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まどかと最近まどかに接近してたクラスメイトの男が話してるのが聞こえてしまった…
どう聞いても…あれは…まどかに付き合って欲しいと打ち明けてただろ?
「あ!」
男の方がオレに気付いた。
「ん?」
つられてまどかがオレに気付いた。
「あ…大ちゃん…」
「じゃあまどか…考えといて!じゃあまた明日な!」
「うん…」
男の方が慌ててそう言うと自転車を逆方向に向きを変えてそそくさと帰って行った。
アイツが帰ってオレとまどかと2人残された…
まどかはわからないがオレはなんとも気まずい雰囲気だった…
「ただいま。大ちゃん!」
「…ああ…お帰り………一緒に帰ってきたのか?」
「え?あ…うん…ちょっとこっちに用事があったんだって。」
「用事?」
用事…ねえ…どんな用事だよ…
「おい…まどか…」
「ん?」
建物の方に行こうとしてるまどかを呼び止めた。
でも…どうするんだ?問い詰めるつもりなのか?
……今…告白されただろうって…?
「なに?」
まどかは…オレが聞えてたなんて知ってるんだろうか……
「いや…」
「あ!いらっしゃいませ!大ちゃんお客さん!!」
「え?ああ…」
「じゃああたし着替えて軽くご飯食べてから行くから。」
「え?…ああ…」
まどかは何事も無かった様に…部屋に続く階段を軽快に上がって行った。
もうオレは仕事中も考える事はさっきの2人の会話だ…
手伝いに下りて来たまどかは何事も無かった様にいつも通りに仕事をこなしている…
うろたえてるのは…オレ…なのか?
他の奴は好きにはならないとまどかは言った…オレが好きだと…
親にまで挨拶に行って…もう婚約してるのと同じなんだからやっぱりオレがおかしいのか?
まどかを信じて無いって事になるのか……
「大ちゃんミックスサンドとコーヒー2つ。」
「…………」
「大ちゃん?」
「えっ!?あ…ああ…OK!」
「どうしたの?気分悪いの?」
「いや…何でもない…」
「そう?」
「ああ…」
まずい…このままでは仕事に支障をきたす…
さっきの事は…今は忘れようと自分に言い聞かせた。
「ふわぁ〜〜風呂上りの一杯は美味しいわぁ〜〜 ♪ ♪ 」
まどかがそんな事を言いながらコップに注いだオレンジジュースを一気飲みした…オヤジか?
「………」
「大ちゃん?どうしたの?何か今日変だよ?」
「………まどか…」
「ん?」
「いつまでアイツと…あのクラスメイトと一緒に帰って来るつもりなんだ?」
「え?」
「ちゃんと付き合ってる相手がいるって言った方がいいと思う。」
「大ちゃん…」
「相手がまどの事どう思ってるのかオレは知らないけど…何の理由もなくこんなに頻繁に
まどかの事を送ってくるなんてやっぱり何かあると思うぞ。ちゃんと話した方がいい…」
「やだ…どうしたの?大ちゃん…急に…」
「オレは普通の事を言ってるまでだ。」
そう…今回は嫉妬からじゃ無い…至って真面目な目線で話してる。
「あんまり相手に期待を持たせない方がいい…まだオレとの事言ってないんだろ?」
「…うん…」
「まどかが言いにくいならオレが言うけど?」
「え?やだ…そんなんじゃ無いから!大ちゃん気にしすぎだよ。」
いつもみたいにまどかが軽く笑いながらオレに返事をした…だから…
「 きゃっ!!!うわっ!!……いった!!大ちゃん!!?? 」
まどか抱きついて体重を掛けて床に押し倒した。
「……………」
じっとまどかの瞳を見つめ続ける…
「大……ちゃん?」
「こんな事…まどかを押し倒すのなんて男にとっちゃ簡単なことなんだぞ…」
「大ちゃん…」
「上手い事誘われて…公園なんか行ったら簡単に男の餌食だ。」
「やだ…結城君が…あたしに…何か……するとか?」
「あり得無い事じゃ無いってことだよ…」
「大ちゃん……手首…痛い…」
「本当ならもっと痛い目に遭わされるぞ…」
まどかを押さえつけてる手首に力を込めてそう言った…まどかはちょっと戸惑ってる。
「やめ…大ちゃん…やめて…」
「まどか……オレに何か話す事あるだろ…」
「え?」
「……………」
オレは昼間の事を言ってくれると思ってそう言った。
「……何も…何も無いよ…離して…大ちゃん…背中痛い…」
「……この前は…ヤキモチ妬いて…素直じゃなかったが…今日はちゃんと話してるぞ…」
「大ちゃん……」
「オレに…何か言う事あるだろ?」
「……無いよ…本当に何も…」
「 !!! 」
今の…この気持ちを…どうまどかに伝えればいいんだろう…
オレはまどかと…アイツの話を聞いちゃったんだぞ……それを…オレから言わせるのか?
ここまで…聞いてるんだからまどかが話しても良い事だろう?
『 今日彼に告白された 』 って…それで…
『 でも付き合ってる人がいますって言って断るね 』 って言えば済む事だろうに…
「…何でなんだ…」
「え?」
「何でなんだよ…まどか……」
「大ちゃん?」
押さえつけてたまどかの腕を離して立ち上がる…
きっと…まどかがオレと別れるなんて思ってもいないが…これは…堪える…
オレに心配を掛けさせない為なのか…
でも…ここまで食い下がって聞いてるんだから分りそうなもんだろ?
分ってて…話をはぐらかしてるとしか思えない……
オレには…言えないって事か?
「大ちゃん?」
「いや…何でもない…変な事言って悪かった…でも気をつけろよ…わかったな…」
「うん…わかってる……」
「先に寝るから…」
「え?もう…?」
時計はまだ10時を少し過ぎた所なのに…
大ちゃんは先に1人で寝室に入って行っちゃった…
大ちゃん………何かあたしに……言いたい事があったのかな?