04





「まどか起きろ!」

塞がれてたドアをこじ開けた次の日…オレの部屋側のドアをノックしてまどかを起こす。

「………ふ〜〜〜ん……」

「おい!まどか!本当に起きたのか?」
「…………ン〜…」
「まどか!!」
ドンドンとドアを叩いた。

「う〜ん…起きたぁ〜〜〜んーーーおはよう…大ちゃん…」

「…まったく…」

まあ前よりも起こし易いと言えば起こし易い。

「先に下に行ってるからな。」
「うん…」

起こす為にドアを開けてまどかの部屋に入ったりはしない。
そこまでする必要は無いししようとも思わないからだ…

でも…まどかの部屋は……あの時のままなんだろうか…
オレが…文香と暮らしてた時と……

多少人に貸す為に改装した…でも部屋の間取りは殆んど変わっていないから…

「…………」

そんな事を思いながら自分の部屋の玄関の鍵を閉めた。



そんな生活が1週間ほど続いた真夜中…
ぐっすりと眠ってたオレのベッドに予期せぬ侵入者がっっ!!

「…んなっ!!なんだっっ!!!」

いきなり冷たいモノがオレの身体に当たる!

「は?え?なっ…まどかっっ!?」

剥いだ布団の下に丸まって縮こまってるまどかがいた!!まるで猫か犬みたいに…

「お前何してるっっ!!こんな真夜中に男のベッドに潜り込むなんてっっ!!
出てけっっ!こんな事するならあのドア塞ぐぞ!」

「…だ…大ちゃん…」
「ああ?何だっっ!」

オレはブチ切れ寸前!まったく!恥じらいっちゅーもんは無いのか?
ガサツにも程があるだろっっ!!

「…さっ…さっ…」
「さ?」
「寒い…!!」
「は?」
「寒いのぉ……」

そう言ってガタガタと震えてる。

「寒いってそんな季節じゃないだろう?」

もうちょっとすれば爽やかな季節がやって来るはず…

「さむ…」
「………」

どう見ても演技とは思えない程の震えだ。

「…部屋に帰ってから何か変なモノ食べたか?」
夕飯はオレが作ったモノを食べたんだからそれは違うだろ。
ギュッと目をつぶってフルフルと首を振る。

「………うぅ…寒い…」

「………」

まさかと思ってオデコに手を当てたが普通だ。
でも本気で寒がってるまどかを追い出す訳にもいかず…剥いでた布団を掛けてやる。

「やっぱ一緒ってのはマズイよな…」

そう呟いてベッドから下りようとするとパジャマの端を掴まれた。

「1人で寝てて…寒かったから…怒られるの…覚悟で…来たんだ…よ…なのに…行かないでよ…」

「でも一緒って訳にはいかないだろ?」
「…何…で?」
「何でって……」
「やらしい…事…考えてる…の?」
「アホかっ!誰がお前みたいなガキンチョ!!」
「なら…良いじゃない…あっためてもらうだけだもん…」
「………」

「お願い…大ちゃん……」

「………はあ…」

オレは一体何をしてるんだろう…これは人助けと言う事か?まあ何かあっても困るしな…

「仕方ないな…」
言いながらオレも布団に潜り込む。
「あり…がとう…大ちゃん……」

そう呟くとオレの方に移動して来てオレにピッタリとくっ付く。

手足が異常に冷たい…オレはちょっと不安になってもう少し様子を見て変になる様なら
病院に連れて行こうと思った。

ちょっと触れてるだけでまどかが震えてるのがわかる。

「どっか痛い所とかあるか?」
フルフルと首を振って更にオレに近付く。

余りの震えに何となく接近を許して…軽く布団の上から抱きしめてやった…

「大丈夫か?」
「…うん…大ちゃんが…一緒にいてくれるから…」

大人でも一人暮らしだと具合が悪いと不安になる時がある。
まだこんな若い子が親元を離れてたった1人で…やっぱり相当心細いよな…

オレはそんな事を思いながらこんな状況でウトウトと眠ってた……




変な夢を見た…
砂漠のど真ん中を水も無しで歩き続けて…なぜかその灼熱地獄の中…
オレは湯たんぽを抱き抱えて歩いてる…

「暑い…」

夢の中で言ってると思ったら本当に言ってたらしい。
それで目が覚めた。

「……何だ?」

マジで身体が熱かった!しかもしっとりと汗ばんでる…違う!!オレじゃない!!

「はあ…はあ…」
「まどか!?」

目の前で眠ってるまどかが顔を真っ赤にして荒い息を繰り返してる!まるで茹蛸だっっ!

「え?熱?」
「……だ…大ちゃん…」
「!!まどか!大丈夫か?」
「あ…熱い……つら…い…」

やっと明けた潤んだ瞳でそう訴えられた。


後から分かったんだか高い熱が出る前は寒気がして手足が冷たくなったりするらしい。
熱を測ったら39度近かった…オレは熱なんて滅多に出さないからそんな事知らなかったし…
だから薬も無いし頭を冷やす道具も無い。


「後で買ってこないとダメか…」
とりあえずタオルで冷やしながら様子を見てる。
「大…ちゃぁ…ん…」
「ん?」
「身体が…変…熱い…」
「そりゃ熱があるからだよ!しっかりしろ!」
「………何か…飲みたい…」
「お茶しかないぞ?」
「それで…いい…」
「じゃあちょっと待ってろ。」

オレは何気に慌てて冷蔵庫からペットボトルのお茶を出してコップに注いだ。
そして早足でまどかの寝てるベッドに戻る。

「ほら。もって来たぞ飲めるか?」
「……ふぅ…ん…」

虚ろな目ともっそりとした動きと真っ赤かな顔…
それにしっとりと汗ばんで頬とオデコに髪の毛が張り付いてる。

「お前とんでもない姿だぞ…」
「…病人なんだから…仕方ないでしょ…大ちゃん思いやり無いの?」
「病人なら口答えすんな!ほら…」
持って来たコップを手渡す。
「…………うー…」
「………持てるのか?」

差し出したまどかの手が震えてる…熱のせいだとは思うが…

「高熱ってこんな風になるんだな…」

オレは思わず感心!

「…何…感心してるの?大ちゃん…熱出した…事無いの?」
「無い!」
「…………」
「何だよ?」
こんな状況でもまどかが呆れた顔になったのが分った。
「やっぱり…バカは風邪ひかないんだ……」
「なにっっ!!!没収!」
飲みかけのコップを奪い取った。
「や…大ちゃんまだ途中……」
「人をバカにした罰だ!看病してもらってる身で…んぐっ!!!」

何だ…?まどかが………いきなりオレに……

キスした??


「病人を虐めた罰……風邪うつしてやる……」

「 ………… 」

ちょっと待て!今のは何だ??ベッドの上で2人…
オレは片手に飲みかけのコップ…まどかはオレのパジャマの前をしっかり掴んでる。

未だにオレの目の前1cmにまどかの顔がある…

「まだ風邪の菌足りないかな?」
「は?……んんっ!!!」

「……ん…」

結構な…濃厚なキスだぞ…これって…
スルリとまどかの熱を帯びた舌がオレの口の中に入って来た!!

意表を突かれて身体が固まる…なのにまどかのキスに応える自分がいる…
どれだけの時間が経ったんだろう…頭真っ白でわからないがたっぷり30秒はあっただろ?



「ハァ〜〜〜これでうつったかな?」

「……………」

ちょっと待て!!!コラっ!!!

「う〜辛い辛い…おやすみ大ちゃん…」

「…………」

そう言ってまどかは何事も無かった様にまた布団に潜り込んだ。
しかもあっという間にまた苦しそうな寝息が聞えてくる…

「…………」


オレはコップ片手にベッドからヨロヨロと下りた…そのまま流しに項垂れる…



ウソだろ…15歳の小娘に………唇奪われた………