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「チクショーー!!あーーー悔しいっ!!!」

オレの家に戻ってからもリッシュは文句ばかり言っていた。

「人間のクセになんだよ!あの態度っ!!」
「だから言っただろ……右京君は俺様で当主様なんだよ。嫌ならサッサと出て行くんだな」
「お前はいいじゃんっ!!ここを放り出される心配なんてないんだから!!」

はっきり言って八つ当たりじゃないかと思われるリッシュの態度と言葉を受けてオレも多少ムッとくる。

「オレはそれなりの代償は払ってるっての」
「ルース!とっとと出て行こうよ!僕イヤだよこんなトコ!!
あんな奴に頭下げてまでここにいる必要ないじゃん!!」

まったく……どこの駄々っ子だよ。

「…………少し落ち着けリッシュ。どこかに住むにしてもこの世界で必要な
『お金』 というものがオレ達にはないんだぞ。
結局野宿か知らない奴等に頼ることになる。そんなのはオレはイヤだ」
「……お金なら……何とかする」

ルースに正論を言われて途端にリッシュの勢いがなくなった。

「どうやって?人間の男と寝るのか?オレは食事以外でそんなことお前にさせたくないしそんな生活がイヤだ」
「じゃあルースはいいの?あんな威張りくさった人間離れした奴の言うこと聞くの?」

おおーー言いたい放題だな……リッシュ。
それを本人目の前にして言ってみてほしいと思った。

「右京君は普段はそんなに口煩くない。まぁ俺様的だけど頼りになる」
「………ぶーーー」

なんだその幼稚で不貞腐れな態度は。
ホントお前いくつだよ?!

「とりあえず一週間世話になる。迷惑を掛けて申し訳ないが……」

そんなリッシュとは180度違うルースの態度だ。
きっとリッシュ1人だったらオレのところに辿り着きもしないで男と男の間を渡り歩いてたんじゃ
ないだろうか?とマジに思う。

「オレは構わないけどさ。ロストがそうしたいって右京君に宣言しちゃったしね」
「……助かった。ありがとうロスト」
「気にすんなってさ」

ロストの言葉を代弁して彼にそう告げた。

「………なんかルース変わったよね?ここに来てからまたさらに」
「そうか?」
「そうだよ………あ〜あ…なんか僕淋しい……」

リッシュは本当にルースを頼りにしてるんだろうと思う。
きっと本当の兄弟ではないだろうにオレから見れば2人は仲のいい兄弟に見える。

「 ! 」

話に夢中で気付かなかった。
リビングの入り口に一唏が呆然と立ち尽くしてた。

「あ!お帰り一唏」
「ただいま慶兄……だれ?この人達?」

ソロソロと中に入って警戒しながらオレに聞く。
だろうな……ここにオレ達以外の誰かが来るなんて右京君のところの使用人くらいだもんな。
耀には一唏は会ったことないし。

「ああ……オレの昔の友達でルースにリッシュ」

と言った後でどう見ても2人が外人には見えないことに気づいた。
でも本当の名前知らないし……ハーフっちゅーことで誤魔化すか?

「しばらくここに泊まるから……まあ部屋なら沢山あるし構わないだろ?」
「慶兄の友達なら……オレは別に構わないけど……」

ありゃ…ちょっと疑いの眼差しか??

「ねぇ……この子なに?」

リッシュがマヌケな顔で視線は一唏に向けたまま震えた声でオレに聞く。

「え?ああ……弟の一唏」
「弟?弟ってことは兄弟という奴か?」
「はあ?そうだけど?」

なんだ?急に興奮し出したぞ??
オレから見てもリッシュの奴の目がキラキラの身体はワクワクしてるのがわかる。

「ということは一緒に暮らしてるってことだよね?ここで?」
「そうだけど?何だよ?さっきから?」

なんか嫌な予感がしなくもないが……

「ルースっっ!!僕ここに住むっ!!」

「 「 は ? 」 」

オレとルースは目が点だ。

「だってそうしたらこの子とずっと一緒にいられるってことだろ?」
「まあ…そうだな」
「じゃあ決定!!」
「うわぁ!!」

リッシュがいきなり一唏に抱きついた!!

「  !!!  」
「 おいっ!!! 」

オレはビックリで一唏はもっとビックリしてる。

「一唏これからよろしくね!!僕リッシュ!!」

「え?え?ちょっ……慶兄ィ!!」
「お前一唏から離れろっ!!何抱きついてんだっ!!」

さっきからぎゅうぎゅうと抱きしめてるリッシュを強引に一唏から引き離した。

「だって僕この子気に入ちゃったんだもんっ ♪ ♪ 僕のタイプにピッタリ!」

なんだ?そのニコニコの笑顔は!?
ヤバイ!!ヤバ過ぎるだろ!!

「はぁ??何言って……」
「……慶兄??」

一唏がオレの背中に隠れながら恐る恐るリッシュを観察してる。

「怖がらないでよ一唏。乱暴な事なんてしないから。まずはお近付きになろう。はい!握手!」

そう言ってにっこり笑って手を差し出した。

「………はぁ…」

一唏は相変わらずぎこちないし思いっきり警戒してたけど何とかリッシュと握手を交わした。

「ふふ ♪♪ 僕一唏と一緒にいれるならアイツのこと我慢する!
逆にもう絶対ここから出て行かない!だからルース後はよろしくね」

「……ああ…」

ルースもビックリで……ただ一応いい方向に向かってることは確かみたいだ。

「これで後は彼が承諾してくれればいいんだがな……」

ルースが小さく溜息をついてボソリとそんな言葉を溢す。

「大人しく普通にしてれば大丈夫だと思うけどね」

もともとあまり細かいことを気にしない感じの右京君なんだ。
ただ気に入らない時の拒絶は半端ないけどね。

「だといいが……」

そんな不安を抱きつつ……最初の夜が訪れた。

さしあたっての問題はリッシュで一唏に手を出さないと約束させた。
オレが思ってる以上に本人は一唏にメロメロで一緒にいれなくなる位なら
絶対手は出さないと珍しく真面目な顔で宣言してた。


どこまで信用できるのか一抹の不安は否めないが……まあ仕方がない。

期限の一週間後にどんな結論が出るのか……

オレにはわからないができればこの2人が落ち着いて暮らせるようになればいいと

願わずにはいられなかった………