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「…………」

店の前でまどかのクラスメイトに声を掛けられ…
成り行きで?そいつが店に寄る事になった。
当たり前だがまどかはそいつの相手をしてる…

クラスメイト…男の…しかもどうやらまどかと仲が良いらしい……

メニューを置きに行ったまま帰って来ない…
しかも何気に楽しそうに話してる様に見えるのは何でだ??


「アイスコーヒーだって。」
「ああ…」

それだけを聞いてくるのにこんなに時間掛かるのか?

「? 大ちゃん?」

「!!……何だよ…」

「もしかしてヤキモチ妬いてんの?」

「はあ??」

「だって…ちょっと顔怖いもん。」
「なんであんな若造にヤキモチなんて妬かなきゃなんないんだよ!!自惚れんな…」
「そうかな…ただの友達だよ。」
「だからヤキモチなんて妬いてないって!ほら!アイスコーヒー持ってけ。」
「はぁ〜い ♪ ♪」


ヤキモチなんて…誰が妬くか…
良い大人が…たかがクラスメイトに…
でも…あいつがまどかを 『 まどか 』 と呼び捨てにした時…

ちょっとムッとこなかったわけじゃない……



それからなぜかそいつが頻繁に店に通う様になって…
まどかと話す姿を見る回数が増えた。


「まどかがオレと付き合ってるってアイツ知ってるのか?」

いつもの様にまどかと向かい合ってテーブルに座りながら切り出した。
別に…ヤキモチ妬いてる訳じゃ無い…そう…ただ気になるだけだ…

「え?結城君?知らないよ…自分から言う事でも無いし…聞かれないし…」
「でも…最近あいつ良く来るよな…近所なのか?」
「んー確か自転車で10分くらいって言ってたかな…」
「自転車で10分なんて結構な距離だろ?何でまた…」

しかもファミレスやファーストフード店ならいざ知らず…
個人経営の喫茶店だぞ?高校生の男が…そんな頻繁に来るか?しかも1人で…


「アイツ…彼女っているのか?」
「彼女?うーん…そんな話聞いた事無いけど…いるんじゃない?頭良いし優しいから…
それなりの顔だし…結城君って女子に人気あるんだよ。」

「へぇーーーー…」

自分の付き合ってる男の前で他の男を褒めるんじゃない!!

って!!はっ!!何だオレ……これって…


「大ちゃん…」
「え?あ…なんだ?」

「やっぱりヤキモチ妬いてるんでしょ?あたしの事心配?」

まどかが期待タップリのニコニコな顔でオレを覗き込みながら聞いてくるから…

「ばっ…ばか!!コレっぽっちも気にしてないっっ!!自惚れるなって言っただろ?」

思わず…大きな声で言い切ってしまった…あ…ちょっとマズかったか…?

「…………大ちゃんの…意地っ張りっ!!素直じゃ無い!!べーーーーーっだ!!!」

「あ…おい…まどか!!!」

「しばらく実家に帰らせて頂きますっっ!!!」

そう言うとまどかはスタスタと…あのドアを開けて珍しく自分の部屋にこもってしまった。
思い切りドアを乱暴に閉めて。

「何だ…実家って…すぐ隣じゃ無いか…まったく…」

どうせ夜中になればまたオレのベッドに潜り込んで来るだろうと思ってたら…
いつまで経ってもその気配は無い。

オレは何故か気になって眠れないでいる…

「何でだ?」

今ままで別に1人で寝てても何も気にならなかったのに…
たった3週間ほど毎晩まどかが隣で寝てただけなのに……何だかベッドの中が淋しい…

って何が淋しいだっ!!幾つだ?オレ!!!30だぞ!30!!!

その晩はまんじりともせず…何とも変な気分でベッドに横になってた。
まどかと付き合い出してから初めての事だ…

文香とも喧嘩するとお互いそっぽ向いて寝た事はあった…
大体はオレが変な意地張ってたり…変な事にこだわってたりで文香を怒らせてた…

『 亮平って自分が悪いくせにホントに謝らないんだから! 』

文香が仲直りした後必ず言ってた…
仲直りも結局文香の寛大な心で許してくれてたからだと思う…

今回もきっと…いや多分…絶対…オレの一言が原因なんだ…


次の日の朝もまどかは起きて来ない…
まあ夏休みだからゆっくりでもいいんだろうが…店の方は忙しくなるお昼前からのバイトだし…

仕方ないかとあのまどかの部屋に繋がるドアを眺めながらコーヒーを淹れる。

「やっぱ…謝るべき……だよな…」

相手は年下の…しかも17歳と言う若さだ…
文香の様に寛大な心でオレを許してくれるとは思えない…ここはやっぱオレが折れるしか…




「まどか……入るぞ。」

あまり入らないまどかの部屋をドア越しに中を見渡す。
奥の洋間にベッドか置いてあってみれば布団を頭まで被って眠ってるまどかを発見!

どうみても寝たフリだ…まどかがあんなお行儀良く寝てる筈がない!
しかも微動だにしないって…怪しすぎ。

「おはようまどか…起きてるんだろ?」

「……起きてない…まだこれから寝るの…だからあっち行って!」

顔も見せずに拒絶されてしまった…文香にはそんな事されたこと無かったな…

「悪かったよ…その…謝るから…」

言いながらまどかのベッドに腰を下ろす。
キシリとベッドが軋んだ。

「何を……謝るの?」
「………まどかを…怒らす事言ったから…」
「………どんな…」
「え?」

言わせるのか?オレにそこまで……多分まどかは分ってて聞いてる…
でも…仕方ない…

「その……まどかの言ってる事は本当だった…なのに…それを誤魔化すために
まどかを怒らせる事言った…自惚れるなって…」

「……自惚れて…良かったの?」

まどかが寝たまま顔だけオレの方を向いた。

「ああ…確かにオレはあのクラスメイトにヤキモチ妬いてたよ…年甲斐も無く…うわっ!!!」

まどかがいきなり起き上がってオレに抱きついた!

「歳なんて関係無いじゃん…大ちゃんがあたしの事好きって事で…
誰にも渡したくないって事でしょ?」

「……そうだな…そう言う事になるのか…」
「まだ自覚してないの?」
「なんかこう言う事初めてかもしれない…文香にはそう言う相手なんて現れなかったし…
自分の恋人に他の男が接近してくるなんて……何だかヤな感じだ…落ち着かない…」
「あたしが…結城君を取るって思うの?」
「いや…そんな事は思ってないけど……何だろう…彼がまどかと話したりしてるの見るだけで
嫌な感情が胸の中に出てくる…きっとそれが 『 嫉妬 』 って言う感情なんだよな…」
「……なんで昨夜のうちにあたしを迎えに来てくれなかったの!待ってたのに!!」
「…まどかが戻って来てくれると思ってさ…ごめん…甘かったな…」
「そうだよ…昨日は大ちゃんがあたしにヒドイ事言ったんだもん…
大ちゃんが迎えに来るのがスジでしょ?彼女の実家に!」
「実家って…ドア1枚だろ?」
「でもそのドア1枚を開けるのにすごい勇気と決断が必要だったでしょ?」
「まあ…確かに……」

一晩掛かったもんな……

「淋しかったよ…大ちゃん…隣に大ちゃんがいなくて…」

まどかがオレにぎゅうっとしがみつきながらそんな事を耳元に囁くから…

「オレも何だか変な感じだったよ…」

「あたしが好きなのは大ちゃんだけだから…信じて…」
「ああ…わかってる…」

それにまだアイツがまどかの事を好きだと決まったわけじゃない…

オレの頭では…もうそんな事は隅の方に追いやられてる…
抱きしめたまどかの首筋に唇を這わせて肌の感触を味わってるから…

「…あ…大ちゃん…」

「まどか…」

「ん?」

「 『 亮平 』 って…呼んで…」

「え?」
「亮平……大ちゃんじゃなくて…いい加減そう呼んでくれてもいいと思うけど…」
「だっ…て……あ…大ちゃん…だもん…」
「恋人の名前くらい呼んだっていいだろ…頼む…オレに抱かれながらオレの名前言って…」

言いながらまどかのパジャマを脱がしていく…
現れたまどかの素肌にキスをしながらそうお願いした。

「……恥ずかしいんだもん…なんか…ンア…照れちゃう…あっ…」

ベッドに仰向けに倒してボタンを外したパジャマの上着の前を広げて
両手でまどかの胸を優しくも揉んで押し上げる…
そのまま唇を押して付けて舐めた。

「あっ…あっ…」


簡単にまどかを裸にして朝からまどかを抱いた。
初めてまどかのベッドで愛し合って…オレのベッドよりもギシギシと軋む。

その音が更にオレをその気にさせて…朝から思い切りまどかを抱いたかもしれない…
たった一晩ももたないのか…オレ…何とも情けない…

まどかがオレの下で…オレの腕に抱きかかえられながら
感じてるのを見るのはやっぱり気分がいいし安心する…

「まどか…」

何度も何度も押し上げながら何度もまどかの名前を呼んだ…催促だ。

「……あっ…あっ…や……大ちゃ…」
「違う……」
「うあっ!!……んっ!んっ!」

起き上がってまどかの両足を思い切り広げてまどかの奥の奥まで攻めた。

「やっ!!あっ…あっ…」
「…まどか…」

もう…お互い限界が近い…だから…オレの名前を言いながらイって欲しいんだけどな…

「……うあ…りょ…」

「 !!! 」

「亮……平…さ…あっ!あっ!!」

「 !! 」

「やだ……だめ…あっ!あっ!ああああっ!!!」

「まどか…もっと…呼んで…」

「…うっ…あ…亮平…さん……あっあっあっああああ!!!!」

「まどか……」



オレは最高に気分が良かった…ただ名前を呼ばれただけなのに…

でも…オレの名前を呼んでもらうのに…

5年もかかった…





高校生活最後の夏休みはあっという間に終わってしまった…

今年の夏はあたしにとって忘れられない夏になった…
大ちゃんと両想いになって…愛し合う様になって…卒業したら結婚する事も約束した…

夏休みの終わるちょっと前に大ちゃんはあたしの親に会いに行ってくれた…
もうお父さんはいないからお母さんと…一緒に暮らしてるお祖父ちゃんとお祖母ちゃんにも…
お母さんは前もって知ってたからホッとした顔して反対する事も無かった…
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんもあたしが幸せになるならと快く承諾してくれて…

3人は 『 宜しくお願いします。 』 と大ちゃんに頭を下げた。

あ…あたしも一緒に…そしたら大ちゃんも一緒になって頭を下げてたっけ…



夏休みも終わり新しい生活が始まった。
まどかの親にも挨拶に行ったし…後日オレの親にも紹介する予定だ。

まあオレの方は2度目だし…もう自立してやってるんだから親も文句は言わないだろう…
まあ相手が現役の女子高生だって言うのは驚くだろうが…

相変わらずまどかはオレを 『 大ちゃん 』 と呼ぶ。

ただオレに抱かれる時はオレが催促すると言ってくれるようになったから…まあ進歩かな。


今日からまどかも新学期が始まった。
学校があるとなると早々今までみたいに夜中までまどかを抱くなんてのは控えないと…

なんて事を思いながら店の前に水でも撒こうかと外に出ると…
いつの間に帰って来たんだかまどかが自転車を脇に立ってた。

その向こうに……クラスメイトのアイツが立ってた。
まどかと同じ様に自転車を脇に…って一緒に帰って来たって事か?

結局夏休みの間もアイツは週に2・3度は店に来てた…

一体どう言うつもりなんだか…別にまどかに何をするわけでもなく…
ただ普通にお喋りをして帰っていく……告白するわけでも無さそうで…

でももう身体は一人前の男だし…万が一って事もあるからまどかには気を付ける様に言ってある。
当のまどかは 『 結城君に限ってそんな事無いって! 』 なんて軽く受け流された。

これはオレから一言言った方がいいのか…

なんて…大家の責任ちょっととまどかの恋人としての方気持ち大部分の
大人の男としてハッキリ言ってやろうと2人に近付いた。


「 ……は? 」


今この男…何て言った?


「………だから…まどかに俺と付き合って…」


付き合ってだぁーーーーーー!!!!!何言ってる???コイツっっ!!

言われてるまどかはと言うと何の反論もせず黙って相手の言う事を聞いてるっっ!!!
即付き合ってる相手がいるって断れっっ!!!


「……んーーー…急にそんな事言われてもなぁ…」


なっ…何だ???まどか??そのセリフはっっ!!!!



オレは水撒きのバケツをもったまま…

そんな会話をしてる2人の後ろ姿を……呆然と見つめてた…