見つけて両手を広げて走ってくる。
そしてオレに向かって飛び込んできた。
「んーーーーー!!」
そのまましっかり抱き止めてしばらくの間『抱擁タイム!』
この為にオレはこの学校に編入したんだ…一日中耀くんと一緒にいる為に…
「なんか学校に椎凪がいる なんてオレ嬉しい。」
「オレも嬉しいよ。」
オレより大分背の低い耀くんはオレの首に手を廻したまま
半分オレにぶら下がってる状態でずっと抱きついてる。
当然朝なんかゴネる事無く一緒に登校した。
「いい加減にしろよ…目立つだろ…」
祐輔が呆れ顔で文句を言うけどオレと耀くんは全く堪えない。
もう2人の 世界だっっ!!
「…………」
そんなオレ達を呆然と見つめる視線がもう一つ…

「あ!美里さん。 一緒に食べよ。
おいしいよ。椎凪のお弁当 」
「えっ?!」

突然耀くんに声を掛けられてハッとする。
「君が美里さん?初めまして。
良かった らどうぞ。」
オレは近寄って優しく声を掛けた。

耀くんはオレに纏わり付きだして
脇の下から背中に向かって
オレの温もりを探索中。


「もっちーいつもと違うね…びっくり!」
美里さんが不思議そうな顔で耀くんに話し掛ける。
(もっちー……?)
オレと祐輔は耀くんがそんな風に呼ばれてる なんて知ってちょっとビックリ…
「えっ?あ!…だって…椎凪いるから…」
他のおにぎりとは2回りほど大きなおにぎりを頬張りながら
耀くんが焦った様に 返事をした。
祐輔はポットで持ってきたコーヒーを飲んでる。


 「えっ?椎凪さんってもっちーの彼氏なの?」
 「正解ーーー♪」

 オレは耀くんの頭に両手を乗せて
 自分の頭を乗せながらにこやかに答えてあげた。

 ああ…『 彼氏 』……なんていい響…

 オレを耀くんの彼氏って認めてくれたのは
 他人では美里さんが初めてだよ…

 すんげー嬉しいっっ!!





「ええっっーーーもっちー に彼氏ィ?えーうそっ!!」
「本当だよん♪」
「試験期間中だけどな。無能なら即クビ!」
祐輔がそっぽを向いて馬鹿にした様に付け足した。
「試験期間なんかじゃないよっ!!もう採用されてんのっ!!
永久就職先なんだからっ!!」
「いつかリストラされんだろ?可哀想に…
浮かれてんのは今だけだ。 早いトコ再就職先見付けとけよ椎凪。」
「されないって!!まったく…減らず口ばっか言いやがって…」
「もー言ってよもっちー!そう言う事嫌いなのかと思ってたよー」
「べっ…別に…そんな…」
「美里さんはいるの?彼氏。」
「え?募集中でーす♪」

…こんな他愛も無い会話もオレとしては嬉しい時間だったりする…
あー隣には美味しそうにお昼を食べてくれる耀くんがいて…
なんか充実した時間…和むなぁ…



「じゃあP54開いて下さい。問い5・6・7各自解いて下さいね。」
午後最初の授業が始まった。
教科は数学。先生は若い女の先生。
あと何時間かで耀くんと帰れるんだぁ…楽しみぃ…オレはワクワク。

ふう…午後いちの授業って ちょっとかったるいのよね…新城君来てるわね。
このクラス君がいるから楽しみなのよね。ふふっ……ん?

「あら?君…誰?」
新城君の隣に初顔の子がいる…
「今日から通ってます椎凪です。よろしく。」
そう言えば季節外れの転校生が来たって言ってたっけ…
このクラスだったのね…!…あら…この子…
間違いないわ…あの時の…やだ…私ってツイてるぅ…くすっ。

キーンコーン カーンコーン

「はい。今日はここまで。椎凪君!初仕事お願いするわ。
プリント取りに来てくれる?」
5時間目終了後先生に呼ばれて教室を後にした。
先生の後をついて準備室に入る。
「悪いわね。」
「いえいえ。」
「じゃあこれ皆に配ってくれる?」
「はい。それじゃ…」

プリントの束を受け取ってサッサと教室に戻ろうとしたその時
オレの目の前で入り口のドアが勝手に 閉まった。

「え…?」
見るといつの間にか先生がオレとドアの間に立っていてオレを見上げてる。
「先生?」
なに?なんなの?なんかオレに用?
そんなキョトンとしてたオレに先生が微笑みながら話しかけてきた。
「憶えてない?私の事…」
「は?」
「私は憶えてるわよ。忘れるなんて事出来ないもの…」
そう言いながら何気にオレとの距離を縮めて来る。
「2ヶ月前位かしら…あなたから声掛けて来てホテルに行ったわ…」
「!」
教師の顔から女の顔になって オレを見上げる…
ゲー…何だよ…寝た相手?マジ?
いつもの如くオレの記憶には全く残ってないんだけど……
「それって本当にオレですか?」
「ええ…間違いないわ。私憶えてる。忘れる筈ないわ…
あなたの顔…それにベッドの中での事…」
「残念。オレじゃないです。他の男ですよ!」
きっと相手は オレだろうと思うけど…とぼけた。
「うそよ!絶対あなただわ!自信あるものっ!!」

いらないって…そんな自信…
忘れてろよ2ヶ月も前の事なんて… ウゼーな…

「何で認めないの?別にいいのよ…」
「先生…」
「脅してるわけじゃないの…」
「先生…」
「私は…」
「 先 生 !! 」
遮るようにキツイ口調で叫んだ。
「先生…オレじゃないって言ってるじゃないですか。もう行ってもいいですか?」
何とか笑顔で言えた…でもそろそろヤバイ… キレそう…
「………」
納得できないって顔でオレを見つめてる…
そんな事知るか…付き合ってらんねー…
「何なの?その態度…そんなにとぼけなくたって…」

あー…ダメだ…我慢できねー限界!



 「 …じゃあ聞きますけど…先生…
 百歩譲ってもしオレが 先生の言う
 その男だとしたら…」

 オレは俯きながら言葉を搾り出す…

 「 何だって言うんですか? 」

 『オレ』で話し掛けてやった…
  もう…気なんか使ってやらない…





流石にさっきまでのオレと違うのが分かったのか相手が緊張しだした。
オレは気にせず続ける…
「もしかしてもう一度したいとか思ってる?
それに一度そう言う事してるからちょっと声掛ければ彼氏にでもなると思ってます?」
「だっ…誰もそんな事言って ないでしょ!!」
その慌てぶり…本当は思ってたんだろ?
「オレは本人じゃないんであくまでもこれはオレの想像ですけど…
その男こー言いませんでした?」
「 ! 」

「 『あんたとはこれ一度きりだ』 って…
それにもしオレがその時の男だとしたら…
きっとこう言うと思うんですよ…

『 しつこい女 大嫌いなんだよ 』 ── ってね… 」

『オレ』で…しかも思いっきり冷めた態度で言ってやった。
相手は動かない…
「とにかくオレはその時の男じゃ ないですから。
もうその事でオレに話しかけるの止めて下さいね。」
オレは立ち尽くしてる女教師の横をすり抜けて
入り口のドアに手を掛けた。
「いくら勘違い だからって言ってもあんまりしつこいとオレ…
女でも容赦しませんから…」
「………」

オレは静かにドアを閉めて鼻歌交じりに教室に戻って行った。
そんな オレを廊下の角から見つめてる影に気付かずに…


「右京さん。電話ですよ。」
「ありがとう。慎二君。」
椎凪達がいない草g邸では右京と慎二が
のんびり午後のティータイムを満喫していた。

「僕だ…」
相手の話を静かに聞いている…
「そう…じゃあ分かっているね…そう…問題は無い。」

「何かありました?」
「いや…」
電話を切りながらニッコリと慎二に微笑んだ。

「僕も相当親馬鹿かなってね…ふふ…」

楽しそうに笑う。
「今頃気が付いたんですか?くすっ」
慎二も楽しそうに笑った。

「自覚が無かったようだ…」


それから数日後…
オレに詰め寄った数学の女教師 が学校を辞めた。
噂では生徒とのイケナイ関係が密告されて解雇されたらしい…
オレの事じゃない。
しっかり手ぇ出してたのか…あの女…
自分の学校の生徒相手 にするなんて馬鹿な奴…
やるならもっと上手くやらなきゃ…な…
相手の生徒の方は親の力でお咎め無しだそうだ…
この学校に通う生徒の親はそんな奴等ばっかり らしい…
オレには全くの無関係な世界の権力の話だけど…

その中でも一番の権力を持っているだろう人物が動いた事なんて…
オレは知るはずも無かった…