02





「大声出す余裕があればいいけどね……」

なにっ!!この人…絶対変っ!!やだ…どうしよう…こ…怖い…!!!

「あ…い…いや…」

彼の手が頬に触れる…
大声なんかやっぱり出せなくて…身体が…震える…
彼の顔が…近付いて…もうあと少しで……唇がくっ付きそう……


きゅるるるるるるるるる〜〜〜〜

「あ!」
「え?」

静まり返った保健室にそんな音が響いた。

「えっと……」
彼がキョトンとした顔で見てる。
「…………あ……」
ぐーーーっと更にお腹が鳴った。

「 ぷっ!!! 」

「 !! 」

思いっきり吹かれた!!!恥ずかしいーーーーっっ!!

「なっ…なによっ!!仕方ないでしょっ!!朝から何も食べてないんだからっ!!!」
「え?なんで?朝は分かるけど昼は?今もう5時になるよ?」
「い…色々な用事済ませてたら食べそこなって……」

「あ!!」

「え?」

「もしかしてお腹空いてて倒れたの?」
「 !!!! 」
図星で余計恥ずかしかったっ!!顔が更に真っ赤になる!!
「 ……!!!……ぷっ!!くっくっくっくっ………うそ……」
「……………」
笑いすぎでしょ……もう…

「君って本当変わってるね。面白い!」
「あなたに言われたくないわよ……」

失礼よ……まったく……

「じゃあさ…何か食べに行こう ♪ オレ奢るよ…キスのお詫びにさ…くすくす…」





「はーーーお腹いっぱい ♪ ♪ 幸せ〜〜〜 ♪」

何だかんだと言いながら本当に奢ってもらって大満足!!
遠慮しなくて良いって言うからお言葉に甘えて遠慮せず食べた。


「機嫌直った?良かった。」

あんなにハチャメチャな事した彼なのに…今は普通で…ううん…むしろ優しいくらい…
でも…騙されちゃいけない!!絶対要危険人物だもん!!この人……

「ごちそう様でした。ではここで!!」

シュタッッ!!!っと手を上げて帰る準備OK!!

「は?」

「さよなら!!!」
「チョイ待ち!!」

「 !!! 」

がしっ!っと肩掴まれてあっさりと捕まった!!!

「…ったく…何サラッと帰ろうとしてんの?」
「え?でも…もう帰らないと門限が……」

って在りもしないしない門限を理由に帰るつもりだったのに……

「もう一度聞くよ。彼氏は?」
「………」
「彼氏は?」
「あ……」

項を手で優しく持ち上げられて…上を向かされた…
背が高いからそんな事をされると足が爪先立ちになって不安定になる…
そんな強引なことされてるのに…大声も出せないし…抵抗も出来ない…なんで??

「彼氏は?」
「……いな…い…」
「そう…クラスは?」
「……1の…A…」
「名前は?」
「みかげ…吉泉…みかげ…」
「みかげ?…珍しい名前だね…」

やだ…なんで…この人の声が…魔法の呪文みたいに耳に響く……
抵抗する力を奪われちゃう……ズルイ……

「やだ…こわ…い…」

彼を見上げながら…本当にそう思った…
恐怖の怖いじゃない…これからきっとされるだろう…行為が…怖い…

「怖くないよ……」
「あ…」

腰にもう片方の腕が廻されて完璧に抱きしめられた。

「芫」
「え?」
「彼氏の名前…芫…言ってごらん?」
「…げ…芫…?」
「そう…君の…彼氏の名前だから…」
「いつの間に?OKした…覚えない……」
「そんなのいらないんだよ…」
「え?」

「だって君の方からオレの腕の中に飛び込んで来たんだから……ちゅっ…」

「……………んっ…」



今日…生まれて初めてキスをした…相手は同じ学校の3年生…

今まで会った事も話した事も…この世に存在してた事も知らなかった相手…

なのに…会って数時間で恋人同士になったらしい…

もの凄い自己中で…軽くて…手が早くて…こんな男で本当にいいのかな??


なんて彼の言う事を素直に聞いてる自分がすごく不思議なのに…
あっという間に彼に惹かれちゃった自分もいるも事実で……

でも…きっと彼の言う通り…

自分から彼の腕の中に飛び込んじゃったんだから…仕方ないのかな……


なんて考えてたら思いっきり舌を絡ませられて……
余計にわけがわからなくなって……いきなりこんな激しいの勘弁してっ!!!

「ふぁっ!!!もうちょっと…ストップ!!!」
流石に抵抗して彼を押し戻した。
「?なんで?」
「何でじゃないっ!!!慣れてないのにこんなディープなのしないでっ!!」
「あれ?刺激強すぎた?涙目になってるよ。」
「うるさい!!これが普通!!!あなたが慣れすぎてるのっ!!!」
「あ!そうやって紛れて唇拭かないでよ。ちょっと傷つく…」
「………だって……」

彼の唇の感触が…生々しく残ってるんだもん…

「そっかぁ ♪ ♪ じゃあこれからの調教が愉しみっ ♪ ♪」
「何?調教って!!怪しい事考えないでよっ!!もう別れるっ!!縁が無かったって言う事で!!」
「ちょっ!!冗談だって!ちゃんとそっちに合わせるから。ね?機嫌直してよ。」
踵を返して行こうとする彼女の腕を捕まえた。
「…………厭らしい事…しないでよ。」
もの凄い横目で睨まれながら確認された…
「しないよ。でもそっちがその気になったら知らないけどね。」
「ならないわよっ!!もう!!あ!もしかしてあなたって遊んでたクチ?」
「え?さあ〜〜〜どうかな?オレは普通だと思ってるけど?」
「………嘘…遊んでなきゃあんなに慣れてる訳無いじゃない!!」
「そう?生まれつきじゃない?」
「そんなわけあるはず無いでしょっ!!もう浮気したら即別れるからねっ!!
不実な男は大嫌いだから!!」
「OK!!大丈夫。オレこう見えても一途だから。」
多分。
「ホント?」
疑いの眼差しで見つめてあげた。

「やったぁ ♪ ♪ 初彼女GETだっ!!!」
「え?初彼女??って…うそっ!?」
「本当。付き合うの初めて。だから不安だなぁ〜〜〜にこっ」
「うそばっかりっ!!!」
「ホントホント!!だから2人で色々勉強しないとね!」

そう言ってにっこりと笑う…


「 うそだぁ〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

にっこりと笑ってる彼を見上げて…私はそう叫んでた。