02
「いらっしゃいませ ♪ 」
今日も元気にまどかが入って来たお客さんに挨拶をする。
本来はもう少しこのクラシックの音楽が似合う落ち着いた店だったはずが
いつの間にかまどかの周りだけJ-POPが流れてる気がする…
「大ちゃんケーキAセット2つのカフェオレとアメリカン。」
「おう。」
まあまどかのペースも嫌いじゃない…
自分のペースだと何だか気分が滅入るからだ…まどかが言うには物思いにふけてるらしい…
そう言われてもオレ自身は別に何かを考えていたわけでも無いんだが…
「重症だね…大ちゃん…」
「………」
何がだ…
「大ちゃ〜んいる?」
そんな声と一緒チャイムが連打される。
「休みの日ぐらいゆっくりさせてくれ…」
まどかを起こす様になってからの初めてのお店の休みだった。
「えー!?お店が休みの時は自分でなの?」
「当たり前だろ…何でオレの休みをお前の炊事に当てなきゃならないんだよ。
1日くらい自分でしろ!」
パジャマ姿のまま玄関先で揉めてた。
「大家さんでしょ?言ったからにはちゃんと責任持ってよ!」
「はあ?…まあいいや…とにかく入れ。簡単に朝ごはん作ってやるから…
今ここでモメてたら遅刻だろ。」
「ありがとう!大ちゃん!」
「その大ちゃんはやめろ…」
「じゃあ大家さん?」
「坪倉さん!」
「なんかよそよそしい!」
「別に構わないだろ?」
「こんなに親しいんだもん。いいでしょ?」
「………」
もう話し合うのも面倒い。
「あれ?」
「ん?」
冷凍の炒めたピラフを頬張りながらまどかが壁の一カ所をじっと見てる。
あの壁だ…
「ああ…」
「あんな所にドアがあるなんで?あそこってあたしの部屋に繋がってる場所だよね?
でもあたしの部屋にドアなんて無いよ?」
「お前の部屋の方は塞いであるからな…」
「え?何で?もしかして前はあたしの部屋と繋がってたの?」
「………ああ」
「ええっっ!本当?」
「本当。」
「ふーん…」
「?」
何だかまどかがじっとそのドアを見つめてた…
その時気付けばよかったんだ…コイツはそう言う奴だって!
その日の夕方…ドタドタと階段を上がる音がしてまどかが帰って来たらしい。
2階に上がる階段は2つあって1つはオレとまどかの部屋にもう1つの階段は残りの2部屋に…
上り口は別々だからこのドタドタが聞こえるのはオレの部屋だけか?
「もう少しおしとやかに出来ないのか?セッカチだな…」
オレはコーヒータイムと寛いでた。
バ キ ャ ン !!!
「ブッ!!」
いきなり部屋が揺れた!
「なっ…何だ???」
バ ン ッ !!バ ン ッ !!
「は?」
オレは座ってたイスから立ち上がった!立ち上がって音の発生場所を見る…
あの塞いだドアからだ!
「あの馬鹿…まさか……」
猛ダッシュで駆け出してまどかの部屋のチャイムを連打する。
「オイ!まどか!!開けろっ!」
応答無し!
何度か繰り返し直接ドアを叩いてもシカトだ!!
「あの野郎…」
ムカッ!!っと来て部屋に戻って合い鍵を…
「げっ!!」
部屋に戻った時ちょうどオレの部屋に残ってた塞がれてたドアがゆっくりと開く所だった!!
まさか開けるなんて事考えて無かったから鍵なんて掛かって無くて開くのも当然。
「まどか!!お前何してんだ!!」
ドアノブの辺りだけ20cm四方に空けられた穴からまどかの部屋を覗くと
まどかがこっちを覗いてた!
「あ!大ちゃんただいま!」
「ただいまじゃない!!」
「え?ただいまでしょ?」
ムカッ!惚けんなっっ!!
「挨拶の事言ってるんじゃない!!何してるっ!?」
「見てわかんない?壁取ってるんだよ。」
「だから何でそんな事してる?」
「大ちゃんのために。」
「はあ?何でオレのためなんだ?」
訳がわからん!!
「だって…これって大ちゃんの心の中でしょ?」
「は?」
「心…閉じてるんだ…何でだか知らないけど…そんなのヤだから!!」
「まどか…ってバカ!やめっ!」
今度は空いた穴に指を引っ掛けてバリバリと壊し始めた!
「わかった!わかったから!!オレがやるから!それ以上手を出すなっっ!!」
変な風に壁を壊されるよりはと思わずそんな事を叫んでしまった!!