03





「じゃあ知り合ったキッカケは道に迷ってた真白ちゃんを
兄貴がバイクで送って行ってやったからなんだ。」
「まあな。」

まあ大雑把に言えばそんな感じだろう…

食事も終えて久々に家族皆でお酒を飲みながら和やかムードだ。
今の所何事も無く話も進んでる。

「そのまま送り狼になったんじゃないのか?兄貴〜」
「なるか。」
「祐斗…真白ちゃんの前でそんな事言うんじゃないわよ!」
「なんで?もう結婚までしてるんだからいいじゃん。」
「もうあんたってばそう言う話しオープンすぎるのよ!やっぱり女の子がいないと
男ってガサツになるのかしら…でもこれからは真白ちゃんが娘になってくれるものね。」
「はい。」

真白が母さんにニッコリと笑う。
ただ言われてる内容…真白はわかってんのか?

とにかくにっこり笑顔で返事しとけばOKなんて真白には言ってあるから…
何にでも 「にっこりのはい」 だ…

「で?式はどうするんだ?春悸。」
「え?ああ…」

そうだよな…やらないのも可哀相だよな…

「ん?」

真白はきっと何の事かわかってないだろうけど…

「あんまり盛大じゃなくていいよ。真白の方は誰もいないし…」
「そうだな…」
「じゃあ身内と近い親戚だけって事でいいんじゃない?それならすぐに式も出来そうよね。」
「会社関係で探してみるよ。」
「そうしてみて。真白ちゃんだってウエディングドレス着たいわよね。」
「………はい。」

きっとまたわかってないで返事したな…
後でちゃんと話さないと…

「真白ちゃん真っ白なウェディングドレス似合いそうよね…」

母さんがもうウットリしてる。

「しかし兄貴がこんなにすんなりと結婚するとはね〜ホント不思議不思議〜」
「オレはお前の方がサッサと出来ちゃった結婚すると思ってたよ。」
「あのね伊達に今まで遊んで来たわけじゃ無いよ〜」
「自慢するな!お前大学卒業出来るのか?」
「あのな…どんな風にオレの事見てるわけ?オレだって…」

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

「ちょっとゴメン。」

祐斗が携帯片手にリビングから出て行った。

「詳しく決まったら連絡するよ。」
「そうだな。」
「2人共疲れたでしょ?お風呂用意したから先に入っちゃいなさい。」
「あ…ありがと。じゃあ風呂は入ったら上に行くけど…」
「布団部屋に入れといたから。本当にあの部屋でいいの?なんなら居間の方に…」
「たまには自分の部屋で寝るよ。きっとそんな事今日で最後かもしれないしさ。」
「そお?」
「真白風呂は入るぞ。」
「うん!」

オレのそんな言葉に真白が元気に返事をして立ち上がる。

「 「 !! 」 」

その時両親がちょっとビックリしてたなんてオレは全く気付かず…

「父さん先に風呂入らせてもらうね。」
「あ…ああ…」
「真白着替え取りに行くぞ。」
「は〜い ♪ 」

「一緒に…入るんですかね?」

オレ達がリビングを出た後両親がそんな話をしてたらしい。

「まあ…もう夫婦なんだし…い…良いんじゃないか…」
「そうですけど…春悸がそんな事するなんてちょっとビックリで…」
「まああれだけ若い子と付き合うんだ…相手にも合わせんと…な…」
「はあ……」


それからオレと真白はいつもと同じに様に一緒に風呂に入って…
1人で髪の毛を洗えない真白の髪の毛も洗ってやっていつもと変わらずに風呂を出た。

ちょうど2人で風呂から出た所に祐斗と廊下でバッタリ会った。

「先に入ったぞ。」
「え?何??」
「は?何だ?」

何でそんなに驚かれるんだ?

「なに…兄貴…もしかして2人で入ったの?」
「は?何だよ?何か変か?」
「いや〜変じゃ無いけどさ…大胆と言うか…ノロケてるって言うか…
初めて連れて来た実家で親父とお袋のがいるのに一緒に風呂って…」

「ハッ!!!!」

そこまで言われて初めて気が付いた!!
し…しまったーーーっっ!!ついいつものクセで!!!

「…………」

そ…そうだよな…両親の前で初めて連れて来た結婚相手といきなり一緒に風呂って…
どんだけエロイ男だと思われたんだ??オレ??

「もしかして…今の今まで気付かなかった…のか?」
「え?あ…いや…」
「あーと言う事はいっつも一緒に入ってるんだ?真白ちゃん ♪ 」
「うん!ましろハルキと一緒じゃないといやだもん。だからいつも一緒に入っ…むぐっ!!」
「余計な事は言わなくて良い!!」

オレはまた真白の口を塞ぐ。
今更だけど…

「じゃ…じゃあな…先に休ませてもらうから…」
「ふふ…お休み。」
「ああ…お休み…行くぞ真白。」
「ふう!」
「お休み真白ちゃん。兄貴に可愛がってもらいなよ〜 ♪ 」
「変な事言うな!するかっ!そんな事!!」
「痩せ我慢すんなって!何が聞えても聞かないフリしてやるからさ ♪ 」
「余計なお世話だっ!!」

誰が久しぶりに帰って来た実家でしかも初めて自分の結婚相手を連れて来た日に
親も弟もいる家でHしなきゃいけないんだよっ!!

誰がするかっての!!




「ハルキ…ましろ一緒に寝たい。」
「ダメ!真白は今日はそっち。」

用意してくれた2組の布団をベッドとベットのすぐ下の床に敷いて
真白はベッドにオレは床の布団にお互い1人ずつ寝てる。

「ましろ1人で寝るのイヤ!!ハルキと一緒!!」
「仕方ないだろ!親がいるんだから…」

別に一緒に寝ても構わないんだろうけど風呂の失態が頭を占めてて
真白と一緒になんて寝れなかった。

「ハルキーーー……ふぇ…」
「!!」

真白の泣き声だ…

「どして…ましろ大人しくしてた…よ…う…ぐずっ…
ましろ今まで1人でなんて寝たこと無いもん…うーーー」

「真白…」

そう言えば真白がオレの所に来てからずっと一緒に寝てたんだっけ…
そっか…

「ごめん真白…」
「う…ハルキ……」
「来い。」

そう言って掛け布団をめくって真白を呼ぶ。

「うん!!」

真白が嬉しそうに笑ってオレの布団に飛び込んで来た。

「まったく…あのくらいで泣くな。」

そう言って真白の涙を手の平で拭う。

「だってましろハルキと一緒にいたいの…いつも…一緒…」
「わかったから…もう泣くなよ。ちゅっ〜〜〜!」
「ハニャ…」

真白の頬にわざとらしく強めに唇を押し付けた。

「ハルキ……ちゅっ…」

今度は真白が軽くオレの唇にキスをした。

「今日は…本当にしないからな…真白…」
「うん…わかった……でも…キスはいいでしょ……」
「キスだけだぞ……」
「うん……ハル…キ……あっ……にゃ……」


そりゃちょっとはイチャイチャとしたけど…本当に…キスだけだったんだよ!!!なのに…



「ん……」

朝目が覚めてオレの胸の上にいつもの様に真白が乗っかってる。

「真白…」
「んにゃ〜〜」

そのまま抱きしめると……ん?この感触は……

「真白?」

ちょっとだけ上半身を起こすと…裸の真白が胸の上にいた。

「真白!!な…お前なんでパジャマ脱いでんだよ!」
「ん〜〜だって…暑かった…から……くぅ〜」

目を瞑ったままそんな事を呟いてまた寝た。

「ちょっ…今何時だ?ってもう8時過ぎてんじゃないか…そろそろ起こしに来るんじゃ…」

何となく勘が働いて…嫌な予感がする…だから真白に早く服を着せて…

「真白!起きろ!!早く服着ろって!!真白!!」

真白の肩を掴んでオレの上に起こした。
軽く真白の身体を揺すると真白の髪と裸の胸が揺れる。
一瞬ドキンと胸が波打ったが今はそれどころじゃない!!!

「むにゃ…」

ダメだ…寝ぼけてる…
真白は寝起きが悪いんだよなーーー!!!ったく。

「真白!」

コ ン  コ ン !!

「 !! 」

同時に部屋のドアがノックされる。

ヤバイ!今開けられたら…

「兄貴〜おはよう。朝めしだってよ〜」
「…………」

何で真白を隠さなかったのか…オレはあんまりにも焦ってそのまま固まってた。

「兄貴?……寝てんのか?開けるぞ〜〜」

ってかワザとだろ!!お前絶対ワザとに決まってる!!!

「真白!」

ちょっと強めに揺すったらカクンと真白が後に仰け反った。

「あん!」

「え?」

どう見ても…今オレと真白は事の真っ最中でオレの上に乗ってる真白が感じて
後ろに仰け反った様にしか見えないだろーーーー!!!

「あ……」

「ちが…」

いやその前に真白の裸見られてるって!!

「わあああああ!!!」

慌てて掛け布団で真白を隠した。
その反動で真白がオレの胸の上にうつ伏せになった。

これって余計誤解か???

「いやっ!!ああ…悪い…」
「……お前〜ワザとだろ〜〜〜」
「いや〜まさか真っ最中だとはね〜ホント兄貴変わったよな…」
「言っとくが違うからな!何もしてないから!」
「はいはいそう言う事にしとくよ。まったく…朝から仲が良い事で!ご馳走さん!
早く下りて来いよ。朝飯だってよ。」
「…わかった」

そう言うと部屋のドアが閉まって祐斗が階段を下りる音がする。

「………はあ〜〜〜」

真白はまたオレの胸の上で眠ってる。
ホント今日は特に寝起きが悪いな…そんなに昨日緊張してたのか?
 



「じゃあ決まったら連絡ちょうだいね。」
「ああ…連絡する。」

帰り際の玄関先…名残惜しそうに両親と思いっきり誤解して
ニヤケた顔の祐斗が見送ってくれてる。

「また来なさい。」
「ああ…ありがとう。」
「真白ちゃんもまた来て。それから綺麗なウエディングドレス姿見せてね。」
「??…はい。」

あんまり理解してない顔だ。

「急がないと甥っ子か姪っ子が出来ちゃうかもしれないからな〜 ♪ 」
「だから誤解だって言ってるだろ。」
「はいはい ♪ 」

まったく…やっぱりとんでもない目に遭った…
されなくてもいい誤解までされて…兄の威厳丸潰れだ…

でもまあ親には真白の事は受け入れてもらえたみたいだし結婚の報告も無事出来たから…
よしとするか…

「じゃあまた…行くぞ真白。」

「は〜い ♪ 」



そう返事をした真白がオレの腕にぎゅっとしがみつく…

オレを見上げた顔はいつもと同じ嬉しそうなニコニコの笑顔で…

2人で駅向かって歩き出した……