04





「あ″ぁ″――?なんだと?」

案の定、ダイ様はすぐにお怒りモード。

「あ……ですから……こ、今夜は綺麗な方がいなくてですね……」
「それはテメェが決めるコトじゃねーだろうがっ!」
「あ、明日は必ず見つけますから……ですからあの……今夜は許してください!」
「…………」

怒ってるのがありありとわかるのに、ダイ様はなにも言わず僕を見下ろしてる。
ああ……嫌な沈黙だな……。

「お前……まさか、また女の身体になったんじゃねーだろうな?」
「え″っ!?」

ぎく――――っ!!
盛大に身体がびくってしまった!

「ま、まさかそんな……やだな………ダイ様ったら……ハハ」
「ウソつけ!じゃあ脱いでみろ」
「え″え″っっ!?」
「なに動揺してんだよ?早くしろ!」

うわぁ〜〜コレってわかってて言ってる?言ってるよね??

「ほ、本当に違います!明日は頑張りますから失礼しますぅ……おやすみなさい……」

ここは逃げるのが得策!と、僕はさっさと寝室から逃げる姿勢。

「お!」

ダイ様のまとうオーラがドス黒く変わる。
ひぃ――――!!

「逃げんじゃね――っっ!!」
「わあっ!!」

ドカン!と、僕のすぐ横にダイ様の拳が叩き込まれてドアが揺れる。

「ごごごご……ごめんなさい!すみません!でも……許して!」

僕は一歩も動けず、その場で縮こまる。

「ったくよ――」

怒りまくってるダイ様が、グッと僕に近づいた。
そして有無も言わさず腕を掴まれて、引っ張られ、ベッドの上に放り出された。
スプリング利いたベッドの上で僕は何度かバウンドしてワタワタと慌てふためく。
でも、立ち上がることはできなかった。

「あ!ちょっとダイ様!僕ですから!コレ、オリジナルの僕の身体ですから!」

僕は覆い被さって来たダイ様に、ベッドに押さえ込まれながら必死に喚く。

「いつもとなにが違うんだよ」
「違いますよ!他人の写した身体じゃなくて、僕の身体なんですから!」
「オレにとっちゃ、女の身体で同じコトだ」
「なんですかソレは!?僕にとっては違うんですってばっ!」

そんな会話をしながらも、ダイ様はさっさと僕の服を脱がしていく。
ダイ様にとって、僕の抵抗なんてナイに等しい。

「じゃあどこが違うか言ってみろ」
「え?」

服を脱がす手を止めて、ダイ様が呆れた顔をして僕を見下ろしてる。

「いつもオレに抱かれて感じてるのは誰だ?いつも初めてのとき、痛みを感じてるのは誰だ?言ってみろ」
「ぼ……僕です……」
「だろ?それはテメェの身体でテメェが感じてんだろ?今のお前となにが違う」
「でもそれは、写した人の身体であって……僕の身体じゃないですもん……」
「そんなコトお前にはもう、どうでもいいコトなんだよ。身体が誰であれ、オレに抱かれるってコトは
もう初めてじゃねーだろ?」
「そうですけど……」

確かに、もう何度も人間の女の人の身体でダイ様に抱かれまくってる。

「心の……気持ちの問題だって言ってんだよ、オレは!身体が違うだけで中身はお前なんだよ。
今まで写した女全てな。だから今も同じコトなんだよ、わかったか?」
「…………なんだか丸め込まれてる気がします……」
「ったく……お前バカだから仕方ねぇけどな」
「あ!ダイ様ズルイ!人に話し聞かせてる間にこ……こんなコト……」

いつの間にか着てた服は下着まで脱がされて、しっかりとダイ様が僕の足の間に陣取ってる!
しかもダイ様も裸だ。

え?いつの間に??

「お前がバカだからだよ」
「うっ……ダ……ダイ様……お願いですからあんまり痛くしないでくださいよ……本当に痛いんですから……」

僕のオリジナルの身体でダイ様に抱かれるのは初めてだから……でも無駄なお願いのような気がする。

「知るかボケ!そんなの気にしてたらテンション下がんだろ!」
「ええ――――!ヒドイ!!……うぅ」

まただ……また僕のときだけダイ様はキスをする……なんでなんだろう?

激しく舌を絡めるキスをしながら、ダイ様の手が僕の身体を征服し始める。
次第に舌や唇も僕の身体を征服し始めて、僕は意識が朦朧とし始めてわけがわからなくなる。

「うっ!!あっ……痛っ……」

指や舌でほどなく解された僕の身体を、躊躇なく貫くダイ様に我慢できなくて、両手でしがみついた。
浅くハアハアと息をしながらダイ様にしがみついていた身体を離して痛みで涙で潤んだ目でダイ様を見上げると、
僕の考えを受け入れたようにダイ様が動き出しだ。

「あっあっあっ……ダ……ダイ様!!」

さっきよりも強く大きく、激しく身体を揺さぶられる。
痛かった……痛かったけど……それ以上にいつもとは違う気持ちと感覚で……僕は嬉しかった気がする。


「また女の身体になってる……」

初めて “僕” でダイ様に抱かれてから数日後の出来事で、どうも自分が思うに頻繁に
女の身体になってる気がする。
最近は人間の女の人を写す間の自分の身体が、女の人に変化する間隔が
段々短くなってきて……る?
前は数週間とか空いてたのに、今じゃ10日空けばいいほうだ。

──── まさか……いつかこのまま、戻らなかったりしないよね?

嫌な予感が頭をよぎる。
それよりダイ様にバレないようにしなくちゃ……最近人間界に写しに行けって言われないから大丈夫……だよね?


「オイ!今日、人間の女写しに行ってこい」
「え″え″っっ!?」
「あぁ?なんだ?」
「い……いえ……あの……」

なんでこんなタイミングで??もう誤魔化せない……。

「また女になったのか?」
「う″っ!?」

僕が言う前にダイ様に言い当てられてしまった。
スルドイ!!

「はあ……まあ、そんなところです……」
「ふ〜〜ん」
「?」

ダイ様が腕を組んで、自分の顎を指で撫でながらニヤリと笑って僕を見下ろす。
ダイ様の方が僕より大分背が高いから……どうせ僕はチビですよ。

「ずいぶん間隔が早いじゃねーか?もしかしてこのまま女になったりしてな♪」
「な″っ!!!」

なぜ人の不安を煽るようなコトを言うんですかっ!!この人は!!


なんで?どうして僕は裸でダイ様のベッドの上に寝てるんだ?
しかもしっかりちゃっかりダイ様が僕の上に覆いかぶさってるし……。

「ダイ様……どうして僕が女になると……その……抱くんですか?」
「抱かないと損だから」

へえ……そうだったんですか……ダイ様らしいですけど。
しかも即答ですか?

「じゃ……じゃあどうしていつもと抱き方が違うんですか?」

そう……いつもと違うのはわかる。
それに、いつもはしないキスもするし……。

「へぇ……気付いたか。鈍感じゃなかったか」
「どうしてですか?」
「どうして?」
「はい……」

僕はその理由を知りたかった。

「オレの愛情表現だろーが!わかんねーのか?ホント、バカだなお前は」
「え?…………え″え″っっ!?」

僕はダイ様の言葉に本当に驚いた。
“愛情表現” !?

「そ、それって……ぼ、僕のコトが、す、好きってコトですか!?」

うそぉーーー!!!マジですか!!

「は?好き?なんだそりゃ」
「へ?」

そう返事をしたダイ様……なんでそんな呆れた眼差しに、呆れた顔してるんですか?
そんな目で見ないでくださいよぉ……。

「アホか!あのなぁ、飼い主がペットに抱く愛情だぞ。情ってやつか?」
「え″っ!?」

ペット?

「オレはお前のなんだ?あぁ?アリム」

あ……もしかして、久しぶりに名前呼ばれ……た?

「ご……ご主人……様です」
「だろ?お前の飼い主はオレだよな」

ダイ様がまっすぐ僕を見つめて目を細めて微笑む。
その笑顔は、僕に魔力を使われたみたいに僕の心がダイ様に囚われる……。

借金のカタだろうと、どんなに邪険に扱われようとも、ただ呪いを解くために抱かれても、
僕は……ダイ様のコトが……。

「はい……ご主人様……」

「フッ……」

返事をして受け入れるつもりで目を閉じると、ご褒美のように優しいキスがダイ様から与えられた。

そのあと……何度も意識が飛ばされながらもダイ様が満足するまで求められた。




それからやっとダイ様の呪いが解けて、呪いをかけた相手に復讐したとか、
僕の身体が心配してたとおり女の身体から戻らなくなったとか、色んなことがあった。

中でも最大級の出来事は、ダイ様と僕との間に子供が出来たこととか……。

でも、そんな話はまだまだ先のお話で……。


僕をいいように使うために、借金の話はでっちあげだったと僕が知るのはさらにもっともっと先の話……。


今も……これからも……ずっと先も……

この問題ありまくりのご主人様の素直じゃない愛情を……

僕はこれからずっと先も受け続けたいと思ってる。