03
「こんなもんか…」
ふう…とため息をもらして何とかドア枠の大きさに空けた壁を見て何気に満足してる自分がいた。
満足と言うか達成感!?
「何で平日に日曜大工やんなきゃいけないんだよ…ってまどか!!」
気付けばまどかがオレの部屋のダイニングキッチンのテーブルに俯せに寝てるっっ!!
「お前何暢気に寝てるっっ!!」
「……ほえ…?ああ…終わったの?大ちゃん…お疲れ…」
「お疲れじゃない!人にやらせといて寝るなっっ!」
「だって大ちゃんが 『 オレがやる 』 って言ったんじゃない。」
「…ぐっ!!」
確かに…
「片付け手伝え!」
「はぁ〜い ♪ 」
2人で散乱してる木屑やら埃やら掃除して落ち着いてコーヒーを飲んだのは
もう夕方はとっくに過ぎて7時近かった。
「まったく…お前はいきなり何やらかすんだ…」
「これでいつでも好きな時に大ちゃんの所に来れるね ♪ 」
「はあ?何言ってんだ…そんなのダメに決まってるだろ?」
「え?なんで?」
「独身の男の部屋に自由に出入りなんて許すか!それにオレが拒否する!」
「なんで?」
「なんで?当たり前だろ!オレのプライバシー侵害とプライベート確保の為だ。」
「そんなたいしたもんあるんだ?」
「……あるよ!大人の男なんだぞ!」
「仕事が趣味で彼女いない男が?大体大ちゃんが壁くり抜いたクセに!」
「お前が最初に始めたんだろうがっ!」
「止めさせなかったじゃん。」
「…それは…」
「大ちゃんは誰かがあのドアを開けるの待ってたんだよ。」
「は?」
「だからあたしが開けてあげたんだよ。良かったね ♪ 」
「…良くない!早速鍵付けてやる。」
「大ちゃん側に鍵付けるなんて失礼だよ!」
「は?」
「あたしの方に付けるの!大ちゃんが夜ばいに来ない様に!」
「バカか?誰が夜ばいなんてするかっ!」
「じゃあそう言う事で!」
「何がそう言う事なんだよ…」
「いいから ♪ いいから ♪ 大ちゃん夕飯なに?」
「はあ?飯まで食べるつもりか?図々しいな!」
「だって大ちゃん1人で食べても美味しくないでしょ?」
「は?」
「だから一緒に食べてあげる ♪ って言っても普段はお店があるから無理だけどさ。」
「………」
「?なんでそんな呆れた顔してんの?」
「呆れてるから。」
「えー何で?」
「ガキだよな…ホント…相手の気持ちも考えずやりたい放題。」
「大ちゃん…」
「そりゃ一応オレ大家だしまどかの事はアパートの住人だし未成年だし
親元離れて一人暮らしだし…まどかの親にも頭下げられてるし…
だから気にかけてるだけだよ。特別なわけじゃない。」
「アパートの住人として以外は迷惑だって…こと?」
まどかが向かい合って座ってるオレを覗き込んで視線を合わせる。
「……まあ…ね。」
「はいはいわかったから早くご飯にしようよ。大ちゃん ♪ 手伝うから!」
「!!」
「ん?」
まどかが何ですかって顔でオレを見てる…それはオレだっっ!!!
「人の話聞いてたか?」
「うん。こんな近くであたしに向かって言ってたじゃない。大丈夫?大ちゃん?」
「お前が大丈夫かだ!オレが言った言葉の意味を理解したか?」
「したよ。」
「じゃあ自分の部屋に帰れ。」
「だってアパートの住人ならいいんでしょ?あたし住人。」
「だから…住人として大家のオレと一線置けって言ってんだろ!」
「それはズルイよ!大ちゃん!」
「は?何がズルイんだ?」
「だってあたしが此処に住んでる以上住人以外なりようもないんだよ!選択肢無いじゃない!」
「は?」
「どうやったら住人以外になれるのよ!」
「それは…」
って何か話がおかしくないか?
「だから住人のままで大ちゃんと親密になるしかないんだよ…わかってくれた?」
「何だか変な理屈の様な気がする…」
オレは真面目に考え込んでしまった…オレは一体まどかに何を言いたいんだ??
「だから大ちゃんは大家でウチの親に頼まれててあたしの事気に掛けててくれてるんでしょ?」
「ああ…」
確かそうだ…
「あたしも気に掛けてもらって嬉しいしお言葉に甘えてる。」
「ああ…」
「だから親しくさせてもらってるしご飯も一緒に食べるの ♪ ね?わかってるでしょ?あ・た・し ♪ 」
そう言ってニッコリ笑う…
「………」
そう言う事なのか?
「なんか…それでいいのか?」
「じゃあ大ちゃんは本当〜〜に!あたしとのこう言うお付き合い迷惑なの?」
「!!」
「たかが15歳の小娘だよ?」
「………」
なんだ?此処で迷惑と言ったら大人としてのオレの器が見下されるのか?
どう見てもまどかの言ってる事は自分の都合の良いように言ってるだけの様な気がするが…
「ちゃんとオレのプライバシーとプライベート守れよ。」
「は〜い ♪ 大ちゃんもあたしのプライバシーとプライベート守ってね!覗いたらダメなんだから!」
「誰が覗くか!ってかお前にプライバシーなんてあったのか?」
「あるよ!もう失礼な!」
「はあ〜〜」
何だかオレの方が言いくるめられたのか?
「ん?」
まどかが不思議そうな顔でオレを見てる…オレがそんな顔で見たいくらいだ…
「お前…人に嫌われた事なんて無いだろ?」
「え?」
時々いるんだよな…別に何をしなくても誰からも好かれるって奴…
「んーどうかな?あんまり考えた事ないけど…」
「考えた事が無いって事は今まで無かったって事だ…」
「だから?」
「だから?……得だなって…」
「うらやましいの?」
「別に。」
「うそだぁ〜ん?と言う事は大ちゃんはあたしの事が好きなんだ!」
「は?」
何でそうなる?
「だって大ちゃんもあたしの事嫌いじゃないって事でしょ?」
「好きだとは言ってないからな。」
まったく…どこまで図々しいんだか…
「ねえ大ちゃん…」
「ん?」
「今まで1人で淋しかった?」
「は?何言ってんだ?別にオレは1人なんかじゃない。」
「そっかな…」
「そうだよ…」
「なんか淋しそうに見えたんだけどな…」
「なんだ?淋しい中年男とでも言うつもりかよ…」
「え?大ちゃんって幾つなの?」
「え?ああ…28か?」
最近あんまり歳を気にしなくなったから自分の歳が良く分からない。
それって…どんだけ周りや自分の事で関心が無いって事なのか?
「ふーん…歳の差13か…まあありえるカップルだね。」
「だから無いって!」
「ふふ…」
「?…何だよ…」
頬杖を着きながらニコニコ笑ってる…不気味だ…
「あたしここに住めて良かったなぁって ♪ 」
「は?」
「明日っから楽しみが増えた ♪ 」
「オレは不安と心配が増えた気がする…」
「心配し過ぎると白髪増えるよ。」
「白髪なんて無いっっ!!」
「あるよ。ほら!」
「イテッ!!」
プチッっと1本摘まれて引き抜かれた!
「バッ…痛いだろ!」
「だってピンって1本だけ立ってたから…苦労してんの?大ちゃん?」
「誰かさんが引っ越して来てからなっ!」
摘んで引き抜かれたオレの白髪をまどかがワザとらしくオレの目の前で指で
摘んでるからムッとしながらそれを奪い取ってごみ箱に捨てた。