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「別に女に興味がなかったわけじゃねーよ。美人じゃなきゃ嫌なだけだ。プロポーション抜群のな!
だが頭空っぽの高慢ちきな女なんて、見た目が合格でも願い下げだがな」
「はあ……」

ダイ様が自分の女性論を暴露してくれた。
もしかして、そんな見かけだけの女の人に苦労したんだろうか?
それって、自分がモテたと言ってるのかな?

「なかなかそういう女がいなかっただけだ」

“なかなか” じゃなくて、“ほとんど” いませんってば!!

「あ!だから僕が写してくる女の人、ダメ出しするんですね?」
「そーだよ!アレでも妥協してやってんだよ!仕方なくなっ!!」

仕方なくですか?人の苦労も知らないで……。

「しかもあの女、ここに結界はりやがって……」

あの女って……その呪いをかけた女の人のことかな?

「え?でもダイ様ならそれくらい破れるんじゃないんですか?」
「オレにかけられてる呪いと連動してて解除不能だ。オレの呪いが解けない限り結界も解けない」

昼間ローディ様に会ったことをダイ様に話した。
しかもナゼか僕を見て、ダイ様の呪いのことまで聞いたことを吐かされた……
うう……どうしてわかったんだろう?僕そんなに態度に出てたかな?

「まあお前のお蔭で、人間の女を抱けるようになったけどな。ローディにはお前が写せる能力
持ってること黙ってろよ。アイツが知ったら、お前いいように使われるからな」
「はあ……」

いいように使われるって……すでに貴方にいいように使われてると思うんですけど?
それって僕の気のせいですか?違いますよね??


それからも僕の受難な日々は続く……そんなある日、僕は人間の女の人を写したあと、
屋敷の魔鏡に繋がる場所に戻る途中で、人間の男達に捕まってしまった!
もともと魔力もないし、腕力もない僕。
大体今は、人間の女の人の姿だから余計に抵抗出来ない。

どこか倉庫のような、埃臭い建物の中に連れ込まれた。
これって……もの凄いピンチじゃないんだろうか!!相手は男の人3人。今、僕が男だって言っても
信じてくれないんだろうな……っていうか、口塞がれて喋れないんだけど。

「大人しくしてりゃ痛い思いしねぇし、逆にいい思いさせてやるからよぉ」

そう言いながら笑ってる顔は、なんともイヤらしくて気持ちの悪い顔だ。
僕の腕と足を押さえてる他の男の人も、同じような顔をして僕を見下ろしてる。

うわ〜〜どうしよう!ホント、真面目に勘弁して!これってとんでもないピンチだとおもうんですけど!!
ダイ様のせいだ!!人間界に来なければ、こんな目に遭わずにすんだのに!!恨んでやる―――!

僕は涙を溜めた目をぎゅっと瞑った。

ドカンッ!!!

その時、年季の入った入り口のドアが勢いよく中に飛び込んできた。
何事かと僕も男の人達も入り口の方に視線を向けると、そこには女の人が立っていた。

金髪の長い髪にダボダボのタンクトップから、下着を着けていない大きめな胸が見える。
ズボンも大きすぎて、何とか腰で止まってるような感じで、もう少しで下半身が見えそうで見えない。

透きとおるような白い肌に凛々しい顔立ち……とにかく出るところは出て、引き締まってるところは
引き締まってて……ああいうのをナイスバディと言うんだろうか?
僕を含め、その場にいた全員が彼女に見惚れてた。

って……ん!?ちょっと待って!僕はふと気付く。

あの彼女の両耳に揺れるピアスの飾り……真紅の宝石が埋め込まれてて、見覚えがある。
それに……透きとおるような白い肌に浮かぶ黒い刺青……あの刺青の模様は……え!?ダイ様っっ!?

ええ!!??うそ!?だって……どう見ても女の人で……。

「な、なんだお前!?何しにきやがった?」

我に返った男のひとりが彼女に向かって声を掛けた。
その声に他のふたりもやっと反応する。

「日本語わかんねぇのか?まあいいや、お前も可愛がってやる。オイ」

そう言うと、僕の足を押さえてた男の人が彼女の方に歩き出した。
顔はさっきみたいにニヤニアして気持ち悪い。

「逃げると痛い目にあうぞ」

そう言いながら彼女に手を伸ばした瞬間、どういうわけかその男の人が横に吹っ飛んだ!?
もの凄い音を立てて、辺りに置いてある物が男の人と一緒に飛び散る。

「な、なんだ!?」

見れば、女の子が振り切った片足をゆっくりと元に戻すところだった。
どうやら男の人を蹴り飛ばしたらしい。

その後はあっという間の出来事で、もう可哀想に思うくらい僕をここに連れて来た3人の男の人は、
ボコボコに殴られ蹴られ、最後はピクリとも動かなくなった。


「…………」

そんな大立ち回りをしたにもかかわらず、息ひとつ乱してない彼女。
でも僕はそんな彼女を見て、ますます確信する。
解放された手で、口に押し込められてた布キレを取った。

「もしかして……ダイ……様……ですか?」
「!!」

ギロリと睨まれた!!もの凄い眼光だ……それだけで僕はまた動けなくなる。

「手間かけさんじゃね――――!!」
「うわっ!!」

彼女の放った回し蹴りが、ヘタリ込んで座ってる僕の頭の上をスレスレで掠って振り抜けた。
そのまま近くにあったなにかが、蹴られてどこかに飛んでって壁にでも当たったのかもの凄い音がした。

「あ……あの……本当にダイ様……ですか?」

恐る恐る頭を庇った腕の隙間から、目の前に立つダイ様(らしき彼女)を見た。

「結界の外……屋敷から出ると女になっちまうんだよっ!!
だからオレは外には出れねぇんだって言ってたのによっ!!クソっ!!」
「はあ……」

声は女の人の声だけど、言い方はダイ様だ……なんだか勿体ない気がする。

「テメェのせいだ、このクソガキっ!!!人間なんかに捕まりやがって!!
使いもロクにできねぇのかっ!!このタコっ!!」
「わ――――!!ご、ごめんなさい!!」

胸倉掴まれて立たされた!!僕はもうガタガタと震えが止まらない。

「ひぃーーー」
「お前にこの屈辱がわかるか?あ″ぁ″っ?」
「あの……」
「覚悟……出来てるんだろうな?」
「ひっ…………」

で、できてるわけ……ないじゃないですかーーーーー!!

ああ……僕ってば、このあとどうなるんだろう??