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 * 最後に妖魔バージョンの椎凪と耀のイラストあり! *




「はぁ……はぁ……椎凪……お腹いっぱいになった……」
「そう?」

あの日から約束どおり他の男とは交わることを止めてオレただ1人を相手にすることにすると
宣言した妖魔のロイスが頬を上気させた顔で満足気にニッコリとオレに微笑んでそう言った。

「お腹いっぱいだし……疲れたから……少し……寝る……」

言いながらロイスはもうほとんど瞼を閉じてる。

「ああ…おやすみロイス」
「…………」

最後にニッコリと笑ってロイスは眠りについた。
すぐに規則正しい呼吸の音がオレの耳に届く。

出会った時とは比べものにならない程の優しい笑顔をオレに見せてたな。

そしてホンの少しの間をおいて彼女の瞼がひらいていく。

「………ぁ……」

小さな溜息をもらして宿主である彼女が目覚める。

「久しぶりだな」

オレはロイスの時とは違う眼差しを彼女に送る。

「うん……彼女最近お腹いっぱいになるとしばらく出てこないから……」
「食事以外でもここに来ればいい」
「だって……」

恥らうような態度とほんのりと赤くなった顔がなんともいじらしい。

「オレは会いたかった」

それは本音だ。

「椎凪……ぁ……」

本音を暴露して彼女……耀を身体ごと全部オレで抱きしめてその胸に顔をうずめる。
ロイスと同じ身体で同じ声なのにオレに抱かれる反応はまったく違う。

「……ぁ……ン……ちゅっ……」

お互いを激しく求めるロイスとするキスじゃなくて……お互いを愛おしく思うキスをする。
そんなキスを交わしながらもうすでにオレを迎え入れる準備が整ってる耀の脚の間に身体を滑り込ませた。

そのまま耀の身体にオレの身体を組み合わせるように進めてオレ達はひとつになる。

ゆっくりと押し進めたのに耀は大きく身体を反らして息を呑んだ。
そのまま覆い被さるように耀の身体を押し上げ続けてもうこれ以上無理というところまで辿り着く。

「耀……」
「あっ……あっ……あっ……ああっっ!!」

小さく円を書くように腰を動かすとすぐに耀がその動きに反応する。

オレは耀がオレでイクのを見るのが最高に嬉しい。
今までとは違う自分の意志で抱きたい相手と……寝たい相手とだけすればいいんだ。

遠慮がちにオレにまわされる腕も触れる手のひらもいつもあったかくて優しい。

「もっと抱いていい?」

オレは年甲斐もなくおねだりする。

「……うん」

耀はにっこりと笑って快く承諾してくれた。

知り合って最初は敬語だった耀の言葉使いも何度も身体を交える度にオレに慣れてくれて
今では普通に話してくれるようになった。

「……あっ……椎凪……し……いな……ンア……」

オレに回された腕に段々力が篭る。

「……耀……もっと声聞かせて……」
「…あっあっあっ………あああっっ!!」

夢中になって耀を何度も何度も押し上げる。
その度に揺れる耀の身体と髪の毛が余計にオレを煽(あお)る。

「………耀……」
「……んあっ!ああっ……ああっ……」

オレから離れそうになった耀の身体を強引に引き戻して抱え上げた。

「………ンッ!!ああっ!!やぁ…椎…凪……まっ!」
「待たないよ」

耀を膝の上に座らせて逃げようとする腰をしっかりと押さえ付けた。
胸に軽く歯を立てて下から力一杯押し上げる。

「………うっ!あっあ!!あっあっ……ああんっ!!!」


考えてみたら耀は同じ身体でもう何時間もオレの相手をしてたんだった。
大きく仰け反って力が抜けた耀をそっと仰向けに寝せる。

ハァハァと息があがってる……昔はこんな息があがるまで相手を攻めることなんてなかった。

オレ以上に浅く息を切らしてる耀に気づいて見下ろすとぐったりとして目を瞑ってた耀の頬を
ポロリと涙が一滴零れて流れ落ちる所だった。



オレと一唏は草g家の敷地内に建っている家を借りて住んでいる。
平屋の家だが部屋数は驚くほど多い。
流石に右京君と同じ屋敷には住む気はしなくて掃除と食事の支度は右京君の使用人が
やってくれるから楽なもんだ。

一唏は高校に通ってる。
オレが通えなかったから一唏には普通の生活を送ってほしい。

だから一唏がいない真昼間からオレと耀は何時間も絡み合ってたと言うわけで……



『人間という生き物は常に発情しているものなのか?』

ロストが呆れた様に言う。

「人によるとは思うけど?オレは耀としたいからしてんの。それにロイスを放っておけないのも事実だろ?
オレと交わんなきゃまた人間の男を漁る。それは避けたい……だろ?」
『ロイスが人間の男を漁るのを止めさせたいのかそれとも宿主が他の男とさっきのようなことを
するのを止めさせたいのか』
「両方」
『フム……正直な男だな』
「ロストは女を抱かないのか?」
『今までお前がしているようなことはしたことはない。妖魔は雌と交わらなくても生まれてくる。
自分が雄だと感じれば雄だ』
「へーじゃあ恋愛感情はないってことか?」
『少なくとも妖魔の国ではな。人間と係わってそういう感情が生まれるのかもしれない。
人間は不思議な生き物だからな。影響を受け易い者はいるだろう。逆に妖魔の影響を受け易い者も……』
「オレはロストの影響受けてるのか?」
『お前は精神力が強いから私の影響は受けていないようだ。右京もそうだったが自分の中に私を取り込んでも
自分はなくさない。私はそれで良かったがな。宿主になってくれたお前には申し訳ないが私も自分に誰かが
干渉してくるのは好きではない』
「お互い自分が1番で良かったな」
『そうだな』
「さて!オレもお腹空いた。何か作ろ……ロストの主食が普通のメシで良かったよ。今までと変わらないし不便もない」
『人間の食べ物のは私の口に合う』

なんとロストの主食は本当にただの食べ物だった。

「何がいい?オレとしては麺類がいいんだけど?」
『お前に任せる。』
「ん……じゃあ焼きそばでも作っかな。耀もそろそろ起きてくるかな」

言いながら冷蔵庫を開けて中を探る。
食事は右京くんのところの使用人が用意してくれるけど半端な時間のときはオレが作ったりする。

『椎凪』
「ん?」
『妖魔の気配だ』
「耀だろ?」
『ロイスは深く眠っている……違う!2つ来る!』
「は?2つ?お前いっつもいきなりそんなこと言うなよ。本当にここに向かってんのか?」
『ああ……もう来るぞ』
「はあ?」

オレは勢い良く冷蔵庫のドアを閉めてすぐ傍の窓を開けて空を見上げた。
此処に直接来るってのか?

「相手もオレ達のことが分かるのか?」
『ああ……どうやら私と同じ感じることが出来るらしいな』
「冗談じゃねーぞ……一戦交えるかな?」
『相手によるな』
「この辺壊したら右京君怒るよな?ヤベー……好戦的じゃなきゃいいんだけど」

今まで他の妖魔と戦ったことはない。
その辺はロストが慣れてるから代わってもらえばいいことだからオレはあんまり気にしちゃいない。
ロストはオレのそんな考えに呆れてたけど。

そんなことを言いながら見上げてた空に黒い塊が2つ。

「あれか?」

あっという間にその2つの黒い塊は大きくなって人の形になってオレと同じ真っ黒な羽を広げて
目の前に音もなく降り立った。